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Photos by TanTan Wang
数週間前、私はタグ・ホイヤーとともにマイアミへ飛び、実物を見るのを心待ちにしていたある時計のローンチを祝った。それはタグ・ホイヤーと“原宿のゴッドファーザー”として知られ、フラグメントデザインのクリエイターであり、そして筋金入りの時計愛好家でもある藤原ヒロシ氏との、長年にわたるコラボレーションの第3弾である。
マイアミで藤原氏に会ったとき、彼はこの新しいコラボレーションモデルをブラックのNATOストラップで着けていた。
500本限定の新作はレンダリング画像の時点で非常に期待できる出来に見えていたが、どんな時計でも実物を手にして見ることに勝るものはない。とりわけ、本人と腰を据えて新しいデザインの詳細を語り合えるとなればなおさらだ。なおネタバレすると、私は結局1本買ってしまったので、ここ数週間それを着けて過ごしたうえでの所感もある。
タグ・ホイヤーにとってフラグメントデザインとの最初のコラボレーションは2018年。カレラ 2447 NTへのオマージュという形だった。フラグメントデザインのビジュアルアイデンティティと、60年代のクラシックなヴィンテージデザインを驚くほど忠実に現代的に復刻した38mmのモデルに掛け合わせたのである。続く2020年にはその後継として、鮮やかな赤のアクセントと厚みのある44mmケースを備えた、オータヴィアをベースにしたかなり大胆で好みが分かれる再解釈モデルが登場した。そして2025年、藤原氏はタグ・ホイヤーの現代的なグラスボックスのリデザインに自身の解釈を与えている。
ケースは第1弾に同じく、極めて日常使いしやすいものに戻った。直径39mm、厚さ13.9mmという、ちょうどいいところを突いている。ケースの全長が44.8mmであることもあり、このプロポーションなら手首が細い人にもマッチすることだろう。加えて、驚くほどよく作り込まれた7連ブレスレットも効いている。エンドリンクは余計な誇張を加えることなく、すっと下に落ちる。ブレスレットには、このモデルならではの小さな視覚的な仕掛けもある。各センターリンクにはブラックのPVD処理が施され、独特の見栄えとコントラストを生み出しているのだ。レンダリング画像では、私はこの小さな仕掛けが気に入らなかった。とりわけPVDは摩耗しやすい傾向があるだけに、なおさらである。
だが自分の判断が間違っていたことは認めよう。実物のブレスレットの黒は、私が想像していたよりも控えめで、同時にずっとおもしろい。こうしたディテールこそが、白黒の時計にもうひとつの個性を与え、最終的な仕上がりを大きく左右する。コーティングがどれほど持つかは今のところ謎のままだが、私の持つ個体で注意深く見ていくつもりだ。
ピン&カラー式のブレスレット自体は嫌いではない。だが、ほぼ1万ドルの時計でネジではなくこの方式が採用されているのは、少し腑に落ちない。まあ私にとっては致命的ではない。ブレスレットそのものは薄く、それでいてよくできているからだ。しかし、多くの人にとっては敬遠材料になりうるとも思う。そして何より、タグ・ホイヤーがラグ幅に20.5mmを採用した判断はいまだに理解できない。
確かに、ケースデザインにおいては0.5mmの違いがすべてを左右しうるのはわかる。だが、ストラップを付け替えるという点ではユーザー体験は本当に残念なものになってしまう。20mmのストラップで少し隙間ができるのを気にしないか、あるいは21mmを無理やり押し込む気がない限り、オーダーメイドのストラップを選ぶのが現実的かもしれない。話がそれたが、これらはもともとの39mm径のカレラに固有の仕様ではない。
新しいフラグメントデザインのグラスボックス カレラのダイヤルにおいて、藤原氏はデザイナーとして引き算の能力を示した。彼の創作物がこれほど求められるのはそのためであり、“レスイズモア”という思想のもと、何でもかんでも盛り込むのではなく、ミニマルなひねりを取り入れているからだ。藤原氏曰く、自分は何かを付け加えようとしているのではなく、むしろ最もシンプルな形でそれをリミックスしようとしているのだとすぐに指摘した。退屈に見えないままそれをやり遂げるバランス感覚は難しいものだが、私はこのダイヤルを非常に満足のいくものだと感じている。
このカレラでもっとも目を引くのは、グラスボックス カレラのリデザインにおける最大の特徴である、ドーム状サファイアクリスタルの下に収まる大きく傾斜した見返しを真っ白に処理した点である。ほかのモータースポーツ系クロノグラフのなかでもこれほど独特なデザインはなく、これこそが、私がカレラ グラスボックスに引かれる最大の理由である。藤原氏のバージョンでは、タキメーターのシルバープリントが控えめでありながら読み取りやすく、デザイン全体が織りなす鮮烈な黒白のコントラストのあいだを埋める、まさに完璧な一手になっている。ダイヤルの残りはブラックオパーリン調のテクスチャーが占め、そのデザインは大幅にそぎ落とされた。大ぶりであったアプライドインデックスは、ダイヤルの傾斜面に配された小さなスクエアプリントのスーパールミノバに置き換えられ、シルバーのミニッツトラックもよりクリーンに見えるようわずかに修正されている。スモールセコンドとクロノグラフのカウンターのインダイヤルからはスネイル装飾や数字が取り払われ、ポリッシュ仕上げの針とともにダイヤルにわずかな奥行きを与える控えめな段差だけが残された。
藤原氏は12時位置の日付表示窓を残しており、これは紛れもなくカレラらしいディテールである。毎月1日と11日には、日付がフラグメントのダブルライトニングボルトロゴに置き換わる。“FRAGMENT”はスモールセコンドを担うインダイヤルのすぐ下にプリントされており、それ以外に、時計のどこにもこのコラボレーションを示す文字情報はない。意外なことに、“CARRERA”の文字と現代の“TAG HEUER”ロゴの両方が、日付の下の12時位置に残されている。クラシックなホイヤーロゴの登板を望む人もいるだろうが、このグラスボックスのデザインは完全にモダンに感じられるため、私はタグのロゴが残ること自体は問題ないと思っている。だが“CARRERA”は外すべきだった。デザインがすでに十分わかりやすい以上、これは不要に感じられる。
ケースバックには逆コントラストの遊びが効いており、比較的プレーンなムーブメントに大胆な黒いラインを加えている。フラグメントのロゴはサファイアクリスタルにもプリントされ、Cal.TH20-00自動巻きクロノグラフのローターには、黒のアウトラインで縁取られたローレルリースのモチーフがあしらわれている。全体としては非常にインダストリアルな仕上げのキャリバーであるだけに、こうした視覚的なアクセントは歓迎すべき要素だが、ポンプ型プッシャーによるクロノグラフの操作感は素晴らしく、スペックも変わらず見事だ。2万8800振動/時で駆動し、80時間のパワーリザーブを備えた自社製ムーブメントである。
このグラスボックスの最新バージョンは、私が初めて長い時間を共にした個体であり、着け心地のよさには今なお驚かされている。スリムなクロノグラフではないが、プロポーションは良好で、とりわけブレスレット装着時にそれが際立つ。そして藤原氏のデザインはミニマルでありながら視認性が高く、結果として実用的なクロノグラフであり続けている。プリントのタキメータースケールについては議論があったが、カレラのルーツへのきちんとした敬意として残されたことを私はうれしく思う。「これはファッション志向の人たちに向けた時計ではありません」と藤原氏は強調した。「ギラギラした、そういう類の時計ではありません。この時計が時計好きに響いてくれたらうれしいです」。そして私は、実際にそうなったと思う。というのも、実物を見た瞬間、私はすぐにこれが欲しくなってしまったのだから。
デザインに批判すべき点はほとんどないが、最大の問題は価格だと思う。カレラが150万円に迫る価格帯に来ていると考えると衝撃的だ。フラグメントエディションは、ブレスレット仕様のスタンダードなブラックダイヤルよりもおよそ40万円ほど高く、限定コラボレーションとしてはかなりのプレミアムだ。
もちろん、ブレスレットへのPVD加工に伴う追加コストや、ほかの特注ディテールに紐づく費用も間違いなくあるだろう。だが、私がこれを書いている時点でオンラインで500本が完全に完売していないのは、おそらくそれが理由である。真剣な時計コレクターの友人にも、そうでない友人にも共通して私が目にしてきた最大の反応はこれだ。デザインは素晴らしいが、価格はそうではない。
だが私に関して言えば、実物を見て信じられないほど特別に感じたデザインのためならプレミアムを正当化できてしまう。まあ、カモなのかもしれない。あるいは、ずっと直近のカレラ グラスボックスが欲しかったものの、もっと特別なものが現れるまでその欲求を脇に置いてきたからかもしれない。いずれにせよ、タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ × フラグメント リミテッドエディションは、コラボレーションデザインの最良の例であり、数週間が経った今も、私は自分の1本を見るたびに胸を躍らせている。
詳細はタグ・ホイヤーの公式サイトをチェック
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