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Hands-On 2025年の新作 オメガ シーマスター プラネットオーシャンを実機レビュー

2025年に再設計されたオメガのモダンなダイバーズウォッチ、その第4世代を詳しく見ていこう。


これは新しいプラネットオーシャンであり、これまでのモデルとは異なる存在だ。数週間前、オメガは(米国におけるブランド拠点でもある)マイアミの陽光あふれる海岸に、時計メディアの関係者を集め、同社のモダンなダイバーズウォッチ、シーマスター プラネットオーシャンの技術的には第4世代にあたる新作を発表した。デザインの観点から見ると、この新しいモデルは第4世代というよりもむしろ第2世代に近い印象を与える。というのも、これまでの3世代は初代モデルの核となるデザインを色濃く継承してきたのに対し、2025年の新作はプラネットオーシャンのデザイン言語に対する、まったく新しい解釈を提示しているからだ。

Omega planet ocean 2025

 本作はよりシャープで、まさに攻撃的とも言えるほどモダンな印象をまとい、そして新旧問わず、オメガのさまざまなダイバーズウォッチから着想を得ている。ラインナップの市場における訴求力を広げることに明確に焦点を当てた結果、新しいプラネットオーシャンはセラミック製ベゼルやポリッシュ仕上げを施したセンターリンクから、その価格設定に至るまで、これまで以上にラグジュアリーな存在となった。発表から数日のあいだに、このテクノロジー志向のダイバーズウォッチの進化をめぐって時計界のインターネット上では意見が二分されている。そこで本稿ではこの新たなモデルの進化だけでなく、プラネットオーシャンという存在がオメガ全体にとって何を意味するのかについても改めて詳しく考えてみたい。

過去20年間で多くのことが変わった

 2005年に初めて登場したプラネットオーシャンは、長年愛され、デザインと仕様がほぼ確立されていたシーマスター 300Mに対する上位モデルとして位置づけられていた。後者は1990年代半ばにピアース・ブロスナン(Pierce Brosnan)時代のジェームズ・ボンドによって一気に知名度を高め、オメガを代表する定番モデルとなっていたが、新たに登場したプラネットオーシャンは、より高いスペックを備えていた。より高い防水性能(600m)、よりモダンなデザイン、そしてコーアクシャル脱進機を用いたオメガの取り組みの初期の例(“自社製”以前。これらはETAベースの2500ムーブメント)でもあった。

bond

 この記事を読んでいる多くの人は、映画『カジノ・ロワイヤル』(2006年、マーティン・キャンベル/Martin Campbell監督)の冒頭にある、忘れがたいパルクールによる追跡シーンで、初めてプラネットオーシャンを目にした瞬間を正確に思い出せるかもしれない。それは新たなボンドのデビューであり、同時に彼の手首に新しい時計が登場した瞬間でもあった(もっとも、作中後半ではシーマスター ダイバー 300Mに付け替えているが、これはディナージャケットのせいだとしておこう)。価格についてはのちほど触れるが、当時プラネットオーシャンは、兄弟モデルであるシーマスターに比べて、かなり大幅な価格上昇を伴う存在だった。

 (当時としては新しかった)ラグジュアリー志向のツールダイバーという潮流において、さらなる1歩を示す存在だったプラネットオーシャンはオメガにとってかなり硬派でありながら、同時に日常的に着用できるデザインだった。2005年当時、ウルトラディープはまだ存在していなかった。また、当時のシードゥエラーをベースとしたロレックス ディープシー Ref.116660の登場はその3年後であり、ロレックスがスティール(SS)製のサブマリーナーの現代的解釈である2012年のRef.114060を発表するのはさらに7年も先のことだった。ダイバーズウォッチの世界において、この20年は著しい進化の時代を画している。

 人によっては(僕自身も含めて)、2005年はそれほど昔のことには感じられないかもしれない。しかし2005年は、単に20年前というだけでなく、YouTubeとGoogle マップがローンチされた年であり、コカ・コーラ ゼロや『ギター ヒーロー』、『ジ・オフィス』(米国版)が登場し、さらに『スター・ウォーズ』プリクエル三部作の最終章『シスの復讐』が公開された年でもあった。

Omega Planet Ocean 2025

第1世代のプラネットオーシャンと、2025年に新たに登場した第4世代。

 2005年は、時計にとっても特筆すべき年だった。この年、ロレックスは初めてセラクロム製のベゼル(GMTマスター II Ref.116718LN)を採用し、またマクシミリアン・ブッサー(Max Büsser)氏がMB&Fを創設した年でもある。インディペンデントブランドが台頭し始め、TimezoneやWatchUSeekといったフォーラムが世界中の時計愛好家を結びつけていた一方で、Instagramが登場するのはまだ5年も先のことだった。Flickrの仲間のみんなに敬意を表したい。

新しいプラネットオーシャン

 以上はあくまで背景説明を示すために述べたにすぎない。というのも、2005年は影響力の大きな年であり、初代プラネットオーシャンと、本稿で取り上げる2025年の第4世代モデルとのあいだに横たわる20年のあいだに、多くの変化があったからだ。大まかに言えば、プラネットオーシャンの4つの世代は主としてムーブメントを軸に定義されており、第1世代はコーアクシャルムーブメントであるCal.2500を搭載して2011年まで続き、第2世代は自社製コーアクシャルムーブメント、Cal.8500系によって2016年まで展開された。続く第3世代では、Cal.8900系のムーブメント(METAS マスタークロノメーター)を中心に、数々のアップデートが加えられた。そして今回登場した第4世代は、プラネットオーシャンを全面的に再設計したモデルとなっている。

Omega Planet Ocean 2025
Omega Planet Ocean 2025
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 これはオメガのより幅広いダイバーズウォッチのデザインを参照した新しい時計である。ダイヤルと針はおおむね従来の系譜を踏襲している一方で、ケース形状やプロファイル、そしてベゼルは、同ブランドのよりエクストリームなモデル群を参照した進化を示している。そこにはシーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープの要素がはっきりと感じられ、ベゼルにはプロプロフらしい印象がある。

 マークによる新作プラネット オーシャンの優れたレビューを見逃していた場合に備えて、ここで仕様を簡潔に整理しておこう。新モデルは3つのカラーバリエーションで展開され、(マイクロアジャストとダイバーエクステンション機構を備えた)SS製ブレスレット、もしくはエンドリンクとフォールディングクラスプを備えた一体型ラバーストラップから選択できる。アクセントカラーはオレンジまたはブルーで、いずれの仕様もケースは直径42mm×厚さ13.8mm、ラグ・トゥ・ラグ47.5mmのSS製で、600m防水を備え、オメガのマスター クロノメーター Cal.8912(60時間のパワーリザーブとSi14シリコン製ヒゲゼンマイを備えた、自動巻きのコーアクシャルムーブメント)を搭載している。

Omega Planet Ocean 2025

 この新モデルは美観において大きな変化を示すものであり、オメガは従来のプラネットオーシャンを段階的に廃止し、この新しいデザインへと移行していく予定だ。外観上の変化に加えて注目すべき点として、発表時点ではこの新世代が日付表示なしの仕様でのみ展開されていること、そして1990年代以降シーマスターの多くに採用されてきたヘリウムエスケープバルブを省いていることが挙げられる(なお、下位仕様のシーマスター 300Mには引き続き搭載されている)。

 Ref.2254のようなネオヴィンテージモデルや、ほぼすべてのプロプロフ、そしてプラネットオーシャンの初期モデルを含むオメガのダイバーズウォッチのファンである僕にとって、この新作を実際に目にする機会を得られたことは大きな喜びだった。日付表示がない点については、日付を求める人は将来的なバリエーションを待てばよい、という示唆に過ぎないだろう(なにしろオメガなのだから)。また、ヘリウムエスケープバルブがないことは実用面では何の意味も持たない。多くのブランドはそのバルブの目的すら説明できておらず、飽和潜水を行うダイバーでない限り、そもそも必要のない機能なのだから。

Omega Planet Ocean 2025

 とはいえ、クールさゆえ、あるいはヘリウムエスケープバルブがオメガの象徴的要素となっているからという理由で、それを好んでいた人がいるのであれば、その見方も理解できる。そもそもダイバーズウォッチ自体を本当に必要としている人はほとんどいないのだ。そうした前提はさておき、上位仕様のモデルからきわめて技術的な要素を取り除きながら、序列の下に位置づけられるモデルにはその要素を残しているという点には、違和感を覚えずにはいられない。もしかすると、シーマスターのプロフェッショナルダイバーズウォッチが今後登場することを示唆する兆しかもしれない。

 話を戻すと、新しいプラネットオーシャンを実際に目にしたとき、僕はそれが確かにオメガらしく感じられる一方で、これまでのプラネットオーシャンそのものではないと強く思った。第1印象としては、ウルトラディープをより幅広く着用できるように解釈したモデルのように感じられた点だ。造形は分厚いが、プロポーションはきわめて良好で、ラバーストラップもブレスレットも(サイズ調整後は)快適だった。重量の点では明らかにラバーが好みだが、エンドリンクが一体化している構造や、ブレスレット風のラバーデザインについてはまだ完全にはなじめていない。

 手首に着けてみると、旧世代のプラネットオーシャンと比べ、新作はツールウォッチ的な意図の一部を手放し、よりラグジュアリーなポリッシュ面の使い方、複雑な角度構成、そしてセラミックベゼルがもたらす広くガラスのような表情を獲得している(もっとも、セラミック製のベゼルインサートを採用したプラネットオーシャンはこれが初めてではない)。過去20年に登場した多くの時計、オメガの最有力な競合を含めて言えることだが、その進化はより多くのポリッシュ、より多くのセラミック、そしてより角張ったシルエットへと向かってきた。ロレックスでそれを見てきたし、いまやプラネットオーシャンも同様だ。思い出して欲しいが、プラネットオーシャンが初めて登場した当時、日付表示なしのサブマリーナーの中核モデルは、アルミ製のベゼルを備えたRef.14060Mだったのである。

 そして最新モデルとなったプラネットオーシャンはかなり光沢を帯びている。竪琴ラグにはポリッシュ仕上げのファセットが施され、ブレスレットのセンターリンクには完璧なポリッシュ仕上げが施されている。時計の着け心地はきわめて良好でありながら、とても豪華に感じられる。

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 ベゼルは幅広く、明らかにプロプロフから着想を得たものだと感じられる。これは新しいプラネットオーシャンのなかでも、おそらく僕のお気に入りの要素である。オメガのほかのモデルとは違って明確な個性を備え、シーマスター 300Mともきれいに差別化されたキャラクターとなっていると思う。夜光はピップ部分のみに充填されているが(とくにこの価格帯を考えると、ここは惜しい点だと感じる)、操作感は軽快でかなりクリック感が強く、120クリックの逆回転防止ベゼルを備えている。ベゼルインサートのフェイスを包み込むかのような強いグリップも相まって、操作性は良好だ。これはかなり個人的なこだわりの領域ではあるが、この価格であれば60クリックを採用して欲しかった。僕は常々、そのほうがよりプレミアムな体験だと感じており、ガタつきや滑りのない動作を実現するのも実はそのほうが難しいからだ。

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 ダイヤルは、このデザイン全体のなかで最もプラネットオーシャンらしさを色濃く残す要素であり、好ましいフラットなブラックのベースに、明るくポリッシュ仕上げが施されたメタル製のアプライドインデックス、そして立体的なブランドロゴが配されている。オレンジモデルでは、12・3・6・9時位置のアラビア数字もオレンジで彩られており、これは過去のプラネットオーシャンから受け継がれてきた意匠である。

 3つのカラーバリエーションのなかでは、僕は迷わずブラックを選ぶだろう。ストラップはラバーを選ぶ可能性が高い。というのも、ブレスレットはやや光沢が強すぎると感じたからだ。ただしその一方で、ラバーも実際には着けないかもしれない。というのも、いずれの純正装着オプションでも用いられている一体型のエンドリンクが、時計の見た目にかなり大きな影響を与えているからだ。ケースの角張ったデザインは、このエンドリンクと、2本のラグのあいだに描かれる内向きのカーブによって強調されている(下に掲載した着用写真や夜光写真を見ればわかるだろう)。

Omega Planet Ocean 2025
Omega Planet Ocean 2025
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 僕の目には、この単一のデザインの選択が、ケースの認識される形状と視覚的なバランスに大きな影響を与えているように思われる。これはオメガにとって標準的規範からかなり逸脱しており、ブレスレットに一体化された外観を与えているため、意図的であることは間違いないだろう。

 はっきりさせておくと、僕はそれが悪い選択だと言っているわけではない。ブレスレットにはきわめてよく合っており、全体的な美学を支えるのに役立っていると思う。しかし僕の友人であるFratello Watchesのナチョ・コンデ・ガルソン(Nacho Conde Garzón)氏によるこれらの写真を見て、新しいプラネットオーシャンが非OEMのオプションでどのように見えるかのアイデアを得て欲しい。

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オメガ以外の2種類のストラップを装着した、新しいプラネット オーシャンの比較写真。ぜひ@nachocondeもフォローして欲しい。

 ガルソン氏はブレスレットを外す機会を得て、新しいプラネットオーシャンの21mmラグのあいだにNATOストラップと、スティールメッシュブレスレットの両方を取り付けた。どちらも素晴らしく見え、僕の目にはシルエットの点でよりオメガらしく感じられる。僕は純正のブレスレットがあまり好きではないタイプで、間違いなくあのメッシュが好きだ。ガルソン氏、見せてくれてありがとう。

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 エンドリンクの形状にかかわらず、ブレスレットであれラバーであれ、プラネットオーシャンはきわめて装着感がよいと感じた。僕の手首周りは約7インチ(約17.78cm)で、ラグ・トゥ・ラグが短く、また(600m防水を備えるツール志向のダイバーズウォッチとしては)厚すぎないプロファイルである点を高く評価している。数時間にわたって実際に着用し、写真を撮る時間を経て、これまでのプラネットオーシャンから大きく変化したモデルであるにもかかわらず、この新しいモデルをとても気に入った。

Omega Planet Ocean 2025
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 そう感じた理由の少なくとも一部は、ここ10年ほどのあいだに、僕自身がプラネットオーシャンへの愛着を徐々に失っていたからだろう。デザインは大型化し、かなり分厚くなり、セラミックなどの先進素材を重視するあまり、価格帯も明確に(そして完全に)5桁ドル(数100万円)へと向かっていった。そうした経緯を踏まえると、このコレクションにリセットが必要だったというオメガの見解には同意できる。そして、たとえこの新しい方向性を心から歓迎できなかったとしても、装着しやすいサイズ感、優れたスペック、そして堅実なムーブメントを備えている点は評価に値する。新しいプラネットオーシャンとしては比較的オーソドックスな出発点であり、オメガがこのモデルをより幅広い層に届けたいと考えていることを裏づけているように思える。

 僕は、この4年間にわたって開発が進められてきた新しいプラネットオーシャンの狙いについて、オメガのCEOであるレイナルド・エシュリマン(Raynald Aeschlimann)氏に尋ねた。すると彼は次のように明確に語った。「もし日常的に着けられる時計として、もう少しライフスタイル寄りの方向に踏み込もうとするなら、厚みを考えなければなりませんでした。それが今回こうした判断をした理由です。そして結果を見ればわかるように、これは新しい時計であり、よりはるかに多くの人々に訴求する時計になっていると思います」。

Omega Planet Ocean 2025
Omega Planet Ocean 2025
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価格

 そこで価格の話になるのだが、僕は最初、その数字を目にして少なからず衝撃を受けた。新しいプラネットオーシャンの価格は、装着仕様やカラーリングによって122万1000円から134万2000円に設定されているからだ(オレンジのアクセントを備えたモデルは、ブルーやブラック仕様よりもやや高価になる)。どう捉えても決して安い金額ではなく、とくに2005年当時にブレスレット仕様の初代プラネットオーシャンを3400ドル(当時のレートで約37万4000円)で購入した経験がある人(これは現在の価値に換算すると約5600ドル/日本円で約88万円に相当する)にとっては、なおさらだろう。とはいえ2025年の価格を2005年のそれと単純に比較すること自体、時計に限らず、あまり意味のあることではない。

 その増加の一部はインフレの漸進的な忍び寄りによるものだが、別の部分はオメガの時計界の階層における上位市場への断固とした移行、および1万ドル(日本円で約150万円)以下のカテゴリーにおける競争の激化によって強調されている。

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 思い出して欲しいのだが、2005年当時のチューダーやロンジンのラインナップは現在とは大きく異なっており、チューダーにはブラックベイやペラゴスのような熱量はなく、ロンジンにもスピリットコレクションやレジェンドダイバーといった存在はまだなかった。

 2005〜2006年当時、オメガ シーマスター 300Mの価格はおよそ2150ドル(当時のレートで約23万6900円)で、サブマリーナーは仕様によって4500〜5500ドル(当時のレートで約49万5000~60万6000円)程度だった。3400ドル(当時のレートで約37万4000円)という価格設定のプラネットオーシャンは、オメガのスタンダードなシーマスターよりも明確に高価な位置づけにあった。2016年になると、プラネットオーシャン(43.5mmのSS製、ストラップ仕様)は5400スイスフラン(当時のレートで約59万4000円)となっている。これを、コーアクシャルムーブメントを搭載したシーマスター 300Mの約4400ドル(当時のレートで約48万4000円)、ロレックス サブマリーナーの7500〜8550ドル(当時のレートで約82万5000~94万円。日付あり/なしによる)といったおおよその価格と比べてみて欲しい。

 現代では、シーマスター300Mは94万6000円から112万2000円(ブレスレット付きのネクトンの場合)、スピードマスター ムーンウォッチはブレスレットで111万1000円から、ウルトラディープはブレスレットで201万3000円、そしてプロプロフはラバーストラップで226万6000円だ。そしてロレックスは? さて、現行世代の日付表示なしのサブマリーナーは140万300円だ。

Omega planet ocean 2025

左から順に、オリジナルの42mmのSS製プラネットオーシャン(Ref.2201.50)、新世代/現行のSS製プラネットオーシャン(Ref.217.30.42.21.01.001)、ロレックス サブマリーナー Ref.14060M、そして現行のサブマリーナー Ref.124060。

 僕は、これが約1万ドル(日本円で約150万円)のプラネットオーシャンにたどり着いた方法だと思う。オメガは過去20年間で、単純に価格帯を上方に押し上げたのだ。

 とはいえ、価格を紙面上の数字だけで捉えることはできない。この20年のあいだに、オメガは時計の品質と技術に対して本格的な投資を行ってきた。2005年は、同社がETA社への依存をほぼ終えた時期にあたり、コーアクシャル脱進機を自社内で段階的に手がけていく流れが、Cal.8000系のムーブメントへの移行を後押しした。その結果、精度の向上、耐磁性能の強化、そしてMETAS マスタークロノメーター規格の達成につながっている。確かに価格は上がったが、そのぶん時計としての中身も進化しているのだ。

ボンドを忘れないで

 目の前のこの時計に話を戻すと、この進化は本質的に、プラネットオーシャンをロレックス サブマリーナーに対するオメガの中核的な競合モデルとして明確に位置づけるための動きだと僕は考えている。より光沢があり、より角張り、そしてよりラグジュアリーなプロダクトになった。その狙いは、1万ドル(日本円で約150万円)弱から始まるきわめて明確な価格帯におけるマス市場への訴求だ。ブレスレット仕様で並べて比べると、ブラックのプラネットオーシャンはサブマリーナーより300ドル(日本円で約4万7000円)安い。この差が偶然だとは思えない。

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 戦略として見れば、これは理にかなっている。とくにプラネット オーシャンが初めて登場してから約20年のあいだに、これほど多くの変化があったことを考えればなおさらだ。加えて、SS製42mmのブランパン フィフティ ファゾムスが現在では268万4000円(税込)の価格帯にあることを思えば、依然として入手がかなり難しい1本に対して、確かな対抗馬を用意しない理由はないだろう。

 これは、特定の時計マニア層に深く愛されてきたモデルに対するリセットであり、その変化はオメガが好きな人にとっては戸惑いを覚えるものかもしれない。しかしブランドとして、そして現代的な文脈において全体的に見るならば、新しいプラネットオーシャンは、注目度の高い価格帯におけるきわめて力強いプロダクトに感じられる。さらに言えば、今後オメガがサイズ、素材、そして複雑機構へと展開していくための安定した土台でもあり、そしておそらくは、次のジェームズ・ボンドが腕にするオメガになる可能性もある。1995年にはピアース・ブロスナンとシーマスター 300Mでそれが成功し、2006年にはダニエル・クレイグ(Daniel Craig)とプラネットオーシャンで再び成功した。次のボンドが誰になるのかはいまだ謎だが、彼の手元にある時計についてはすでによいヒントが示されているのかもしれない。