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Photos by Andy Hoffman
ドバイウォッチウィークで、我々はスイスを拠点とするベテランディーラー、ロイ・ダビドフ(Roy Davidoff)氏と展示ホールを歩き回りながら、時計のダイヤルデザインの基本ルールについて議論していた。彼はブースからブースへと移動しながら、ダイヤルの確立された特定の規範を遵守している時計と、そうでない時計を指摘した。しかしコロキウム(Kollokium)のブースにたどり着いたとき、ダビドフ氏はこの新興のスイスのクリエイター集団が展示しているものについて判断を下すことはできないと述べた。コロキウムは古典的なダイヤルの要件や規範を超えて、ほかとは完全に異なる独自のカテゴリーで何かを成していると彼は語った。そして彼らは「例外こそが規則を証明する」という例だと言った。
実際、もしあなたがまだコロキウムについて聞いたことがないなら、彼らがスイス製の時計を構想し、構築するうえで本当に斬新なアプローチをとっていることを知って欲しい。多くの破壊的なイノベーションと同様に、コロキウムはパンデミックと、世界的な健康危機の初期段階で人々を家に閉じ込めたロックダウンから生まれた。それは大手企業ブランドから小さな独立系、そしてハイエンドな高級時計製造に至るまで、数十年にわたる業界経験を共有する3人の男たちの頭脳の融合だ。そして彼らが2020年に結集したとき、その結果生まれたのはブランドではなく、時計プロジェクトのための新しいプラットフォームであったと彼らは言う。
“プロジェクト 02”は彼らの第2弾であり、現在、10月に開催された“FFF&F(フレンズ、ファミリー、フールズ、フリッパーズ)”での199本限定ローンチを通じてのみ入手可能だ。彼らの最初の時計である、飾りピンをあしらったダイヤルを備えた夜光がたっぷりと充填された“プロジェクト 01”のいくつかのバージョンを賞賛したあと、私はこの時計の購入を決断した。プロジェクト 02はプロジェクト 01といくつかの要素を共有しているが、コロキウムが一芸に秀でただけのメーカーではないことを確かに示している。ここでは多くの要素が絡み合っているが、この時計がすぐに私が最も着用する時計のひとつになり、時計愛好家のあいだで多くの議論と質問を呼び起こし、そして私のコレクションのなかで最もユニークで珍しい時計のひとつだと言っても間違いはないだろう。
まずはダイヤルから始めよう。それが我々の真の目的だ。上から見るとモノクロの鍛造金属のように見えるが、角度を変えると深みのある、波打つ多層の建築的な彫刻がシリンダー状のサファイアクリスタル風防のなかに収められていることが明らかになる。さらに詳しく見ると、約67枚の個別のダイヤルプレートが重ね合わさって作り出された、多面的で地形的なうねりのあるデザインに仕上げられたダイヤルが確認できる。ネオブルータリズム、インダストリアル、そして未来的なSF建築から明確なインスピレーションを得ており、鋭角や直線はほとんどない。すべてが、うまく構想された複合建築物のように流れている。ダイヤルプレートの心地よいライトシルバーグレーの金属の色は、サンドブラスト仕上げを施したダイヤル側面の暗い色合いによって相殺され、多次元のデザインに構造を与えている。各ダイヤルプレートにはホワイトラッカーを塗装し、緑色のスーパールミノバを充填している。
そう、これはプロジェクト 01よりもさらに夜光が素晴らしい完全夜光ダイヤルでありながら、照明を消すまでは(完全夜光の写真は下にスクロールして確認して欲しい)恐ろしく巧妙に控えめである。その控えめなモノクロの外観は、丸みを帯びたバトン型の針にも引き継がれている。それは重厚で、時針と分針の両方がダイヤルプレートと同様のシルバーグレーの色合いに包まれている。しかし、針は層状のダイヤルからの深い分離と、針の輪郭に惜しみなく塗布された夜光のおかげで、きわめて読み取りやすい。最後に、ダイヤル上での定番の要素があるとすれば、それは蛍光オレンジの秒針だ。プロジェクト 01でも同じ形状を見たが、本作では落ち着いたダイヤルの色合いに対して劇的に際立ち、時計の機能的かつスポーティで楽しい要素を強調している。
ベテランの時計およびジュエリーデザイナーであるバース・ヌスバウマー(Barth Nussbaumer)氏によれば、実際には本作のデザインはプロジェクト 01よりも前に考案されていたが、ダイヤルとケース構造における技術的な課題から、先に市場に出すことが叶わなかったと我々に語った。ケースはコロキウムの初作と同様に、ダイカスト法によって成形された316Lスティール(SS)で作られている。まずこれが時計ケースを作るうえできわめて珍しい方法であることを認識しておこう。溶融したSSを鋳型に流し込む方法は、CNC加工やプレス加工では不可能なユニークな形状とデザインを可能にする。これは、マットなSSにインダストリアルな品質も与えている。
コロキウムのマニュエル・エムシュ(Manuel Emch)氏(ルイ・エラールの責任者でもあり、ほかのいくつかのブランドや業界のサプライヤーのコンサルタントでもある)は金属のダイカスト技術は進化し、より信頼性が高く予測可能になったと述べている。そのおかげでコロキウムの両モデルのケースはサテンもポリッシュも、その他のいかなる仕上げも施されていないにもかかわらず、予想よりも滑らかで、そしてより多くの仕上げが施されたように見えるようになったという。プロジェクト 02は直径39.5mmのモノブロックケースを使用しており、厚さ5.9mmでプロジェクト 01のケースよりも薄い。ダイヤルの見事な側面を際立たせる高いサファイアクリスタル風防を含めると、時計の高さは12.9mmに増加する。目に見えるベゼルはなく、ケース自体が複雑なダイヤル構造のベースおよびプラットフォームとして使用されている。時計に表示されているロゴやブランディングはケースの側面にのみあり、これが確かにコロキウムの“プロジェクト 02”であることを認めている。反対側にあるケース素材にマッチしたリューズは、プロジェクト 01と同様にバルブの形状であり、ツール的な雰囲気を強めている。
“プロジェクト 02 FFF&F”エディション(左)と、2023年に登場した“プロジェクト 01 FF&F”エディション(右)。
その薄いプロファイルと鋭く下に突き出たラグにより、この時計は私の比較的細い手首でも平らに、そして驚くほどコンパクトに着用できる。そのインダストリアルなマット仕上げとモノブロック構造は、この時計を頑丈で何にでも対応できると感じさせる。50mの防水性能を備えているため、対応できないアクティビティや冒険はほとんどない。複雑なダイヤルの作りと高さのある風防にもかかわらず、時計はタフに着用でき、目的を持って作られている。ソリッドで安心感があり、過度に気を遣う必要のある時計とは決して感じられない。
コロキウム プロジェクト 01は、別業界のベテランであるアムル・シンディ(Amr Sindi)氏も含む同社の創業者トリオによる最初の時計だった。最初の“フレンズ、フールズ、アンド・ファミリー(Friends, fools, and family)”エディションは2023年後半に発売され、2024年初頭にその時計の最初の一般向けバージョンが市場に登場した。創業者たちのネットワークと地位、そしてスーパールミノバが塗布された400以上の円筒形のピンの革新的な使用により、プロジェクト 01は市場に類を見ない存在となった。それは時計の専門家の一部から好評を博し、コロキウムは現在、プロジェクト 01の約8つの異なるバージョンを製造し、それぞれ300本から500本のバッチで約3000スイスフラン(日本円で約58万5000円)で販売されている。また、最近の“F”バリエーションは記録的な量のスーパールミノバを誇り、3666スイスフラン(日本円で約71万5000円)で販売された。
プロジェクト 01 FF&Fエディションのケースバック。
プロジェクト 01は本作に似ているものの、風防が小さく厚さが7mmで、わずかに厚いため、全体の高さは11.6mmになる。また、ケースもプロジェクト 02のモノブロックとは異なり、直径40mmのツーピースのダイカスト構造であり、わずかに幅が広く、より長く薄いラグが特徴だ。しかし防水性能は同じく50mである。FFF&Fバージョンのケースバックの刻印は“Basically, a Swiss watch that can get wet(基本的に、濡れても大丈夫なスイス時計)”と、単刀直入だ。
しかしプロジェクト 02とプロジェクト 01は依然として多くの属性と部品を共有している。最も注目すべきは、両方に付いている素晴らしいストラップだ。それは伸縮性のあるファブリック製で、ストラップの裏側にきちんと収納されるフック&ループシステムを使用しており、手首にしっかりと固定され、十分な通気性を確保しながら調整が可能だ。20mm幅のストラップのSS製フックはケースと同じダイカスト製の金属で作られている。このストラップはデラグス(Delugs)製で、デラグスのウェブサイトから4色を個別に購入できる。
コロキウムの両モデルのムーブメントは同じで、自動巻きのラ・ジュー・ペレ G101を搭載しており、68時間のパワーリザーブ(つまり週末を乗り切れるが、これは平日用の時計というより週末用の時計のように見える)を提供し、2万8800振動/時で時を刻む。両モデルのクローズドケースバックであり、ここでは主役でも焦点でもない。プロジェクト 02の説明で、このクリエイター集団はウォッチメイキングが彼らの目的ではないことを明確にしており、ラ・ジュー・ペレ社製ムーブメントについて「コロキウムはムーブメントとは何の関係もないため、完全にブランド名や装飾をつけないことが決定されました。どうせ見えないのですから」と述べている。
プロジェクト 02のケースバック。
プロジェクト 02は3333スイスフラン(日本円で約65万円)で、199本限定だった。これは現在完売している。プロジェクト 01の時計は約2999スイスフラン(日本円で約58万5000円)で販売され、夜光を強化したバージョンのみ3666スイスフラン(日本円で約71万5000円)だった。もしプロジェクト 02または同様のモデルを体験することに興味があるなら、コロキウムは2026年の第1四半期に一般向けバージョンを提供する予定だと述べている。
これは私が購入し酷使しているというだけでなく、ここしばらく見たなかで最も興味深く革新的なダイヤルデザインのひとつかもしれない。2025年のベスト・オブ・リストに入る可能性が高い時計だ。これらすべてが、高品質なスイス製時計としては比較的親しみやすい価格で提供されている。自分たちを真面目に捉えすぎないスイスの男たちによる、奥深いものだ。
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