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Hands-On 模倣物が溢れる世界でビュールマン デコンプレッション 02はまさにツールのためのツールだ

“有益である”という側面に焦点を当て、堂々とした風格を備えたデコンプレッション 02はダイバーズウォッチというジャンルのなかでもまれに見るほど本格的な一品である。

スペック上、ビュールマン デコンプレッション 02(Bühlmann Decompression 02)は500m以上の防水性能を持つ屈強なダイバーズウォッチとして、前腕を鍛えられそうなほどのサイズと重量を備えている。実際には575mまでのテストをクリアしており、ヘリウムエスケープバルブも装備している。しかし特定の領域に並々ならぬこだわりを持って緻密に構築された計器として、この時計はより複雑な魅力を放っている。ビュールマンはスイスのメーカーであるウォッチ・エンジェルズ(Watch Angels)傘下のサブブランドであり、私はその始まりについてCEOのグイド・ベネディーニ(Guido Benedini)氏に話を聞いた。「ウォッチ・エンジェルズは意義のある時計やブランド、そして時計製造の遺産を継承するプロジェクトを具現化する、垂直統合型の時計愛好家向けプラットフォームです」とベネディーニ氏は語る。「私たちの使命は、退屈な時計を絶対に作らないこと」。そしてデコンプレッション 02の武骨で圧倒的な魅力に対して、退屈という言葉が使われることは万にひとつもないだろう。

Bühlmann Decompression 02

ファースト・インプレッション

 デコンプレッション 02を収めるボックスは一般的で、ともすれば華奢な作りに見えるかもしれないが、手頃な価格のダイバーズウォッチに慣れ親しんだファンにとっては珍しいことではない。セイコーのようなファンに愛されるブランドも木製やペリカンケース、金属製のパッケージを避け、時計そのものに語らせることが多い。そして204gという重量を誇るデコ 2(デコンプレッション 02の略称)は標準的なピンバックルを備えた幅広のベント付きラバーストラップを装着し、強烈な存在感を放っている。参考までに、最新のオメガ プロプロフはイソフレーン(編注;ISOfrane/1960~70年代にプロダイバーから厚い支持を得たダイバーズウォッチ用ラバーストラップのブランド)スタイルのストラップを装着した状態で約183gだ。

Bühlmann Decompression 02

 直径48.5mm×厚さ17mmという巨大なサイズは、一見すると威圧感さえ覚えるほど大きい。しかしアイスブルーのダイヤルが爽やかな印象を与えており、前述のプロプロフやカラフルなドクサを彷彿とさせつつも、モダンな雰囲気を醸し出している。ケース上部の可動式ラグによって装着感は向上しているものの、本作に対して“実際よりも小さく感じる”という表現が登場することはない。この怪物はどんな袖口の下にも収まることはないので、普段の服に合わせるならジャンニ・アニェッリ(Gianni Agnelli)氏のように袖口の上から着用し、会話のきっかけとして楽しむ覚悟が必要だ。


学術的な基礎

 デコンプレッション 02はダイビング計画においてきわめて重要な浮上段階に焦点を当てた、ニッチな機械式のダイバーズウォッチである。「ビュールマン デコンプレッション 01はスイスの減圧科学と、潜水における安全性のレガシーを機械式のダイバーズウォッチに統合するというアイデアのもと、A.ビュールマン博士のご子息の協力により2021年にウォッチ・エンジェルズのプロジェクトとして開発されました」とグイド・ベネディーニ氏は説明する。その最初の具現化がデコンプレッション 01であり、それをさらに洗練させ、専用の計器として作り上げたのがこのデコンプレッション 02だ。ふたつのセーフティベゼル、ダイヤル上のスケール、そして3本の標準的な針を通じて、減圧計画のロジックを物理的な形に落とし込んでいる。

Bühlmann Decompression 02

 手首に装着し、ウェットスーツ、あるいはより暖かく乾燥したドライスーツを着用している姿を想像すれば、その設計意図がすぐに理解できる。私にとって、これは憧れの体験だ。シュノーケリングは大好きで、過去に数回体験ダイビングをしたことはあるが、本格的に取り組んだことはない。しかしこの時計を身に着けていると、The Grey Natoのポッドキャストを通じて代理体験をするだけでなく、実際にダイビングをやり遂げたいという情熱に火がつく。


実機によるビュールマン博士の減圧理論

 この時計は一見すると難解に見える。しかしこの時計においては二の次のようにさえ思えるが、単なる計時機能を超えた部分にその真価がある。私がプロのダイバーではないことを念頭に置きつつ、その理論に飛び込んで(洒落ではない)みよう。ビュールマン デコンプレッション 02、略してデコ 2は計画、規律、そして保守的な浮上速度が重要となるレクリエーションダイビングの“ゴールデンゾーン”で機能するように設計されている。これは状況に応じて瞬時に計算したり適応したりするものではない。潜水前にデコ 2を操作して設定をロックし、潜水中に参照枠として使用する。その意味では最新のコンピュータよりもプロ用の潜水テーブルに近い感覚だが、それが触覚的かつ機械的で、より汎用性の高いものへと変換されているのだ。

 その知的な土台となっているのは、1950年代後半から1980年代にかけてアルバート・A.ビュールマン(Albert A. Bühlmann)博士によって開発されたビュールマンZH-L16モデルだ。彼の研究は海面レベルと、高所ダイビングの両方における減圧理論を統一した。デコ 2のセンターダイヤル下にある回転式スケールは、限界深度や減圧停止時間、浮上ルールを抽象的なものではなく、目に見える形にしている。準備を怠らず、物理法則を尊重する者に報いる時計であり、本格的なダイビング機材としてのアイデンティティを確立している。

Bühlmann Decompression 02

 純粋な美観という点でもデコ 2は引けを取らず、スティールケースにはいくつかのポリッシュ仕上げの輝きも見られる。5度の傾斜がついたケースとそのサイズは、まるで精密なダッシュボード計器を手首に載せているかのようで、最も勇敢なデスクダイバー(編注;ダイバーズウォッチを街で身に着ける愛好家のこと)にとっても圧倒的な大きさだ。ネジ留めされたケースバックはポリッシュ仕上げの凹型になっており、重量感はあるものの手首の動きを考慮した装着感を実現している。5000ドル(日本円で約77万円)以下の価格帯としてはフィット感と仕上げはきわめて優れており、1時と11時位置にあるふたつのサイドリューズはラグにある波状の開口部に収められている。ラグ幅は理論上19〜20mmだが、専用のベント付きラバーストラップがラグの先端まで覆っているため、26mmから22mmへとテーパードするプロポーションになっている。ブランドの象徴であるツインロックベゼルが、深いダイヤルと内側の減圧スケールを縁取っており、外側のセラミック製ダイビングベゼルの刻印には緑色に光る夜光塗料がたっぷりと施されている。外側と内側のベゼルはそれぞれ城郭のような形状と、コインエッジ状の溝があしらわれたリングを重ねた構造で調整され、グローブをしたままでも操作しやすく、精密なクリック感と堅牢な手応えを提供してくれる。

 ダイヤル自体はきわめて深く、垂直に立てられサテン仕上げを施したインナーリングにはロレックスを思わせるテキストが刻印されている。しかし最も目を引くのは、マットでサンレイ仕上げが施されたアイスブルーのセンターダイヤルの下にある回転式の減圧スケールだ。6時位置にある階段状のウェッジ形の開口部からは、潜水プランに合わせた減圧スケールを選択して確認でき、そこにはシャープなプリントテキストと夜光が充填されたアプライドインデックスが並ぶ。潜水後、これは直感的に理解できる表示、飛行可/不可(fly/no-fly)インジケーターとして機能する。デコンプレッション 02は時刻も表示するが、プロプロフやドクサと同様、時針は控えめなサイズであり、赤色の矢印がついた精緻な長いイエローの分針に圧倒されている。これに大胆な赤色の夜光付き矢印を先端に持つ秒針が組み合わさり、モノクロームになりがちなダイバーズウォッチに鮮やかな彩りを添えている。

Bühlmann Decompression 02

 グイド・ベネディーニ氏に改めて確認したところ、彼は「この種の時計において、研究開発の主な関心事は目的、品質、そして使いやすさであり、サイズではありません」とはっきり語った。そして私は、1960年代のスリムなスキンダイバーへの単なるオマージュではない点も、新鮮で喜ばしいポイントだと付け加えたい。「私たちは、既存のダイバーズウォッチのデザイン慣習に一切妥協することなくデコンプレッション 02を開発しました」とグイド氏は言う。「この時計はその目的を明確に伝えているため、機械的な“ツール・アート”と定義できます」。私のようなメカ好きにとって、その目的こそが魅力なのだ。


実地でのデコンプレッション 02

 ビュールマン デコンプレッション 02はダイブコンピュータではなく、ISO規格に基づくプロ用潜水計器としての認定も受けていない。これは計画および参照用のツールとして設計されたものであり、生命維持装置ではない。認定されたダイブコンピュータの代わりとして決して信頼してはならない。これは標高700m以上の高所での潜水や、潜水後の飛行に関する判断において特に重要だ。潜水後すぐに飛行機に乗ることは減圧症のリスクを高めるため、その判断を軽んじてはならない。

 この時計の役割は予備的で有益なものであり、時計が代わりに決断を下すわけではない。安全な潜水プロファイルを計画するのを助けるためのツールとして意図されているのだ。

Bühlmann Decompression 02
Bühlmann Decompression 02
Bühlmann Decompression 02

 使用において、ビュールマン デコンプレッション 02は回転する減圧ダイヤルを介して潜水深度、ボトムタイム、および減圧停止を事前に計画し、ベゼルと針を使用して総潜水時間と浮上を追跡することを可能にする。3つのトップマウントリューズは次のように機能する。中央のリューズ(no.2)は時刻合わせと、セリタ製SW-300ムーブメントの手巻きに使用する。これは飛行可/不可機能の設定にも使われる。潜水前には1時位置にあるリューズ(no.3)を緩め、ブルーのセンターダイヤルの下にある減圧ダイヤルを回転させ、必要な深度とボトムタイムの組み合わせを表示させる。リューズを押し込み、ネジを締めて固定することで、潜水用に減圧ダイヤルがロックされる。11時位置にあるリューズ(no.1)はTDT(総潜水時間)インナーベゼルのロックを解除・固定し、回転させて分針に合わせるために使用する。これによりTDTベゼルで潜行時間とボトムタイム(BT)を測定し、秒針で浮上速度(1分間に10m以内)を測定できる。最初の減圧停止地点に到達したら、外側のDSベゼルを時計回りに回し(TDTベゼルは回転しない)、DSベゼルのゼロマーカーを分針に合わせて減圧停止の持続時間を測定する。これを秒針による浮上速度の確認とともに、追加の減圧停止ごとにDSベゼルを使用して繰り返していく。潜水中、これは潜行、ボトムタイム、浮上速度、および減圧停止を明確で機械的な方法によって監視する助けとなる。潜水後、飛行可/不可インジケーターは医学的な許可証ではなく、水面休止時間の規律を守るための視覚的なリマインダーとして機能する。

 [編集注: (PADIなどが推奨する)レクリエーションダイビングは無減圧潜水としてトレーニングおよび意図されており、ダイバーは無減圧限界(NDL)内に留まり、5mで3分間の標準的な“安全停止”以外の減圧停止を必要としない。安全停止は常に推奨され、潜水の状況(NDLを超えた場合など)によっては減圧停止が必要になることもあるが減圧停止を具体的に計画することはレクリエーションダイビングの範囲外であり、テクニカルダイビングの訓練なしに行うことは推奨されない]

 当たり前のことのように思えるかもしれないが、絶対に守るべきルールがひとつある。水中ではリューズを密閉し、ロックしたままにすることだ。水面下でリューズを開けることは、時計そのものを完全に台無しにするリスクがある。日常の着用においては、時刻合わせや巻き上げは従来の機械式時計の慣習に従う。全時計の90%にとって時刻を知ることがメインの仕事だが、デコ 2にとってそれはあくまで副業だ。正しく使用すれば、ビュールマン デコンプレッション 02は近道ではなく、テクニカルダイビングにおける(特にワークフローの一部として機械的なソリューションを楽しみたい人にとって)堅実なバックアップツールとなる。

 ウォッチ・エンジェルズのCEOグイド・ベネディーニ氏によると、ビュールマンの時計は機械式減圧時計やそのほかのバックアップ用ダイバーズウォッチの開発に集中するため、2026年初頭に独立したブランドへと移行する予定だ。新モデルもA.ビュールマン博士の応用減圧科学にインスパイアされたものになり、2026年のコレクションにはふたつのモデルが含まれ、2028年までに4モデルに拡大する計画だという。

Bühlmann Decompression 02

 デコ 2と競合する時計にはオメガ シーマスターやチューダー ペラゴスなど、より日常使いしやすく一般的な選択肢がある。しかし正直なところ、実験的なブランパン フィフティ ファゾムスのX ファゾムスのようなハードコアな投資級ツールを除けば、これは標準とはまったく異なるものを提供している。「これはデジタルダイブコンピュータを補完するバックアップ機材です」とベネディーニ氏は付け加える。「デジタル技術への依存が高まるなかで、ほとんど消えかけていたカテゴリーを再開拓しているのです」。その言葉は腑に落ちた。この時計を身に着けることはインスピレーションの注入であり、この物語の写真を撮るために自宅近くの華氏23度(摂氏-5度)という北極圏の凍てつく海岸にビュールマン デコンプレッション 02を持ち出した経験は、私にダイビングへの決意をさらに固めさせるものだった。

 ビュールマン デコンプレッション 02は3590スイスフラン(日本円で約72万円)で1月31日まで販売される。限定数は防水性能と同じ“575”本で、各売上の一部は完璧な減圧アルゴリズムの継続的な研究を支援するため、DAN ヨーロッパ医学研究財団(DAN Europe Medical Research Foundation)に寄付される。詳細はウォッチ・エンジェルズのサイトを確認して欲しい。