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90年代ウィークへようこそ。このウィークでは、直近10年間で最も魅力的な(そして最も過小評価されている)時計と、20世紀末を特徴付けたトレンドとイノベーションを再考していく。ダイヤルアップ接続を行い、クリスタルペプシ(無色透明のコーラ)を手に取ってほしい。今週はずっとこのテーマを扱う。
スライ・スタローン(シルベスター・スタローンの通称)は元救急医療班隊長で、自分の勤務中に同僚が死亡したため、隊長の職を追われた。今はタクシーを運転し、パネライのルミノール5218-201/Aをつけている。44mmの輝く緑色の、男性らしさを具現化した時計は、古きよき時代のレザーストラップと古きよき時代の独特のバックルで手首に固定されている。一方、映画では有毒廃棄物を満載したトラックがマンハッタンのトンネルで爆発し、多くの人が死亡、ほかの人は立ち往生することになった。そのなかには、かつて『ジャッジング・エイミー』に出演していたエイミー・ブレネマン(Amy Brennerman)、フィリップ・ロス(Philip Roth)の元妻であるクレア・ブルーム(Claire Bloom)、そしてセクシーなヴィゴ・モーテンセン(Viggo Mortensen)がいた。スライとパネライは彼ら全員を救わなければならないのだ。
90年代の映画らしい筋書きだ。デイライトは『ダンテズ・ピーク(原題:Dante's Peak)』、『ディープ・ブルー(原題:Deep Blue Sea)』、『スピード(原題:Speed)』、『スピード2(原題:Speed 2 Cruise Control)』といったほかのパニック映画と、その10年間を共有していた。 よりシンプルな時代、爆発するトラック、火山、暴走するバスやボートが地球そのものよりも危険だった時代である。パネライのルミノール 5218-201/Aは、このような時代のための時計だったのだ。持ち主と同じように、頑丈でハンサムで厚みがある。最低な野郎をぶちのめす自信に満ちあふれていた。
スタローンは、映画のためにこの時計を選んだと語っている。イタリアで購入し、「撮影の初日に腕にはめ、撮影が終わるまで外さなかった……。この時計はスターだ」と。 この時計はプロダクトプレイスメント(劇中に実在の企業名や商品名を登場させる広告手法)であり、スタローンは決して時計を外さないどころか、実際には何本も持っていて、撮影中もローテーションしていたという意見もあった。とはいえ、フィリップスは2020年、スタローンからの物語にまつわる手紙を添えて21万4200ドル(約2227万円)でオークションにかけた。私が誰を信じるかは言わないが、この時計が好きだということは言っておく。