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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(Once Upon a Time in... Hollywood)』(2019年) は、クエンティン・タランティーノ監督が幼少期を過ごしたロサンゼルスを描き(文字通り、街区全体を再現)、1969年に起きたマンソン・ファミリーによる殺人事件を非現実的に再現することで、ノスタルジーを最大限に表現した。この映画は、仕事がなかなか思い通りにいかない中堅テレビ俳優のリック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)と、彼が信頼するスタントダブルのクリフ・ブース(イカしたシチズンを着けたブラッド・ピット)の物語だ。
注目する理由
4月にアークライトとパシフィックの両劇場が閉鎖されるという悲しいニュースが流れた。パンデミックの影響で財政的に苦しくなり、自力での再オープンが不可能になってしまったのだ。ロサンゼルスのシネラマドームも深刻な影響を受け、それが今週の映画選びの大きな理由となった。映画の中で最も変化に富んだシークエンスの一つは、夜になるとロサンゼルスのダウンタウン全体が、建物ごとにライトアップされていくていくところだ。その中には、ミッドセンチュリーのアイコニックな看板を持つ有名なシネラマシアターも含まれている。この建物は歴史的建造物であり、永久に閉鎖されないことを願う。
タランティーノ監督のハリウッドへのラブレターは、ディカプリオとピットという現代の2大スターを過去に遡らせた。ピットが演じるのは、ミステリアスでストイックなスタントマン―親友でもある―のブースだ。様々な車を運転して街中を走り、ドライブインシアターの裏にあるトレーラーで愛犬と暮らし、ブラウンの太いストラップのシチズン 8110ブルヘッド(ツノクロノ)を着けている。
ピットのキャラクターは、髪型や時計のストラップに至るまで、70年代のロバート・レッドフォード(二人はトニー・スコット監督の「スパイ・ゲーム」で共演したことがある)のイメージを効果的に取り入れた。我々の時計映画紹介記事の第1回目では、レッドフォードとドクサが登場したが、これもバンドストラップだった。ピットは90年代から2000年代にかけて実生活ではロレックスを愛用していたが、その後はブライトリングのシネマ・スクワッドのブランドアンバサダーを務めている。興味深いことに、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で彼が着用しているシチズンの8110は、実は時代的に正しくない。この時計は1972年に発売されたが、映画の舞台は1969年だ。私の熟慮の末の意見を言うと、そんなことはどうでもいい。これは映画なのだから。疑念を一時停止することが鑑賞の本質なのだ。
見るべきシーン
映画は、ディカプリオが演じる主人公の俳優としてのキャリアが明らかに終わったところから始まる。アル・パチーノ演じるプロデューサーと会った後、ピットはAMラジオを聴きながら2人を家まで送り届ける。その車中で(00:16:15)、ディカプリオは自分のキャリアが落ち目になっていること、ローマでマカロニ・ウエスタンの役しかもらえなくなっていることを嘆く。「映画撮影のためにローマに行くのは、あなたが言うように死ぬより悪いとは思えないな」とピットは切り返す。茶色のストラップとシチズンの時計がフロントガラス越しに夕日を受けている。時計の見どころはさらに続く。左手でハンドルを握り左手首の時計を見せながら、ピットは埃をかぶったカブリオレに乗り込み(00:20:45) 、LAのダウンタウンを走り抜ける。
ところでこの映画は、荒唐無稽なラストシーンを抜きにしては語れない。ネタバレ注意だが。マルガリータを飲みまくった後、ピットはディカプリオの家に戻り(2:23:30)タバコに火をつけると、悪名高いマンソン・ファミリー(「悪魔の仕事」をするためにやってきた)と対面してしまう。
白いパンツ姿のピットは、腕のシチズンとストラップをはっきり見せながら壮大なスケールのアクションを繰り広げ、最後はディカプリオが裏庭のプールに火炎放射器を投げ込んで終わる。時計が無事でよかった。
映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(Once Upon a Time in... Hollywood)』 (出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー)監督はクエンティン・タランティーノ、衣装デザインはアリアン・フィリップス、小道具はクリス・コール、撮影はロバート・リチャードソンが担当。STARZでストリーミング配信、AmazonやiTunesでレンタルもできる。映画の時計の現代版はこちら。
トップ画像: Columbia Pictures/Sony