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時々、大物俳優が予想もしなかったタイプの映画で自分の持ち味とは思えないような演技をすることがある。ジョージ・クルーニー(George Clooney)もこのコンセプトを知らないわけではなかった。1997年に公開されたジョエル・シュマッカー監督の『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲(原題:BATMAN&ROBIN)』でブルース・ウェイン(Bruce Wayne)がバットマンの役を演じ、世界中に(そして彼自身にも)ショックを与えた。それから十数年後、クルーニーはいつものチャーミングでドラマチックな役柄(監督業も)から離れ、『ラスト・ターゲット(原題:The American)』(2010年)というかなり地味な映画で、陰のある無口な暗殺者役を演じた。この作品はテンポや音楽、そして撮影地から、イタリアのアートハウス映画と言ってもいいかもしれない。90分が3時間くらいに感じられるゆっくりした作品で、これはイマイチだ。しかし、いい面もある。時計のショットが思い切り詰め込まれているのだ。有名なクルーニーと同じくアイコニックなクロノグラフをかなり使いこなしている。
ヴェスパと思われるバイクに乗り、スピードマスターをつけ、沈黙の暗殺兵器を手にするジャック役のジョージ・クルーニー。『ラスト・ターゲット』より。Photo, Focus Features
注目する理由
先日、HODINKEE Weekend Editionという新しい特集が始まった。HODINKEEのコンテンツをテーマに沿って紹介し、週末に楽しんでいただけるようパッケージングしたものだ。その皮切りとなったのが、オメガのスピードマスターだった。初回の記事を書いたあと、スピードマスターのことが頭から離れず、スピードマスターが十分に詰まった映画を見つけてすっきりしようと決心したのだ。しかし『ラスト・ターゲット』では、そうならなかった。むしろ今まで以上に欲しくなってしまった。
冬のスウェーデンのロッジでスナイパーに追跡され、狙撃された暗殺者ジャック(クルーニー)が、ウェス・アンダーソンが描くような夢の世界であるイタリアの街に潜伏する。スナイパーに追われ、身分を知られた彼はスナイパーと恋人を殺さざるを得なくなり、安住の地を求めてイタリアに逃亡する。カステル・デル・モンテという街にたどり着いた彼は家具もない不毛なアパートで朝からシャツなしで過ごすことになる。でも、なぜか懸垂棒があって、彼がそれを使っているのは想像に難くない。ジョージ・クルーニーの偽タトゥーを見たいなら、この映画はうってつけの作品だ。また、長いもみあげのクルーニー、バギーパンツのクルーニー、バックパックを背負ったクルーニー、ユーロ仕様メガサイズのペルソールサングラスをかけたクルーニーを見たい人にもピッタリだ。そうそう、忘れてはならないのがスピードマスターを装着したクルーニーだ。
特注の兵器を作るジャック(クルーニー)、レザーストラップのムーンウォッチを装着している。『ラスト・ターゲット』のスクリーンショット; Focus Features
彼はこの映画を監督したわけではないが、基本的に彼の好きな国と好きな時計を一挙に見せている。クルーニーはコモ湖を愛し、そこに住んでいることで有名であり、オメガのアンバサダーでもある。これまでにも映画でオメガの時計を着用したことはあるが、ここまで派手なことはしていない。スピードマスターがこれほど登場するのは、特別なプロダクトプレイスメント契約があったか、プロップスタイリストが大の時計好きだったかのどちらかだと思われる。あるいはその両方か。
この映画はストレートに時計満載映画と言える。ヌードシーンもそれなりにあるが、時計に関しては別次元だ。ジャックが腕時計をしていないシーンはほとんどない。手首につけていないのは、シャツを脱いでワークアウトをしているときだけだ。レザーストラップと運動は相性が悪いので、そこは責めないでおこう。
『ラスト・ターゲット』でスピーディを装着して、イタリアのカフェでエスプレッソを飲むジャック(クルーニー)。スクリーンショット;Focus Features
ブランドアンバサダーであろうとなかろうと、そしてプロダクトプレイスメントであろうとなかろうと、映画で時計がこれほどまでに注目を浴びる(時計が奇妙にセクシーに感じられるとしても)のは本当に喜ばしいことだ。時計が単に性的な場面に登場するというだけでなく、それ自体が官能的に撮影され、(非常に)ヌードなそのほかの登場者を超えた欲望の対象になっているのだ。
彼がスピードマスターを身につけていることはわかったが、モデル何か? それはムーンウォッチだ。昨年、オメガはムーンウォッチシリーズをアップグレードし、ダイヤルとブレスレットに手を加え、METAS認定のムーブメント、Cal.3861を搭載した。しかし、これは『ラスト・ターゲット』でフューチャーされた時計ではない(これは12年前の映画だ)。ジャックのスピーディは前世代のオメガのCal.1861で、デプロイヤントクラスプ付きの純正ブラックレザーストラップに装着されているようだ。この時計は何度も登場するので、これらすべてがわかったのだ。
『ラスト・ターゲット』でジョージ・クルーニーが着用していた時計と同様のオメガ スピードマスター
『ラスト・ターゲット』でジョージ・クルーニーが着用していた時計と同様のオメガ スピードマスター
『ラスト・ターゲット』は、クルーニー演じる主人公が別の暗殺者(女性)のために合成銃のようなものを作る様子を描いている。彼は“サブマシンガンの性能とライフルの射程距離を併せ持つ武器”を作るよう依頼される。その武器を作るシークエンスがいくつかあり、どのシーンでもカメラは彼の手と手首の上を移動するため、時計を見る機会がふんだんにある。
『ラスト・ターゲット』で、オメガ スピードマスターの超クローズアップショットのひとつ。スクリーンショット;Focus Features
ジャックのような訓練されたプロの暗殺者が、なぜスピードマスターを選ぶのか、理由はいろいろ考えられる。彼の仕事は契約ベースでかなり高い報酬を得ていると想像したい(私はそういうことに詳しいわけではない、誓って)。だから彼が大金の一部を新しい時計につぎ込んだとしても、さほどショックはないだろう。しかし、なんでもいいわけではない。実用性と派手さのバランスが取れた高級時計でなければならない。
見るべきシーン
映画の最初の方で、スウェーデンでの襲撃の後、ジャックはイタリアで連絡相手と落ち合う。彼は古いフィアットを渡され、カステルベッキオという町に行き、次の指示があるまでそこで待つように言われる(結局彼はこの命令を無視してカステル・デル・モンテに向かうことになる)。カメラが車内のジャックに切り替わると [00:13:10] 、彼は運転席側の窓から撮影されている。彼は左手をハンドルに置き、スピードマスターは手前のフレームに入る。有名なクロノグラフやマットなブラックダイヤル、読みやすいホワイトマーカーがかなりピントの合った映像で映し出される。俳優にとっても時計にとっても象徴的なショットだと言えるだろう。
スクリーンショット; Focus Features
映画の中盤、ジャックは依頼者に自分の作ったものを見せ、試してもらうために人里離れた公園で彼女に会う。一見すると豪華なピクニックのように2人は地面に座り、ジャックはピクニック用のブランケットから銃のパーツを広げて見せる。その際、手首に装着されたスピードマスターがはっきりと見えるが、もっといいことがある。このワールドクラスの時計映画のヒーローショット[00:44:00]では、カメラが時計を極端にクローズアップしているのだ。このショットはとてもクリアで、まるでオメガの広告のようだ。そしてさらにいいことがある。ジャックはクロノグラフを使用しているのだ! このクローズアップの間、彼は上部のプッシャーを操作し、マチルダがこの特注の銃器を組み立てる時間を計っているのだ。先に言っておく。これは映画史上最高の時計のクローズアップかもしれない。
スクリーンショット; Focus Features
ジョージ・クルーニー主演の『ラスト・ターゲット』は、アントン・コービン監督、ポール・グスタフソンが小道具を担当。iTunesやAmazonでレンタル可能。
Lead illustration, Andy Gottschalk
スピードマスターの詳細はオメガ公式サイトへ
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