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Buying, Selling, & Collecting パテック、AP、ヴァシュロン。3つの超薄型パーペチュアルカレンダーを比較する

いわゆる世界三大ブランドのネオヴィンテージ パーペチュアルカレンダーから、お気に入りをピックアップ。

 マイアミ・ビーチ・アンティークショーで、私はずっと欲しかった3つの時計を並べる機会に恵まれた。いわゆる世界三大ブランドのオーデマ ピゲ、パテック フィリップ、そしてヴァシュロン・コンスタンタンの超薄型自動巻永久カレンダーのオリジナルだ(ちょっと言いにくいので、フランス語でパーペチュアルカレンダーを意味するQPと呼ぼう)。

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 2023年の今でも、私はQPが欲しい。ロマンチックで時代錯誤、そして不要なものだが、今日の機械式腕時計は、まるでChatGPTに質問して答えがわかるのように、うるう年を追跡する以上の使い道はないと思うのだ(Googleは2022年までは有効だった)。70年代にクォーツが機械式腕時計を実質的に無用なものにしてしまったあと、腕時計にできる最善のことは、手仕上げのムーブメントやクレイジーな複雑機構、そして2100年まで調整不要なカレンダーなど、馬鹿げたことをすることでその無用さに寄り添うことだったような気がするのだ。1978年から1985年にかけて発表されたこれらQPは、ロイヤル オーク、ノーチラス、222以上に、電池駆動の時計に対する究極の“中指を立てたような存在”だった。

ultra thin perpetual calendar neovintage

件のネオヴィンテージ・パーペチュアルカレンダー3機種。

 ようやく、これらの時計が評価されるようになってきた。ゲイリー・シュタインガート(Gary Shteyngart)氏が1年以上前に3940に対する永遠の愛について書いているように、パテックの3940はしばらく前から評価されていたが、それは文字盤の名前と同じくらい、文字盤の下で何が起こっているかに起因しているかもしれない。

 歴史はさておき、この3つのQPを一緒に扱う機会を得たとき、疑問は単純なものだった。ひとつだけ買うとしたら、それはどのモデルか?  そして以下が、今回試した時計たちだ。

  • プラチナ製 オーデマ ピゲ Ref.25668
  • プラチナ製 ヴァシュロン・コンスタンタン Ref.43032
  • イエローゴールド製 パテック フィリップ Ref.3940J

 待ってくれ、APとヴァシュロンはプラチナでスケルトンだが、パテックはそのどれでもないじゃないか、と言うかもしれない。もちろんそのとおりで、かつて私はプラチナの3940Pを腕につけて数秒の至福の時を過ごしたが、マイアミ・ビーチ・アンティークショーでは数千本の時計のなかにはなかったようで、仕方なく手に入れた(かわいそうな私)。パテックはスケルトンの3940を作ることはなかった。パテックがこれまでに行った最も悪趣味なことは、サファイアのシースルーバックからムーブメントを見せることだった。

 やがて多くのブランドが超薄型のQPを製造するようになったが、最も大きなインパクトを与えたのは、パテック、AP、ヴァシュロンのこれらのモデルだった。それまでQPは数十本単位で製造されていたが、やがて年間数百本という規模でQPが製造されるようになったのだ。この3つの時計すべては、電池式の時計が一般的になった今日において、これら高級時計メーカーが高級時計を作りたいというニーズから生まれたものだ。もちろん、目を細めればどれも似たような時計に見えるが、よくよく観察してみると、もっと興味深いのはそれぞれの違いである。

 さて、歴史の話はこれくらいにして、実際に手首につけてみて、どれがいちばんよく機能するか見てみよう。

オーデマ ピゲ Ref.25668 “オープンワーク”
Audemars Piguet ultra thin perpetual calendar openworked

 この3本のなかで、オーデマ ピゲが最初に超薄型のQPを発表したのは1978年のことである。それだけに、私は初物フェチのひとりであり、常にAPを偏愛してきた。ジェラルド・ジェンタの愛弟子であるジャクリーヌ・ディミエ(Jacqueline Dimier)氏がAPのQPを設計し、時計職人たちがCal.2120を設計した。APはジャガー・ルクルトの920をベースにしているが、これは伝説的なムーブメントであり(ヴァシュロンのQPにも使用されている)、“自社製”に対する我々の現在の憧れが行き過ぎであることを示す証でもある。

 しかし、APのQPを身につけたとき、そんなことは一切気にならなくなった。36mm、厚さ約7mmと、決して大きな時計ではない。しかし、このQP、特にスケルトン仕様のフォルムを身につけると、サイズと“腕の存在感”の違いについて考えさせられた。

Audemars Piguet ultra thin perpetual calendar

 見て欲しい。短くカーブしたラグは、スラップブレスレットよりもシームレスに手首にフィットする超薄型だ。しかし、その半分のサイズで、オフショアのような存在感を示している。まず、4つのインダイヤルは、この時計が多くのことを管理していることを示すものだが、そのすべてがエレガントに行われているわけではない。その手首の存在感のほとんどは、スケルトン加工によるものだ。APが80年代半ばにオープンワークのQPを発表したとき、それは機械式時計製造に関する究極のステートメントだった。「我々を見て欲しい、我々は212個もの部品を小型のクォーツウォッチと同じサイズに収めた時を作り上げたが、この時計は2100年まで時を刻むことができる。バカげた電池と違って」

 APの第2世代のオープンワークQP、Ref.5668をつけてみた。手にしてみると、この後期型の大きな違いは、カレンダー機能を調整するためのプッシャーがケースのさらに奥に納まり、出っ張りがなくなったことだ。ヴァシュロンが快適なケースからほんの少しプッシャーを覗かせていたのに比べ、APのケースはずいぶん見栄えがよくなった。ファーストモデルとなるAPのQP Ref.5548ではプッシャーが飛び出していたが、APはこれが私たち愛好家にとっていかに厄介なものかを理解し、後のQP世代ではより平らに収まるようにしたようだ。

 APのケースは、まるで包装紙を切るときにハサミが完璧な滑りを見せるように、全体的になめらかだ。余計な邪魔をせず、ベゼルに段差をつけることで、ケースに構造性を持たせ、かつ無理のないデザインに仕上げている。

Audemars Piguet perpetual calendar

 APによると、15年間で7219本のQPを生産した(ロイヤル オーク QPを含む)。そのうちプラチナ製のRef.25668は79本のみで、APが1978年から1990年代にかけて生産した70以上のリファレンスと200以上のQPバリエーションのなかでも、特に希少な1本となっている。

 しかし装着してみると、歴史や希少性などどうでもよくなり、ただただ手首の上でドレープを描くその姿が愛おしくなった。

もうひとつの対抗馬:ヴァシュロン・コンスタンタン Ref.43032
Vacheron ultra thin perpetual calendar 43032

 希少性だけで判断するならば、ヴァシュロンに勝者の栄冠を授けて去ることができるだろう。ヴァシュロンは、1983年からオリジナルのQPリファレンスを製造中止する2006年まで、2000~2500本のQpを製造したと推定しており、パテックやAPの生産量の約4分のあたる。

 もちろん、希少性は方程式の一部でしかない。時計は希少で特別でなければ収集の対象にならず、そうでなければ、単なる無名の時計に終わってしまう。ヴァシュロンはAPの数年後(1983年)に登場したが、それでも特別な存在であることに変わりない。中身も外観もAPに似ている。ベースとなるキャリバーには同じJLC920を使用し、仕上げも同じように華麗だ。スケルトンの違いについては、コメントしにくいのだが、本当によく似ている。

Vacheron qp ultra thin 43032

ヴァシュロンのケースバックの様子。

 私が扱ったヴァシュロンのRef.43032は、1984年に発表されたスケルトン仕様のQPだ。生産数は不明だが、その後20年間で年間10~15本のスケルトンQPが生産されたと推定され、そのなかでもこのプラチナ仕様は希少価値が高いとされている。

 一見すると、APと極めてよく似ている。そこで、その違いを拡大して見てみよう。私には、APのケースのほうがよりまとまっているように感じられる。ヴァシュロンのほうがラグが長く四角いため、腕に乗せたときに平らになり、必ずしも大きくはない。私はヴァシュロンのつけ心地が好きではなかったのだが、はっきり言って、どのQPも私の手首に好きなようにつけられるので、私は幸せ者だろう。しかし、APのカーブしたケースとラグが自然で有機的であるのに対し、ヴァシュロンはもう少し構造的でぎこちなく、まるでスーツのジャケットの肩の柔らかさと構造の違いのように感じられた。ラグが長いノモスを試着したことがある人ならわかるかもしれないが、自分に合うか合わないか、どちらかになってしまうと思う。

Vacheron Constantin ultra thin perpetual calendar

ヴァシュロンの美しいラピスラズリのムーンフェイズディスク。

 ヴァシュロン・コンスタンタンは、ムーンフェイズというディテールにこだわっている。APと同じく鮮やかなダークブルーだが、よく見るとラピスラズリであることに気づくだろう。この美しいディテールは、手首に装着した時計を数分間眺めたあと、スケルトンであることを忘れて見入ってしまうほどだ。

Vacheron ultra thin perpetual calendar skeleton 43032

四角いラグを持つヴァシュロンは、手首の上でややフラットになる。

 あるディーラーにふたつの時計の比較を依頼したところ、最初に彼が言ったのは、このヴァシュロンの白いコントラストの効いたインダイヤルは、APよりも視認性が高いということだった。そのとき、私は半時間ほど時計を試着していたが、実際の機能性については考えてもいなかったので、それはおもしろいことだと思った。この時計で、時間、曜日、日付、年(うるう年など)を知ることができるのだろうか? QPに関する残酷な事実のひとつ、QPを買える年齢になったころには、それを読むには年を取りすぎているというう古い決まり文句を、おそらく早々に自分に言い聞かせていたのだろう。

 確かに、このヴァシュロンは、対照的なインダイヤルと、APよりも光を受けやすいドーフィン針のおかげで、わずかに読みやすくなっている。

パテックは常にパテックに帰る
Patek 3940j

 私は、APとヴァシュロンの驚くほどよく似たふたつのQPを比較対照していたのだが、ひとつ向こうの出展者のブースから、パテックの3940Jが私にささやき続けていたのである。私を迎えに来て、一緒に遊ぼうよ、と。文字盤にパテック フィリップと書かれていたので、私はそれに応え、APとヴァシュロンの隣に持っていったのだ。

Patek 3940j

パテックの奇跡のマイクロローターを見て欲しい。

 確かにヴァシュロンやAPと機能は共通だが、それ以外の共通点はあまりない。「でも、それが私を特別な存在にしているのだ」と、その時計は教えてくれた。このパテックは3940Jという第3世代モデルで、イエローゴールド、サファイアケースバック仕様である。ヴァシュロンやAPと違って、サファイアケースバックからしかムーブメントを見ることができないのだが、それがパテック独自のCal.240Qだ。美しいマイクロロータームーブメントで、ヴァシュロンとAPがスケルトンムーブメントで感動を与えようと懸命に努力している(そして実際そうしている)のに対し、この小さなマイクロローターが回転する様子は、おそらくQPの3本のなかで最も魅力的な機械動作だっただろう。ポールルーター、バルチック、ショパールなど、私はいつもマイクロローターに好意的だが、パテックのマイクロローターが奇跡的にQPムーブメント全体を動かしているのを見るのは、何物にも代えがたい感動がある。

 見てみると、パテックはAPやヴァシュロンとは似ても似つかぬ存在だ。後者のふたつは例えるなら、レザーベストを着ただけで登場したが、パテックはスーツにネクタイという出で立ちだ。そしてパテックは、私がQPに本当に求めていたのは、それだけなのだと気づかせてくれた。

さて、楽しくなってきたが、どのQPにするか?
Patek Audemars Vacheron perpetual calendar ultrathin

 確かに、スケルトン仕様のQPはクールなものだった。でも、私にとっては、パテックの3940のほうが、必死にならずとも大きな主張をしていた。もちろん、カッコよさの秘訣は、何かに必死になることだ。だが、本当はそんなに頑張っていないように思わせることだということは、誰もが知っている。3940はそれを見事に実現しているのだ。

 しかし、それでも私は、APが手首になじみ、短いラグのおかげでわずかに小さく見えるほうが好みだ。パテックの文字盤レイアウトは、おそらく当時流行したスポーティな3レジスタークロノグラフを想起させるもので、親しみやすいものだ。しかし、私はAPの4インダイヤル配置のほうが好みだった。それは、初期のころにこのサイトを読みすぎて、ユニバーサル・ジュネーブのトリコンパックスこそがカッコよくて複雑なヴィンテージウォッチの典型だと教え込まれたからかもしれない。

Audemars Piguet 25657 perpetual calendar

ああ、ちょうどいい。APのRef.25657。Image: Courtesy of the Keystone

 そして、ここまでやってみて、わかったことがある。私はパテックとAPのいいとこ取りがしたいのだと。シンプルでYG製のAPのQP。後期型のもので、プッシャーが隠れていて、ケースは完璧に洗練された円形であり、おそらくサファイアのケースバックのため、見たいときにムーブメントを見ることができる。常に私の注意を要求するこのスケルトンのものはない。Ref.25657か25661がいいんじゃないかと思っている。さて、私がまだインブダイヤルを読めるほど若いうちに、それを実現させなければならない。

この3本のQPで長時間遊ばせてくれたDavidoff BrothersMenta Watches、そしてWind Vintageに多大なる感謝を申し上げます。

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