Illustration by Andy Gottschalk
2009年、ジェームズ・キャメロン(James Cameron)は、彼がRMS タイタニック号(1997 年)の救命ボートにローズとともに乗り込んだ幸運なひとりであることを我々に思い出させてくれた(周知のとおり、不運にもジャック・ドーソンはそうはいかなかったが)。アバターは、パピルス書体のタイトルカードとともに、年末年始に劇場公開され、キャメロンが90年代半ばにこの映画を考案して以来、継続的に取り組んできたことが報われ、画期的なデジタル効果がスクリーンに映し出されることとなった。
文字どおり、私たちは皆(読者のあなたも含め)アバターを鑑賞した。アバターは史上最高の興行収入を記録した作品となり、2019年に『アベンジャーズ/エンドゲーム(原題:Avengers: Endgame)』がトップを奪取するまで、その座を維持した。 それに負けじと、アバターも中国の映画館で息を吹き返し、2021年に再びトップの座を奪還した。いずれにせよ、100年以上先の未来を舞台にしたこのSFアドベンチャーで、主人公がある20世紀のデジタルウォッチを身につけていることはご存じなかったのではないだろうか。
見るべき理由
アバターが、再び映画館に戻ってくる。映画ファンはパンドラに戻り、ようやくまたナヴィと一緒に過ごすことができることであろう。最先端のデジタル効果はどんなものだったのか…、13年前に立ち返ることができるのだ。もちろん、この劇場版カムバックは、近日公開予定の『アバター』の続編、『アバター:ザ・ウェイ・オブ・ウォーター(原題/Avatar: The Way of Water)』を見越したものである。第1作の再公開版では、新しい書体が採用されていることにお気づきだろうか。つまり、いろいろな意味で、これはパピルス(Papyrus)ときっぱりとお別れするためのものなのだ。
この映画は、元海兵隊員のジェイク・サリー(サム・ワーシントン)が新世界を探検し、先住民族(ナヴィ)と出会い、また彼らの天然資源(その名もアンオブタニウム)を搾取するために、惑星パンドラへの探検をするよう命じられる姿を描いている。その際、ナヴィの身体と自分の心を接続する“アバター”と呼ばれる作業を行うことになる。 その過程で、サリーはナヴィの一員となり、ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と恋に落ち、強欲な人類からナヴィを守るため立ち上がる。
初めてこの映画を鑑賞したとき、『アバター』が好きになれなかったことをはっきりと覚えている。私は大学生で、何人かが公開初日の週末に行ったのだが、それは誇大広告の引き金だ(そう、誇大広告だから3Dで観たのである)。この映画の全体的なトーンには、視覚的に何か違和感を感じる部分があり、まるですべてが過飽和状態であるかのように思えた。映画というよりも、3時間の遊園地の乗り物に乗っているような気分だった。それが狙いなのかもしれない。
この映画のなかに時計があることに気づいたのは、いずれ続編を見ることになり(またもや誇大広告のおでまし)、復習する必要があったからだ。そう、この映画には時計が登場するのだ。地球を揺るがすような類の高級時計ではないものの、時計だ。サリーが身につけているのは、ラバーストラップ付きの大型のカシオ製デジタルウォッチ、プロトレック PAW-1300G-1Vと思われる。プロトレックはカシオのなかでも頑丈な作りで、G-SHOCKほどの屈強さとコストパフォーマンスを持ち合わせてはいないものの、ほかのカシオの時計に比べ、より強力な衝撃に耐えることができる。
この写真から画面に表示されている時計の全体像を把握することは難しいが、全体的なフォルムとその紛れもないデジタル表示は、全体をとおして彼の腕に容易に確認することができる。このプロトレックの特徴は、樹脂製のケースとストラップ、100m防水、アラーム、高度計、気圧計、コンパス、ストップウォッチ、温度計の機能を備えている点だ。
サリーが元海兵隊員であることを考えると、このような大型のデジタルウォッチは実にチェックポイントになるはずだ。しかし、気になるのはその時間軸である。本作の舞台は22世紀、約130年後の未来だ。『アバター』のなかにこの時計があるということは、地球上ではデジタルウォッチの製造技術は進歩していないということではないだろうか。それは大変だ。付け加えれば、2007年に発売された時計が1世紀半後にまだ動くというのは、さらに難しい話だ。しかし、そのような不信感を抱かせないためにも、カシオの時計は実に強固であると評価したい。
残念ながら、映画の性質上、サリーはナヴィの姿でカシオを身につけることはできない(アバターの身体とつながっているのは彼自身の心だ。よってアバターの身体が彼の睡眠室を開けて持ち出そうとでもしない限り、人間の姿から彼の私物ごと移動するのは不可能なのだ。有名な映画だ。きっと皆さんにもおわかりいただけるだろう)。正直なところ、もし彼がそうしたとしても、時計が合うかどうかはわからない。つけるとしてもナヴィのアバターストラップを延長する必要がある。さて、このあたりにしておこう。
見るべきシーン
サリーの紹介のあと、車椅子の元海兵隊員が兄の代役を務め、新しい世界へ向かう姿を見ることができる。パンドラに到着した彼は、アバタープロジェクトの研究所を訪れ、シガーニー・ウィーバー(Sigourney Weaver)演じる主任科学者のグレース・オーガスティン博士に出会う。オーガスティン博士は、新しい到着者である彼に温かく接するどころか、弟のほうがよかったと皮肉る。握手を求められたサリーが手を引っ込めると[00:15:28]、彼の手首には大きな樹脂製のカシオがあり、ちょうど車椅子の上で休んでいるのが見える。
やがてサリーは、アバターの体のなかにいる感覚がどんなものなのかを体験する。本社を離れてから最初の冒険で、彼はナヴィ族と一緒に野営していることに気づいた。最初の夜に眠りにつくと、オーガスティン博士に起こされる(アバターとして眠ると、人間の姿で目覚める)。そのとき、彼は自分の経験をすべてチームに説明し、新たな使命を与えられることになる。ナヴィの情報提供者となって、彼らのアンオブタニウムの供給を利用することだ。彼が戦術会議に出席し、先導者の話に耳を傾けているとき [oo:55:50] 、パンドラのホログラム地図の背後に彼のプロトレックを見ることができる。
『アバター』(主演:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガーニー・ウィーバー、スティーブン・ラング)は、ジェームズ・キャメロン監督、アンドリュー・M・シーゲルが小道具を担当。現在、劇場にて公開中。iTunesとAmazonでレンタルまたは購入が可能。
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