One to Watch アエラはツールウォッチをコンテンポラリーに昇華する英国の若手ブランド

　アエラは、ジュネーブでの出会いをきっかけに、共同創業者のジャス・ミンハス氏とオロフ・ラルソン氏によって2018年初頭に設立された。ミンハス氏とオロフ・ラルソン氏は、ともに時計業界で確立された経歴を持つ。二人の友情は、2002年にスウェーデンのアイスホテルで行われたアイクポッドのイベントにまでさかのぼることができる。ミンハス氏の父親は、複数のブランド（モバード、ティソ、シチズンなど）をサポートする流通ビジネスを立ち上げており、マーク・ニューソン氏とは友人で、米国、メキシコ、インド、英国市場へのアイクポッドの流通を立ち上げる手助けをしていた。ラルソン氏はスウェーデンでアイクポッドの小売店をしており、二人が出会ったとき、将来の時計ブランドの種ができたのだ。

　アイクポッドに興味を持ったことからわかるように、当然のことながら両氏はコンテンポラリーデザインの大ファンだ。彼らは、ミッドセンチュリーのアイコンと同じ理想（堅牢性、視認性、ツールとしての魅力など）を持ちながら、単に古い見た目を模倣するだけではない、現代的なスポーツウォッチを作るチャンスだと考えたのだ。

　約4年の開発期間を経て、この現代的な思考はやがてアエラとなり、ここで紹介するふたつの時計となる。P-1 パイロットとD-1 ダイバーだ。どちらも正式に発売されたばかりだ。

　多くの点で、特にD-1 ダイバーは、コボルド（Kobold）やジン（Sinn）といったブランドで僕が最初にした経験を思い起こさせる（そして、そこにアイクポッドによるインスピレーションを感じるのも難しくない）。このふたつの時計はやや大きめだが、どちらもカーブしたラグを持つケース、美しく作られたストラップ、そしてフラットなケースバックの形状が特徴で、腕につけたときに重心が高くなりバランスを崩すようなことはない。

　両モデルとも素材は904Lステンレススティール、クローズドケースバック、クイックチェンジストラップ（複数のオプションあり）、ドーム型の無反射防止コーティングが施されたサファイアクリスタル風防、シングルピースのカーブダイヤル、それに使いやすい大きめのリューズを採用している。

　D-1 ダイバーは、ベゼルの縁の下に収まるように湾曲したケース形状で、42mmのケース幅と44mmのベゼル幅をうまくバランスさせ、最適なグリップ感と手首での存在感を実現している。厚みは16mm、ラグ間は49.8mmで、ヴィンテージのスキンダイバーのようなつけ心地は期待しない方がいい。とはいえ、ほとんどセイコーのSPR777のように、D-1は僕の7インチ（約17.7cm）の手首に完璧にフィットすることがわかった。

　300m防水、ねじ込み式リューズのD-1は、夜光マーカー付きのマットブラックのセラミックベゼルインサート（120クリック）、十分な夜光塗料、視認性の高い針、日付表示の排除など、現代のダイバーズウォッチに求められる要素をすべて備えている。120クリックベゼルは使用時には重すぎず、（手袋をしたままでも）非常に操作しやすくなっている。

　P-1 パイロットも、それと同じレベルの仕上がりだ。滑らかで独特なケースシェイプは、カーブした風防とシームレスにつながり（これらの時計にボックスカットは一切なし）、直径43mm、厚さ15mm、ラグからラグの全長49.8mmというサイズだ。ふたつの時計のうち、P-1が大きく見えるのは、文字盤が大きく、リューズのデザインが突出しているためと思われる。ダイバーズと同様、下向きのラグとカーブしたクイックチェンジストラップにより、P-1はそのサイズにもかかわらず快適。15mmの厚さの大部分は風防に起因している。

　P-1もD-1も40mmに近いサイズだといいのだが（壊れたレコードのよう繰り返すようだが、これは特にP-1にも言いたい）、どちらもこのサイズでうまい作り方をしているので、もしあなたが少し大きめのスポーツウォッチが好きなら理想的だろう。この2本のうち、僕はD-1の外観と感触がとても気に入っている。ダイバーズウォッチが好みなのは確かだが、装着されていたラバーストラップが非常に高品質だったことも理由のひとつだ。柔らかく、とてもしなやかで、D-1を腕にぴったりとフィットさせるのに最適な形状だ。

　前述の通り、ケース、ケースバック、ベゼル、リューズ（ストラップのバックルさえも）はすべて904Lスティール製で、これは316L（例えば）よりも加工が難しく、はるかに高価であり、異なる（より白く明るい発色）色合いと優れた耐腐食性を提供するものだ。

　P-1、D-1ともに、文字盤と見返しのあいだに継ぎ目がない（少なくとも、一般的な時計にはある）一枚板の皿のようなダイヤルを採用しているため、このような珍しい文字盤の仕上げができるのだろう。この効果は、特にドーム型クリスタルと組み合わされて実際に目にすると本当に素晴らしく、この価格帯ではあり得ないユニークなタッチを両モデルに与えている。

　しかし、この二重のカーブは、時計の文字盤に夜光をプリントする機械にとって厄介なもので、アエラは夜光の品質が落ちないような別の解決策を見出す必要に迫られた。そこで、夜光塗料を塗布しやすくするために文字盤にエッチングを施し、スイスの会社に依頼して1本1本手作業で夜光塗料を塗布させたのだ。この過剰なまでのこだわりが実を結び、特にD-1の文字盤、針、ベゼル、リューズキャップにはブルーエミッション夜光（BGW9と思われる）が使用されているものの、D-1、P-1ともに明るく、長持ちするようになった。

　両モデルともスイス製のセリタSW200-1自動巻きムーブメントを採用している。マイクロブランド界に詳しい人なら、このムーブメントに驚きはないだろう。4Hzの自動巻きで信頼性が高く、メンテナンスが容易で、38時間のパワーリザーブを備えている。残念ながら、アエラはP-1とD-1が日付なしモデルであるにもかかわらず、このムーブメントの日付機能を維持することを選択したため、リューズには「ゴースト」日付位置が残されてしまった（編集注：リューズを引き出した際に一段不要な引っ掛かりがある。まるで幽霊のように）。小さなことだが、この時計の価格とそれほかのデザインの細かな配慮を考えると、これは見落としだったような気がするのだ。この価格帯では、ノンデイトの時計にはノンデイトのムーブメントを搭載すべきだろう。

　デイト表示のマイナーな問題を除けば、このアエラの最初の時計は、フレッシュで、よくできた、よく考えられた製品だと感心する。現在、両モデルとも「ローンチエディション」として、P-1パイロットが1300ドル（約15万円）、D-1ダイバーが1400ドル（約16万円）で販売されている。

　この価格で、追加のストラップを選ぶことができ（各モデル6種類）、両モデルともアエラの3年保証付き。それにイギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、イタリアへの注文には送料と税金を負担してくれる（これは初めてのことで、ブランドが輸入税を負担する例を他に知らないように思う）。特に限定というわけではないが、アエラの各モデルには製造番号が振られており、どちらも300本ごとのロットで生産される。

　この最初の製品が市場に出たことでアエラは、1000ドルから3000ドル以上のレンジをターゲットとする、英国拠点の小規模ブランドの仲間に加わることになった。各方面から注目の競争相手がいないわけではないが、D-1、P-1両モデルとも個性的でスタイリッシュ、そして若いブランドからは想像しがたい成熟した印象を与えられると思う。今後どのように進化し、ラインアップを充実させていくのか楽しみなブランドで、注目に値するまさに"one to watch"にピッタリだと思う。