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春のオークションシーズンが本格的に始まり、素晴らしいスタートが切れた。この週末、ジュネーブでは1億ドル(日本円で約138億1400万円)以上の時計が落札され、そのなかでもヴィンテージウォッチ(もちろんごく少数の現代モデルも忍び込んでいるが)の販売が好調なのは明らかだ。いくつかのサプライズを含め、多くの記録を更新している。
正直に言うと、パンデミック初期のヴィンテージウォッチ、あるいは腕時計全般の強さはもろ刃の剣だった。というのもほぼすべての商品の価格が天井知らずなまでに高騰し、売り手にとってはうれしいことだったが、一部の時計は今以上にさらに手の届かないものとなっていた。しかしそのあと市場は軟化し、多くのコレクターが心配するようになる。何より価格がどこで(下げ止まりして)落ち着くのかという恐怖があった。そんななか今週末のオークションが開催され、多くの人たちが安堵の息をついたことだろう。
ロレックス ラピスラズリ デイトジャストは、ジュネーブにあるフォーシーズンズ ホテル デス ベルゲスで開催されたクリスティーズ・オークション以外の初日を始めるのにふさわしい1本だ。
会場に滞在してアクションを見るのはいつもおもしろい。壇上からも入札者からも、たくさんのドラマとエンターテイメントが生まれていくのだ。また友人同士で集まってオークションで時計を見たり、もしかしたら買ったりすることもできる絶好の機会でもある。しかしウィークエンド・オークションは、オークション会場ではなくホールの外でおしゃべりをしたり、時計を交換したり、あるいはちょっとしたものを売ったりして過ごすことが多い。ある人によると、ウィークエンド・オークションでディーラーやコレクターとして真剣に相手にされたいのなら、会場のねかで買うか、あるいは酒の席で飲みながら買うほうがいいと言っていた。
1971年に発売されたこのホワイトゴールドのカルティエ ロンドン タンク サントレを身につけている手首に見覚えはないだろうか? あとで彼からもっと話を聞こう。
それでは早速、春のジュネーブ・オークションに出品された魅惑的な時計やそのシーンを深堀りしていこう。
パテック フィリップの“Amagnetic”。 これまでにつくられた文字盤のなかでも私が特に好きなフォントのひとつで、私の目を引いた。
しかしこのユニバーサルは、現存する数少ない“プロトタイプ”ダイヤルを持っているうちのひとつであり、この時計が本当にワイルドなものになると確信したのはそのときだった。
ジュネーブのフォーシーズンズ ホテル デス ベルゲスの外観。
土曜日の朝、テーマに関係のない公式オークションを開始したクリスティーズのオークションルームにまずは足を運んでみた。
壁にはロレックス Ref.6269をはじめとした大物が並んでいた。右の6269はなかなかお目にかかれないモデルだ。
アクションに近づいた。
すべての興奮は何も会場の前列で生まれるわけではない。フォトグラファーのためのヒントは、みんなが“アクション”を求めている場所だけに焦点を当てないこと。別に視点を向けてみるといい。
この落札者はレインボーデイトナとパテックのセレスティアル 6102Pをダブルリスティングしていた。これこそ“賢明な策”と呼ぶのだろう。
パテック スカイムーン トゥールビヨン Ref.5002P。
会場前方からのウォッチスポッティングは大変だ。立ち見席のみのエリアでは、このドゥ・ベトゥーン DB 25 スターリーバリアスが釣れた。
イタリアのコレクターは、素晴らしいゴールドレターを持つロンジン クロノグラフと、ブランドとしては比較的珍しいケース形状のユニバーサルをダブルリスティングしている。
そしてもうひとつはロレックスのトリプルカレンダーだ。
さらにパテック 1415HUでもう1枚。
ポール・デイヴィッド・モーズリー(Paul David Maudsley)氏が着用していた美しいブレゲ 3330。
後ろの立見席ではアダム・ゴールデン(Adam Golden)氏とサシャ・ダビドフ(Sacha Davidoff)氏が、入札の可能性について語り合っていた。
この美しいパテック カラトラバをよく見ると、ちょっとした違いがあるのに気付くはず。
アレッサンドロ(Alessandro)氏が友人たちと作った新しい時計雑誌、“Heist Out”にて、違うシグネチャーが入ったこのカスタマイズスウォッチが登場しているためご覧あれ。
ロレックス GMTマスター “ルートビア”。
アラビア文字(インド数字)のインデックスとカレンダーディスクが付いたロレックス デイデイト ジェフ・ハリス。
アトリエ・ウェン パーセプション。
クリスティーズで見つけたMB&F。
今度はクルマに飛び乗って(残念ながらこのクルマではない)、フィリップスへ向かおう。
ブラックベイ 58のシルバー925モデル。
ブランパンをつけた同僚のローガン・ベイカー。
アーミン・シュトロームは少し驚いたが、オークションには多くの独立系ブランドやスモールブランドであふれていた。
ロイ・ダビドフ(Roy Davidoff)氏がつけていたのはデイトナ。確かに何もかもカッコよかったが。
裏はもっとクールだった。
ではラ レゼルヴで開催された、フィリップスの超満員のテントのなかでのアクションに移ろう。
小さいゴールドのロレックスが手首にちょこんと乗ってあるだけで、なにも時計を大げさに表しているのではなく、本当にクールなものであると示している。
ニューヨークにあるMaterial Goodの時計担当、ヨニ・ベン・イェフダ(Yoni Ben-Yehuda)氏。
彼は、私が好きなヴィンテージオーデマ ピゲのひとつの、オリジナルスターホイールをつけていた。
ウィリアム・マッセナ(William Massena)氏は、金色に輝くマッセナLAB クロノグラフを着用。
アレッシオ・ゼニア(Alessio Zegna)氏。
同じ週末に2本のロレックス Ref.6269を見るのは何度目だろう? この個体はクリスティーズのものとは異なり、オークションにかけられたものではない。
このモダンなレインボーデイトナの前身ともいえるのが6269だ。このコレクターはポップなカラーと合わせて、エレガントに着こなしている。
一方でアーサー・トゥーショー(Arthur Touchot)氏は、よりシンプルでありながらエレガントなロレックス デイトナを腕に巻いていた。
ロレックス デイトナと、ジャン=クロード・キリー。
ドゥ・ベトゥーン DB25 パーペチュアルカレンダー。
ルイ・エラール×コンスタンチン・チャイキンの限定レギュレーターモデル。
フィリップスで常にオークションハンマーを振っていたオーレル・バックス(Aurel Bacs)氏。
ラ レゼルヴからの眺めを楽しむために少しだけ休憩。
Instagramの“Perpetual Girl”こと、カミーユ・ギール(Camille Guille)氏。
素晴らしいデイトジャストだ。
トニー・カヴァック(Tony Kavak)氏の顔はHODINKEEで初めて出たかもしれないが、名前は違う。今年の初めにJay-Z(ジェイ・Z)にパテック Ref.2499というユニークな時計を提供した記事を書いたが、それは彼のものだった。
この奇想天外なパテック Ref.5004Jを堪能あれ。
ジョバンニ・ボナンノ(Giovanni Bonanno)氏が着用していたこのブレゲと、上の時計との共通点を教えてくれる人はいないか?
終日、会話は外へと移っていった。
ファイターを選んで。スルダン・ステビッチ(Srđan Stević)氏のデイデイト?
あるいはタリク・マリク(Tariq Malik)氏?
デイトジャスト タイガーアイ。
スルダン・ステビッチ氏のカルティエ パリ マキシ オーバル。
少し前にFour + Oneで紹介したイニ・アーキボン(Ini Archibong)氏。再会できてよかった。
赤いストラップが映えるクロノメーター ブルーを今も愛用している。
会場に戻るとマルセロ・デ・マルコ(Marcello de Marco)氏が台に上がっていた。
これは台に立つマルセロ氏の幸運のお守りだ。
ジーナスの時計。
ジョン・ゴールドバーガー氏。
もちろん腕にはカルティエが。こちらは1971年製のWG製ロンドン サントレ。
ロイヤル オーク セラミック グランド コンプリケーションを身につけたクラウディオ・サルヴァティ(Claudio Salvati)氏。1日を締めくくるのにふさわしい。
そしてサザビーズの興奮は、日曜日にマンダリン オリエンタルで始まる。
ヴェルガで販売されたロレックス プリンス インペリアル。
たとえそのウィークエンドで見た2番目のマキシ オーバルだったとしても、それが素晴らしいものであることには変わらない。
ハンマーを持つブノワ・コルソン(Benoît Colson)氏。
その日のゴールドバーガーはラチナのサントレにブルーのインデックスをセットした、2005年にパリから取り寄せた特注品をつけていた。
フェリーチェ・ルスコーニ(Felice Rusconi)氏。
同氏は1975年製のロンドン カルティエ タンクノルマルを着用していた。
ウェイ・コー(Wei Koh)氏。
この日ウェイ氏は特注のタンク サントレを着用しており、カルティエ一色の1日となった。
モバード クロノグラフ。
パテック フィリップ カラトラバ。
ウィークエンドに見かけた数少ないスピードマスターの1本。おそらく最もキレイな個体だ。
ウルバン ヤーゲンセンを発見。
ウッドダイヤルを持つデイデイト。
SS製ダイヤルのAP ロイヤル オーク パーペチュアル カレンダー。
コッラード・マッタレッリ(Corrado Mattarelli)氏も、スケルトンのロイヤルオークQP(パーペチュアルカレンダー)で力強さを放つ。
パテック フィリップ クロノグラフのRef.130。ブレゲ数字が入っているがカルティエのために特別につくられたもので、文字盤にはカルティエだけが描かれている。まったくなんてことだ。
アンドレア・パルメジャーニ(Andrea Parmegiani)氏が着用しているのは、まったく欠点のないトロピカルなセルピコ・イ・ライノのサイン入りロレックス Ref.1675だ。
オーレル・バックス氏は、ビバー・ウォッチが100万スイスフラン(日本円で約1億5350万円)に達した場合、ジャン=クロード・ビバー(Jean-Claude Biver)氏と同じ誕生年のお酒を提供するとした。
なんということだ。この時計はまさに100万スイスフラン(日本円で約1億5350万円)で取引が成立した。
ピエール・ビバー(Pierre Biver)氏。
彼の手首にはファーラン・マリが巻かれていた。
素晴らしいロレックス ディープシー チャレンジに遭遇。
面取りを復活してくれと言いたい。
ウォッチ・ブラザーズ・ロンドンの創設者であるベン・ダン(Ben Dunn)氏。
ジェラルド・ジェンタ パーペチュアル カレンダーを着用。
ジュネーブにいたリッチ・フォードンは、ストラップをケースから横にスライドさせるタイプの、非常にクールで珍しいブランド名のない時計を身につけていた。
1966年製のロレックス Ref.6238。
ランゲ1 “シンシア”。
ツァイトヴェルク ルーメン。
オーレル・バックス氏の腕には、納品さればかりだというパープルダイヤルを備えたMB&F LM 101の姿が。
この週末で見かけたなぁでも特にお気に入りだった時計と衣装の組み合わせは、こちらのレジェップ・レジェピ クロノメーター コンテンポラン IIとジェフ・ゴードンのヴィンテージデニムジャケットだ。
レジェップ・レジェピ(Rexhep Rexhepi)氏その人だ。
F.P.ジュルヌ クロノメーター・レゾナンスとパテック フィリップ 5160J-001。