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HODINKEEのスタッフや友人たちに、なぜその時計が好きなのかを語ってもらう「Watch of the Week」。今週のコラムニストは、2015年からオーダーメイドエンゲージリングの会社を経営しているジュエリーデザイナーのマギー・シンプキンス(Maggi Simpkins)氏だ。彼女は最近、サザビーズの展覧会「Brilliant and Black - A Jewelry Renaissance」のために100万ドルのリングをデザインした。
私が身につけるジュエリーのほとんどは、自分にとって相当なセンチメンタルバリューがあります。私はほぼ毎日、母の婚約指輪と、父の金張り眼鏡のフレームで作ったバンドを重ね付けしています。首には、父方の祖母から受け継いだペンダントネックレス。私は、身につけるものと感情を結びつけたほうがよいと固く信じているのです。
私がエンゲージリングの仕事が好きな理由もそこにあります。なぜなら、私とジュエリーとのつながりは、本当にセンチメンタルなものだからです。きれいなものが好きなのはもちろんのこと、ストーリーがあり、人々にとって重要な意味を持つものを作りたいと思うようになりました。
毎日身につけることで、私は自分の大切な人たちとの絆を保っていますが、特別な日のために取っておく私のスーパーヒーローのようなアイテムがあります。それは、祖母であるリリアンのカルティエ タンクです。
祖母は母が私を妊娠しているときに亡くなったので、私は祖母のことを知りませんが、エネルギッシュな人だったといつも思っています。1960年代に黒人女性としてロングアイランドにマイホームを購入し、父と双子の弟を私立学校(もちろん父は大嫌いだった)に通わせるために、ふたつみっつと仕事を掛け持ちしていたそう。彼女は優しく、勤勉で、深い信仰心を持ち、自分の人生を他人のために捧げる女性でした。私のネックレスとこの時計は守護天使のようなもので、彼女の強さが私に伝わってきます。
私のキャリアは、ある意味、自分の家族を映す鏡のようなものです。母は私にクリエイティブであれと励ましてくれ、父は溶接工で手仕事をしていましたし、祖母はお話したように、力の源でした。
80年代後半に父と兄が祖母の家を相続したのですが、2012年に父が亡くなったとき、私はその家に行って遺品の整理を手伝いました。そこは、父の人生と彼女の人生のタイムカプセルでもありました。父の古い写真がたくさんあり、なかにはファンキーなヴィンテージのおもちゃも。祖母は2人の男の子のシングルマザーだったので、豪華なものはありませんでしたが、ドレッサーにこの時計を見つけたのです。とても美しく、そして場違いなものでした。私がジュエリーに感傷的になる理由のひとつは、一度も会うことのなかった家族がいて、その人たちの物語が詰まった小さな作品を肌見離さず持つようになったからだと思います。
祖母のことを直接は知らないわけで、時計そのものについてよく知りません。数年前に初めて手にしたとき、近所の時計屋に修理に出して本物だと言われたけれど、100%正直に言えば、本物だろうが偽物だろうが、私にとっては何の意味もありません。そういう意味では、それがセイコーでもカシオでも同じかもしれません。たまたま、見事に美しく、私の好みに合っていると思っただけ。
最近、ふとしたきっかけで、時計に関わる仕事をしたいと思うようになりました。多くの人にとって、ジュエリーは記念品であり、大切な人から受け継がれるものです。最初は時計、そうそのメカニズムに及び腰になり、"え、こんな化粧箱に入って保証書までついてくるの?"と思ったけれど、でも、知れば知るほど、ジュエリーと同じような感覚で取り組めるようになりました。細かいことは気にしないんです。私は鑑定書付きの宝石も売りますが、そうではないものも売ります。私にとっては、その石が好きかどうか。その石の輝きはどうだろう? と思いを巡らせるのが大切なこと。触ってみて、それが自分にとって意味があれば、それが大事なんです。
All photos, Aileen Son
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