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我々が知っていること
LVMH Watch Weekが本格化するなか、年初の新作としてブルガリが重きを置いたのは、ハイジュエリーと女性向けコレクションである。ブルガリは19世紀後半に宝飾メゾンとしてその歩みを始め、1920年代に時計事業へと進出したが、その最初の作品はハイジュエリーウォッチだった。そこから1世紀を経た現在も、ジェムセッティングや金細工の技法、そして年々高度化するマイクロメカニクスを融合させたこれらのデザインは、よりクラシックなレディスウォッチと並び、ブランドのウォッチメイキングにおける中核であり続けている。
トゥボガス マンシェット
今回発表された最新モデルは、ブルガリを代表する4つのウィメンズコレクションであるトゥボガス、セルペンティ、モネーテ、ルチェアにおける新たな章の幕開けとなるものだ。そのなかでも最新のハイジュエリーウォッチは、トゥボガスとモネーテというふたつのシグネチャーラインに焦点を当てている。トゥボガスのデザインは、ブランドのレパートリーのなかでもひと目でそれとわかるきわめて象徴的な存在である。歴史を振り返るために少し寄り道すると、1940年代にその起源がある。
第2次世界大戦は、時計業界における素材供給や生産体制を大きく制限した。この状況は、ブルガリにとってほかの金属よりもゴールドを用いた製作へと舵を切る契機となる。そこから次第に、よりしなやかで柔らかなフォルムが生まれていく。ここで登場するのがトゥボガス技法である。工業化時代のコルゲート(波形)チューブから着想を得たこの技法は、芯材のまわりにゴールドの帯を巻き付けることで、はんだ付けを行わずに柔軟性のある丸みを帯びたバンドを形成するものだ。帯全体に均一なテンションを与えるには、高度な金細工の技術が不可欠であり、その完成度こそがトゥボガスを象徴する美しさにつながっている。
トゥボガス技法はメゾンを象徴するセルペンティで広く知られているが、ここではトゥボガス マンシェットと最新のセルペンティ セドゥットーリに、新たな解釈が加えられている。トゥボガス マンシェットにも、アイコニックなセルペンティと共通するアプローチが息づいているが、今回はそれをより大胆に押し出した造形が特徴だ。ワイドなシングルコイル構造のトゥボガスブレスレットは、各バンドを個別に成形・研磨したうえで、チタン製ブレードに丹念に組み上げるという新技法によって完成されている。このモジュラー構造により、モチーフはブレスレット全体を途切れることなく流れるように連なり、同時にトゥボガスならではのしなやかな構造美もしっかりと保たれている。
1974年のアーカイブデザインを再解釈したこのカフには、スクエアダイヤルの下にコンパクトな機械式ムーブメントを組み込んでいる。心臓部を担うのは、ブルガリ自社製の自動巻きレディ ソロテンポ BVS100。直径わずか19mm、厚さ3.9mmという小径・薄型設計でありながら、約50時間のパワーリザーブを備える自動巻きキャリバーである。さらに華を添えるのが、鮮やかなジェムセッティングだ。イエローゴールドの地金にシトリン、ルベライト、ペリドット、アメシスト、トパーズ、スペサルタイト、そして約12カラットものダイヤモンドがあしらわれ、華やかで多彩な表情をもたらしている。
セルペンティ セドゥットーリ
セルペンティ セドゥットーリは、オリジナルのセルペンティを現代的に再解釈したコレクションだ。複雑なトゥボガスブレスレットをあえて用いず、より伝統的な腕時計のデザインへと置き換えながらも、蛇を思わせるケースフォルムやモチーフといったメゾンを象徴するエレメントは、そのまま受け継がれている。2019年に初登場して以来、セルペンティ セドゥットーリは多彩な素材やスタイルの組み合わせで展開されてきた。その豊かなバリエーションが今回さらに進化し、マラカイトダイヤルを備えたモデルと、ベゼルおよびブレスレットに合計3カラット以上のダイヤモンドを配した、煌めきを前面に押し出したふたつの新作が加わっている。
マグリア ミラネーゼ モネーテ
モネーテコレクションがブルガリのカタログに加わったのは、トゥボガス誕生からおよそ20年後のこと。時代は1960年代、ファミリーによる経営が第3世代へと移行したころで、その中心人物のひとりがニコラ・ブルガリ(Nicola Bulgari)氏だった。古代のコインに強い関心を寄せていた彼は、その情熱を起点に新たなコレクションの構想を練っていく。古代ローマにまで遡るコインジュエリーの長い伝統を背景に、ブルガリはこのアプローチをウォッチメイキングへと昇華させ、こうしてモネーテコレクションが誕生したのである。
マグリア ミラネーゼ モネーテ
最新のモネーテで用いられるのは、西暦198〜297年頃に鋳造され、カラカラ皇帝を描いた本物の古代コインだ。それを文字盤を隠す蓋として据え、シークレットウォッチという遊び心へとつなげている。丹念にセッティングされたシルバーコインはブリリアントカットダイヤモンドのリングで縁取られ、彫金を施したローズゴールドケースに収められている。そのケースはミラネーゼメッシュブレスレットと一体化し、RGならではのしなやかさを生かした、美しいカフのような佇まいを描き出す。ケースを開くと、マザー オブ パールダイヤルとダイヤモンドインデックスが姿を現し、こうしてマグリア ミラネーゼ モネーテは完成を迎える。
その中核を成すのが自社製のピッコリッシモ BVP100である。直径わずか13.5mm、厚さ2.5mmというサイズを誇る世界最小のラウンド型機械式ムーブメントだ。この手巻きキャリバーは2万1600振動/時で駆動し、約30時間のパワーリザーブを確保。さらに本作ではシースルーバックを備えており、ジュエリーの伝統に深く根差したピースに、意外性のあるテクニカルな魅力を添えている。
ルチェア ウォッチ
最後に取り上げるのは、ラインナップのなかでもおそらく最もトラディショナルな佇まいを見せるウィメンズデザイン、ルチェアである。もっともその見た目に惑わされてはいけない。一見すると王道のラウンドウォッチに映るが、そのルーツを辿るとここにもブルガリジュエリーの系譜が息づいている。メゾンがルチェアのジュエリーラインを初めて発表したのは2001年のこと。ゴールドからプラチナに至るまで、さまざまな金属を用いながら幾何学的なフォルムを探求し、ハイジュエリーよりも日常に取り入れやすいスタイルを提案するコレクションとして展開した。それから10年以上を経た2014年、ブルガリはこのルチェアの世界観を時計へと広げ、装飾を削ぎ落とした同様のアプローチでウィメンズウォッチを完成させている。
新作のルチェアは、シンプルなラウンドケースが日本独自の文字盤技法を受け止めるキャンバスとなっている。用いられているのは漆。先史時代にまで起源をさかのぼる、樹木の樹液から生まれる天然素材である。漆は深い黒色を帯び、金やマザー オブ パールといった異素材の断片を埋め込むのに理想的な質感を備えている。80本限定となるこのスペシャルエディションのために、ブルガリは漆芸作家の浅井康宏氏と協業。1枚の文字盤を完成させるのに6日を要し、しかもすべてが1点物という唯一無二の表情を備えたダイヤルが生み出されている。
トゥボガス マンシェットの価格は税別19万ドル(日本円で約3000万円、日本では価格要問い合わせ)、マグリア ミラネーゼ モネーテは税別15万5000ドル(日本円で約2500万円、日本では価格要問い合わせ)、ルチェアは349万8000円(税込)である。セルペンティ セドゥットーリの価格については現在確認中で、詳細が判明次第追記する予定だ。なおルチェアの2モデルはいずれも各80本限定で、それ以外のモデルは通常生産。全モデル現在販売中である。
我々の考え
いわゆる“小さくしてピンクにすればいい”という発想から、ウィメンズウォッチが大きく前進してきたことは確かだろう。それでもなお、このカテゴリーが十分に扱われてきたとは言いがたい。そうしたなかで今年のLVMH Watch Weekが幕を開け、各ブランドが披露するウィメンズモデルの幅広さに改めて目を奪われている。ウブロやゼニスによる意外性のある提案もあれば、ブルガリによるハイジュエリーと日常使いのモデルを織り交ぜた構成は、ある意味で期待どおりとも言えるだろう。
ブルガリは長年にわたり女性顧客を最優先に据えてきた数少ないブランドのひとつである。その姿勢は、メゾンが宝飾メゾンとして築いてきた歴史的な立ち位置に根差しているのだろう。それでもブルガリがウォッチメーカーとして進化を遂げ、デザイン主導のピースにとどまらず、より高度な機構を備えたモデルへと領域を広げてきた現在においても、女性のための時計づくりという視点は1度も見失われていない。
オクト フィニッシモで数々の世界記録を打ち立ててきたブルガリにとって、その流れにさらに舵を切り、ジュエリークリエイションは女性顧客に委ねつつ、ウィメンズウォッチの展開を縮小するという選択は容易であるどころか理にかなった判断だったとも言えるだろう。しかしブルガリはそうしなかった。大胆なオクトから今回紹介したようなジュエリーに着想を得たウィメンズピースに至るまで、幅広くバランスの取れたカタログを維持し続けているのである。
しかしメゾンは、機械式時計へのこだわりをメンズピースだけに向けているわけではない。私が新作マグリア ミラネーゼ モネーテでもっとも引かれたのは、フタの下に隠されたもうひとつのシークレット、ピッコリッシモ BVP100の存在だ。2022年、ブルガリはこのムーブメントによって、世界最小のラウンド型機械式ムーブメントという新たな世界記録を静かに打ち立てた。それまで93年にわたり、その座を守り続けてきたジャガー・ルクルトのキャリバー101を更新したのである。さらに、セルペンティ セドゥットーリやトゥボガス マンシェットに搭載されるレディ ソロテンポ BVS100も侮れない。直径19mm、厚さ3.9mmという比較的コンパクトなサイズでありながら、約50時間のパワーリザーブを備えており確かな存在感を放っているのだ。
それでもなお、ブルガリが受け継いできた金細工の伝統に裏打ちされたメタルワークの洗練は、見過ごすことができない要素であり、その完成度は機械的な偉業に比肩するほど見事である。新作モネーテとトゥボガスのブレスレットはいずれも、身に着けるアートピースと呼ぶにふさわしい出来栄えだ。シークレットウォッチに用いられたミラネーゼメッシュはルネサンス期に発展した技法にまでさかのぼり、ゴールドの糸を緻密に編み上げることで生まれるもの。そしてトゥボガスブレスレットが築いてきた系譜も周知のとおりであり、その進化形が、ここトゥボガス マンシェットにおいて鮮やかに示されている。
アートの話題ついでに言えば、私のことを知っている人ならわかると思うが、私は伝統的なメティエ・ダール(エナメル装飾など)であれ、漆のように異なる分野とのクロスオーバーから生まれる表現であれ、芸術的なクラフツマンシップに目がない。ウォッチメイキングにおいて、ストーンダイヤルがこれからも確固たる居場所を持ち続けることは間違いなく、実際にセルペンティ セドゥットーリの新作でもその魅力を見ることができる。それでも、ルチェアに施されたこのひねりには、新鮮な空気を感じずにはいられない。漆はマザー オブ パールというクラシックな素材に新たな命を吹き込み、まったく異なる表情を引き出している。古来から受け継がれてきた技法でありながらその仕上がりはきわめてモダンだ。私にとって、これはアートが目指す究極の姿でもある。まったく新しいものを生み出すことだけが力なのではなく、なじみある技術を新たなかたちで遊び直すこと。そこにこそ、創造の本質があるのだと思う。
ウィメンズウォッチのスタイルは、スポーティなものから複雑機構を備えたものまで実に幅広い。それでも私はフェミニンなデザインを正しく、そしてていねいに仕上げた1本に特別な魅力を感じてしまう。ブルガリが示しているようなアプローチを、ぜひもっと多くのブランドで見てみたいところだ。高度なムーブメントを内に秘めながらブレスレットのように装うジュエリーウォッチから、日常使いに適しつつも単なる背景に埋もれることなく自然と会話のきっかけを生むような万能なモデルまで。ウィメンズのタイムピースにおいて、まだまだ可能性は広がっていると感じさせてくれる。
基本情報
ブランド: ブルガリ(Bvlgari)
モデル名: マグリア ミラネーゼ モネーテ(Maglia Milanese Monete)/トゥボガス マンシェット(Tubogas Manchette)/セルペンティ セドゥットーリ(Serpenti Seduttori)/ルチェア(Lvcea)
型番: 104328、104385(モネーテ)/104093(トゥボガス)/103901、103902(セルペンティ)/104290、104243(ルチェア)
直径: 135–145–155mm、160–170–180mm(モネーテ)/135mm(トゥボガス)/34mm(セルペンティ)/33mm(ルチェア)
ケース素材: ローズゴールド、ブリリアントカットダイヤモンド(約0.5ct)およびシルバー製モネーテコイン1枚をセット(モネーテ)/イエローゴールド、ダイヤモンドをセットしたベゼル(トゥボガス)/ローズゴールドケースおよびベゼル、ラウンドブリリアントカットダイヤモンド36石(約0.6ct)をセット(セルペンティ)/ステンレススティールおよびローズゴールド(ルチェア)
文字盤: ホワイトマザー オブ パール、約0.1ctダイヤモンドのアワーマーカー12石(モネーテ)/約0.6ctのパヴェダイヤモンド(トゥボガス)/マラカイト、ホワイトオパライン(セルペンティ)/漆ブラックラッカー文字盤、マザー オブ パール片を配した仕様(ルチェア)
インデックス: ローズゴールドプレート(モネーテ)/イエローゴールドプレート針(トゥボガス)/ローズゴールドプレート(セルペンティ)/なし(ルチェア)
ストラップ/ブレスレット: ローズゴールド製ミラネーゼメッシュブレスレット(モネーテ)/シングルコイルのイエローゴールドブレスレット、ダイヤモンド11.98ct、スペサルタイト1.06ct、シトリン1.05ct、ルベライト0.87ct、ペリドット0.62ct、アメシスト0.63ctをセット(トゥボガス)/ローズゴールド製のしなやかなブレスレット、フォールディングバックル、マラカイト文字盤仕様;ブリリアントカットダイヤモンド117石(計2.8ct)をセットしたローズゴールド製しなやかなブレスレット、フォールディングバックル、オパライン文字盤仕様(セルペンティ)/ポリッシュとサテン仕上げを施したSSとローズゴールドのブレスレット、フォールディングバックル(ルチェア)
ムーブメント情報
キャリバー: ピッコリッシモ BVP100(モネーテ)/レディ ソロテンポ BVS100(トゥボガス、セルペンティ)
機能: 時・分表示(モネーテ、トゥボガス)/時・分表示、センターセコンド(セルペンティ、ルチェア)
厚さ: 2.5mm(モネーテ)/3.9mm(トゥボガス)
パワーリザーブ: 約30時間(モネーテ)/約50時間(トゥボガス、セルペンティ)/約42時間(ルチェア)
巻き上げ方式: 手巻き(モネーテ)/自動巻き(トゥボガス、セルペンティ、ルチェア)
振動数: 2万1600振動/時(モネーテ)
価格&発売時期
価格: モネーテは15万5000ドル(日本円で約2500万円、日本では価格要問い合わせ)/トゥボガスは19万ドル(日本円で約3000万円、日本では価格要問い合わせ)/セルペンティは価格未定/ルチェアは349万8000円(税込)
発売時期: 発売中
限定: あり、ルチェアのみ世界限定各80本
詳しくはこちらをご覧ください。
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