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Hands-On オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル “ブラック&ホワイト” Ref.310.30.42.50.01.004とロレックス デイトナ Ref.126500LNを比較

ケースからブレスレット、そしてそのあいだに隠されたあらゆるディテールまで。140万円〜280万円という価格帯において、最高峰のスポーティなクロノグラフ2本を徹底的に掘り下げる。


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オメガが新しいスピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナルを発表すると、常にビッグニュースとなる。数多くのバリエーションが展開されるほかのモデルとは異なり、ムーンウォッチはオメガにとってある種の聖域だ。そのため、この枠組みのなかで新たな試みを行う際、彼らはそれが完璧であるように徹底的に突き詰めるのだ。

Speedmaster Black and White

 先週のリリース前、ムーンウォッチには(ストラップを除いて)9つの特定のSKUが存在していた。ステンレススティール(SS)製のブラックダイヤル2種(ヘサライトクリスタルとサファイアクリスタル)、最近リリースされたホワイトラッカーダイヤル、ふたつのコンビモデル(SSとセドナゴールド、SSとイエローゴールド/YG)、ふたつの“ムーンシャイン™”ゴールド(オメガ独自のYGで、グリーンアクセントまたはYG製のパンダバージョン)、セドナゴールド(オメガ流のピンクゴールド)、そしてカノープスゴールド(ホワイトゴールド/WGの一種)だ。SS製とムーンシャイン™ゴールド製の2モデルが加わったことは、ラインナップにおける重要な拡充である。

 単に新作が登場したというだけでなく、注目すべきはその内容と価格だ。これらは非限定のメインコレクションから登場したスピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナルとして、ラッカーダイヤル(今回は2枚のダイヤルプレートで構成)を採用したわずか2番目のモデルである。(私の知る限り)セラミックベゼルを採用し、リバースパンダダイヤルを持ち、そして1万ドル(日本円で約160万円)を超える初の限定モデルでないSS製ムーンウォッチなのだ。歴史的に少しずつの改良を重ねてきた時計としては、堅実で驚くほどモダンな仕上がりだが、オメガがより現代的な層にアピールしようとしたのは、近年の歴史のなかでこれが初めてではない。

Speedmaster Black & White
Speedmaster
Speedmaster

 2024年にホワイトラッカーダイヤルのオメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル(Ref.310.30.42.50.04.001)が登場した際、私が最初に思ったのは“これでオメガはロレックスを脅かすつもりなのだな”ということだった。現実的にいえば、オメガはロレックスをそのような見方で捉えてはいない。彼らは素晴らしく革新的なムーブメントの開発に取り組んでおり、自らの信頼性を証明し築き上げるための膨大な歴史を持っているからだ。しかし時計愛好家がお気に入りのブランドに対してどれほど排他的になろうとも、市場は間違いなく比較するだろうし、ホワイトラッカーダイヤルは多くの比較材料を提供した。

 あらゆるブランドが自らをロレックスのベンチマークにしたいと願っているなかで、オメガはその価格と品質において、互角に渡り合える(あるいは凌駕できる)数少ないブランドのひとつだ。だからこそ最新の“ブラック&ホワイト”スピードマスターの情報が届いたとき(そして2週間前に実機を手首に乗せたとき)、私の考えはこう変わった。“ああ、彼らは今、本気でロレックスに挑んでいるのだ”と。これも厳密には正しくないが、オメガがラインナップの現代化を図っているのは間違いない。そうしたなかで避けては通れない“D”で始まる言葉、つまりデイトナという大きな課題に真正面から向き合ってみよう。

Rolex Daytona

 話を深める前に強調しておきたいのは、“リバースパンダ”クロノグラフ(ブラックダイヤルにホワイトのインダイヤル)という意匠は、ロレックスもオメガも発明したと主張できるものではないということだ。判明している限り、この構成を最初に採用したのはブライトリングのクロノグラフを搭載したスーパーオーシャン(1957年)、次いでブライトリングのコ・パイロット アヴィ(1962年)である。どちらが先に登場したかという問題ではなく、また一方が他方のコピーというわけでもない。

 ここでの比較は、この業界で最も広く名の知れたふたつのビッグブランドのあいだで、純粋に“購入者”の視点から行うものだ。一方を目当てに店に入り、結局はもう一方を買って(あるいはそれを願って)店を出るという一般消費者の数も決して少なくはないはずだ。

Speedmaster Black and White

 前置きはこれくらいにしよう。ここでの比較は見た目ほど単純ではない。新しいスピードマスターはスピードマスターらしく、デイトナはデイトナらしい顔をしている。SS製デイトナとスピードマスターの価格は同じカテゴリーに属してはいるものの、実際にはかなりの開きがある。それでは詳しく見ていこう。


登場: ロレックス デイトナ “リバースパンダ” Ref.126500LN

 もし市場で最も幅広い顧客層に比較検討される高級時計が2本あるとすれば、それはおそらくオメガ スピードマスターとロレックス デイトナだろう。賞賛すべきは両者が独自の価値で十分に成立していることだが、オメガは最も需要の高いスピードマスターであっても(Cal.321搭載モデルを除き)大きな苦労なく容易に入手できるようにすることで、確実に市場に貢献している。ホワイトラッカーダイヤルを備えたスピードマスターも当初は入手困難だったが、今ではほとんどの店舗で普通に購入できる。ロレックスがオメガよりも年間生産数が4割多いと推定されているにもかかわらず、ロレックス デイトナについては決して同じことは言えない。

Comparison

 まず、どちらの時計も手に入ると仮定しよう。新しいSS製のオメガ スピードマスター “ブラック&ホワイト”の定価は147万4000円(税込)だ。先述のとおり、私の知る限り140万円を超える初のメインラインであり、限定モデルでないSS製のスピードマスターである。一方、ロレックス デイトナ Ref.126500LN(同じくSS製)の定価は249万9200円(税込)だ。新型スピードマスターはまだ2次流通市場に本格的に出回っていないため、そこでの比較は避けるが、両者のパフォーマンスがその面でどう異なるかは概ね察しがつくだろう。この記事を読み進めるあいだ、ロレックスの定価がオメガより約69.6%高いということを念頭に置いて欲しい。

 どちらもかなりの金額に感じられるが、年頭に公開したエッセイで述べたとおり、私たちの基準価格は過去に囚われたままだ。スイスフランの上昇が労働力や供給コストに影響し、価格は急騰しており、米ドルは弱い。私の直感が、これらの時計は8000ドル(日本円で約120万円)と1万2500ドル(日本円で約190万円)であるべきだと言っているか? ああ、そうだ。しかし私は世界経済を動かせる立場ではない(そうしたい気持ちはあっても)。では、その価格で何が得られるのか(そしてその差額はどのように正当化されるのか)?

Speedmaster vs 126500LN

あらかじめ断っておくと、これらの写真はすべて手持ちで撮影されたものだ。そのためライティングの違いや、外観/デザインの変化(これは明白だと思うが)に加えて、撮影距離や角度による時計のスケール感、手首の映り方、そのほかの要因が含まれる。つまり、ひとつの画像をもう一方に完璧に重ね合わせられるような、1対1の厳密な比較ではないことを承知おきいただきたい。


ムーブメントについて

 着け心地やサイズ(これらは想像以上に近い)について触れる前に、最大の比較ポイントは裏側、つまり内部にある。このスピードマスターは“サファイアサンドイッチ”仕様であるため、シースルーバック越しにオメガの手巻きムーブメント、METAS認定を受けたオメガ コーアクシャル マスター クロノメーター Cal.3861を鑑賞することができる。デイトナでシースルーバックが採用されているのはプラチナモデル(これが最初)やル・マン シリーズなど、一部の貴金属モデルに限られている。ル・マンに搭載されているのはロレックス Cal.4132(12時間計ではなく24時間計を備える)だが、それ以外のロレックス デイトナは(ケースバックが閉じているものも、開いているものも)Cal.4131を搭載している。視覚的には同一であるため、比較にはCal.4131の写真を使用する。

 シースルーバックが常にアップグレードを意味するとは限らない。エングレービングを施す場所として最適である以上に、ムーブメントをケースバックの奥に隠すことは保護や防水性の向上などにも寄与する。時にはムーブメントの仕上げがそれほど見栄えのしない場合もある。今回のケースでは、オメガのムーブメントはその価格帯と工業生産のレベルにおいて、期待どおりの仕上げが施されている。職人の手作業による大きな付加価値はないが、高級時計に見られるような工業的なコート・ド・ジェネーブが施されており、自動巻きローターに覆われたロレックスよりも視覚的な魅力は高い。もしクロノグラフの機構を眺めるのが好きなら、スピードマスターは明白な選択肢となる。

Speedmaster Caseback
Daytona Caseback
Speedmaster 3861

METAS認定を受けたオメガ コーアクシャル マスター クロノメーター Cal.3861。

 オメガのCal.3861は、コーアクシャル脱進機とシリコン製ヒゲゼンマイを採用した優れたムーブメントだ。これにより摩耗が軽減され、注油の必要性も少なくなっている(脱進機には依然として注油されているが)。また、シリコン製パーツは1万5000ガウスまでの耐磁性を備えるMETAS認定に寄与している(ちょうど今、別の時計で磁気帯びに悩まされている私にはうれしいポイントだ)。しかし、ロレックスのCal.4131も引けを取らない。ブランドによると、独自のクロナジー エスケープメントを採用しており、これは従来の伝統的なスイスレバー脱進機を高度に進化させたもので、非磁性のニッケルリン合金で作られ、標準的なものより効率が15%向上しているという。また、ヒゲゼンマイにはパラクロム(編注;ニオブとジルコニウムから作られたロレックス独自の合金)を採用しており、磁気には強いがシリコンほどではない。しかし、ロレックスはガウス耐磁性能の数値を公表していない。

 まずオメガはCOSCのクロノメーター認定を受け、次いで独立機関であるMETASによる一連のテストを通過したマスター クロノメーター Cal.3861の精度を日差-0〜+5秒としているのに対し、ロレックスは日差-2〜+2秒というわずかに厳しい範囲を維持している。ただし、ロレックスは独立機関であるCOSCの認定を受けたあと、さらに厳格な自社内テストを実施しているものの、それは自社認定であり第3者機関によるものではない。また、ロレックスはパワーリザーブも22時間長く(オメガの50時間に対し72時間)、推奨メンテナンス間隔も10年と長い(オメガは5〜8年)。もうひとつ注目すべきは、Cal.3861が2万1600振動/時であるのに対し、ロレックス Cal.4131は2万8800振動/時で駆動することだ。一般的に、こちらの高振動のほうが耐衝撃性に優れていることを意味する。理論上、ほかの条件がすべて同じであれば、高振動はパワーリザーブの低下や、ムーブメントの摩耗の増加を招くはずだが、ロレックスにおいてそれが当てはまらないことは実証済みだ。

Daytona Movement

デイトナ ル・マンに搭載されたCal.4132。

 機能的な観点から見ると、Cal.3861のクロノグラフはカム式の水平クラッチ機構を採用している。対してロレックス Cal.4131はコラムホイール式で垂直クラッチだ。カム式は歴史的に見て堅牢であり、コラムホイールは作動時やリセット時の感触がより滑らかである。コラムホイールは製造コストが高く、より繊細な調整が必要であり、それがデイトナの価格(もちろん自動巻きムーブメントであることもだが)に反映されている。実用において、スピードマスターは使い始めに少し固さを感じることがあるが、次第になじんでくる。とはいえデイトナほどの滑らかさには至らない。

 自動巻き、長いパワーリザーブ、そして高い精度という利点により、スペック上はロレックスが優勢に見える。しかし長期的な修理のしやすさという観点では、オメガのほうが今後20年、50年、100年と時を経ても、より幅広い時計師の手で修理できる可能性が高いだろう。これに大金を賭けてもいい。なぜなら、このムーブメントは約57年ものあいだ存在し続けてきた、実績ある機構の骨組みに基づいて構築されているからだ。

Speedmaster Dial

外観について

 スピードマスター プロフェッショナルの最も魅力的な側面のひとつは、それを“ムーンウォッチ”として決定づけた6桁の型番を持つオリジナルモデルから続く伝統を受け継いでいることだ。長年にわたりさまざまなバリエーションや変更が加えられてきたが、一見したところ、スピードマスター プロフェッショナルは今もなおオリジナルに限りなく近く、ひと目でそれとわかるアイデンティティを保っている。これと同じことがロレックスのデイトナに当てはまるかといえば、そうではない。デイトナには、手巻きから自動巻きムーブメントへと切り替わり、新たなデザイン言語が採用された明確な転換点が存在するからだ。とはいえ、最新のブラック&ホワイトの逆パンダモデルは素材から全体的な美観に至るまで、我々がこれまで目にしてきたスピードマスター プロフェッショナルのなかでおそらく最もモダンな一品だろう。

 ラッカーダイヤルは、このブランドにとってまだ比較的新しい試みだ。先述のホワイトラッカーダイヤルを備えたスピードマスターは、今回の新作とはまったく別物に感じられた。しかし今回のリリースについて、私はすぐに“それほど大きな違いはない”と考えるようになった。ここからは純粋に主観的な領域になるが、私はこの点でオメガが勝っていると思う。以前も述べたが、私は現代のデイトナの美学があまり好みではない。理由はひとつ、インダイヤル(特にリング)だ。これはヴィンテージウォッチやヴィンテージデイトナを長く愛でてきた経験から形成された個人的な好みである。(1980年代前半から半ばに生まれた)自動巻きデイトナの黎明期にそのデザインに触れてきた世代なら、おそらく“リング付きインダイヤル”の熱烈なファンだろう。だが、私には以下の写真のほうがずっとクリーンに見えるのだ。

Speedmaster dial

興味深い発見があった。すべての画像を撮影する際、ホワイトカードを使ってカラーバランスを調整したのだが、スピードマスター プロフェッショナルのインダイヤルは、写真によってほかのものより少し青みがかって写ることがあったのだ。光の作用というのは、実に不思議なものだ。

 ここで注目すべき点がいくつかある。まず、スピードマスターとデイトナの双方が奥行きと輝きを与えるブラックラッカー塗装を施したダイヤルを採用しているが、スピードマスターのダイヤルは“パイパン(pie-pan/裏返した皿)スタイルの傾斜によって、より立体的だ。また、ダイヤルを構成する2枚目のプレートによって実現された沈み込んだインダイヤルもある。上部のブラックプレートは、ブラックラッカーの縁に繊細なロジウムメッキが施されており、ホワイトラッカー塗装を施したインダイヤルはわずかに低い位置にある。インデックスや数字は(デイトナ同様)プリントだが、鋭い読者なら30分積算計の針が視認性を高めるために少し長くなっているため、3時位置と9時位置のインダイヤルのプリントが完全には一致していないことに気づくだろう。

 視認性については、オメガのほうが優れていると感じる。どちらもアプライドロゴを採用し、ロゴ下のテキストが占めるスペースも同程度だが、デイトナのダイヤルにある4行のテキスト(センターポスト下の“Daytona”を含めれば5行)は少し混み合っているように見える。ロレックスは2万8800振動/時という振動数のため、クロノグラフの分・秒の目盛りもより細かく刻まれており、その分プリントが増えている。これによりダイヤルが密集した印象になるが、実用面ではクロノグラフのより細かい読み取りが可能であることを意味する。同様にインデックスや針、ベゼルのタキメーターもより太く、視認性を高めている。

Speedmaster
Daytona

 ケースサイズについてはのちほど触れるが、スピードマスター プロフェッショナルのダイヤル径は(ケース径42mmに対して)約31.1mm(この測定値を提供してくれたTGNのSlackメンバーに感謝する)であるのに対し、デイトナは(ケース径40mmに対して)30.3mmだ。しかし、デイトナのベゼルはケースの端までいっぱいに広がっている。現在、両モデルともセラミック製ベゼル(どちらもSS製のリングにセットされている)を採用しているため、耐久性に差はない。もしタキメーターを頻繁に利用するのであれば、ベゼルがより大きいデイトナが欲しくなるかもしれないし、より大きなダイヤルを求めるならスピードマスター プロフェッショナルの勝ちだ。

Lume

 リング付きインダイヤルについて、私にとっての問題は、それらがそれほど“際立って”見えないという点に集約されるかもしれない。デイトナの逆パンダダイヤルの内部にはシルバーのリングがあり、インダイヤルのフォントが放射状にプリントされている。オメガのインダイヤルのほうが読みやすく、デザインとしても完結していると感じる。私が“ル・マン”を愛するのはその希少性やインダイヤルの“ロリポップ”インデックスのためではなく、単にそれが(少なくとも私の理想とする)デイトナの姿をしているからだ。それが理由で“パンダ”デイトナの購入枠を諦めるかといえば、そんなことはない。だがその点については、こちらのスピードマスターのほうが好みだ。


着用感について

 サイズ計測値が、少なくとも一方向においてはほぼ同じであるにもかかわらず、両者の着け心地はかなり異なる。スピードマスター ブラック&ホワイトのケース径が42mmであるのに対し、デイトナは40mmだ。しかしラグ・トゥ・ラグはスピードマスターが47.5mm、デイトナが47.6mmとなっている。私の7.25インチ(約18.4cm)の手首の上で、いかに両者が似て見えるかは以下のとおりだ。つまり条件が同じであれば、スピードマスターは直径から想像されるよりもずっと小さく感じるという定説が当てはまる(スピードマスターは自分には大きすぎると言う友人に、私は頻繁にこのことを思い出させている)。では、着け心地の差はどこから来るのか? それはほかのほぼすべての要素からだ。

Speedmaster
126500LN
Speedmaster Bracelet
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  厚さは着用感において重要な要素であり、新作のスピードマスター プロフェッショナルは2層構造のダイヤルを採用したため、先代モデルよりも少し厚くなっている。これにより、自動巻きのデイトナとしては驚異的に薄い11.9mm(前世代より0.5mm薄い)を実現しているロレックス デイトナの後塵を拝することになった。新型スピードマスターの厚さは、ボックス型サファイア風防とディスプレイケースバックを備えたほかのモデルの13.18mmから、13.54mmへと増している。

 スピードマスターはサファイア風防が大きく突き出しているため、数値よりも薄く感じるのだ。厚みのうちどれほどが風防によるものかを考慮することで、時計が単に手首からどれだけ突き出しているかではなく、実際に手首にどう収まるかをより的確に捉えることができる。デイトナのほうが約1.4mm薄いにもかかわらず、デイトナのより平坦なケースバックや、わずかに下向きに傾斜したラグが着用感を変えている。両者の着用感は寸法が示唆するよりも同等であると感じた。

Profile Speedmaster
Speedmaster
Daytona

 ブレスレットはかなり着用感に影響を与える。私はブレスレットを評価するために、新しい尺度を提唱しようとしている。主にヴィンテージに当てはまるものだが、ここでも使える。それはジャングル ファクター(Jangle Factor/ジャラジャラ感)であり、JF0(まったく動かないブレスレット)からJF5(おじいさんのデイトジャストのピンが今にも折れて床に落ちそうな状態)までのスケールで表される。現代の時計は、JF1.5からJF2くらいのブレスレットであって欲しいと思っている。デイトナのオイスターブレスレットは少し硬く、手首に対してそれほど寛容ではないと感じることがある。また私のGMTマスターに備わっているブレスレットは、ポリッシュ仕上げが施されたセンターリンクが傷を拾いやすく、少し派手すぎると感じるため、週に数回はブラシ仕上げにしたいと考えてしまう。

 オメガの新しい“ニクソンスタイル”のブレスレットはサテン仕上げの表面と、きわめて控えめなポリッシュのアクセントが美しく、手首にもよくなじむ。JF2といったところだ。デイトナがクラスプを固定するためにフリップロック(ロレックス用語でオイスターロック)を使用するのに対し、オメガはふたつのボタンでクラスプを解除する。しかしオメガの20mmから15mmへのテーパーは、ロレックスの20mmから15.5mmへのテーパーほど手首でのバランスがよくない。わずかに緩いブレスレット、わずかに重心が上部に感じられること、そしてわずかに薄いクラスプのすべてが想像以上にバランスを変化させている。

Speedmaster Bracelet
Daytona Bracelet

 この価格帯の時計であれば、マイクロアジャスト機構は必須だ。私はロレックス GMTマスターのイージーリンクシステム(折りたたまれたリンクを引き出すことで、リンクの半分に相当する5mmの余裕ができる)を頻繁に利用している。しかし2mm刻みで計20mmの調整が可能な同ブランドのグライドロック エクステンションシステムほど、エレガントでも柔軟でもない。しかし同様に、オメガの調整機能もハーフリンク分を広げることができるが、スピードマスターはリンク自体が短いため、調整幅はわずか2.3mmだ。しかし、1度自分にぴったりのサイズに設定してしまえば、天候や季節の変化、あるいは夜の外出によって手首のサイズが変わっても、日常的にはそのわずかな調整だけで事足りるだろう。

Speedmaster
Rolex Fliplock

 ロレックス デイトナはねじ込み式リューズを採用しており、スピードマスターの50m防水に対し、水の侵入を防ぐことで100m防水を実現している。しかし、これはボタンを押すためにまずネジを緩める必要があることを意味し、文字どおりボタンひとつで調整できるという手軽さはない。もっとも、これは多くの人にとって問題ではないかもしれない。(私自身を含め)クロノグラフを所有し愛用している人のかなりの割合が、クロノグラフ機能をほぼまったく使っていないからだ。実際に計測に使うよりも、時計を動かしたまま忘れてしまうことのほうが多い。

Speedmaster
Daytona

 全体的なフィット感と仕上げについては、比較が難しい。どちらもラグジュアリーそのものだ。デイトナのほうがより重厚感があり(実重量でも148gに対しスピードマスターは144g)、しっかりとした作りを感じさせる。一方で、スピードマスターに施されているポリッシュとサテンを組み合わせた仕上げや、より複雑なケース形状ははるかに興味深く、光の当たり方によってさまざまな表情を見せてくれる。


ロレックス デイトナ “ル・マン” Ref.126528LNで少し寄り道を

 手短に、ムーンシャイン™ゴールド製のオメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナルと、YG製のロレックス デイトナ “ル・マン” Ref.126528LNを比較してみよう。オメガの定価は697万4000円(税込)と高額だが、YG製のル・マン(ローズゴールド版とともに現在も納品されていると報告がある)は6万8300ドル(日本円で約1080万円)だ。ああ、もしル・マンを定価で買えなければ、2次流通市場では約22万5000ドル(日本円で約3500万円)になるので、どうぞ楽しんで欲しい。

 これらはまったく異なる提案であり、ブランドもそのように位置づけている。ル・マンは(現在は)カタログ外モデルであり、正規販売店で目にできるのは年に1、2本あればよいほうだ(それが巨大な販売店であればの話だが)。私がモナコにあるロレックスのブティックを訪れた際、WG時代に南フランス全土でル・マンは1本しか入荷しなかったと言われた。小売に携わる数人に話を聞いたところ、皆同じ評価だった。SS製のスピードマスターとデイトナは比較検討される可能性が高いが、もしあなたがムーンシャイン™ゴールド製のスピードマスターを買いに店に入るなら、あなたは“その時計”だけを目当てに来た人だということだ。そして、それはデイトナよりもずっと手に入りやすいだろう。

Speedmaster gold
Speedmaster
126528LN

 しかし、驚くほど似ている部分もあるだろう? 私はオメガのベゼルの白いテキストや、ほかの色を一切排除した構成(デイトナの赤いアクセントとは対照的)が実は好きだ。ル・マンのインダイヤルのテキストはそれほど太くない(だがSS版に比べればきわめて視認性が高い)。また、オメガにはクロノグラフ針の先端に夜光塗料が施されており、ムーンシャイン™ゴールドの針のなかでより際立っている。しかし最大の違いは、ル・マンシリーズには実際にはソレイユ(サンバースト)仕上げが施されている点だ。光の当たり方によって表情を変えるこの仕上げは、スピードマスターやほかのデイトナに見られるような、深みのある艶やかなブラックラッカーの外観とは異なっている。

Speedmaster
Le Mans

 結論として何が言えるか? 視覚的な比較が興味深かっただけで、正直なところよくわからない。ムーンシャイン™製のスピードマスターは、SS仕様の約4.75倍の価格だが、デイトナ ル・マンは約4.14倍だ(2次流通市場では、ル・マンを持つというステータスのために4.3倍を支払うことになる)。“ジョン・メイヤー 2.0”のような、ほかのブレスレットを備えたYG製のデイトナは5万2600ドル(日本円で約830万円)で、SS版の約3.2倍だ。こう見るとデイトナのほうがゴールドモデルとしてのバリューが高いように感じられるが、そのバリューを得るためにはより多くの資金を投入し(そして正規店を追いかけ回し)なければならない。


最後に

 これだけの情報を得て、皆さんは困惑しているだろうか? 私も同じだ。以前から要望があったにもかかわらず、価格Yの時計Xが、価格Bの時計Zよりも価値があると客観的に断定できる指標は存在しないのだ。ましてやクロノグラフ市場全体となればなおさらだ。ゼニスのクロノマスター スポーツや、タグ・ホイヤーのカレラ 41mmを加えれば、話はさらに混沌とする。我々が比較しているのは約69.6%もの価格差と多くの実用的な違いを持つ、きわめて高度に製造され、信頼性が高く、魅力的な2本の時計なのだ。

Speedmaster

 新作のオメガ スピードマスターは、ブランドがより幅広い顧客層にリーチするのに役立つきわめて堅実なリリースだと思う。また、ほかのブランドが行うような“単なるダイヤルの色替え”よりも、ずっと思慮深いものに感じられる。そして今後数週間のうちにオメガの販売店に行けば、この新作を手にできる可能性が高いという事実はオメガの功績だ。

 新型ダイヤルの複雑さが、標準的な“サファイアサンドイッチ”仕様のスピードマスターに対して約20万円の価格上昇に見合うものかどうか、製造工程の内情を知らなければ判断は難しい。それは時計全般に言えることだ。このモデルについては比較対象となるデータがないが、標準的な“サファイアサンドイッチ”モデルの発売以来、インフレ率に対してどのように価格を上昇させてきたかを比較することはできる。

Speedmaster Prices

 ご覧のとおり、スピードマスターの価格は2021年1月のモデル発売以来、米ドルベースで28%上昇しているが、同期間の米国におけるインフレ率(消費者物価指数/CPIで測定)は24%であった。一方で、スイスのインフレ率はそれよりもはるかに低く抑えられているものの、スイスにおけるCPIと価格上昇率の差は、過去5年間に米国で経験した数値の2倍以上に達している。つまり、米国において30%近い値上げに見え(また、内部基準価格の影響でそのように感じられ)ているものは、実質的には4%程度の値上げに過ぎないのだ。スイス人にとっては、これが約8.5%となる。

 対照的にデイトナの価格上昇はより抑制されており、2021年以降のインフレ率をわずか1%上回る程度だ(ただしこれは後継機がまだ発表されていなかったため、Ref.116500LNの価格との比較である)。2023年のデイトナ Ref.126500LN発売以降のオメガとロレックスの最新リリースを比較すると、デイトナのインフレに対する価格上昇率はより低かった(オメガの約6%に対し、約4%)。もし過去3年間にスイスに住んでいたなら、スピードマスターの価格が1フラン(日本円で約196円)も上がっていないのを目の当たりにしたはずであり、一方でデイトナはごくわずかな上昇にとどまっている。私には、米国人が米ドルの変動とスイス製品に対する15%の関税のしわ寄せを受けているように思えてならない。

Speedmasters

 あるコメント主が鋭く指摘したように、私たちが“ぼったくられている”のかどうかを真に理解するには、外部からは計り知れない情報を知る必要がある。利益率、人件費、材料費、さらにはスイスフラン、日本円、ユーロ、そして米ドルが互いにどう影響し合っているのか、さらには生活費に至るまで。これらはほんの入り口に過ぎない。あと1秒の精度向上にどれほどの価値があるのか? パワーリザーブの1時間、あるいは自動巻きムーブメントにはどれほどの価値があるのか? おそらく、その価値の感じ方は人によって異なるだろう。結局のところ、自分の金をどう使いたいかという個人の直感に委ねられるのだ。

 新型スピードマスターが前述の計算に用いられたモデルではないことは承知しているが、データを検証してみると、多くの人々が騒ぎ立てているよりもその価格設定は確かに妥当なものであるように感じられる。私自身が比較してみた結果として言えるのは、もしリバースパンダ対決であれば、私はおそらくデイトナよりもスピードマスターを選ぶだろうということだ。しかし、もしパンダデイトナとの比較であれば、今回登場したスピードマスターやホワイトラッカー仕様のどちらよりも、デイトナのほうを選ぶだろう。このことは、これらふたつの時計がいかにアイコニックなモデルとして互角に競い合っているかを物語っている。

 オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル “ブラック&ホワイト” Ref.310.30.42.50.01.004についての詳細はブランド公式サイトから。ロレックス オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ Ref.126500LNについての詳細はブランド公式サイトから。