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Four + One 作家であり、釣り人であり、そして粋な男であるデイビット・コギンスについて

彼はそのシーンに合った適切な時計を選ぶが、この気取らないクラシックなコレクションでそれをさりげなく表現している。

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Photos by Tiffany Wade

デイビット・コギンス(David Coggins)氏との出会いは、彼が私の文章を気に入ってくれて、また私も彼の文章を読んで気に入ったのがきっかけで友達になった。彼は才能があるだけでなく、私のことをおもしろがってくれるからこそ感謝している。このインタビューの冒頭で、好きなパズルは何か聞かれたためワードル(Wordle)だと答えた。

 彼は心臓発作を起こしたか、あるいはそのまま帰らぬ人になってしまうのではと思うほど笑っていた。「サラ、ワードルはパズルじゃないんだ」と彼は言った。それは運が左右するゲームだと。さて、では彼の好きなパズルは何だろうか? それは言うまでもなく、アクロステックパズルだそう。

 『コンデナスト・トラベラー』、『ブルームバーグ・パシュート』、そして『アートインアメリカ』などで長年にわたり執筆してきたデイビット・コギンス氏最初の著書は、『Men and Style(メン・アンド・スタイル)』だった。それは単に男性が何を着ているかということではなく、なぜそれを着ているかについて書かれていた。「なぜ男性がそのような服装をするのか、長年かけて何を学んで、そしてどのようにその感性に辿り着いたのかに関心があるのです」。むしろ彼は服装に関しては正確に教えないほうがいいとも思っている。「これらは自分自身が何なのかを反映するべきです。だからこそ、ベストドレッサー賞に出ている男性たちは皆、高い自己認識を持っているのです」。コギンス氏は自分の意見を持ちつつも、リラックスした雰囲気も持っていた。おそらく最初に自身の意見を述べたのだろう。「彼らは正しいのでしょうか? まあうまく言えないのですが、おそらく私は普通の人よりも服装について考える時間が長かったんだと思います」

a man standing in front of a window

 少なくとも週に1度、コギンス氏の文章を読んでいるが、いつも楽しみながら読んで満足して、そしてとても勉強にもなる。彼は“The Contender”というサブスタック(個人でニュースレターを配信できるプラットフォーム)を持っている。コギンス氏が隔週でイタリアに足を運んでメンズウェアの話をするという内容なのだが、彼がどんなパズルをするべきか、はたまたしてはいけないかを教える才能があると思ったら、彼が服のことについて語り始めるまで待っていてほしい。「私の服装に関しては伝統的なほうだと思います。男性はスーツが似合いますしね。何事においても、流行に乗るということは、大抵の場合よくないことだと考えています。スリムフィットが何なのかを理解しようとする男性は困ってしまいます」とコギンス氏は言う。「快適という名のもとに行われるほとんどのことは、とてもひどい有様になってしまう傾向があるのです」

 The Contenderでは釣りもテーマにしていて、コギンス氏が服について議論をしているとき以外、彼は魚を釣っている。彼はマイケル・ウィリアム(Michael Williams)氏と一緒に、Central Divisionというポッドキャスト(釣りだけはなく、洋服からゴルフ、スポーツ、旅行まで何でもありのポッドキャストだ)を配信している。なおウィリアム氏については私が記事にもしている(その縁が途切れることがないよう、彼はHODINKEEでも執筆をしている)。完全に“アンチ スノッブ スノッブ”(コギンス氏から拝借したフレーズ、後述)であることを楽しみたいとき、または嫌な思いをしたときに、たまにCentral Divisionを聴いている。

 コギンス氏が、釣りに関する本を丸々1冊書くと言ったとき、おお、釣りの本なのにこんなことを言うなんてと思ったが、同時にワクワクもした。コギンス氏はスマートだけど私たちを飽きさせないし、笑いの要素も抜かりない。ぜひ彼の著書、『The Optimist: A Case for the Fly Fishing Life』を注文してみてほしい。あなたが誰であろうと後悔はさせないと誓おう。

 コギンス氏は時計コレクターではないが時計を身につけていて、然るべき活動やイベントに沿って最適なアイテムを身につけることをとても好む性格である。そしてこの理由から彼は複数の時計を所有している。

 彼のコレクションと言い切ってしまうと、彼は恐ろしくて気絶してしまうか、あるいは判別がまったくつかなくなってしまうため言わないが、コギンス氏が持つ多種多様な時計は、そのほとんどが長いあいだ彼とともにあり、まだ持っていない時計も確実にそうなると言っていいだろう。

 「時計はクルマと同じように扱う」。彼は最近、The Optimistに登場する謎の人物であり、そして彼が“愛する人”と呼んでいる人物とともに生活をしていると、マンハッタンのアパートから教えてくれた。私たちはZOOMで話していたが、彼はネクタイを締めていた。確かにこの人はネクタイを締めてZOOMに登場するような人だが、まったく堅苦しい性格ではない、本当だ。「長いときをともに刻みたくないと思う時計は絶対に持ちません。私は気に入ったクルマを手に入れると、よっぽどのことがない限りそのクルマに乗り続けますが、それは時計にも言えることなのです」

 今のところ、どの時計にもよっぽどのことは起きていない。

 私は以前、彼の作品に対して“ただただ目がページに張り付いてしまう、それ以外の言葉が見つからない”と表現したことがある。そして改めて彼の時計にも同じことを感じた。見る喜び、熟考する喜び、そして議論する喜びを感じ取れたのだ。


彼の4本
ジャガー・ルクルト レベルソ グラン・タイユ 18K ホワイトゴールド
JLC Reverso

 「私が所有している時計のなかで、最もファンシーで最も素敵なものです」と、コギンス氏はレベルソについて語った。これは15年ほど前、両親から贈られたものだという。父親も母親も持っているし、当然彼も持っている。「家族みんな大の時計好きではありませんが、ただこの時計が本当に好きなのです」。なるほど、それなら理解できる。時計が好きな私から見ても、この時計は完成度が高くて完璧で、とても気に入っている。

 私はあえて彼にインタビューする前からこの時計を持っていることをなんとなく知っていたと言うと、彼はこう答えた。「この時計はマット・フラネック(Matt Hranek)氏の著書である『A Man and His Watch』に掲載されました。このときとても華やかに撮影してくれました」と。彼と知り合う前からそこで見ていた可能性があると判断した。「当初、こだわりのあるコレクターの本にはあまりふさわしくないと思っていました。ですが、この時計から得られる喜びは誰よりも大きいと思いたい。決して手放したくはありません。特にアール・デコ調の数字が魅力的で、ご覧のように黒いフェイスの時計が大好きなんです。技術的なことを言うのであれば、ホワイトゴールドでもあります」

 何かが作られた素材について言及することが技術的なことだという、コギンス氏の考えが好きだ。これは私のような時計好きにはたまらない!

  そういえばポロといえば、コギンス氏は実際にポロマレット(ポロで使う槌)を振り回したことがあるそうだ。とはいえ、あくまで見せかけのものだったが。「馬は動いていませんでした。プレス旅行中でのことです。私は左利きなのですが、ボールは右手で打たなければなりませんでした」。ポロシャツにふさわしい腕時計をしていたのだろうか? 本人は覚えていなかった。「ただ今まででいちばん大変だったのは確かで、時速0.01マイル(約1.6km)くらいで馬に乗って移動しているときに、人がどうやって球を追いかけるのか、わけがわかりませんでした」

back of a JLC reverso

 裏面には彼のイニシャルを刻んでいる。普段のコギンス氏はモノグラムはあまり好みではない。「自分のイニシャルが何なのかは知っています。つまりこれを見て(名前を)思い出させる必要はありません」。モノグラム派の人たちは1本取られただろう?「ですがこれの場合、このドイツ人がアール・デコのスタイルでやったものであり、この場合は賛成しますね」。私もモノグラムはあまり好きではないが、このモノグラムは特別に美しく、しかもほとんどの時間これを隠して過ごすことができるのだ。

 コギンス氏は、ローマで美しいカスタムストラップを製造しているHuitcinq 1988で新しいストラップをオーダーして、それを時計につけている。「このストラップをつくってもらったことは、私が今までしたなかでいちばんウォッチガイらしいことでしたね。意外といい気分になりました」

 「この時計をつけると、大人へ1歩前進した気分になります」。コギンス氏が最後に語ったレベルソへの思いである。

カルティエ タンク ソロ LM
Cartier Tank Solo

 “王の宝石商、宝石商の王”と称されるカルティエの腕時計のなかでも、自身の持つタンクが特に派手なバージョンでない、ステンレススティール製かつクォーツであるということを少しも恥じていない。

 この写真撮影からしばらくして、ご覧のように彼のストラップのエッジがギザギザしていて荒削りだったためこの度新しいストラップを手に入れた(エヘン、HODINKEE Shopから入手した)。彼はいつもストラップを交換するようなタイプだ。そして彼のカルティエの場合、それが時計の古さをアピールすることになるのだが、それだけが理由ではない。

 コギンス氏はレザーストラップにDバックルや複雑な留め具(ピンバックルでないもの)を合わせるのがいかに嫌いか、インタビューのなかで力説していた。私もまさにこのことについてHODINKEE Magazine Vol.11で激しく主張していたため、これは私にとっても大切なテーマであると彼に伝えた。すると「まったく理解できない、何があんなに好評なのか不思議でなりません」と言われた。「例えばダイヤル式で締められる釣り用のブーツとかも。というか、これはいったい誰が欲しいんでしょう? 何百年も前からやっているように、紐で編み上げるだけで私の腕時計のバックルとしても機能するから、放っておいてほしいですね」

 彼は自分のタンクを賞賛していた。「カルティエ タンクは、世の中にある数少ない反論する余地がない優れたもののひとつであります。女性も男性も、偉大さを求める人も、そんな偉大さを持ち合わせている人も、みんなこの時計が似合うのです」

 なおこれも両親からのプレゼントだったそう。「私の母は日本で生活を送っていない世界でトップ3に入るほど、プレゼントを贈るのが好きなのです」と彼は話す。「私のアパートにある物の半分は彼女からの心のこもった素敵なプレゼントで埋め尽くされています」

 時折、彼はこの時計のファンシーなバージョンであるローズゴールド、そして自動巻きの両方が欲しいと思うことがあるそうだ。「誰かがプレゼントしてくれたら、それを受け取る気持ちでいます」とコギンス氏。それまではこのままでいいと思っているのだ。

ハミルトン カーキ フィールド “エルエルビーン”
Hamilton Khaki field watch

 「タンストラップは時計を本当にいいものにしてくれます」と言うコギンス氏。彼がドレスアップしたとき、特にパテックやAPなど、強いこだわりを持つおしゃれな人たちと一緒にいるときに好んで着用するアイテムだという。「これがアンチ スノッブなのかわからないですが。彼らはこの時計を手に入れることができないし、私は彼らの時計を手に入れることはできません。彼らの見た目はいいのですが、そのゲームに勝とうとは思っていません」

 そのスポーティさ、エルエルビーンらしさは彼の釣りへの愛情を物語っているように感じる。「この時計があるだけで幸せな気持ちになります。この時計のすべてが私にとってぴったりで、特にこのストラップが付いているのが最高です。かつてハミルトンはエルエルビーンのために時計をつくっていたことがあるそうで、その逸話もとても気に入っています。アメリカのスポーツマンが持つべき時計だと感じています」。たとえそれが実際の釣りにはもったいなくてもだ。

 そしてこの時計も、コギンス氏がエルエルビーンのプロジェクトに参画していて、その時計を喜んでくれることを知っていた、ある人からプレゼントされたものだという(今回は両親ではない)。「COVIDが流行していたときに、郵便で私のところにやって来たのです」と同氏。「今までしてもらった出来事のなかで、いちばんうれしかったですね」

ベンラス DTU-2A/P フィールド ウォッチ
Benrus watch

 これもタンストラップだ。男はタンにハマっている。

 コギンス氏の手元には、黒い文字盤をベースにとても大きな白い数字を配したフィッシングウォッチがたくさんある。だが釣りのときにいちばんよく持っていくのはこの1本だという。「防水性があり、波の荒い船に乗っていても文字が読みやすい点が気に入っています」

 彼はその後、スーツについて脱線したような話をした(しかしそうではないことがわかった)。この時計はグレーのフランネルスーツのようなものだという。「正しいものでなければならず、問題を引き起こすものではあってならない。気になる人に目を引きますが、ほとんどの人は気にならない程度のことでなければいけないのです」


もうひとつ
ムラーノグラスの灰皿
murano glass ashtray

 コギンス氏はあらゆる種類のオブジェを愛しているが、最終的にこちらの、1970年代後半に製造されたガラスの灰皿を紹介することにした。私はムラーノグラスの灰皿が好きだったためうれしかった。私も以前所持していたのだが、それは20代のときに同居していた大学時代の親友に取られてしまったのだ。彼はそれを今でも持っていて、“家宝”と呼んでいる。

 コギンス氏は彼らしい方法でこれを手に入れている。彼が惚れ込んでいたヴェネツィアにあるグリッティ パレスという素敵な小さいブティックホテルのすぐ隣にあるお店で見つけたのである。店主はタバコを吸いながら小さなラジオを聴いていて、店に入るとタバコを小さなホルダーにセットして天井に届くまで煙が漂ってくる。今はその店はなくなっていまい、コギンス氏は寂しい思いをしている。しかし彼はまだ灰皿を持っている。

 「底面にあるクロスハッチを見て!」と、彼は私に指示した。私はそれを見た。そしてとても素晴らしいものだった。そして彼のセンスや彼が選ぶ時計のよさと同じように、ムラーノの灰皿も彼と永遠に付き合っていくのだろうと思いながら、私は通話を終えた。

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