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クイック解説
セイコーが世界に誇る唯一無二の機構であるスプリングドライブが誕生したのは、今からさかのぼること25年前の1999年。同年にセイコーは近未来的な流線型ケースを持つ初のスプリングドライブ搭載機を発表し、さらに5年の開発期間を経て2004年に72時間のパワーリザーブを持つグランドセイコー専用設計ムーブメント9R65を乗せたSBGA001、SBGA003を世に送り出した。今年は、専用ムーブメントであるCal.9R系が登場してから20周年の年にあたる。これを記念し、グランドセイコーは3月、そして6月と2回に分けて記念モデルをリリースする。どちらもブランドゆかりの地、信州を南北に横断する穂高連峰をモチーフとした情緒的なダイヤルを持っている。
まずは3月8日(金)に、ヘリテージコレクションから桜色のグラデーションダイヤルを備えたCal.9R65搭載モデルであるSBGA497が発売される。ダイヤルのカラーは穂高連峰の雪原、その表面を照らす朝焼けをイメージしたものだ。このダイヤルパターンには見覚えがある……、と思ったあなたは鋭い。雪原つながりで気がついたかもしれないが、今モデルでは“雪白(ゆきしろ)”パターンを踏襲している。雪白ダイヤルを搭載したSBGA211は2017年に登場したモデルだが、今もブランドを代表する時計のひとつとして国内外問わず高い人気を誇っている。また、今作SBGA497では桜色のダイヤルになじむゴールドのブランドロゴと赤いパワーリザーブ針が採用された。ケースはブライトチタン製で、サイズは直径41mmで厚みが12.5mm。ムーブメントにはCal.9R65を搭載しており、約3日間のパワーリザーブを有している。
SBGA497発売の3ヵ月後、6月8日(土)に登場するのがスポーツコレクションのSBGE305だ。ローカルジャンピング機能を備えたFlyer GMTで、単色の24時間表示ベゼルに、夏の穂高連峰の朝焼けに着想を得たサンレイのダークレッドダイヤルを備えている。カラーこそ華美だが、GMT針までシルバーで統一された針&インデックスによって端正で落ち着いた印象にまとまっている。なお、単色セラミックベゼルに対してフランジは午前、午後でダークレッドとシルバーに塗り分けられており、GMTウォッチとしての機能もきちんと担保されている。ケースサイズは直径40.5mmで厚みは14.7mm。スポーツモデルらしく20気圧防水を備えている。搭載しているムーブメントは9R66で、こちらも約3日間のパワーリザーブを誇る。
SBGA497、SBGE305ともに3連のスポーティなメタルブレスを装着しており、ストラップへの交換を容易にしてくれるドリル(貫通)ラグを採用。価格は3月発売のSBGA497が税込86万9000円、6月発売のSBGE305が税込84万7000円だ。前者が世界限定1500本(うち国内650本)、後者が世界限定1300本(うち国内600本)となっている。
ファースト・インプレッション
2023年はグランドセイコーが誇る機械式ムーブメント、9S系ムーブメントの25周年にあたる年だった。同年にグランドセイコーは、9S系ムーブメントが作り出される「グランドセイコースタジオ 雫石」近くにそびえる岩手山にちなんだふたつのモデルを発表している。岩手山にかかる雲海と空の美しさをダイヤル上に表したスポーツモデルSBGJ275と、山頂から見上げる中天の情景を写したSBGM253だ。そして今年、9R系ムーブメントの20周年を祝した記念モデルにおいて、ブランドはそれに近しい非常に印象的な手法をとった。スプリングドライブムーブメントが生まれる場所である「信州 時の匠工房」から望む穂高連峰の情景を、2本の時計に落とし込んだのだ。
2004年に誕生したグランドセイコー初のスプリングドライブモデルであるSBGA003。
そして、スプリングドライブのルーツを感じさせるという点で、SBGA497のほうがよりコンセプチュアルなモデルとなっている。本モデルはそのケース形状とデザインを、2004年に誕生したグランドセイコー初のスプリングドライブモデルであるSBGA001、SBGA003から受け継いでいる。スプリングドライブモデルの名作、雪白を思わせるダイヤルパターンがそこに合わさることで、周年モデルにふさわしいいっそう象徴的な存在になっているように感じられた。
ちなみに、雪白に限らず、これまでも穂高連峰をモチーフとしたスプリングドライブモデルはいくつか展開されている。穂高連峰のダイナミックな石稜をイメージした近年のSBGE277、SBGE295などもそうだが、いずれもピリッと引き締まった単色ダイヤルが特徴的だった。それらに対して、繊細で暖かな桜色のグラデーションを描くSBGA497は新鮮な印象だ。2022年の“桜隠し”ことSBGW289や、昨年の今ごろに発表されていたエボリューション9のAJHH限定モデルのときにも思ったが、グランドセイコーによる淡い色味の表現は素晴らしい。特に後者は、プレス画像で見るよりも透明感があり凛々しく清涼感に満ちていた。明るく輝くブライトチタンケースに収められたSBGA497のダイヤルがどのように映るのか、ぜひ確認してみたい。
一方のSBGE305は、ベゼルと鮮やかなコントラストを描くダークレッドが目を引くモデルだ。ダイヤルはサンレイ仕上げで、柔らかく朝日に照らされる雪面をイメージしたSBGA497とは対照的に、夏の太陽光を眩しく返す岩肌を表現したようにも見える。ダイヤルの発色がいい分、デイト窓が目立つという声があるかもしれないが、4時位置に白いデイト窓があることで、離れて眺めたときのシンメトリーがとれている。GMTウォッチにデイトはつきものと考えれば、(今作に限らずだが)スポーツコレクションのGMTモデルのバランスは改めてよく考えられていると思う。
上でも述べたが、GMT針を含むインデックスの要素はシルバーが主体となっており、色味の強いダイヤルを持ちながらも手に取りやすい一本にまとまっている。ベゼルの黒とダイヤルの赤のマッチも洗練を感じさせる王道の組み合わせだ。しかし、あくまで僕の意見だが、本数限定のアニバーサリーモデルとしては少々もの足りなさを感じてしまった。スプリングドライブの15周年時にも、グランドセイコーは「信州 時の匠工房」にほど近い北アルプスの自然が作り出す芸術“シュカブラ”をダイヤルモチーフとした印象的なモデルをリリースしていた。勝手な期待かもしれないが、グランドセイコーの周年と聞くと、次は日本のどのような風景をダイヤル上で形にしてくれるのだろうとわくわくしてしまうのだ。SBGE305のダイヤルの表面が、フラットなサンレイではなく穂高連峰の岩肌を思わせる荒々しい凹凸を持っていたら……、と少し想像してしまった。しかし、実物を見ていない段階での感想である。もしかしたら、手に取ってみた瞬間に「これでよかったのだ」と手のひらを返すかもしれない。あなたの意見はどうだろう?
まあ、周年モデルであるという点を置いても、グランドセイコーに新たなカラーダイヤルモデルの選択肢が加わったのは喜ばしいことだ(プライスも、過去の限定モデルと比較して大きな差はない)。SBGA497は雪白パターンとピンクグラデーションの組み合わせが新しいし、SBGE305のブラックセラミックベゼルとダークレッドの力強い組み合わせはシンプルに魅力的だ。個人的には、前者が手首の上でどのように見えるのか非常に興味がある。ひとまずは9R系ムーブメントの20周年に心からの賛辞を送りつつ、手元で確認できる日を指折り数えて待とうと思う。
基本情報
ブランド: グランドセイコー(Grand Seiko)
モデル名: Heritage Collection キャリバー9R 20周年記念限定モデル/Sport Collection キャリバー9R 20周年記念限定モデル
型番: SBGA497、SBGE305
直径: 41mm(SBGA497)、40.5mm(SBGE305)
厚さ: 12.5mm(SBGA497)、14.7mm(SBGE305)
ケース素材: ブライトチタン(SBGA497)、ステンレススティール(SBGE305)
文字盤色: ピンク(SBGA497)、ダークレッド(SBGE305)
インデックス: アプライド
夜光: 時・分針、GMT針、3・6・9・12時位置にルミブライト(SBGE305)
防水性能: 10気圧防水(SBGA497)、20気圧防水(SBGE305)
ストラップ/ブレスレット: ブライトチタン(SBGA497)、ステンレススティール(SBGE305)
ムーブメント情報
キャリバー: 9R65(SBGA497)、9R66(SBGE305)
機能: 時・分・秒表示、デイト表示、パワーリザーブ表示(9R66はさらに第二時間帯表示機能)
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 3万2768Hz
石数: 30
追加情報:平均月差±15秒(日差±1秒相当)
価格 & 発売時期
価格: 税込86万9000円(SBGA497)、税込84万7000円(SBGE305)
発売時期: SBGA497は3月8日(金)、SBGE305は6月8日(土)
限定: SBGA497は世界限定1500本(うち国内650本)、SBGE305は世界限定1300本(うち国内600本)
詳細は、9Rスプリングドライブの特設ページを参照。グランドセイコーの公式Webサイトはこちらをご覧ください。