Watching Moviesが帰ってきた! このシリーズの充電期間中に必要だったのは、マルチバースアドベンチャーのドタバタ劇であり、それは瞬く間にカルト的な人気を博して賞レースの最有力候補となったものだ。
これはもちろん、ミシェル・ヨー(エヴリン・ワン役)とキー・ホイ・クァン(ウェイモンド・ワン役)のW主演、そしてダニエルズコンビ(ふたりともダニエルという名前であり、これは偉大な名前のひとつでもあるということを誰もが認めているだろう)が監督を務めた、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のことである。
昨年公開(日本では2023年3月3日に公開)され、今週末のアカデミー賞で11部門にノミネートされたこの映画は、ヨーが結婚生活の終わりに直面し、さらに税金に関する多くの問題を抱える、運の悪いコインランドリー店のオーナーを演じている。彼女は突如多次元の宇宙空間に飛ばされ、ヤバい魔の手が巻き起こす現実など、実に奇妙な脅威から世界を救うというストーリーだ。これは見てみないとわからないだろう。
ストーリーで彼女は、クァン演じる次元の異なるさまざまなバージョンの夫によって導かれている。そんな彼は腰回りに付けるウエストポーチとともに、カシオの原点的なデジタルウォッチを身につけていた。
注目する理由
アカデミー賞の開催を2日後に控えた週末、そろそろ予想する時期が来たようだ。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、ありとあらゆる賞レースを総なめにしながら、オスカー受賞への道を順調に進んでいるようである。もちろん、ほかの番組が何も予言しないとか、我々が多次元宇宙のなかで生きているとかでなければの話だが。話がそれてしまった。
この映画のコンセプトは、ヨー演じるエヴリンが、滅亡する危機に瀕した世界を救う、ユニークな能力を持つマルチバースのヒーローであるということ。彼女は、両耳に装着するタイプである昔ながらのBluetoothのヘッドセットで現実を飛び越えることができ、別次元から来た夫の助言を受ける。
実際に鑑賞するまではかなり混乱する(見たあともわからないことであるのは確かだが)が、しかし基本的には、キャラクターがさまざまな別次元を利用することで、邪悪な脅威(そのうちのひとりをジェイミー・リー・カーティスが演じている)を退けるための、複数の戦闘スタイルといったスキルを学ぶことができる。
プロップマスターのジョシュア・ブラマー氏に話を伺って知ったのだが、この映画はパンデミックの最中に撮影されたという。さらに、クァン演じるウェイモンドに合わせて、ヴィンテージとモダンが融合したカシオのデジタルウォッチ、A158WAを選んだのもブラマー氏だった。
ブラマー氏は、ウェイモンドのウエストポーチやカシオの時計など、映画の小道具をフレームに納めたディスプレイボックスを見せてくれた。
「私たちは“流行に乗ろうとするお父さん”のような、クールなルックスを目指したんです」と彼は話した。「だから彼はウエストポーチを身につけて、それにクァンが出演している映画は全部好きだから、彼のためにヴィンテージのカシオスタイルに回帰したいと思ったのです。ウェイモンドが身につけるような、実用的で、オールマイティな時計です。そしてクァンはそれを気に入っていました」
プロップマスターは、撮影のためにさまざまな選択肢を考えて用意することが多い。しかしこの1モデルはあまりにも完璧で、却下することはなかった。「彼はきっとこれを選ぶだろうと思ったし、実際に受け入れてくれた。実は渡すときにラッピングしてプレゼントとして贈りました。スクリーンで使われた小道具として、一生大事にできるように」
時計本体もさりげなくフィーチャーされているが、彼の袖口に本気で注視し、その下からのぞくのを待つしか見られない。ある意味、隠れメッセージだらけの映画のなかにある、本当の隠れメッセージともいえる。これは80年代の作品である『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』の両方に出演していた彼が持つ、キャラクター性との相性も抜群で、80年代のノスタルジーを感じさせる味わい深い作品に仕上げられている。
見るべきシーン
Bluetoothのヘッドセットで次元を飛び越えることを初めて知る序盤にて、ウェイモンドが代わる代わる繰り広げる戦闘シーンでその時計を見ることができる。
彼が戦う覚悟で警察と対面して戦闘準備をするとき、リップクリームを持つ手が画面いっぱいに広がり、(なぜ彼が今リップクリームを手にしているのか説明する、十分な時間がない)彼の手首の袖口からカシオの時計を見ることができる(映画開始から28:22ごろ)。このシーンが、その後の映画の流れを大きく動かすきっかけとなる。
映画のクライマックスでは、無限に近い宇宙の狭間にいるエヴリンが、自身にとって何が大切なのか、そして夫であるウェイモンドとの関係の真意はなんだったのか、一気に理解する瞬間が描かれていく。
スクリーンに閃光と多次元的なシーンがあふれるなか、ウェイモンドとエヴリンが抱き合う姿が映し出される。そのシーンで、ウェイモンドの手首にあるカシオが鮮明に表示され、カメラがそこに向かって流れるように押し寄せられて映る(映画開始から1:48:48ごろ)。
もしエブリシングがアカデミー賞を受賞したら、そしてその際にこの地味なギーク系ピースが、ハリウッドで不朽の名声を得ることができるのか、注目したい。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン主演)は、ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート監督、小道具はジョシュア・ブラマー担当。iTunesやAmazonでレンタルや購入が可能です。
HODINKEEはカシオの正規販売店です。
話題の記事
WATCH OF THE WEEK アシンメトリーのよさを教えてくれた素晴らしきドイツ時計
Bring a Loupe RAFの由来を持つロレックス エクスプローラー、スクロールラグのパテック カラトラバ、そして“ジーザー”なオーデマ ピゲなど
Four + One 俳優である作家であり、コメディアンでもあるランドール・パーク氏は70年代の時計を愛している