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Hands-On オメガ スピードマスター ファースト オメガ イン スペースを実機レビュー

ホワイトラッカーダイヤルはもう過去のもの。私は新たなお気に入りのスピーディを見つけた。

スピードマスターの虜になるまでには、少し時間がかかった。昨年、ホワイトラッカーダイヤルのスピードマスターとともに過ごしたA Week On The Wristの際、自分の変遷を振り返り、懐疑的だった自分がやがて興味を持ち始めた経緯を語ったが、今では完全に夢中になっていると言ってもいいだろう。そんな自分にとって、昨年10月に発表されたオメガ スピードマスター ファースト オメガ イン スペース(FOiS)は、まさにゲームチェンジャーのような存在だ。

Omega First Omega in Space Speedmaster

 そう、昨年はホワイトダイヤルのモデルについても同じことを言った。しかし、自分がスピードマスターに対して抱いていた最大の懸念は、月面着陸以来アイコンとしての地位を保ち続けているその一貫したデザイン言語が、時に退屈に感じられることだった。確かに世代ごとに細かな変化はあるものの、それらは個性や自己表現の幅を広げるものではない。時計愛好家同士の集まりにでも行かない限り、スピーディプロは99%の場面でスピーディプロにしか見えない。それで構わない人も多いだろう。ただ自分はほんの少しだけ違うものが欲しかったのだ。

White dial speedmaster

昨年の1週間レビューより。

 完璧なオールラウンダーというよりも、ホワイトラッカーダイヤルは優れたサマーウォッチだと考えるようになった。それでも自身最初のスピードマスターとして、ホワイトダイヤルのモデルを選ぶのはアリだと主張し(もしかすると自分自身を納得させようとしていたのかもしれないが)、結果購入には至らなかった。その矢先に新しくリニューアルされたFOiSが発表されたのだ。そのときの自分の反応は、まるで“気を取られた彼氏”ミームのようだった。気が変わることだってあるし、別のものに恋に落ちることもある。それは許されるはずだ。ただこんなにも早く心を奪われるとは思わなかった。

Omega First Omega In Space Speedmaster

 オメガが最初の“ファースト オメガ イン スペース”を2012年に発表したとき、自分はまだ時計の世界にいなかった。このモデルは、NASAの宇宙飛行士ウォルター・“ウォーリー”・シラー(Walter "Wally" Schirra)がシグマ7ミッションで着用した、宇宙で初めて使われたオメガのクロノグラフ(Ref.CK2998)に敬意を表してつくられたものだ。2016年にA Week On The Wristで取り上げたこともあるが、当時のFOiS(Ref.311.32.40.30.01.001)は、正直なところ自分にはあまり響かなかった。もちろん評価すべき点は多々あったが、約4年前に生産終了となった際も、ほとんど気に留めることはなかった。

 多くのスピーディ愛好家はシンプルなリリースを好むが、自分にとってオリジナルのFOiSは、もう少しカリスマ性を感じさせる“勢い”が足りないように思えた。シラーは自身の時計をブレスレットではなくストラップで着用していたため、復刻モデルもストラップ仕様だったが、仮にブレスレットを選びたくても純正のいい選択肢がなかった。しかし2024年10月に発表された新しいFOiSには、そんな問題は一切ない。というより、ほとんど欠点が見当たらないのだ。

Omega First Omega In Space Speedmaster

 CK2998をベースとする時計として、FOiSにはいくつか顕著な特徴がある。ストレートラグ、やや小振りなケース、そしてアルファハンド...これらは前作で人々に愛された要素を微調整したものだ。だが新しいFOiSでは、これまでとは大きく異なる点として、フラットリンクブレスレットが標準装備され、価格は121万円(税込み)となっている。そのほかにも細かな変更点はいくつかあるが、最もインパクトがあるのはダイヤルだ。

Omega First Omega In Space Speedmaster

 新しいFOiSにはブルーグレーのソレイユ(サンバースト)仕上げが施されたCVD(化学気相成長)コーティングのダイヤルを採用。このダイヤルのカラーと仕上げは単なる装飾的な要素ではなく、1960年代のオリジナルダイヤルの仕上げと色に由来するものだ。これらのダイヤルが一部の時計(CK2998から145.012までのモデル)に見られた経緯は今もはっきりしていないが、シンガー(Singer)社によるプロトタイプがあとからケースに収められた可能性が高いと考えられている。以下に、初期のスピーディに見られる珍しいダイヤルの例を示す。右側がブルーソレイユ仕上げのものだ。

 このダイヤルの仕上げはギミックが強すぎるのではないかと心配になるかもしれないが、実際にはそこまで目立たない。オリジナルのほうがもっとドラマチックだ。オフィスでこの時計を見せたところ、ほとんどの人がダイヤルを黒だと認識するほどだった。光を当てると、ようやくブルーのトーンが少し際立ってくる。撮影時には光の当たり方による違いがはっきりと分かる。下にある写真では、左がソフトな光のみを使用し、右ではソフトライトと直接的な“ハード”ライトを組み合わせている。その結果、光の当たり方によってダイヤルの印象が変わることが見て取れる。だがほとんどの場合、ダイヤルは黒に見え、ごく一部の角度でわずかにグレーブルーの輝きが現れる程度だ。

Omega First Omega In Space Speedmaster
Omega First Omega In Space Speedmaster

 もちろん、この時計にはヴィンテージスタイルのドット・オーバー・ナインティ(DON)デザインのアルミニウム製ベゼルが施されている。クリスタルはサファイア製だが、ヴィンテージのヘサライト(プレキシガラス)クリスタルのように盛り上がった形状になっており、裏側には反射防止コーティングをしている。

Omega First Omega In Space Speedmaster

 賛否が分かれるかもしれないが、コーヒートーンの“ヴィンテージ風”スーパールミノバは、ダイヤルに程よいアクセントを加えていると思う。CK2998に経年夜光を施したデザインを見慣れているせいか、このカラーは“ヴィンテージの雰囲気とモダンな信頼性の融合”という、自分が気に入っているスタイルにしっくりとなじんでいる。

Omega First Omega In Space Speedmaster

 直径39.7mm、厚さ13.4mmのステンレススティール製ケースは、スピードマスターCal.321に似たサイズ感だが、初代のストレートラグケースによりマッチするよう、ラグの形状と仕上げが若干異なっている。スピードマスターは実寸よりも小さく感じられることが多いが、このモデルはラグ・トゥ・ラグが48mmあり、実際には現行のスピードマスター プロフェッショナルよりもわずかに長くなっている。それでも自分の7.25インチ(約18.4cm)の手首には完璧にフィットし、数値上の厚みに比べて薄く感じられる。一方でケース幅がややコンパクトなため、小さめの手首を持つ友人たちからは“スピーディプロよりもしっくりくる”と評判がいいようだ。

Omega First Omega In Space Speedmaster
Omega First Omega In Space Speedmaster

 オリジナルのFOiSをフォースナーのフラットリンクブレスレットに装着している人を何度か見かけたが、新しいFOiSには最初からフラットリンクブレスレットが付属しているため、その問題は最初から解決されている。自分はスポーツウォッチをブレスレットでつけるのが好きだ(ストラップには簡単に交換できるが、ブレスレットをあとから手に入れるのは難しい)。今回のオメガには、快適なつけ心地を実現するコンフォートセッティング(アジャスト機能)付きのクラスプが搭載されているのも嬉しいポイントだ。

Omega First Omega In Space Speedmaster

 ケース内部には、オメガ コーアクシャル エスケープメントのCal.3861を搭載し、手巻き式で約50時間のパワーリザーブを誇る。さらに防水性能は50mあり、プールでの遊泳程度なら問題なく使用できるだろう。ただし、水中でクロノグラフを操作するのは避けたほうがよい。

Omega First Omega In Space Speedmaster
Omega First Omega In Space Speedmaster
Omega First Omega In Space Speedmaster

 裏蓋は前作のFOiSから変更されており、サファイアクリスタルを採用しているものの“サファイアサンドイッチ”仕様ではない。裏蓋にはThe First Omega in Spaceと、シラーが宇宙に飛び立った日付、October 3, 1962(1962年10月3日)の刻印が入り、中央にはシーホース(ヒポカンパス)ロゴが配置されている。しかしどこか心の片隅で、“シースルーバックもあったらよかったのに”と思ってしまう部分がある。もちろんそうすると多少厚みが増したかもしれないが、フラットでポリッシュ仕上げのソリッドな裏蓋は、ほかの仕上げと比べるとやや物足りなく感じる。理想を言えば“エド・ホワイト”復刻モデルのように、オメガが両方のケースバックを用意してくれていたら完璧だったと思う。

Omega First Omega In Space Speedmaster
Omega First Omega In Space Speedmaster

 2012年版のFOiSは、スピードマスターに段差のあるインダイヤルを再導入したモデルであり、現在ではスピードマスター プロフェッショナルにも再び採用されている。この新しいFOiSにも同様のデザインが取り入れられており、円形パターンのインダイヤルへと緩やかに傾斜する段差が特徴的だ。3時位置と6時位置のインダイヤルにはそれぞれ30分積算計と12時間積算計が配置され、センターのクロノグラフ秒針と同じくホワイトコーティングされた針が採用されている。一方で9時位置のスモールセコンドには、アルファ型の針を用いている。

Omega First Omega In Space Speedmaster
First Omega in Space

グリーンエミッションのスーパールミノバ

 もし自分のように、スピードマスター プロフェッショナルの一貫したデザイン進化とは少し異なる、もう少し変化のあるスピードマスターを探しているなら、このモデルは最適な選択肢かもしれない。オメガのヘリテージラインに属するこのモデルは、ブランドの歴史の一瞬を振り返るものということは明らかだ。それと同時に、現代の信頼性も大きく向上させており、オリジナルのソレイユダイヤルを探し求めるよりもはるかに手ごろな価格で手に入る(現在、オリジナルは5万ドル、日本円で約760万円近くまで高騰している)。

 今のところ、唯一本気で比較対象になり得るのはスピードマスター 321 “エド・ホワイト”だ。しかし、よりクラシックなケースデザインやサイズ感を除けば、単純な比較は難しい。“エド・ホワイト”は伝統的なムーブメントを復活させたモデルだが、Cal.3861には現代のウォッチメイキング技術がすべて詰め込まれている。これはまるでポルシェ356と911 S/Tを比較するようなものだ。さらにこれは“エド・ホワイト”の半額以下であり、“サファイアサンドイッチ”よりも2万2000円(税込)安いと考えると、私はついに自身初のスピードマスターを見つけたかもしれないと思う。

Omega First Omega In Space Speedmaster

オメガ スピードマスター ファースト オメガ イン スペース。Ref. 310.30.40.50.06.001。ステンレススティールケース、39.7mm径、13.4mm厚、ラグ幅19mm、50m防水。ブルーグレーのソレイユ仕上げCVDコーティングダイヤル、ヴィンテージトーンのスーパールミノバを採用した“アルファ”針(時・分針およびインデックスに適用)。9時位置にスモールセコンド、3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計を備えたクロノグラフ。コーアクシャル エスケープメントを搭載したMETAS認定のマスター クロノメーターのCal.3861搭載、手巻き式、パワーリザーブ約50時間。フラットリンクSSブレスレット。価格は121万円(税込)