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Interview プールで着けるダイバーズ──ジラール・ペルゴ×バンフォードによるディープ ダイバーについてジョージ・バンフォードにインタビュー

1960年代から1970年代にかけて発売されたジラール・ペルゴの特徴的なダイバーズウォッチが復活。そのキーマンは、ジョージ・バンフォード氏。

「プールで本気で使えるダイバーズウォッチを作ってみたかった」──そう語るのは、ロンドンを拠点に活躍するカスタマイザー兼ウォッチデザイナーのジョージ・バンフォード氏。これまで数々の時計ブランドとタッグを組み、独創的で個性あふれるタイムピースを生み出してきた彼が、ジラール・ペルゴとの3度目のコラボレーションで送り出した最新作がディープ ダイバーです。

ジョージ・バンフォード

ジョージ・バンフォード氏。

  2025年夏の到来を目前に、ジラール・ペルゴの“レガシー エディション”に新たに加わった本作は、1969年および1971年に登場したスーパーコンプレッサーケースの名作をベースに、現代的なアプローチとバンフォード氏ならではの遊び心を随所に取り入れた特別な一本に仕上がっています。

 今回は来日していたバンフォード氏に、本作の開発に込めた思いや、オリジナルモデルへのリスペクト、そして細部に宿るこだわりについてお話を伺いました。


偶然見つかった“地下プール”が発想の原点に

 本作の最大のコンセプトであり、最もユニークな特徴と言えるのが、「プールでこそ使うためのダイバーズウォッチ」という発想です。

 「私は、ジラール・ペルゴの本社に地下に使われていないプールが隠されているのを発見しました。それは、私物のヴィンテージの時計——ディープダイバー——を思い出させました」と語るバンフォード氏は、このエピソードをきっかけに、ダイバーズウォッチの“あるある”に真っ向から挑むアイデアを思いついたといいます。

ジラール・ペルゴの新作のディープ ダイバー。

 「多くの人が、ダイバーズウォッチを着けているのに、プールやシャワーでは外してしまう。でも、この時計はその真逆です。気兼ねなく使える“本当の道具”にしたかったんです。時計は毎日着用するものであり、金庫に保管しておくものではありません。これは私が着用するのが大好きな時計であり、時々愛着の跡がいくつか残ります──それこそが、この時計の魅力だと思っています」


歴史的名作Ref.9108を現代的に再構築

 ジラール・ペルゴのディープ ダイバーは、1957年に初登場し、その後1979年までに計9つのモデルが発表されました。今回の復刻モデルは、1969年に登場した14角形ベゼルを備えたクッション型ケースのRef.9108のデザインを継承した、1971年版のモデルからインスピレーションを得ています。歴史あるシリーズのなかでも、とりわけ個性が際立つ一本を現代に蘇らせました。

 「このモデルは、私の中でずっと“やりたいことリスト”のトップにありました。アーカイブのなかでも、特にクールな一本だと思っています」とバンフォード氏は振り返ります。約3年もの歳月をかけて実現したディープ ダイバーの復刻プロジェクトは、ジラール・ペルゴの伝統と、バンフォード氏自身のデザイン哲学が絶えず対話を重ねる過程でもありました。

1971年製のヘリテージ・ディープ ダイバー Ref.9108。

 当初、ジラール・ペルゴ側はこのモデルを“神聖な存在”として位置づけており、復刻には非常に慎重だったといいます。しかし、バンフォード氏は「この時計には再生する価値がある」と強く訴え、粘り強く説得。「実際にヴィンテージモデルを手に入れて、グレーに焼けた文字盤の風合いを楽しんでいたのですが、当時の広告を見つけた瞬間、衝撃を受けました。なんと、オリジナルは赤と黒の配色だったんです。すごくパンチが効いていました」。その驚きと発見こそが、復刻への原動力となったのだと語ります。


ネイビーとオレンジ、その“ちょうどいい大胆さ”

この日、バンフォード氏はネイビーのスーツに同色のストラップを装着したディープ ダイバーを身に着けていた。

 オリジナルモデルの赤と黒の配色は印象的であった一方で、現代の感覚からするとやや重たく感じられ、バンフォード氏は「今の時代にはフィットしない」と判断したといいます。そこで導き出されたのが、今回採用されたネイビーとオレンジという鮮やかでモダンな配色です。

 「今日はスーツを着ていますが、この時計はTシャツにもよく合います。そうした“使い分け”ができるのが、このカラーリングの魅力です。まるで“ジキルとハイド”のような二面性があって、とても面白いんです」

 そう語りながら、バンフォード氏は本作に付属する2本のストラップ──ネイビーブルーとオレンジ──を手に取って見せてくれました。一見するとダイヤルは非常に鮮やかで目を引きますが、ネイビーのストラップを装着すると全体が引き締まり、落ち着いた印象に。一方でオレンジのストラップを合わせると、オレンジの面積が増すことで一気に明るく、ポップで楽しげな雰囲気へと変化します。

 「同じ時計でも、ストラップを変えるとまったく違って見えるんです。それって、とても楽しいことですよね」

オレンジのストラップをつけたディープ ダイバーをリネンシャツにあわせてみると一気にリゾートへ行きたくなる雰囲気になった。


チタンケースと現代的スペック

 本作のケースには、軽量かつ高い耐久性を誇るグレード5チタンが採用されています。直径40.3×38mm、厚さ13.91mmというサイズ感は、クッション型のシルエットを活かしつつ、現代の手首にも心地よくフィットする設計となっています。

 「このサイズ感は本当に絶妙なんです。小さすぎず、大きすぎず。僕のように少し大きめの手首でも自然になじみますし、小さな手首でも浮かない。ユニセックスでも楽しめる、ちょうどいいスケールだと思っています」と、バンフォード氏。防水性能は200mが確保されています。

美しいサテン仕上げが組み合わされた立体的なケース。

グリッドがあしらわれたふたつのリューズ。

 さらに、裏蓋にはブルーに着色されたサファイアクリスタルがあしらわれており、内部のムーブメントの一部を覗き見ることができます。このディテールは、オリジナルモデルにインスパイアされつつ、現代的な素材と美意識でアップデートされた要素です。

 ケースバックには、オリジナルモデルにも描かれていた、ローマ神話の海の神・ネプチューンが持つ象徴的なトライデント(三叉槍)のモチーフが目に飛び込んできます。このデザインは、ブルーのメタライズ加工が施されたサファイアクリスタルの内側に描かれており、深い海を思わせる美しいブルーの奥に、ムーブメントがかすかに覗く構造となっています。

 「このブルーのケースバックは、僕にとって“遊び心の象徴”なんです。普通は見えない部分に色を入れるなんて、贅沢でしょう? でも、時計を外して机の上に置いたときに、それがふと視界に入るとニヤッとしてしまうんです。そういう楽しさって、大事だと思うんですよね」とバンフォード氏。その奥には、約46時間のパワーリザーブを持つ自社製の自動巻きCal.GP03300が搭載されています。

 本作の詳細については、紹介記事「ジラール・ペルゴ×バンフォードによるディープ ダイバー、ヴィンテージテイストに回帰した意欲作(編集部撮り下ろし)」を併せてご覧ください。


隠されたサインとヴィンテージへの敬意

 「ジラール・ペルゴは、基本的にダイヤルにコラボレーション相手の名前を入れることはしません。でも今回は、どうしても“BAMFORD”という名前を入れたかったんです」と、バンフォード氏は語り、本作ディープ ダイバーへの強い思い入れを垣間見せてくれました。

 ダイヤルの6時位置には、うっすらと透明な文字で「BAMFORD」のロゴがあしらわれています。光の当たる角度によってその存在が浮かび上がったり、ふとした瞬間に隠れたりするように設計されています。「わざと目立たせなかったんです。これはある意味、自分の“エゴ”の表れでもあるけれど、あくまで控えめにしておきたかった。サインは入れたいけれど、主張が強すぎるのは違う。そうしたさじ加減が大切だと思っています」。

 さらに注目すべきは、ジラール・ペルゴのヴィンテージロゴを復刻して採用している点です。ブランドによっては、復刻モデルで現行ロゴが使われることもありますが、バンフォード氏は、「このモデルに関しては、“古き良きもの”を本気でリスペクトしたかったんです」と語りました。


飾って、使い倒して

 バンフォード氏がこだわったのは、時計本体だけではありません。本作では、パッケージにも深い思い入れが込められています。「時計って、箱を開けた瞬間からすでに体験が始まっていると思うんです。だからこそ、パッケージでも“ドキドキ”させたかったんです」

 そう語る彼が描いたスケッチをもとにスタートしたデザインは、ジラール・ペルゴのチームによってさらに洗練され、まるでアートピースのような仕上がりへと昇華されました。パッケージの天面にはブルーの半透明ガラスがあしらわれ、そのガラス越しにはプールサイドがデザインされています。僕はこのボックスを見て、かつて旅行で訪れた金沢21世紀美術館に展示されているレアンドロ・エルリッヒの作品『スイミング・プール』を真っ先に思い出しました。

 複数の時計を所有する愛好家やコレクターにとって、化粧箱はときに収納場所を圧迫する、悩ましい存在でもあります。そうしたなかで、本作のパッケージは、単なる保管用の箱という役割を超え、棚に飾っておきたくなるような美しい佇まいを備えたデザインに仕上がっています。

「箱だけでも残したくなるような、そんなものにしたかったんです」とバンフォード氏は語り、パッケージそのものにも“所有する喜び”を込めたことを明かしてくれました。

 飾れるパッケージングのディープ ダイバーですが、本作の本質はあくまで“使うこと”にあります。「ヴィンテージウォッチって、確かに魅力的だけど、どうしても扱いに気を遣ってしまう。だけどこのディープ ダイバーは、その“気遣い”から解放してくれる存在なんです」とバンフォード氏は、本作に込めた“使うための時計”という明確なコンセプトを強調します。

 レトロな意匠をまといながらも、内部は現代的なスペックと耐久性を備えており、プールやシャワーはもちろん、旅先や日常の中でも気軽に楽しむことができます。「この時計を、空港やホテル、ビーチなどで誰かが着けているのを見かけたら、それだけで本当に幸せです。時計を通じて誰かの日常とつながれるというのは、つくり手として何よりの喜びです」

ディープ ダイバー Ref.39500-21-3266-6CX: 縦40.3mm、横38mm、厚み13.91mmのチタン製ケース。自動巻きCal.GP03300-2339、約46時間パワーリザーブ。213万4000円(税込)

 本作の詳細は、ジラール・ペルゴ公式サイトへ。国内正規店についてはこちらから。

Photographs by Yusuke Mutagami (Wrist shots) & Masaharu Wada