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本稿は2016年5月に執筆された本国版の翻訳です。
今回のBring A Loupeでは、伝説的なパテック フィリップのリファレンス1518から、トロピカルな文字盤を持つロレックスの金無垢サブマリーナーまで、魅力的な時計を幅広く取り揃えた。またイエローゴールド(メッキではない!)ケースのブライトリング トップタイムや、パワーリザーブインジケーターを搭載したロンジン コンクエストなど、あまり見かけないモデルもある。それが2016年5月13日の本企画だ。
ロレックス サブマリーナー Ref.1680/8、トロピカルダイヤル
YGのロレックス サブマリーナーは、アメリカ発のテレビドラマ『マイアミ・バイス』らしさがある(番組内のドン・ジョンソンは、実際はデイデイトを着用していたが)。文字盤がトロピカルになっていて、ゴールドの輝きとよく合っている。当時の非ステンレススティール製サブマリーナーで見られるインデックスの特殊な形状にちなんで、こちらのRef.1680/8には“ニップル”ダイヤルを採用している。ケースは分厚く、オリジナルのブレスレットもしっかりとしていると説明があり、時計には元の購入レシートも付属している(当時の価格が気になるところだ)。裏蓋の刻印を見ると、もともとは軍人のロバート・シッソン(Robert Sisson)中佐が購入したもののようだった。Googleで検索をすると、シッソン中佐は2009年に亡くなり、ベトナムでの任務を含む22年間の勤務のあと、1985年に退役していた。
販売店のIconic Watch Companyが、この金無垢サブマリーナーを3万6000ドル(当時の相場で約395万円)で販売していた。詳細はこちら。
パテック フィリップ Ref.1518、パーペチュアルカレンダー ムーンフェイズ クロノグラフ
“パテック フィリップのパーペチュアルカレンダークロノグラフは、時計収集の世界でほかに類を見ないほどの王道的な遺産を築き上げている”。この言葉は、ベンがこの素晴らしいパテックについて書いたReference Points記事から引用したものだ。そしてこの系譜は、1941年に連続生産された初のパーペチュアルカレンダークロノグラフであるリファレンス1518から始まる。このリファレンスは10年あまりにわたって提供され、合計281本が販売された。いま見ているのは、文字盤からわかるように1950年代初頭の後期モデルである。というのも、1948年に“&Co”の表記がパテック フィリップによって外されており、いわゆる“ショートサイン”が表記されているのだ。とはいえ、1518の真に重要なのはその美しさである。すべての機能がエレガントな35mm径ケースに完璧に収められ、ムーンフェイズも素晴らしい。この時計は私にとって最高の逸品だし、これまでに製造された時計のなかで、最もエレガントなコンプリケーションウォッチだと思っている。特にアラビア数字が植字されたこのバージョンは素晴らしい。
こちらのとんでもなくゴージャスなパテックは、Matthew Bainで提供されていた。詳細はこちら。
ホイヤー オータヴィア “エキゾチック” Ref.1563
このオータヴィアのオレンジの配色は、このRef.1563が1970年代のものではないかと疑わせるかもしれないが、そのとおりである。これはホイヤーが1960年代の終わりに、オータヴィアに導入した自動巻きクロノグラフムーブメントからも推測することができる。しかし、このオータヴィアの文字盤はほかのホイヤーとは完全に一線を画している。このモデルは、ユニークな段差のあるハッシュマークを備えていることから“エキゾチック”というニックネームで呼ばれている。さらに今見ている個体はミュージアムに収蔵できるレベルのコンディションを保ち、トリチウムのインデックスには美しいパティーナがあり、この時代のホイヤーでは非常に見つけにくいカミソリのように鋭いケースを備えている。
この輝かしいホイヤーを出品しているのはホイヤー研究家であり、信頼できるディーラーだ。当時は2万2000ドル(当時の相場で約240万円)以上の提示で購入を受け付けていた。
ロンジン コンクエスト パワーリザーブ
このロンジン コンクエストの文字盤は魅力にあふれている。シルバーの仕上げもとても素晴らしいが、それ以上に重要なのは、非常にスマートな方法でふたつのコンプリケーションを表示しているところだ。まず、12時位置に日付があるが、これは通常の3時配置とは異なり、ダイヤルの対称性を乱すことはない。第2に、時計の針が完全に止まるのを防ぐために、時計を再び着用するタイミングを知らせてくれる、回転式のディスク型パワーリザーブインジケーターが中央に鎮座している。このコンクエストは自動巻きムーブメントを搭載しているため、注意していれば手で巻く必要はない。見たところローレット加工されたリューズはオリジナルではなく、ほかのコンクエストで見られるように、このフォーラムにあるものや、ここで見つけたほかのRef.9035に類似した、ロンジンのサイン入りリューズがオリジナルだと思われる。
販売店のAlessandro Cianiは、この魅力的で風変わりなロンジンを2600ドル(当時の相場で約28万円)で販売していた。詳細はこちら。
ブライトリング トップタイム Ref.2004、ソリッドゴールドケース
ブライトリング トップタイムは私のお気に入りのクロノグラフのひとつで、ジェームズ・ボンドとのつながりがあるにもかかわらず、しばしば見過ごされている(『サンダーボール』でボンドが使っていたガイガーカウンターウォッチは、Qによって改良されたトップタイムだ)。トップタイムコレクションはキャッチーなデザインと、ロレックスとホイヤーが同時期に打ち出したモータースポーツ(タキメーターを含む)の世界を連想させる外観によって、ブライトリングをより若いユーザーにアピールすることを目的としていた。防水性を高めたモノブロックケースのリファレンスもあれば、裏蓋が取り外し可能なクラシックなケースもある。私が思うトップタイムの魅力はその特別な逆パンダ文字盤にある。インダイヤルはこの時期のホイヤー カレラに見られるオールホワイトではなく、シルバーになっている。とはいえRef.2000と2003を筆頭に、市場で見つけることができるトップタイムのほとんどはゴールドメッキだ。しかし、このRef.2004の裏蓋には、18Kゴールド製ケースだという表記が誇らしげに刻印されている。
この魅力的なトップタイムの詳細はこちら。
伝説のCal.135を搭載した、ゼニス クロノメーター
このゼニスは間違いなく、これまでに生産されたなかで最高の手巻きモデルのひとつだ。大胆な発言? そう思うかもしれないが、このCal.135は1950年以降、ヌーシャテルのクロノメーター検定で5回連続で優勝したほど、非常に精度が高いと称賛されたものだ。このキャリバーを見ると困惑することだろう。明確な目的を持った、見事なまでのシンプルさを実現しているからだ。Cal.135は、最高精度を目指してつくられたキャリバーだ。このムーブメントは、非常に大きなテンプ、調整機構、ブレゲひげゼンマイを備えた、直径が大きいムーブメント(仕様では約30mm弱)である。これは、オメガの30T2RGクロノメーターキャリバーと、同じムーブメント設計哲学を反映している。この種のクロノメーター級のムーブメントは、連続生産された天文台用競技ムーブメントのなかで最高の進化形であり、一般的にはここで見られるように、非常に控えめではあるが超高品質なケースに収められる。
文字盤は驚くほどバランスがとれていて、大きなスモールセコンドレジスター(ムーブメントのクロノメーター性能を評価するのに適している)と鋭いインデックスのおかげで、ドーフィン針と驚くほどバランスが取れている。
このゼニス クロノメーターは、Dr.Crott Auctioneersによって提供される。こちらのリストに記載されているように、エスティメートは3300ユーロから5000ユーロ(当時の相場で約41万~62万円)であり、率直に言って、これほど素晴らしく傑出した時計としてはお買い得である(編注:結果5400ユーロ、当時の相場で約67万円にて落札)。
全カタログはこちらから。じっくりと見る価値があると言えよう。