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今週は直近10年間で最も魅力的な(そして最も過小評価されている)時計と、20世紀末を特徴付けたトレンドとイノベーションを再考していく。ダイヤルアップ接続を行い、クリスタルペプシ(無色透明のコーラ)を手に取って準備だ。今週はずっとこのテーマを扱う。
90年代ウィークにちなんで、HODINKEEチームから何人かを集めて、90年代の好きな時計について少し書いてもらおうと思った。僕たちの多くは90年代キッズであり、バラ色に染まった思い出とともに当時を振り返っている。特に90年代の素晴らしい時計についてだ。
IWCのクロノグラフ、パテック フィリップの若者向けモデル、ツートンのデイトジャスト、手の届くダイバーズ、ハイスクールのG-SHOCKたち、ショパールの特別シリーズの誕生など、90年代のベストウォッチを9本ご紹介しよう。
あなたは90年代に何を身につけ、何を好んだだろうか? もし、お気に入りがなかったなら、ぜひコメントで教えてください。
ベン・クライマー(Ben Clymer) - IWC 3705(そしてパテック フィリップ 5070!)
90年代は、時計業界にとっても世界にとっても、奇妙な時代だった(ニューヨーク州北部のベンという、ポロシャツ姿で眼鏡の、異常に静かな中学生にとっては言うまでもなく)。しかし、クールなものが作られなかったというわけではない。私にとって90年代の時計といえば、IWCの3705だ。セラミックをメインストリームに押し上げ、バルジュー7750が極めて汎用性の高い重要なキャリバーであることをさらに証明した、まさに完璧な1本なのだ。この時計は、メルセデスE500と同じ年に発売された。まさに理想的な組み合わせだ。
同様に、数年後に発表されたパテックの5070も、私にとって90年代を象徴するモデルだ。パテックにとって30年ぶりとなるクロノグラフのみを搭載した時計だった。巨大で、変わっていて、とにかくカッコよかった。そして、その1年後、ダトグラフによって完全に破壊されてしまった。私の考えでは、パテックがほかのブランドに競合がないと言えたのは、このモデルが最後だったと思う。詳しくは、次のマークの90年代ピックを見てくれ。
-ベン・クライマー、創業者/エグゼクティブ・チェアマン
マーク・ハックマン(Mark Hackman) - A. ランゲ&ゾーネ ダトグラフ 403.035
もしフィリップ・デュフォー(Philippe Dufour)に最高のシリーズ化された腕時計は何かと尋ねれば、彼は自身のA.ランゲ&ゾーネ ダトグラフを取り出すだろうし、私はそれに異論を唱えるつもりはない。このモデルは1999年のものだ。その年は、腕時計のグランドコンプリケーション、初のアニュアルカレンダー、初のオメガのコーアクシャル脱進機、初のセイコー スプリングドライブ・ムーブメントなどを輩出した10年間の最終年でもある。機械式時計製造のルネサンスとなったその10年間で、ダトグラフとL951.1ムーブメントは傑出していた。
このムーブメントの構造的な美しさを書き表そうとすることは、グランドキャニオンの荘厳さを写真を撮って表現しようとするようなもので、無益な行為だ。実際に見てみないとわからないことがあるのだ。もし、ダトグラフを手にして血が騒がないなら、すぐに心臓専門医に診てもらう必要があるだろう。
-マーク・ハックマン、コピーライター
ローガン・ベイカー(Logan Baker) - ショパール L.U.C 1860
90年代は、時計業界にとってさまざまな意味で革新と発明の時代だった。新しい会社が生まれ、新しいコングロマリットが形成され、数え切れないほどの新しいキャリバーや時計がこの10年間に誕生した。そんな90年代の時計とムーブメントのなかで、その美しさと創意工夫において常に私を魅了し続けているのが、美しい自動巻きマイクロローターを備えるCal.1.96を搭載したショパール L.U.C. 1860だ。このモデルの製作には、私が最も好きな時計職人の一人であるミシェル・パルミジャーニ(Michel Parmigiani)氏が深く関わっており、私はその時計全体から放たれる静かな卓越性に深い感銘を受けている。
数年前、ルイス・ウェストファーレン(Louis Westphalen)がHODINKEEでこの時計を紹介した記事は必読だ。また、友人でRescapementのトニー・トレイナ(Tony Traina)は最近このシリーズにスポットライトを当てている。もちろん、ショパール L.U.C.1860とCal.1.96に関する究極の記事は、ウォルト・オデッツ(Walt Odets)氏によって書かれた。彼はCal.1.96を「(単に優れているだけでなく)現在スイスで製造されている最も優れた自動巻きキャリバー」と表現している。
-ローガン・ベイカー、ブランドエディター
マイルス・クサバ(Myles Kusaba) - ロレックス デイトジャスト 16233
ツートンでジュビリーブレスレットのデイトジャストほど90年代を象徴する時計はないだろう。真鍮のような文字盤、ゴールドのフルーテッドベゼル、そして折りたたまれたエンドリンクは、まさに20世紀末のデザイン言語であり、ビッグショルダーのアルマーニスーツや、95年式のシボレー ルミナのミニバンのようなものなのだ。この時計に対する私の思いは、純粋にノスタルジックなものであり、それが購入の理由にもなっている。
私が今この時計を身につけると「突然攻めたオシャレ野郎」のように見えるかもしれないが、頭のなかでは日本の祖父をイメージしている。ありえないほどハイウエストのズボンを履き、両手を後ろに組み、この時計を腕につけて道を闊歩していたのだ。
-マイルス・クサバ、ラグジュアリーウォッチ部門カテゴリーマネージャー
コール・ペニントン(Cole Pennington) - チューダー サブマリーナー 79090
90年代のチューダーのサブは、兄弟ブランドのサブと一見同じように見るが、実は共通点は少ない。ETA社のムーブメントを搭載しているので、時間とコストのかかる修理に出す必要がなく、どの時計屋でも修理が可能だ。今日、チューダーは兄弟ブランドから離れつつあるが、90年代には、おそらく二度と見ることができないような方法で、その関係を活かしていたのだ。ケースとブレスレットにあるクラウンが目印だ。
チューダーの時計は、90年代まで軍のダイバーに着用されていた。60年代にはフランス海軍、さらにはアメリカ海軍の特殊部隊にも採用されたという長年の伝統が受け継がれている。
-コール・ペニントン、編集者
サラ・ミラー(Sarah Miller) - G-SHOCK BABY-G
この時計について読んでいて、「私の中学時代の女の子はみんな持っていたはずだ」という主張に戸惑った。「そんなことはないだろう 」と思ったのだ。「こんなの持っていたら、または欲しかったら覚えているはずだ」。
そしてローガン・ベイカー( Logan Baker)にこの時計、特にピンクが好きだと言ったら、「そうそう、僕が中学校のとき女の子はみんな持っていたよ」と言われて、BABY-Gについての解説が若い人に向けられていたことに気がついた。中学時代には戻れないけどピンクのBABY-Gは手に入るし、読者の皆さん、私、手に入れました。防水で耐衝撃性があってタフな時計(しかもピンク)を手にするのに遅すぎるということはない。いつもどこかで90年代が息づいている。
-サラ・ミラー、シニアライター
リッチ・フォードン(Rich Fordon) - パテック フィリップ アクアノート Ref. 5060
90年代の時計で思い浮かぶのは、その時代に生まれたものではないが、当時流行していた変種である。例えば、カルティエのサントスやロレックスのツートンのデイトジャストなど。私が選んだのは、1990年代に生まれた、まさに象徴的な時計だ。パテック フィリップの初代アクアノートだ。
1997年に発表されたRef.5060は、当時数十年の歴史を持つノーチラスのデザインを「現代的に」解釈したモデルだ。ノーチラスに興味のなかった若い世代を取り込むことが目的だったが、パテックにとって驚きだったのは、このアクアノートの初回生産分はベテランの顧客がすぐに買い占め、若いコレクターが限定的にしか手に入れられなかったことだ。なぜこのモデルがヒットしたのか、私にもわかる。36mmという完璧なケースサイズ、文字盤の「グレネード」テクスチャー、そして「コンポジット」(ラバー)ストラップにも同様のフィーリング。初代アクアノートは理想的な高級スポーツウォッチなのである。スティール製ブレスレットのものについては私の責任ではない。私はこの時計をストラップでつけることだけを推奨している。
-リッチ・フォードン、バイヤー、ヴィンテージ
ダニー・ミルトン(Danny Milton) - タグ・ホイヤー 2000
私にとってタグ・ホイヤーと1990年代は、ピッタリな組み合わせだ。それは、その年代と当時の時計にとって、ピーナッツバターとジェリーのようなものなのだ。今日の愛好家は、このブランドを「モールウォッチ」などと呼び批判することに相当なエネルギーを費やしてる。だが、90年代という時代ではそれこそが強みだと思う。タグ・ホイヤー 2000は、どのデザインも、その時代のスタイルを映し出す鏡であり、影響でもあると思う。そこがこの時代で最も好きな時計である理由なのだ。
私の頭にはすぐに巧みなTAGの書体が浮かぶ(カラーの場合もあれば、そうでない場合もある)。スパイク・フェレスティン(Spike Feresten)が『レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン』 (Late Show with David Letterman) のギャラで購入したのは正しかったのだ。90年代のTAGに勝るものはない。
-ダニー・ミルトン、シニアエディター
ジェームズ・ステイシー(James Stacey)- セイコー SKX007
僕はThree On Threeの時計にこれを選んだが、リッチがアクアノートを今回選んだので、ここでもまたセイコーのSKX007を選んだ。SKX007は、僕にとってマニアックな自動巻き時計やダイバーズウォッチとの出会いであり、時計ライターへの道を切り開いてくれたといっても過言ではない。
SKX007は、1996年にISO規格に準拠した200m防水のエントリーモデルとして発売され、その後20年以上にわたり、90年代のどの時計よりも影響力を持つことになった。42.5mmのスティール、ハードレックス・クリスタル、そして夜光塗料を使用したSKX007は、安価で非常に魅力的であり、1990年代の真のツールウォッチとして、新しくオンラインで時計を買う全世代に、時計愛好への世界を開くことになったのだ。
何年もかけて、僕は12時間ベゼルを旅行用に改造し、この時計は素晴らしいパートナーになり、優れた日常時計にもなった。もちろん、90年代に作られた時計にはもっと優れたものがあるが、SKX007(とその兄弟機)は、今日でも使われ続けるムーブメントを初めて搭載したモデルなのだ。
-ジェームズ・ステイシー、シニアライター
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