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Bring a Loupe 素晴らしいコンディションを保った2本のチューダー、そしてパテック フィリップ初のクォーツウォッチ

今市場に出ている掘り出し物のヴィンテージウォッチをお届けしよう。

Bring A Loupeへようこそ。うれしいことに、今週紹介する4本はいずれも中立国であり高級時計製造と金融の中心地として知られる国、スイスのものだ。

 その前に前回の結果を振り返ろう。LoupeThisのオークションに出品されたハブリング² モノクローム モントレ ド  スースクリプション 1が7810ドル(日本円で約115万円)で落札。“燃えるような” ロレックス GMTマスター Ref.1675のイエローゴールドモデルがトロピカル ウォッチ(Tropical Watch)経由で3万6550ドル(日本円で約540万円)、そして最後にeBayのモバード デイトロン HS360 スーパー サブ シー クロノグラフが1925ドル(日本円で約28万円)で落札された。アメリカやヨーロッパのあらゆる都市で気温が上昇しているのに合わせて、時計市場も熱を帯びてきているのだろうか? それは誰にもわからない。

 さて今週のピックを紹介していこう。


1971年製 チューダー オイスターデイト クロノグラフ Ref.7032/0 “モンテカルロ ホームプレート” 整備前のオリジナルコンディション
A 1971 Tudor Oysterdate Chronograph

 最新のニューヨークオークションシーズンを総括した最近の記事で、ヴィンテージウォッチやコレクタブルウォッチの世界にいて“フレッシュ・トゥ・マーケット(市場初登場)”という言葉がどのような使われ方をしているかについて述べた。オリジナルオーナーから出品された時計から、これまで公開されたことのないシリアルナンバーを持つ時計まで、いまやこの言葉はちょっとしたバズワードになっている。しかしそれらは、コレクターにとって実際に価値があるものとして受け取られているようだ。今回最初のピックは、“フレッシュ ”に新しい意味を与える存在だ。このチューダー モンテカルロはフロリダを拠点とするディーラーを通じて“市場に出たばかりのもので、フロリダ中央部のエステートセールで発見されたもの”として提供される。そして、その佇まいはまさにそれを物語っている。木曜や金曜の朝、エステートセールの開場に並んだことのある者として私はこのような状態の時計を見たことがある。汚れていたり埃っぽかったり、確かに修理が必要だったりするのだが、ヴィンテージ時計愛好家の心を独特の高揚感で満たすのだ。

 私のエステートセールにおけるこれまでの発掘品はセイコーやワックマンといったカテゴリーのものが多かったが、今回の発掘品は別格だ。Ref.7032/0はチューダー初のクロノグラフのひとつである。1970年代製でブラックの“プレキシガラス”製ベゼルインサートを備えたRef.7031/0の姉妹モデルであり、スティール製ベゼルを備えたRef.7032/0はどんなコンディションであれ注目に値するモデルだ。1971年までには、チューダーは第2世代のオイスターデイト クロノグラフ、Ref.7149/0、7159/0、7169/0の製造を開始していた。この初代モデルはわずか1年間の製造であったため、現存数は非常に少ない。

A 1971 Tudor Oysterdate Chronograph
A 1971 Tudor Oysterdate Chronograph
A 1971 Tudor Oysterdate Chronograph

 Ref.7032/0には手巻きのバルジュー製Cal.7734が搭載されており、ケース径は39mm。同時期のロレックス デイトナ Ref.6265の37mmという直径サイズと比べてもかなり大きい。その誕生から時間を経るなかで、このモデルにはコレクターによってふたつの愛称が付けられてきた。ひとつ目は“モンテカルロ”で、これは使用されている鮮やかなカラーリングが“フランスのリヴィエラにある豪奢なカジノと華やかでラグジュアリーな中心街”を想起させることに由来する。そしてもうひとつは“ホームプレート”で、アワーマーカーの形状が野球のホームベースを彷彿とさせることにちなんでいる。なお、このデザインは1年間のみ製造された初代モデル特有のディテールである。

 ケースのコンディションとしては、長年の使用による埃や汚れの下にラグのシャープな面取りが残り、各所にオリジナルのヘアライン仕上げがしっかりと確認できるものとなっている。すり傷のあるプラスチック風防の下に見えるダイヤルには、多少の磨耗があるものの、夜光塗料に深みのある素晴らしいパティーナが見られる。端的に言えばこれは素晴らしい個体だ。購入者には、ヴィンテージに特化したサービスセンターとして定評のあるLA Watchworksによるケースの外装仕上げとクリーニングが付帯する。

 フロリダにあるLunar Oysterのキリル(Kiril)氏が、このヴィンテージ チューダー クロノグラフを4万5000ドル(日本円で約660万円)で販売。なお、このリファレンスの類似個体が2020年にフィリップスで10万7100ドル(当時のレートで約1140万円)で落札されていることは特筆すべき事実である。詳しくはこちらから。


1962年製 チューダー サブマリーナー Ref.7928 ポインテッドクラウンガード付き
A 1962 Tudor Submariner

  私がBring A Loupeを担当して以来、定期的に読んでくださっている方なら私がギルトダイヤルのチューダー サブマリーナーを愛していることをすでにご存じだろう。ロレックスのサブマリーナーと同様、ヴィンテージ期におけるチューダーのサブマリーナーには掘り下げ甲斐のあるディープでマニアックな歴史が存在する。1960年代、ロレックスのサブマリーナーが深い光沢を放つ、いわゆる“ギルト”ダイヤルを備えていたのに対し、同時期のチューダーは異なる仕上げを採用していた。それがマットギルトだ。印字やチャプターリングの色調は同じでも、ダイヤルのブラックはより柔らかく、実際の印象は明らかに異なる。近年では光沢面の脆さや擦り傷を恐れてロレックスのギルトダイヤルを敬遠するコレクターも増えているが、チューダーのギルトダイヤルにはそうした心配はほとんどない。

 この個体はロンドンのボナムズでオークションに出品されている。完璧とは言えないが、この雰囲気がたまらなく好きだ。私のささやかな意見では、サブマリーナーの魅力はまずダイヤルと針にある。この時計はケースこそまずまずといったところだが、ダイヤルと針に関しては極上だ。そしてそう、ベゼルはいつの間にか失われてしまったようだが、こうしたディテールはあまり気にしない。もしベゼルなしのルックスが好みでなければ(私は好きだが)、当時の仕様のベゼルを探して取り付ければよい。市場には十分な数が出回っている。しかしこれほど美しいパティーナを湛えたダイヤルはそう簡単には見つからない。

A 1962 Tudor Submariner

 このチューダー サブマリーナーは、ボナムズのWeekly: Watchesオンラインオークションのロット83として出品されており、終了はアメリカ東部時間で7月9日(水)午前7時(日本時間で7月9日(水)午後8時)。予想落札価格は1000~1500ポンドだ(編注;バイヤーズプレミアム込みで9600ポンド、日本円で約195万円で落札された)。詳しくはこちらから。


1970年代製 パテック フィリップ Ref.3587/2 “チーズグレーター”スタイルの一体型ブレスレット付き “ベータ21”
A 1970s Patek Beta 21

 次にご紹介するのはパテック フィリップ史上最も重いヴィンテージウォッチと噂されるRef.3587/2だ。時計史において極めて重要でありながらも正当に評価されていないこのモデルは、ブランド初のクォーツムーブメントであるベータ21(Beta 21)を搭載している。ビジュアルも印象的で間違いなくユニークなこの時計は、スイスの時計産業におけるひとつの大転換期を象徴する存在だ。当時は最も伝統的なブランドでさえ、未来を受け入れようとしていた(あるいは時代に追いつこうとしていた)。

  1969年に発表されたベータ21ムーブメントはCEH(Centre Electronique Horloger)のもと、スイスの時計メーカー(ロレックス、オメガ、パテック フィリップを含む)による共同プロジェクトの一環として開発された。目的は、日本からのクォーツ“侵略”に対抗することにあった。ベータ21はサイズが大きく、消費電力も多く、そして高価であったため長期的な成功を収めることはできなかったが、当時としては革命的な存在だった。そして今なお、伝統と革新のあいだに生まれる緊張感の象徴であり続けている。

A 1970s Patek Beta 21

 Ref.3587/2はその緊張感を完璧に体現している。サイズは43mmに達し、着用感の面でもほかのパテックとは一線を画している。巨大で重厚な18Kゴールドケースは直線的なデザイン言語と相まって、1970年代に見られる贅沢さそのものだ。そしてコレクターたちから“チーズグレーター(チーズおろし)”と愛称で呼ばれるブレスレットは、幅広でテクスチャーのあるリンクが手首を包み込み、快適でありながらもレトロな雰囲気を放つ。パテックらしからぬデザインでありながら魅力的で、記憶に残る外観だ。

 私の好きな街、シカゴのオークションに出品されたこの個体は、少し手をかける必要があるがそれを逆手に取ることもできるだろう。ムーブメントにはオーバーホールが必要で分針の夜光もわずかに欠けているが、こうした要素がほかの入札者を遠ざけ、価格を抑えることにつながるかもしれない。もし以前からこのような時計をずっと狙っていたのなら、今がその日となることだろう。

 このベータ21搭載のパテックは、数週間後のアメリカ東部時間で7月24日(木)午前11時(日本時間で7月25日(金)午前0時)にフリーマンズ、ハインドマンが共同で開催するThe Summer Edit: Watches and Luxury Accessoriesオークションのロット88として出品される。予想落札価格は1万5000~2万ドル(日本円で約220万~290万円)となっている。詳細はこちらから。


1960年代製 オーデマ ピゲ スケルトン仕様の “ディスコヴォランテ” 18Kイエローゴールド
A 1960s Audemars Piguet skeletonized Disco Volante

 ヴィンテージドレスウォッチのトレンドに乗りたいが、ほかの誰もが持っているような時計にはしたくないというのであれば、このAP ディスコヴォランテを検討してみてはいかがだろう。超薄型で手巻きのこの時計はスケルトン仕様により、ロイヤル オークがブランドを世に知らしめるずっと以前からAPが誇ってきた手仕上げと機械芸術の魅力を堪能できる。

 このモデルで際立っているのはスケルトンムーブメントの繊細なエングレービングや面取りされたブリッジだけではない。“ディスコヴォランテ”、つまり“空飛ぶ円盤”というニックネームの由来となった劇的に幅広で平らなイエローゴールドのケースであろう。直径32mmというサイズをそう警戒しなくてもいい。というのもこの形状ゆえ、装着時には数字以上に大きく感じられるはずだ。もしあなたが私のような真のマニアであれば、7時位置のラグの外側に刻まれた鮮明なホールマークと、ケース裏側に残る無傷のエングレービングに心を奪われるはずだ。まさに至高の逸品である。

A 1960s Audemars Piguet skeletonized Disco Volante
A 1960s Audemars Piguet skeletonized Disco Volante
A 1960s Audemars Piguet skeletonized Disco Volante

 この時計にさらなる魅力を添える要素としてこのブレスレットが挙げられる。AP製でないうえに、おそらくオリジナルの付属品ではないが、ソリッドゴールドを使用したスイス製だ。私の目にはこの時計が製造された当時のものと見受けられ、ゴールドのパティーナもケースとよく調和している。商品説明によると手首回り7インチ(約17.8cm)まで対応可能とのことだ。

 オークショニアであるLoupeThisはロサンゼルスにあり、このオーデマ ピゲのオークションはアメリカ東部時間で7月10日(木)午後12時04分(日本時間で7月11日(金)午前1時4分)に終了(すでにSold Out)。詳しくはこちらから。