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本稿は2021年5月に執筆された本国版の翻訳です。
別の日、別のコレクタブルウォッチ、そして別の驚愕のオークション結果だ。ボナムズ(Bonhams)は昨日、パリ ラグジュアリー(Paris Luxury)セールを行った。その多くの印象的なロットのなかに、一見無作為に見える文字盤インデックスを備えた質素な32mmのスティールウォッチがあった。文字盤にはP A B L O P I C A S S Oとある。
そのとおり。当時のスタイルに合わせて設計されたSS製ブレスレットが取り付けられた、このファンキーで小さな時計は、文字盤にピカソと書かれているだけでなく、ピカソ自身が所有し身につけていたものである。これはマイケル・Z・バーガー社(Michal Z Berger Co)で製造されたこのカスタマイズピカソウォッチは、時間とセンターセコンドを管理する17石の手巻きムーブメントを搭載している。ボナムズによると、この時計はギリシャの彫刻家であるレラ・カネロプルー(Lela Kanellopoulou)からピカソに贈られたもので、実際に存在すると考えられているものは3本しかないという。
よく使い込まれたコンディションで、60年代にセシル・ビートン(Cecil Beaton)が撮影したピカソの有名な肖像画には(画像ライセンスを所得する方法が見つからなかったが、こちらのリンク先で見ることができる)、この時計を着用しているピカソが写っている。このロット244は1万2000ユーロから1万8000ユーロ(当時の相場で約156万~234万円)と見積もられていたが、少なくとも何人かのバイヤーが違う考えを持っていた。ハンマーが落とされたとき、マイケル・Z・バーガー社のピカソウォッチは26万6978ドル(当時の相場で約2930万円)という信じられない価格で落札された。
これは、ピカソ所有の時計(ほかにも知られる)としては非常に大きな結果であり、コレクター市場がどれほど蓄積された需要を経験しているか、そしていわゆる“パンデミック価格”の継続的な拡大を示すさらなる兆候である。また先週、ピカソの『窓辺に座る女(マリー=テレーズ)』が1億340万ドル(当時の相場で約113億4815万円)という破格の売り上げを記録したことによる連鎖反応があるかもしれないことも、受け入れなければならない。
ピカソの言葉を借りれば、今日の世界は意味をなさないので、オークションの結果がそうである理由もないだろう。