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Hands-On アイソトープ ムーンショット クロノグラフ “テラ・マリス”を実機レビュー

スポーティなクロノグラフという概念を、独自のSF的解釈で大胆に表現。


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昨年9月末、僕はトロント・タイムピース・ショーでアイソトープの実機を目にする機会を得た。オリスやクリストファー・ウォード、ドクサ、ジン、アンオーダインといった人気ブランドと同様に、アイソトープの時計をチェックするための列ができていた。その週末、同ブランドがクリストファー・ウォード C12 ロコと並んでピープルズ・チョイス・アワード(People's Choice Award)を受賞したこと、さらにマーキュリー シャドウ(Mercury Shadow)でタイム・オンリー・アワード(Time Only Award)も受賞したことを考えれば、その独特なデザイン言語と遊び心あふれる型破りな視点が、なぜこれほどの人々を引きつけるのかを理解するのは難くない。

Isotope Moonshot "Terra Maris"

 この比較的新しい英国ブランドは、イングランドのハーペンデンでホセ・ミランダ(José Miranda)氏とジョアナ・ミランダ(Joana Miranda)氏夫妻によって設立され、10周年を迎えた。アイソトープ(同位体)という概念にインスパイアされたブランドのデザインは、SFや建築といったポップカルチャーに根ざしている。同ブランドのデザインを知るきっかけはいくつかあるだろうが、僕がすぐに引きつけられたのは、アイソトープ初のクロノグラフであるムーンショット、なかでもブラウンとライトブルーを配した特別なカラーリングのテラ・マリスだった。このテラ・マリスは僕が時計業界に身を置いて以来、何度かお会いする機会のあった時計ジャーナリスト、ミゲル・セブラ(Miguel Seabra)氏とのコラボレーションによって誕生したモデルだ(ミゲル、見てるかい?)。

 ポルトガルの海岸線にインスパイアされたテラ・マリスは、標準的なムーンショットよりも柔らかく温かみのあるトーンを採用している。ムーンショットそのものは機能性を重視しているとは言いがたいが、間違いなくモダンでブルータリズム(粗野で力強い建築様式)を感じさせ、どこかH.R.ギーガーの世界観をほうふつとさせる。ホセ・ミランダ氏が自身のデザインにグラフィックノベルやホドロフスキーへの愛を反映させていると語るのも、頷ける話だ。現在、ムーンショットにはふたつの仕様しかないが、ブランドは将来的に新しいバリエーションが登場することを示唆している

Isotope Moonshot "Terra Maris"
Isotope Moonshot "Terra Maris"

 ライトブラウンからブラックへのグラデーションダイヤルには、3つのクロノグラフ用のインダイヤルが配されている。従来の針で指し示す方式ではなく、メタリックブルーの回転する開口部がクロノグラフ目盛り(とスモールセコンド)を露出させる仕組みだ。ダイヤルはケースの深い位置にセットされ、スタジアム型(長円形)のケース開口部に囲まれている。その周囲には、ブラックの上にタンカラーで記されたタキメーター/パルスメータースケールが配されている。

 ケースとブレスレットはグレード5チタン製で、サンドブラスト処理ののち、フラットブラックの質感を出すためのDLC加工が施されている。ケースサイズは横幅41mm(リューズのくぼみまで)、厚さ15mm、ラグ・トゥ・ラグは49.5mmだ。ラグ幅は20mmだが、ブレスレットにはフレア形状のエンドリンクが採用されており、最も広い部分で24mm、ダブルフォールディングのバタフライクラスプに向かって18mmまでテーパーがかかっている。この大胆なテーパーと手首の上での比較的軽量な装着感は、ムーンショットの有機的なフォルムを強調しており、まるでカフスを身に着けているような存在感を与えてくれる。決して小さな時計ではないが、ブレスレットとリンクのバランスはきわめてよい。リンク自体は(前面に向かって)わずかに傾斜しており、ケースに近づくほど厚みが増すように設計されている。

Isotope Moonshot "Terra Maris"
Isotope Moonshot "Terra Maris"
Isotope Moonshot "Terra Maris"

 これらの詳細に触れたのは、ムーンショットが実際に指先で触れてみなければ理解しにくい時計のひとつだからだ。確かにモダンなマイクロブランドではあるが、カタログから選んできたような既製品パーツはひとつも見当たらない。ケースはかなり複雑で、9時側にはレリーフ状のカットが施されている。プッシャーの通気口のような仕上げや、プッシャー裏側の遊び心ある“再生/一時停止”や“ループ”のロゴ、リューズに刻まれたロゴ形状、ブレスレット(および付属のラバーストラップ)に内蔵されたクイックリリース式のバネ棒、そしてブレスレット用の片側ネジなど、細かなディテールも見逃せない。これらはすべてダイヤルに目を向ける前の話である。

 近くで見ると、ダイヤルはきわめて凝ったデザインとなっている。グラデーション仕上げを施した水平方向のエンボス加工が繰り返されているのだが、これはよほど近づかないと気づかないほど繊細だ。遠目にはプリントのように見える。ダイヤルの周囲には短いフランジがあり、それがインダイヤルの周囲でも繰り返されている。さらに風防へと目を向けると、上部のフランジフレームの縁に沿って別の層のディテールがあり、それがインデックスを形成している。奥行きの使い方は意図的で、これは初めてこの時計を手にした人が思わず目を近づけて確認したくなるようなディテールだ。

Isotope Moonshot "Terra Maris"

 ミステリースタイルのインダイヤルのシールドは、鮮やかなブルーのフォルムがダイヤルから浮き上がって見えるため、じっくり見るまでもなく目に入ってくる。それぞれに小さなカットアウトがあり、連動したブルーのプレートがその下の数字を露出させる。僕はこれまで何度もクロノグラフのファンではないと公言してきた。その理由のひとつは読み取りにくく、視覚的に乱雑に見えることが多いからだ。

 このモデルに関しては、従来の針に比べれば厳密な精度には代償があるかもしれないが、ダイヤルはきわめてクリーンに保たれており、計測値をひと目で読み取るのに苦労はしなかった。この仕様に大胆で視認性の高い時・分針が組み合わさることで、時計としての使い勝手がよく、クロノグラフとしてもしっかり機能し、それでいてデザインの指針を見失っていない時計に仕上がっている。これを実現するのは容易なことではないため、あえて強調しておきたい。これにさらにテキストや日付、あるいは色を加えていたら、この効果は損なわれていただろう。

Isotope Moonshot "Terra Maris"
Isotope Moonshot "Terra Maris"

 さらなる演出として、ムーンショット テラ・マリスにUVライトや直射日光を当ててみて欲しい。チャージに反応してメインの針と外周のアワーリングが鮮やかに発光し、ショーを楽しむことができる。

 内部ではアイソトープが採用したETA 7753、または自動巻きクロノグラフムーブメント ランデロン 73が時を刻んでいる(ヴィンテージ愛好家が知るランデロン 73とは異なるムーブメントだ)。これは現代的な2万8800振動/時の自動巻きクロノグラフムーブメントで、約42時間のパワーリザーブを提供し、ETA 7753/7750の競合として位置づけられている。直接の互換性があるほどだ。ムーブメントはシースルーバックから鑑賞でき、カム式の構造により、重厚でキレのあるプッシャー操作を実現している。

Isotope Moonshot "Terra Maris"

 ムーンショットの装着感は良好だ。決して小さくはないし、想像以上に小さいということもないが、滑らかなエッジとブレスレットとのよいバランスのおかげで、その厚みが快適さを損なうことはなかった。先に述べたように、このサイズの時計のなかには金属の塊を手首に縛り付けているように感じるものもある。しかしムーンショットは、クロノグラフとしてきわめて標準的なサイズ感を維持しながら、手首を包み込むようなカフスに近い体験を提供してくれる。これ以上小さければよかったと思う場面は一度もなかった。

 いくつか気になる点もある(デザインもフォルムも本当に楽しめた時計だからこそ挙げておきたい)。まず、リューズを掴むのが難しい。致命的な欠陥ではないが、数分おきに針の位置を変えなければならない写真撮影の際には爪を立てなければ操作できず、指を痛めそうになった。ただ、一度ねじ込めば100mの防水性能が得られる。

Isotope Moonshot "Terra Maris"

 次に、写真の光の加減で誇張されている面もあるが、ブレスレットの色がケースとわずかに異なって見える点だ。これがDLC処理によるものなのか、あるいはエンドリンクの表面角度と処理の組み合わせによるものなのかは定かではないが、ケースからエンドリンクへの形状と仕上げの変化が光を捉え、仕上げの色調のズレを強調してしまうことが多々あった。僕の目にはブレスレットはケースのブラックトーンよりも、わずかにグレーがかって見えた。

 ムーンショット テラ・マリス(および標準モデル)の価格は、カットして調整するラバーストラップを含めて3658ドル(日本円で約57万4000円)だ。この価格設定をどう捉えるかは、どこに価値を置くかによるだろう。ムーブメント重視であれば、汎用的なクロノグラフムーブメントに対して、確かにプレミアムな価格設定だ。別の視点で見れば、グレード5チタン製のケースとブレスレットを備え、アイソトープのカタログから発展した、詳細でSF的なテーマを持つエキサイティングかつ独特な(そして僕にはきわめて魅力的な)デザインに見合った価格といえる。このスタイリングを考えると、直接的な競合は思い当たらない。ジン(多くが3000ドル/日本円で約47万円以上)、ティソ PRX クロノグラフ 42mm(29万8100円)、ロンジン アヴィゲーション ビッグアイ(47万1900円)、あるいはチューダー(約6000ドル/日本円で約90万以上)と比較検討する人がそれほど多いとは思えないからだ。それらも素晴らしい時計であり、より高度で格式高いムーブメントを搭載しているものも多い。しかしきわめて従来どおりのモデルであり、本作のような突き抜けたデザインや自由なインスピレーションを感じさせるものではない。

Isotope Moonshot "Terra Maris"

 同ブランドのラインナップの多くが1000ドルから2000ドル(日本円で約15万~30万円)の価格帯に収まるなか、ムーンショット テラ・マリスはブランドのフラッグシップを象徴している。本作はミッドセンチュリーの雰囲気やモータースポーツ クロノグラフへの崇拝を排し、別世界のインスピレーションを取り入れた、興味深く型破りで、目を引くデザインだ。着け心地もよく、アイソトープの核心的なパーソナリティを実に見事に捉えている。