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ネバダ州ファロンは、西にシエラネバダ山脈、東に砂漠が連なる埃っぽい土地だ。その風景には、平坦な土地ならではの広がりのある美しさがある。1960年代からはアメリカ海軍最高峰の訓練学校があることで知られている。これが有名な「トップガン」だ。
トップガンといえば、何を思い浮かべるだろうか。もちろんトム・クルーズだろう。しかしほかには? IWCのクリエイティブ・ディレクター、クリスチャン・クヌープ(Christian Knoop)氏にとって、それはモハーヴェ砂漠の砂埃であり、冬のレイク・タホの氷であり、戦闘機パイロットが空を飛ぶときに観察する山林の深い緑なのだ。ここ数年、クヌープ氏と彼のチームは、Watches and Wondersでデビューしたブランドの最新コレクションのために、このイメージにどっぷりと浸かってきた。
この5つの時計は、IWCの特徴であるカラーセラミック(&セラタニウム)ケースを備え、いずれもトップガンアカデミーとその周辺で見られる自然の色で表現されている。フォレストグリーンのウッドランド、純白のレイク・タホ、ダスティベージュのモハーヴェ・デザート、マットブラックのセラタニウム、そして漆黒のジェットブラックだ。最終的なカラーを決定するにあたっては、IWCのデザイナーとカラーコンサルタントの権威であるパントン・カラー・インスティテュートの協力が不可欠だった。 IWCがパントンのカラー・ランゲージを使用して新しいケースを定義したのは、珍しいことではない。IWCのデザインプロセスのほとんどは、何十種類もの色見本を検討することから始まる。しかしトップガンに関しては、アカデミー周辺の景観のニュアンスを正確に表現できるベージュ、グリーン、ブラックの色調を、パントンと協力しながら決定したのだ。
IWCの場合、デザインプロセスはムードボードから始まる。「デザイナーはユニフォームや風景の写真を撮り、壁に貼り付けます」とクヌープ氏は語る。「しかし、遅かれ早かれ、これをカラーコードに変換しなければならない瞬間がやってくるのです」。そこでパントンの出番だ。パントンのカラーマッチングシステムには2000色以上の色があり、あらゆる製品やプロジェクトのクリエイティブなベースとして使用することができる。
2000色というのはかなりの色数だ。しかし、モハーヴェの砂のような温かい色調や、戦闘機のブラックのような特殊な色を見つけるには十分ではない。IWCはパントンのチップを出発点とし、色を通じて時計に何を想起させたいかについて、より大きな議論を重ねた。「実際には、ケースリングの色はパントンから入手したどの色とも一致しません」とクヌープ氏は言う。
モハーヴェ・デザートモデルでクヌープ氏のチームが求めたのは、暖かみがありながらまぶしくはなく、砂埃のようであってもくすんでいない色だった。そこで彼らはニュートラルな色調の見本を集めた。「落ち着いた色です」とクヌープ氏。「ある種の耐久性を感じさせる色なのです」。IWCは、自分たちのイメージに近いパントンの色見本をいくつか見つけ、それを日本のセラミックメーカーに送り、サンプルを作ってもらった。
カラーセラミックスの製造には、焼結と呼ばれる工程がある。ルースパウダーを高熱で処理することで、クヌープ氏が「チョークのような」と呼ぶコンパクトな固形素材ができあがる。IWCの時計の場合、このパウダーは金属酸化物とカラーセラミックのパウダーを組み合わせたものだ。焼結工程では、最終製品の意図した色に自然に変化する。「これは、色を100%変換できるようなプロセスではありません」とクヌープ氏は言う。つまり、「モハーヴェ砂漠」のグレー/グリーン/ベージュを正確に再現するためには、試験管を使った正確な色出しよりも、試行錯誤が必要ということだ。クヌープ氏によれば、粉体の適切な配合を考えるのは、非常に手間のかかる作業だという。ただ顔料を混ぜればいいというものではない。「色と素材との技術的な結合を正しく行う必要があり、それは非常に複雑なのです」
モハーヴェモデルにおいて、IWCは5種類のカラーバリエーションを試し、納得のいく色合いにたどり着いた。これはチャレンジだった。色に正解も不正解もないのだ。パントン製のチップを使ったカラーマッチングは、あくまでも理論上のマッチングに過ぎない。「ブラック文字盤も、ただの黒い文字盤ではないのです」とクヌープ氏。色は、科学と感情のミックスなのだ。「見て初めてわかる」という要素があり、それがデザインのプロセスに不可解な魔法を与えている。
リズ・スティンソン(Liz Stinson)氏は、AIGAが発行する「Eye on Design」のエグゼクティブ・エディター。デザインに関する彼女の記事は、「Wired」「Curbed」「Gizmodo」「Architectural Digest」「The Wall Street Journal Magazine」にも掲載されています。HODINKEE掲載の彼女の全アーカイブはこちらを。
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