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Hands-On ブレゲ トラディション 7037&GMT 7067 新しいダイヤルと色彩がもたらしたアイコンモデルの現代的解釈

2005年の誕生以来、ブレゲの機械美を象徴してきたトラディションが刷新。エナメルダイヤル、ブレゲ数字、38mmケースを得た新作は、構造ではなく表現を進化させたモデルだ。

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2005年に誕生したブレゲのトラディションは、同メゾンを代表するコレクションのひとつだ。アブラアン-ルイ・ブレゲが18世紀末に製作した懐中時計の構造を現代の腕時計へと移植し、通常はケースバック側に隠されるムーブメントの機構をダイヤル側に露出させるという独創的なデザインで知られている。

 そして2026年、ブレゲはこのトラディションにアップデートを実施した。発表されたのはトラディション 7037、トラディション GMT 7067、トラディション 7038、そしてトラディション オートマティック レトログラードセコンド 7097だ。本稿では主に、実機を撮影することができた7037とGMT 7067についてのレビューをする。

 いずれも、一見すると従来モデル(機能としては7057が新作の7037に近い。GMT 7067は、まさに以前からラインナップされているシリーズである)のカラーバリエーションの追加にも見える。だが、その内容を詳しく見ていくと、単なる外装変更以上の意味を持つことがわかる。最も興味深いのは、ブレゲがトラディションというコレクションの本質を維持しながら、その見せ方を現代的な方向へと再定義した点だ。

 まず押さえておきたいのは、トラディションの根幹は変わっていないということだ。オフセンター配置された時刻表示、左右対称で構成された輪列、香箱、テンプ、そしてパラシュート耐震装置。これらは既存モデルと同様で、アブラアン-ルイ・ブレゲが生み出した懐中時計「スースクリプションウォッチ」や「モントレ・ア・タクト」に着想を得たもので、その構造を現代的に解釈するという基本思想も同様だ。

 7037は引き続き自動巻きCal.505SR系の機械を搭載しており、GMT 7067もGMT機能を備える手巻きのCal.507DRFを継続採用する。パワーリザーブも従来と同様に約50時間だ。ケース形状なども基本的には大きく変わらない。つまり今回の刷新は、機構面をはじめとするトラディションの設計思想そのものを変えるためのものではなく、視覚表現や素材使いに集中し、その魅力を新たな形で表現するためのアップデートなのだ。

7037 ホワイトエナメルダイヤル。すべてPhotographs by Kyosuke Sato

7037 ブラックエナメルダイヤル。

 最も大きな変化はダイヤルだ。これまでのトラディションは、ギヨシェ彫りを施したゴールド製ダイヤルを採用するモデルが中心だった。ギヨシェはブレゲを象徴する伝統技法であり、長らくコレクションのアイデンティティでもあった。しかし新しいコレクションではその多くが、ギヨシェがグラン・フー エナメルへと置き換えられた。

従来はシンプルなサーキュラー仕上げだった香箱蓋は、新作ではスネイル模様のギヨシェ彫りが施されて装飾性が高められた。Photograph by Kyosuke Sato

 7037では、ホワイトとブラックのエナメルダイヤルを採用。GMT 7067では、コレクション初となるグリーングラデーションのエナメルダイヤルが導入されている。グラン・フー エナメルは高温で何度も焼成を繰り返して完成に至る伝統工芸で、均一な色調と長期にわたり変色しない美しさを備える。新しいトラディションは、このエナメルダイヤルにより、従来以上に工芸品としての側面を強めたことは間違いない。

GMT 7067 グリーングラデーションエナメルダイヤル。Photograph by Kyosuke Sato

Photograph by Kyosuke Sato

 もうひとつの重要な変化がインデックスである。新作ではローマ数字に代わり、アラビア書体のブレゲ数字が採用された。これは単純なモダナイズというわけではない。アブラアン-ルイ・ブレゲは、1799年の時点ですでにアラビア数字を懐中時計のダイヤルに積極的に用いていたという。“ブレゲ数字”として知られる独特の書体も、もともとは彼が考案したデザインであり、今回の変更は歴史から離れるのではなく、むしろ創業者の思想へ回帰するための選択と言えよう。

Photograph by Kyosuke Sato

 同じくダイヤルと言うべきか、露出するムーブメントの仕上げも大きく変化した。7037のホワイトエナメルダイヤルでは地板やブリッジにブルーのALD処理を、ブラックエナメルダイヤル、およびGMT 7067では、ブラックPVDによるダークトーン仕上げを採用した。従来のトラディションにおけるムーブメントの仕上げはロジウムのシルバーやグレーを基調とした色使いで比較的クラシックな外観だったが、新作は色彩を積極的に用いることで各部品の存在感を強調。結果として、ムーブメントの建築的な構造がより立体的に浮かび上がるようになった。

7037 ホワイトエナメルダイヤル。すべてPhotographs by Kyosuke Sato

7037 ブラックエナメルダイヤル。

GMT 7067 グリーングラデーションエナメルダイヤル。


7037の40mmを切る小ぶりなサイジング

Photograph by Kyosuke Sato

 最も注目すべきは7037だ。本作は前述のとおり、コレクションの既存モデルとは異なる外装表現がポイントであるが、見逃せないのが38mmというケース径である。既存のトラディションは、代表的なレトログラードセコンド 7097カンティエーム・レトログラード 7597など、基本的に40mmで展開されてきたが、これはその流れに対する新たなサイズ提案と言える。ただし厳密には、2025年の限定モデルとして登場したトラディション 7035が38mmだったので、昨年からその萌芽があったのかもしれない。

Photograph by Kyosuke Sato

 ただし、単純に小さくなっただけではない。搭載されるCal.505SRは直径32.8mmで、既存の7097が持つCal.505SR1と同じムーブメント径だが、ケースの2mmの違いがここで大きく影響する。ダイヤル側にムーブメントを露出させるトラディションにおいて、このわずかな差は視覚的な密度に直結している。実際に7037を見てみると、機構がよりケースいっぱい(既存の7097や、新作のGMT 7067と比べても)に収まり、コレクション特有の立体的で構造的なムーブメントがいっそう凝縮して見える。

 一方、7037のケース厚は12.7mmであり、40mm径の7097の11.8mmよりも厚い。38mmという数字から想像される薄型ドレスウォッチ的な方向ではなく、むしろ立体的な機械を小径ケースに収めることで、そのムーブメントの構造を強調したモデルと考えるべきだろう。小さくはなったが、存在感まで抑えたわけではない。ここに7037の絶妙なサイズ設定の特徴がある。

Photograph by Kyosuke Sato

 ストラップの変化も見逃せないだろう。これまでのトラディションはアリゲーターストラップが主流だった。しかし新作ではラバーやファブリックなどを採用。7037では、ホワイトエナメルダイヤルにブルーラバー、ブラックエナメルダイヤルはブラックラバー、GMT 7067ではグリーンのステッチをあしらったラバーストラップ仕様を用意する。いずれもインターチェンジャブル仕様で、クラシカルなドレスウォッチという位置付けから、日常的に着用するラグジュアリーウォッチを意識したアップデートが読み取れる。

 新作で変わったのは、“構造”ではなく“表現”だ。新しいトラディションは、機械構造を変えたのではなく、その魅力の伝え方を変えたというのが的確だろう。ムーブメントの建築的構造やブレゲが追求してきた機械美そのものは一切揺らいでいない。一方で、ダイヤルやカラーリング、仕上げ、そしてストラップなど、ユーザーが最も強く使用感を体感する部分で刷新を加えている。トラディション(伝統)とは、世代を超えて継承されるものだが、決して固定された過去のものではない。時代に合わせて少しずつ形を変えながら現代の生活に溶け込み、新しい土台となることでもある。今回のアップデートは単なるモダナイズではなく、むしろその名にふさわしい進化と言えるだろう。

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基本情報

ブランド: ブレゲ(Breguet)
モデル名: トラディション 7037、トラディション GMT 7067(Tradition 7037、Tradition GMT 7067)
型番:7037BB/YB/5V6(7037 ホワイトエナメルダイヤル)、7037PT/N9/5V6(7037 ブラックエナメルダイヤル)、7067PT/NM/5W6(GMT 7067 グリーングラデーションエナメルダイヤル)

直径: 38mm(7037)、40mm(GMT 7067)
厚さ: 12.7mm(7037)、12.1mm(GMT 7067)
ケース素材: 18KWG(7037 ホワイトエナメルダイヤル)、プラチナ950(7037 ブラックエナメルダイヤル、GMT 7067 グリーングラデーションエナメルダイヤル)
文字盤色: ホワイト&ブラック(7037)、グリーングラデーション(GMT 7067)
インデックス: ブレゲ数字、針はブレゲ穴あきポム針(7037はSS製、GMT 7067はゴールド製)
夜光: なし
防水性能: 3気圧
ストラップ/ブレスレット:18KWG(7037 ホワイトエナメルダイヤル)、ないしはプラチナ950(7037 ブラックエナメルダイヤル、GMT 7067 グリーングラデーションエナメルダイヤル)のアルディヨンバックル、7037 ホワイトエナメルダイヤルはブルーラバー、ブラックエナメルダイヤルはブラックラバー、GMT 7067はグリーンのステッチをあしらったラバーストラップ


ムーブメント情報

キャリバー: 505 SR(7037)、507DRF(GMT 7067)
機能: 時・分表示、レトログラードセコンド(7037)、時・分表示、デイ/ナイト表示、パワーリザーブインジケーター、第2時間帯表示(GMT 7067)
直径: 32.8 mm(7037)、32.8 mm(GMT 7067)
厚さ: 6.3mm(7037)、7.5mm(GMT 7067)
パワーリザーブ: 約50時間
巻き上げ方式: 自動巻き(7037)、手巻き(GMT 7067)
振動数: 2万1600振動/時
石数: 38(7037)、40(GMT 7067)
クロノメーター認定: なし
追加情報:シリコン製ブレゲひげゼンマイ


価格&発売時期

価格: 7037 ホワイトエナメルダイヤルは761万2000円、7037 ブラックエナメルダイヤルは837万1000円、GMT 7067 グリーングラデーションエナメルダイヤルは1057万1000円(すべて税込)
発売時期: 発売中
限定: なし。レギュラーコレクション

詳細は、ブレゲ公式サイトをクリック。

Hero Image by Kyosuke Sato。そのほか、特に表記のない画像は、Photographs by Yuki Matsumoto