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Hands-On ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダーは、誰も予想しなかったヴィンテージテイストの新作

モダンな36mm径の超薄型パーペチュアルカレンダーは過去の遺物だと思っていたヴィンテージ愛好家諸君、ヴァシュロンがその期待に応えてくれた。しかし、その実力はいかほどか?

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2022年、ヴァシュロン・コンスタンタンはある布石を打っていた。それがブランド創業270周年を締めくくる今年、Ref.4305T/000G-H135として結実したのだ。当時、36.5mmのピンクゴールド製トラディショナルが発表された際、多くの人はそれを見過ごしていた。ヴィンテージサイズに近い超薄型パーペチュアルカレンダー(QP)であったにもかかわらず、ピンクのマザー・オブ・パールダイヤルとブリリアントカット・ダイヤモンドの意匠から、レディスウォッチだと片付けてしまったからだ。こうした野心的なリリースがあっても、ブランド側が境界を押し広げる機会を逃し、平均的な顧客層に迎合することに私は慣れきっていた。しかし、今回のヴァシュロンは違った。現在、オーヴァーシーズが同社の主力ラインであり、2025年のQPの新作もそこに集中したとはいえ、彼らはそれだけで満足しなかったのだ。トラディショナル・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダーに3つの新バリエーションを加えることで、ヴァシュロンはあるひとつのモデルや特定のサイズだけに頼るブランドではないことを証明した。

Vacheron Constantin Traditionnelle Perpetual Calendar Ultra-Thin

 ここでは特に革命的なことが起きているわけではないが、名作であるために必ずしも革命は必要ない。ヴァシュロン・コンスタンタンは、1984年以来(今“31年前”と書きそうになり、自分の年齢を突きつけられた気分だが)、40年以上にわたって同社のQPを支えてきた伝説的なムーブメント(Cal.1120 QP)を復活させた。これほど長期間にわたる採用は驚異的だ。さらに驚くべきは、このムーブメントのベースとなったJLC製のCal.920が、当時世界最薄の自動巻きキャリバーとして発表されたのが1967年だということだ。JLC製のCal.920をベースにしたQPムーブメントについては、これまで(オーデマ ピゲのCal.2120/2800を含め)HODINKEEで詳細に解説してきたため、ここでは深く立ち入らない。

 ヴァシュロンが選んだのは既存の技術を再発明することではなく、サイズのルーツに立ち返ることだった。多くのブランドが大型のQPを投入する現代において、直径36.5mm×厚さ8.43mmというサイズを選択したのだ。旧型のRef.43031をそのまま復刻するのではなく、幅広で直線的なラグとフラットなベゼルを持つトラディショナルのケース形状を維持している。

Vacheron Constantin Traditionnelle Perpetual Calendar Ultra-Thin

 単に“パトリモニースタイル”を小型化しただけのQPではなく、バランスを整えるための細かな意匠が随所に追加されている。例えば、パトリモニーではやや空虚で平坦に感じられたダイヤルは(パテック フィリップ Ref.3940のような段差はないものの)、確かな奥行きを感じさせるようになった。ムーンフェイズの縁取り、インダイヤルの繊細なスネイル仕上げ、そして3面にファセット加工を施した長いインデックスが、ダイヤルに優れたバランスをもたらしている。オリジナルのRef.43031では6時位置にドットインデックスがひとつあるだけだったが、新作のダイヤルはより密度が高まり、完成度が上がった。オフホワイトのオパーリンカラーも、このモデルには実によくなじんでいる。

 12時位置のインダイヤルについては、Introducing記事のコメント欄でも議論を呼んだ。(小さなダイヤルを4年と48カ月に分割しているため)情報が多すぎる、または読み取るのが難しいなどの意見が出るのも理解できる。しかし、12カ月表示のインダイヤルを12時位置に配置したほかのブランドのヴィンテージモデルはどこか物足りなく、バランスが悪く感じられるのも事実だ。それに私自身、月の表示を確認するのは月の初めに1、2回程度であり、実用上の懸念はほとんどないと考えている。

Vacheron Constantin Traditionnelle Perpetual Calendar Ultra-Thin
Vacheron Constantin Traditionnelle Perpetual Calendar Ultra-Thin
Vacheron Constantin Traditionnelle Perpetual Calendar Ultra-Thin

 最大の魅力はその薄さだ。18Kホワイトゴールド(WG)またはPGのケース厚はわずか8.43mm。ヴィンテージモデルよりは厚みがあるが、36.5mmという直径に対して、現代における理想的なバランスと言える(ヴィンテージのクロノグラフの多くはこれよりずっと厚かった)。ラグの形状は(直線的で実寸より大きく見えたオリジナルに比べて)わずかに下向きに傾斜している。

 ケース中央よりやや下の位置に、ラグまで貫かれたインカットの傾斜ラインが施されており、より立体感のあるフォルムとなっている点にも注目して欲しい。ダイヤモンドをあしらったモデルには、ベゼルとラグに計76個、約1カラットものブリリアントカット・ダイヤモンドがセットされ、リューズには0.14カラットのラウンドカット・ダイヤモンドが1個配されている。これらのモデルはすべて30m防水を確保しているが、見てのとおり、ムーブメントの調整には依然としてケースに埋め込まれた調整ボタンを使用する。

Vacheron Constantin Traditionnelle Perpetual Calendar Ultra-Thin
Vacheron Constantin Traditionnelle Perpetual Calendar Ultra-Thin
Vacheron Constantin Traditionnelle Perpetual Calendar Ultra-Thin

 サイズ以外で最も議論の的となるのは、ムーブメントそのものの設計がきわめて古いことだろう。パテック フィリップのRef.5316/50Pのムーブメントについても述べたが、“新しいほうが優れている”という考え方は、捨ててもいいかもしれない。特にここ5~10年の新作ムーブメントのなかには、信頼性に欠けるものも散見されたからだ。それに対し、Cal.1120 QPは正反対である。“ワークホース(主力製品)”という使い古された言葉がこれほど似合うムーブメントは(JLC製のCal.920ベースの兄弟機をおいて)ほかにない。

Vacheron Constantin Traditionnelle Perpetual Calendar Ultra-Thin

 現在、ヴァシュロンはこのムーブメントを自社で製造しており、マルタ十字を象った22Kゴールド製のスケルトンローターや仕上げの質など、審美面でも進化させている。ジュネーブ・シールを取得したこのCal.1120 QPは、自社製ムーブメントとしてきわめて美しい。ローターがほぼ外周部分に配置される構造(巻き上げは中心部で行うが)のため、輪列がいかにコンパクトであるかも視覚的に楽しめる。唯一の欠点は、超薄型設計ゆえにパワーリザーブが約40時間と短いことだ。ウォッチワインダーの用意は必須と言える。

Vacheron Constantin Traditionnelle Perpetual Calendar Ultra-Thin

 また、ヴァシュロンが宝石をあしらったモデルにおいて、装飾を控えめにしたことも評価したい。これは、宝石をあしらったオーヴァーシーズなど、最近の(広く公表されていない)オフカタログモデルのトレンドに沿ったものと言える。しかしより広い視点で見れば、宝石をセットした時計のすべてを女性的な仕上がりにする必要はないという事実を物語っている。ブリリアントカット・ダイヤモンドは確かにその層(女性読者)に響くだろうが、価格の上昇がわずか約70万円程度に抑えられている点は十分に価値があると感じられる。なお、PGおよびWGの通常モデルの価格は、いずれも1557万6000円(税込)となっている。

Vacheron QP Ultra-Thin
Vacheron QP Ultra-Thin

市場の競合モデルを比較する
パテック フィリップ Ref.5327R

 ヴァシュロンの比較対象として、パテック フィリップは避けて通れない。現行モデルで比較するなら、Ref.3940の後継機であるRef.5327Rが適当だろう。サイズは直径39mm×厚さ9.71mmと、ヴァシュロンよりもひと回り大きく厚い。価格も13万2018ドル(日本円で約1750万円)と高価だ。ヴァシュロンのムーブメントが1984年設計であることを“古い”と批判する声もあるが、Ref.5327Rに搭載されている自動巻きのCal.240 Qも1985年に登場したRef.3940から続くものであり、パワーリザーブは48時間だ。

Patek 5327R

2016年の発表当時に掲載したパテック フィリップ Ref.5327R。

 しかしダブルスタンダードなことに、パテックのこの古さはしばしば“天才の証明”として見過ごされる。視覚的にRef.5327Rはインダイヤルが中央に寄っており、ややバランスを欠いているように感じられる(パテックは大きなブレゲ数字でバランスを取ろうとしているが)。とはいえ、ラッカー仕上げを施したダイヤルはきわめて美しい。もしパテックがこのムーブメントを36mmのケースに再び収めてくれたら、それはこの10年で最高の1本になるかもしれない。

ジャガー・ルクルト マスター・ウルトラスリム・パーペチュアルカレンダー Ref.Q1142510
MUT JLC

2013年の発表当時(そして現在も継続販売中)のマスター・ウルトラスリム・パーペチュアルカレンダー。

  もしヴァシュロンやパテックが予算的に厳しい場合、多くの人がジャガー・ルクルトのマスター・ウルトラスリム・パーペチュアルカレンダーに目を向けるだろう。このモデルは(PG製であっても)677万6000円(税込)と、ヴァシュロンの半額以下で手に入る。サイズは直径39mm×厚さ9.2mmと、こちらもひと回り大きい。搭載されている自動巻きのCal.868は、70時間のパワーリザーブと毎時2万8800振動を誇り、これらはいずれも現代の選択肢のなかでは最高のスペックだ。しかし年表示やセンターセコンドを備えているため、ドレスウォッチとしての純度は最も低く、(2013年発表)市場では最も息の長い現行モデルでもある(※追記: 鋭い読者からの指摘どおり、このムーブメントは2024年にパワーリザーブが38時間から70時間へとアップデートされており、もはや“最も古いムーブメント”ではない。私の誤りである)。ジャガー・ルクルトはこのモデルを、おそらくヴァシュロンとパテックの合計よりも多く製造し販売しているはずだ。677万6000円という価格は決して安くはないが、依然としてきわめて高いバリューを維持していると言える。

ヴィンテージのヴァシュロン―Ref.43031とRef.43032
Vacheron QP

希少な“SWISS”のみのダイヤルを備えるヴァシュロン・コンスタンタン Ref.43031。Photo courtesy Watch Brothers London

 今回の新作に対する最大のライバルは、身内にいた。ヴァシュロンは時計愛好家が求めていたヴィンテージサイズのヴィンテージ風QPをまさに形にしたのだが、私のヴィンテージコレクター仲間たちの最初の反応は「そういえば、昔のモデルが好きだった。中古を探してみよう」というものだった。直径36mm×厚さ8mm以下のRef.43031は、新作と本質的に同じムーブメント(1984年に発表されたCal.1120 QP)を搭載していながら、きわめて魅力的な選択肢だ。控えめでモダンなダイヤルデザインやラピスラズリを用いたムーンフェイズは、多くのファンの心を掴むだろう。しかし、新型の4300Tに対する最大の障壁はその価格だ。約2万5000ドル(日本円で約390万円)前後で手に入るRef.43031は、最新モデルの4分の1の予算で済んでしまうのである。

Movement

ヴァシュロン Ref.43032のスケルトンムーブメント。Photo by Tony Traina

 標準的な18KYG以外にも18KWG製であったり、ダイヤモンドやギヨシェ装飾をあしらったダイヤルなど、バリエーションは豊富だ。しかし、多くのコレクターにとっての聖杯はRef.43032だろう。同じムーブメントを用いた驚くほど視認性の高いスケルトンモデルだ。これらは新作の4300Tと同等の約10万ドル(日本円で約1500万円)で取引されており、きわめて強力な選択肢となる。これらの詳細については、Watch Brothers Londonの調査レポートを強くおすすめする。これらはまた、ほかの“世界三大ブランド(Holy Trinity)”の同時代のモデルよりもはるかに希少だ(推定製造数はわずか2300本にすぎない)。

オーデマ ピゲ Ref.25657

 ヴィンテージコレクター(あるいは少しでもヴィンテージに興味がある人)なら、たとえほんの一瞬でも、オーデマ ピゲのRef.25657の購入を検討したことがあるのではないだろうか。Cal.1120 QPを生んだJLC製のCal.920ベースの設計は、同ブランドのCal.2120/2800も誕生させている。このムーブメントはCal.1120 QPが備えるようなうるう年表示はなく、月表示も(ヴァシュロンのように48カ月ではなく)12カ月のみに簡素化されているが、40時間のパワーリザーブを備えている。

Quantième Perpétuel 'Tuscan' dial, 25657

オーデマ ピゲの“タスカン” ダイヤルを備えたオーデマ・ピゲ カンティエーム パーペチュアル Ref.25657PT。Photo courtesy A Collected Man

 ケースは当時のヴァシュロンに近く、ステップベゼルを備え、直径は36mmで厚さはわずか7.5mm(すべての選択肢のなかで最薄を誇る)。しかし先細りのラグはヴァシュロンよりも華奢に感じられ、フォントが少し力強すぎる印象もある。ロゴの配置もヴァシュロンと比較すると少し高すぎるように感じられるし(6時位置のバーインデックスは好みだが)、審美的な選択肢としては私の最優先ではない。しかしイエローゴールド(18KYG)モデルなら2万ドル(日本円で約310万円)で(希少なWG仕様でも5万5000ドル/日本円で約860万円)いつでも手に入ることを考えると、信じられないほど魅力的だ。また、8万5000ドル(日本円で約1300万円)出せば、スケルトン仕様も入手できる。率直に言って、深く掘り下げて興味深いもの(前述のタスカンダイヤルなど)を探したり、幅広いコレクションを築こうと思えば、何十ものバリエーションが存在する。

パテック フィリップ Ref.3940
Patek 3940J

パテック フィリップ Ref.3940の新たな基準となる個体。Photo courtesy Phillips

 そして、避けては通れない大きな存在がパテック フィリップのRef.3940だ。このモデルは長年、コレクター向けのヴィンテージQPにおけるベンチマークとなってきた。先に述べたように、そのムーブメントは今なお現役で使われている。2023年に友人がシャンパンダイヤルを備えた18KYG製ベイヤー エディションを約32万5000ドル(当時のレートで約4500万円)で購入した際、私は“Ref.3940のピーク”に達したと思ったものだ。しかし2025年の後半、フィリップスのオークションでドレダイヤルを備えた18KYGモデルが、記録的な64万7700ドル(当時のレートで約1億円)で落札されるのを目の当たりにした。1980年代を代表する、コレクターにとっての優良銘柄であるこのQPは、今まさに新時代を迎えている。

https://www.christies.com/lot/lot-6557848

昨年後半、クリスティーズで約10万ドル(当時のレートで約1500万円)弱で落札されたファーストシリーズのRef.3940。Photo courtesy Christie's

 直径36mm×厚さ約8.5mmというサイズは最薄ではないものの、手首でのバランスがきわめて優れている。マイクロローターを採用した自動巻きムーブメントはコンパクトで効率的だ。しかし、Ref.3940をこれほどまでに特別な存在にしているのは、その視覚的なパッケージの完成度にある。ダイヤルのバランス、インダイヤルの段差構造、やや大きめのムーンフェイズと日付表示が凝縮されたその姿は、着け心地と同じくらい素晴らしい。価格は私が注目し始めた5年前と比べても大幅に上昇している。しかし現在、ケース素材やシリーズにもよるが、コンディションのよい標準的なRef.3940であれば一般的なエントリー価格帯として6万ドルから10万ドル(日本円で約940万~1570万円)ほどが必要になるだろう。


最後に

 ヴァシュロン・コンスタンタンから、ヴィンテージから着想を得たRef.4300Tを復活させると聞いたときはきわめて驚いた。そして正直に言えば、その価格を見たときは少し信じがたい気持ちになった(特に、私はヴィンテージ市場を眺めることに多くの時間を費やしているからだ)。しかし念頭に置いておくべきは、金価格が(この記事の執筆時点で)年初来73.33%も上昇していること、そしてゴールドブレスレット仕様のオーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー(Ref.4300V)なら、さらに3万ドル(日本円で約470万円)ほど高くなるということだ。わずか2年前の類似モデルに対する我々の社内参考価格でさえ、現在の市場とはかけ離れている。ブランドを責めたくなる気持ちはわかるが、正直に言って多くの要因が絡み合っているのだ。ヴァシュロンが8万ドルから8万5000ドル(日本円で約1250万〜1330万円)のあいだで出してくれればよかったとは思うが、広い文脈を無視して直感的な反応だけで判断してしまえば、せっかくの素晴らしい製品を見逃してしまうリスクがある。

Vacheron Constantin Traditionnelle Perpetual Calendar Ultra-Thin

 新しいRef.4300Tは、市場全体や大多数の時計愛好家が熱望していたような時計ではないかもしれないが、幅広い顧客層からのフィードバックに大手ブランドが耳を傾けていることを示す素晴らしい好例だ。新しいトラディショナル・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダーは、ヴァシュロン・コンスタンタンが自社の歴史とデザインの地力を誇示したものであり、彼らが決して一発屋などではなく、ラインナップの隙間を埋めるような素晴らしい新作を投入することで、さらに魅力を広げようとしていることを証明している。

 ヴァシュロン・コンスタンタン Ref.4300Tの詳細は、ブランド公式サイトへ。