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パネライは今年のWatches & Wondersで、イタリア海軍に時計を供給してきた自らの来歴を踏まえ、その伝統を讃える5本の新作ルミノールを発表した。回顧的なデザインやエイジドダイヤルの流行はすでにピークを過ぎたのかもしれないが、よく考え抜かれた製品は今なお十分に魅力的である。この手のアプローチにおけるパネライの出来不出来はこれまで必ずしも安定していたとは言えないが、うまくはまったときの完成度は非常に高い。今回の新作ルミノールでは、細部の作り込みによってクラシックな意匠に新たな息吹を与え、見事なバランスに仕上げてきた。ルミノールはそもそも万人受けを狙った時計ではなく、パネライも今年はその個性をあえて正面から打ち出しているように見える。
ルミノールという名の背景には、長い歴史がある。現代のパネライはかつてとはやや異なる表情を見せているが、このモデルに通底する一本気な性格は変わっていない。マットなサンドイッチダイヤル、そしてリューズを守るあの特徴的なプロテクター。ルミノールほどにひと目でそれとわかり、強い個性を放つ時計はそう多くない。その鮮烈なキャラクターは、いまもきちんと受け継がれている。さらに言えば111、127、372、560といった、何十年も前に多くの人を時計趣味へと引き込んだ定番リファレンスが、いまでは比較的現実的な価格で手に入る。これほどの影響力を持ちながら、そのように語れる時計はほかにそう多くない。
こうした時計においては万能ではないことこそが、むしろ魅力なのかもしれない。大ぶりで、ときには着けこなすことも難しく、しかも一切媚びない。だが、その成り立ちの原則に忠実であるとき、ルミノールは自らの歴史的な立ち位置を雄弁に物語る。パネライは今回の新作ルミノールでも、そうした実用本位で機能主義的な性格をあらためて前面に押し出している。
ルミノール PAM01731 & ルミノール デストロ PAM01732(44mm)
ルミノール PAM01731、ルミノール デストロ PAM01732
PAM01731とデストロ PAM01732は、6152/1に見られるルミノールの造形を現代的に研ぎ澄ませたモデルである。広々としたサンドイッチダイヤル、リュウズを守るブリッジ式プロテクター、そして手巻きムーブメント。いずれもクラシックな44mm径のスティールケースと24mmのラグ幅を受け継ぎつつ、2種類のマットなサンドイッチダイヤルによって、あの象徴的な数字を鮮やかに浮かび上がらせている。PAM01731はケース右側の3時位置にリュウズを備え、ざらりとした質感のタバコカラーダイヤルを採用する。一方のデストロ PAM01732は、リューズを反対(左)に配し、マットブルーのダイヤルを組み合わせた。
両モデルに搭載されるのは、パネライの手巻きCal.P.6000である。2018年に登場したこのムーブメントは、その実用本位の性格を物語るように、簡潔で無駄のない設計を特徴とする。横方向のヘアライン仕上げを施した大ぶりな3/4プレートが外観の大半を占め、唯一の開口部には両持ちのバランスブリッジで支えられたテンプが収まる。3日間のパワーリザーブは登場時には印象的であったが、ことこの種の手巻き時計においては、いまとなってはおおむね標準的な水準と言ってよいだろう。なおムーブメント名は同じでも、PAM01731には9時位置にスモールセコンドが備わる。どちらのリファレンスも300m防水を確保し、価格は136万4000円(税込)である。
ルミノール オットジョルニ PAM01733(44mm、8日間パワーリザーブ)
オット ジョルニ PAM01733では、8日巻きルミノールにブルニート仕上げのスティールケースを採用した。これは、現場で繰り返し使われた金属製装備に現れる自然な経年変化を思わせる仕上げである。44mm径のケースにはまずブラックPVDを施し、その後、狙った風合いを出すために手作業で表面を擦り出している。今回も着想源となったのは6152/1である。1955年以降、この由緒あるモデルは特許取得済みのリューズプロテクターを備え、ルミノールの原型を決定づけた存在とも言える。
もっとも、新しいPAM01733は単なる復刻ではなく、はっきりと独自性を備えたモデルとなっている。この時計には914と同じ8日巻きの手巻きムーブメントが搭載されるが、9時位置にスモールセコンドを備える点で異なる。サンドイッチダイヤルにはアンスラサイトのサンレイ仕上げが与えられ、インデックスの開口部や針からのぞくヴィンテージ調の夜光とよく調和している。Cal.P.5000はふたつの香箱によって8日間のパワーリザーブを実現しているが、そのサイズ自体は3日巻きのCal.P.6000と比べて変わっていない。
パネライがPAM01733に採用した独自のブルニート仕上げは、2023年にラジオミール コレクションで初めて登場し、その後はごく限られたモデルにのみ用いられてきた。今回それがここで再び採用されたのは歓迎すべきことだが、ケースの表情をより引き立てるという意味では、ダイヤルはサテン仕上げかマット仕上げのほうが好相性だったかもしれない。とはいえ、強烈なインパクトを備えた1本であることは間違いない。PAM01733の価格は168万3000円(税込)である。
ルミノール PAM01735 & ルミノール フォージドチタン PAM01629(47mm)
ルミノール PAM01735とPAM01629では、パネライにおいて原点とも言える47mmケースを採用するとともに、コレクションに新素材を持ち込んだ。ルミノールはもともと47mm径で生まれた時計であり、どんな状況でもひと目で時刻を読み取れる視認性を重視して設計されている。このサイズにこそデザインの持ち味があり、パネライもその伝統をいまなお大切に守っている。加えて、ラグが非常に短いため、腕に載せた際の収まりは見た目ほど悪くない。とはいえ、常識的なサイズ感や扱いやすさを求めるなら、これらは最初に選ぶべき時計ではないだろう。
PAM01735は、ポリッシュ仕上げのスティールケースに、アイボリーのグラデーションを効かせたマットダイヤルを組み合わせた1本である。ダイヤル表面には粒感のあるテクスチャーが与えられ、経年変化を思わせる夜光と相まって、全体にこんがり焼けたような表情を生み出している。その雰囲気は、これまでに発見され保管されてきた、トロピカルな個体の魅力を思わせるものだ。ムーブメントは3日巻きの自社製Cal.P.3000。シースルーバック仕様で、防水性能は100m、価格は184万4000円(税込)である。
一方、ルミノール フォージドチタン PAM01629は、パネライにとって初のフォージドチタン採用モデルとなる。ダイヤルにはアンスラサイトのサンバースト仕上げを施し、ベージュの夜光を組み合わせることで、新しさと古さが同居するような表情をつくり出した。こちらもCal.P.3000を搭載し、ケースバックはオープン仕様となる。ケースのテクスチャーは製造予定の100本それぞれで異なり、ルミノール本来のDNAを保ちながらも、ひときわ個性の強い仕上がりとなっている。もっとも、その素材には相応のプレミアムが伴い、価格は352万円(税込)である。
我々の考え
パネライは今年、ルミノールというデザインの特別さがどこに宿っているのかを、あらためて見つめ直したように思える。市場のあらゆる隙間を埋めるためにルミノールを並べるのではなく、その時計が生まれた原点にある核のような個性へ、静かに立ち返ったのだ。今回の新作ルミノールはいずれも、業界の大きな潮流に安易に寄り添うことなく、自らをかたちづくった思想や美意識をていねいに守ろうとしている。だからこそ、ケースの厚みやベージュの夜光の多用といった細かな点をあげつらう気にはならない。そんなことよりも、この時計がいまなお持つ力強さや気配を、そのまま受け止めていたくなるのである。
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