Illustration by Andy Gottschalk
新しくて非常にばかげたアクション映画『ブレット・トレイン(原題:Bullet Train)』。ブラッド・ピット(Brad Pitt)が演じるのは、1千万ドルの入ったブリーフケースを奪うだけの犯罪請負人だ。そのケースが置かれている場所は、そう、高速列車のなかである。
ピットは指令役から電話で同時に指示を受けて、とある駅で電車に乗り込み、商品を手に入れ、次の駅で降りるという仕事をしている。これは映画であり、『キル・ビル』や『カンフーハッスル』のように、計画どおりにいかないことはおわかりいただけるだろう。 その代わり、ピットはありえないほど複雑に絡み合ったシナリオに知らず知らずのうちに巻き込まれた犯罪者たちでいっぱいの列車のなかで、奮闘することになる。
その結果、唯一残された道は、移動する列車のなかで互いに執拗に戦い続けることだった。 ピットはこの映画で、超一流時計ブランドの貴金属製ヴィンテージリバイバルを身につけ、真剣勝負を繰り広げる。
注目する理由
今日(日本では2022年9月1日公開予定)は、ピットの元スタントマン、デヴィッド・リーチ(David Leitch)が監督を務める、このなかなか期待されているアクションコメディの公開日だ(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(原題:Once Upon a Time in Hollywood)』の筋書きが現実になったような感じの映画)。私は試写会に参加する機会があり、とても楽しんだ。血が噴き出すのが苦手な人には、この作品は向かないかもしれない。しかし、スクリーンのなかで繰り広げられる素晴らしいショーが好きで、そのショーを見るためならば、かなり激しい(そしてしばしばかなり愉快な)大げさな暴力に目をつぶれるという人なら、この映画を見ることをおすすめする。
ピットが演じるのはレディバグ(本名ではなくコードネーム。この映画では誰もがコードネームを持っている)。 雇われの泥棒で、暗殺者になるつもりだった彼は、過去に別の仕事で出会ったほかの暗殺者のチームと接近戦をすることになる。彼らがこの列車に一緒に乗ることになった理由はネタバレしないでおくが、必ずしも仲がいいわけではないこと、レディバグがアクションとユーモアのバランスが絶妙な、素晴らしい演出のシーンに登場することだけは言っておこう。
これは素晴らしい映画なのだろうか? いや、典型的な夏の定番映画だ。しかし、レディバグが特別なブライトリングのヴィンテージリバイバルを身につけてこのように活躍するのだから、いい時計の映画である。
2021年に登場したブライトリングのAVI Ref. 765 1953 リ・エディションは、1953年(驚くべきことだ)のヴィンテージブライトリングの復刻版であり、ヴィンテージとモダンが融合した完璧な時計である。昨年、我々はこのモデルのスティール製バリエーションを身につけて、A Week on the Wristの企画を行った。コール・ペニントンは、この新しい時計をベースとなったオリジナルと比較しながら、興味深いことを述べていた。「もし53年モデルがNOS(ニューオールドストック)で、1日も経っていなかったら、見分けるのは本当に大変だっただろう」と彼は書いている。 「重さの違いさえわからないほどだ」と。
さて、ピットは映画のなかでこの時計を選んだが、ただ単にバリエーションを選んだわけではない。映画スターらしく、プラチナにブルーダイヤルのモデルを選んだのだ。全速力のアクション映画のなかで、プラチナのヴィンテージモデルを腕にはめ、しかもそれをありふれたものに見せることができるのは、彼だけだろう。ストラップだが、彼は付属のレザーストラップもブライトリングのより丈夫なものに交換している。
あなた方はこう思うかもしれない。「ダニー、ブラッド・ピットはブライトリングのアンバサダーなんだ! これは単なる商品紹介に過ぎない」と。そのとおり、ピットはブライトリングのブランドアンバサダーだ。実は、より具体的に言えば、アダム・ドライバーやシャーリーズ・セロンとともにブライトリング・シネマ・スクワッドのメンバーなのである。しかし、どうだろう? ピットは、望めばどんな古い時計でも簡単に身につけることができたのだから、だれが気にするだろうか。もっと現代的なもの、ブランドが本気で売りたいものがあったかもしれない。でも、ここではそうしなかった。 その代わりに、彼は非常に特殊なヴィンテージの復刻版のなかでも最も難解なものを選び、それを彼のキャラクターの一部にしたのである。ブランドからお金をもらっているからといって、その選択が思慮深くないものであってはならないのだ。
そして、彼は全編にわたってこの腕時計をつけている。戦闘が多いため、レーザーで照らし出すのが難しい場面もあるが、常に見えている状態だ。映画のなかで最もいい部分はこの腕時計をクローズアップしたヒーローショットだが、これは私が最近見たなかで最高のものかもしれない。その気になれば一時停止して切り取り、壁に飾れるようなショットだ(私でさえそんなことをするのはおかしいと思うのだが)。
個人的に、レディバグの時計のチョイスが好きだ。彼はどこか飄々としたキャラクターを演じている。最近、自己省察とセラピーを経験した犯罪者で、犯罪の裏社会で活動を続けながら、自分の精神的な健康を改善しようとしている。過去の大勝負によって現金でいっぱいのブリーフケースを手に入れ、このプラチナ製ブライトリングを購入したのか、それとも受け継がれたヴィンテージウォッチを表現しているのかは、誰にもわからない。いずれにせよ、とても素敵な時計だ。私が言いたいのは、ブラッド・ピットにできないことはないということである。
見るべきシーン
映画の中盤近くで、レディバグは列車内でタンジェリン(アーロン・テイラー=ジョンソンが演じる)という暗殺者と顔を合わせる。タンジェリンは、レディバグが自分と同じブリーフケースを狙っていることを知り、ふたりはたちまち接近戦に突入。食堂車にたどり着くまで、列車内のさまざまな場所で戦いを繰り広げる。殴る、蹴る、物を投げるということをしていた彼らは、食品を再補充しようとする列車のスタッフのひとりに戦いを止められる。彼女は先ほどまで行われていた戦いに気づかず、食べたり飲んだりしたいものがないかと尋ねる。レディバグが陽気に水を要求したとき、その手首には1953 リ・エディションが見える。彼はスタッフが帰るまで水を飲み続け、そこでまた戦いが始まる。
その後、レディバグはまた別の暗殺者と接触し、大きな戦いが繰り広げられる。このあたりがテーマだろうか。ネタバレになるが、戦いのあと、レディバグはちょっとした不安発作に襲われ、紙袋を手にして列車の床に避難する。彼が息を吸って吐き出しストレスから逃れようとするとき、手首にあるブライトリングとそのレザーストラップがはっきりと見えるのだ。さすがにこれが彼の最後の戦いになることはないだろう。
ブラッド・ピット主演の『ブレット・トレイン』は、デヴィッド・リーチ監督作品。現在、全世界で公開中(日本では2022年9月1日公開予定)。
HODINKEE Shopはブライトリングの正規販売店です。こちらから販売品をご覧ください。ブライトリングの詳細については、ブライトリングの公式ウェブサイトをご覧ください。
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