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先日公開したインタビュー記事「シチズン機械式再活宣言 再び大きく動き出した機械式時計開発の舞台裏」で開発にまつわるバックストーリーを紹介しているが、2021年、シリーズエイトはさまざまなシーンになじむモダンでダイナミックなデザイン、現代の生活環境に適した耐磁性能や装着感などの実用性を兼ね備えた、オンオフを問わずに使える機械式時計ブランドとして再始動した。
そんな新生シリーズエイト(Series 8)から、初の限定モデルとしてゴールドとグリーンカラーが特徴的な870 メカニカルが12月2日に発表された。重厚感のある力強いモダンスポーティなデザイン、ヘアラインとポリッシュ仕上げを織り交ぜた端正なケースなど、ベースは既存の870 メカニカルと変わらないが、トレンドカラーのグリーンをダイヤルとストラップに取り入れ、落ち着いた色合いのウォームゴールドカラーケースに2体構造のグレーカラーベゼルを組み合わせ、鮮やかな印象に仕上げられている。
筆者がこの時計を初めて手に取ったのはインタビュー取材のためにシチズン本社を訪れていたときだ。870、830、そして831 メカニカルとシリーズエイトのフルラインナップが並ぶなか、発表されたばかりのこの限定モデルも用意されていた。そのため、限定モデルと既存モデルを実際に見比べながら時計を触ることができたので、本稿では既存モデルとの印象の違いを中心に述べていこうと思う。
シリーズエイトはブランドを「現代人のライフスタイルに寄り添うモダンな機械式腕時計」と位置づけており、上の写真のように、アーバンライフをイメージさせるコミュニケーションを取っている。ブランドの公式サイトにはさらに多くの写真が掲載されているので、さらにイメージしやすいだろう。いずれにせよ、筆者のシリーズエイトに対するイメージは「都市部でのライフスタイルシーンに合わせる時計」という印象だった。だが、限定モデルを手に取ってみると既存モデルとは違い、外出時につけたい時計、より具体的に言えば緑に囲まれた公園などに連れ出したい時計だと筆者は感じていた。
ダイヤルとストラップのグリーンは落ち着いた色合いで、ダークトーンの冬の木々とマッチする。加えてケースのゴールドカラーにはあえて少しくすんだウォームゴールドを採用しており、ヘアライン仕上げを多用していることもあってギラギラとした印象がなく、全体的につけやすい雰囲気にまとめられている。もともとスポーティをテーマにしているコレクションだ。屋外で使うレベルなら心配のいらない10気圧防水が確保されているので、外でも気兼ねなく扱うことができる。ブランドのいう“オンオフを問わずに使える”という意味をより一層実感することができた。もちろん限定モデルも既存モデル同様、都市部でのライフスタイルシーンにちゃんとマッチする時計なので安心して欲しい。
時計の詳細について、もう少し詳しく紹介しておこう。本機のサイズは40.8mm、ケース厚は10.9mm(設計値で)ある。これは既存の870 メカニカルのラインナップとまったく同じだ。筆者の手首は比較的太く、サイズは約19cmあり、ボリューム感のあるケースが太めの腕によくなじむ。それはこの手首のサイズのせいだけではない。870 メカニカルはフラットに整えたスクリューバックを採用している。先日のインタビュー記事でも語られているが、これは分厚くなるシースルーバックを避けてつけ心地を優先したためだ。
もしかしたら、細めの手首には合わない? と気になった人もいるかもしれないが心配はいらない。搭載されているムーブメントは4.1mmと薄型で、ケースにはボリューム感があるものの同時にスリムなフォルムとなっている。加えてラグとストラップ取付部が一体となったラグレスケースを採用しており、ストラップが鋭角に落ちて手首にフィット。手首が細めの人でも時計と手首のあいだに隙間ができにくく快適につけることができるのだ。
ムーブメントはこれまでにHODINKEEで公開したいくつかの記事でも解説しているが、新開発された自動巻きムーブメント Cal.0950が搭載されている。1万6000A/mまでの耐磁性を持つ第2種耐磁の強化耐磁性能を備えているが、これは磁界を発生する機器に1cmまで近づけてもほとんどの場合、性能を維持できる水準とされている。強力な磁界を発するパソコンやスマートフォンなどに直置きでもしない限り、磁気の影響を受ける心配がないレベルだ。前述のような不注意な行動にさえ気をつけておけば、安心して使うことができる。
精度は平均日差−5~+10秒のあいだで調整されている。一般的な機械式時計では日差30秒以内が標準とされているが、それと比べると非常に優秀な数字だ。
限定モデルならではの仕様はプッシュ観音開き式クラスプを備えたカーフレザーストラップを採用している点だ。既存モデルでもレザーストラップ仕様は1モデルだけ(831 メカニカルのNB6012-18L)ラインナップされているが、ウレタンにカーフの表地を組み合わせたハイブリッドタイプ。オールレザーは本機が初となる。なお、プッシュ観音開き式クラスプを持つモデルは870 メカニカルのNA1005-17Lもあるが、こちらはオールウレタンストラップ仕様である。
時折非常に硬いレザーストラップを合わせている時計があるが、そうしたものはなじむまで時間がかかり、フィットするまでのあいだのつけ心地はかなり不快だったりする。だが、本機のレザーはつけてすぐになじむ柔らかさなので、購入後すぐに快適な装着感を得ることができる。また、プッシュ観音開き式クラスプは一度自身の手首のサイズに合わせてしまえば、頻繁にストラップの穴に尾錠のツク棒を抜き差しする必要がないのでレザーを傷めにくく、一般的な尾錠タイプの時計と比べると着脱時の落下を軽減できる。決して軽い時計ではないので、プッシュ観音開き式クラスプは非常に便利だ。
あえて苦言を呈するなら、カレンダーディスクだろうか。高級時計のセオリーではカレンダーディスクのカラーはダイヤルと揃っていた方がいい(美観的に)とされるが、この限定モデルではブラックに白抜きの数字を合わせたものを採用している。一般的なカレンダーディスクの仕様(ホワイトの地に黒の数字を合わせたタイプも定番)で、シリーズエイトの価格帯の時計としてはまったくおかしなことではないが、限定モデルであるならば、ダイヤルカラーにマッチしたカレンダーディスクでもよかったかもしれない。ただし本機の場合、2体構造ベゼルにダークトーンのグレーが用いられているのでデザインバランスとしてはアリだ。2体構造ベゼルのメリットはこんなところにも生きているようだ。
「シリーズエイト 870 メカニカル」限定モデル ギャラリー
Photographs by Keita Takahashi
基本情報
ブランド: シリーズエイト(Series 8)
モデル名: 870 メカニカル 限定モデル
型番: NA1002-15W
直径: 40.8mm
厚さ: 10.9mm
ケース素材: ステンレススティール(ベゼルはグレー、ケースはウォームゴールドカラー)
文字盤色: グリーン
インデックス: アプライドバー
夜光: 針とインデックスに蓄光
防水性能: 10気圧
ストラップ/ブレスレット: カーフレザーストラップ。プッシュ観音開き式クラスプ
ムーブメント情報
キャリバー: 0950
機能: 時・分表示、センターセコンド、3時位置に日付表示
直径: 25.6mm
厚さ: 4.1mm
パワーリザーブ: 50時間(最大巻上時)
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻き付き)
振動数: 2万8800振動/時
石数: 24
追加情報: 秒針停止(ハック)機能、日付のクイックチェンジ機能、平均日差:−5~+10秒で調整(静態で測定)、耐磁2種耐磁時計
価格 & 発売時期
価格: 22万円(税込)
発売時期: 発売中
限定: 世界限定400本
詳細は、シリーズエイトブランドサイトへ。