今日セイコーは、プロスペックスに新たに「SPEEDTIMER」コレクションを追加することを発表しました。正確には完全な新コレクションというわけではなく、かつて同社が計時技術を大きく飛躍させた1960年代にルーツをもつため、"新生"スピードタイマーコレクションと呼ぶほうが適切かもしれません。
同コレクションには、機械式とソーラー式のクロノグラフがラインナップされていますが、本稿では前者のメカニカルクロノグラフの2モデルをご紹介します。最新作を手に取る前に、まずはその起源を振り返ってみましょう。
0.01秒への挑戦
1960年代のセイコーの最も重要なマイルストーンのひとつは、1964年に開催された東京オリンピックでの公式計時でしょう。セイコーは、全自動でスタートからゴールまでを100分の1秒単位で計測する電子計時システムを導入しましたが、現在のようなモーションセンサーやポジショニングシステムといったハイテクな計時技術はなく(詳細は記事「オリンピックの計時を担当したオメガタイミングCEOが語る、その方法とは?」参照)、ストップウォッチも引き続き競技の計測に用いられていました。
それまでのストップウォッチは、計測開始時に機械的な誤差が生じやすいものばかりであり、それが当たり前とされていたのです。セイコーは、ハートカムと呼ばれる小さなハート型の部品をテンプの軸に搭載したストップウォッチを開発し、それまで不可能とされていた0.01秒単位の高精度な計時を実現。
スポーツ計時の経験がないセイコーでしたが、画期的なストップウォッチの開発を機に正式に指名されることとなりました。スイス以外のブランドが公式タイムキーパー努めたのはこれが初めてのことです。
世界初の自動巻きクロノグラフ
1964年には、国産初のクロノグラフである「クラウン クロノグラフ」もリリースされました(同モデルのデザインをオマージュした昨年のプレザージュ 2020限定エディションを覚えていますか?)
さらに5年後の1969年には、垂直クラッチを搭載した世界初の自動巻きクロノグラフ「ファイブスポーツ スピードタイマー」を発売。コラムホイールと垂直クラッチを採用し、クロノグラフのスタートとストップ時の針飛びを起こしにくく、優れた耐衝撃性を兼ね備えていました。
"新生"スピードタイマーコレクション
そして、2021年。もうおわかりですよね? そう、新たにリリースされたスピードタイマー メカニカルクロノグラフは、1969年のスピードタイマーの名を受け継いだコレクションであり、1964年のストップウォッチからインスピレーションを受けた限定エディションもラインナップされています。
デザインはオリジナルのスピードタイマーとまったく異なるため、純粋主義者にとっては疑問を残すところかもしれませんが、セイコーはただデザインをコピー&ペーストするのではなく正確な計時を追求したスポーティなDNAを復活させたのです。
直径42.5mm、厚さ15.1mmのステンレススティール製ケースを備えたスピードタイマー メカニカルクロノグラフは、限定のSBEC007も通常生産モデルのSBEC009もデザイン以外の基本的な性能は共通です。
世界限定1000本のSBEC007は、1964年のストップウォッチのデザインが随所に取り入れられています。ひと目見てそれとわかるホワイトダイヤルにインデックスは60、10、20、40、50の数字がレイアウトされ、外周にはブラックのタキメーターが配されています。
クロノグラフ秒針は、タキメーター目盛りまで届く長さが確保されており、先端がダイヤル側に曲げられていることで高い視認性を確保。サブダイヤルの針の形状もストップウォッチと同じデザインです。
さらにプッシャーやリューズの形状まで再現され、操作性がよく、まさに手首につけるストップウォッチです。
SBEC009は、チャコールグレーのダイヤルにドーフィンタイプの時分針を採用。全体的にクラシカルな印象を受けるのは、時分針とインデックス外周の夜光塗料ルミブライトがフォティーナであることと、プッシュボタンがクラウン クロノグラフのデザインを受け継いでいるからでしょう。
両モデルとも内部にはオリジナルのスピードタイマー同様に垂直クラッチとコラムホイール式の新型ムーブメント、Cal.8R46を搭載。クロノグラフ針のゼロリセットを瞬時に行うための3本のアームが一体となった三叉ハンマーなど精度のための独自技術も盛り込まれています。
また、どちらも新開発のスティールブレスレットが備えられています。ケース自体が15.1mmと厚みがありますが、同様にブレスレットにも適度な厚みをもたせることで時計の重心を下げるのに役立っています。セイコーのブレスレットについて、改良の余地があると考える愛好家は多くいますが、この領域に対して同社が挑戦し始めているのはいい傾向ではないでしょうか。
セイコー プロスペックス スピードタイマー メカニカルクロノグラフは、精度を追い求め続けてきたブランドの姿勢や歴史を象徴するコレクションです。
価格は、通常生産モデルSBEC009が33万円、世界限定1000本のSBEC007は35万2000円(共に税込)で、11月6日から発売される予定です。
基本情報
ブランド: セイコー プロスペックス(Seiko Prospex)
モデル名: スピードタイマー メカニカルクロノグラフ(SPEEDTIMER Mechanical Chronograph)
型番: SBEC009、SBEC007(限定)
直径: 42.5mm
厚さ: 15.1mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: チャコールグレー(SBEC009) / ホワイト(SBEC007)
インデックス: アプライド(SBEC009) / ブラックの印字(SBEC007)
夜光: あり、針とアワーマーカーにルミブライト
防水性能: 10気圧(日常生活用強化防水)
ストラップ/ブレスレット: スティールブレスレット、SBEC009のみ交換用のワンポイントステッチ入カーフストラップが付属
ムーブメント情報
キャリバー: Cal.8R46
機構: 時、分、秒、クロノグラフ(30分計)
直径: 28.6mm
厚さ: 7.47mm
パワーリザーブ: 約45時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時(4Hz)
石数: 34
クロノメーター認定: なし
追加情報: 平均日差±25秒〜-15秒
価格 & 発売時期
価格: SBEC009、33万円 / SBEC007、35万2000円(すべて税込)
発売時期: 11月6日(土)予定
限定: SBEC007のみ世界限定1000本
詳細は、セイコー プロスペックス公式サイトへ。