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さて、お待ちかねのニュースだ。1971年の映画『栄光のル・マン』のセットにあった6本のホイヤー モナコのうち最後の1本が、フィリップス ニューヨークのオークションで220万8000ドル(約2億2945万円)で落札された。この1本は新しい持ち主を得て、ホイヤー モナコのデザインは、永遠にスティーブ・マックイーンとその映画と共に記憶にとどまるだろう。これは前回の記録を軽く破り、この映画で使われたモナコが一般に売りに出されるのは最後となる。
オークションは完全にオンラインで行われたが、まだ多くの興奮が残っている。入札は16万ドルから始まり、40万ドル付近で少し停滞した。その後再び上昇し、入札者は3人に絞り込まれた。皆フィリップスの専門家と電話でつながっており、約9分間の緊張感と計32の入札の後、最終的に180万ドル(プレミアム前)のハンマープライスで落札された。落札は、ロンドンに拠点を置くフィリップスのスペシャリスト、ジェームズ・マークス氏を介してなされたが、時計の新しい所有者の身元や場所は明らかにされていない。
フィリップスがバックス&ルッソと提携し、ル・マンの6本のホイヤーのラスト1本をオークションに出すというニュースが流れてから1ヵ月半経っていた。それはマックイーンが持っていた2本のうちの1本(他の4つはプロップマスターに渡った)でもあった。このRef. 1133は、映画の撮影でも一緒だったマックイーンの個人的なメカニックであるハイグ・アルトニアンの好意でフィリップスの展示台に到着した。彼は、映画の制作を成功させる上で実際に重要な役割を果たし、車だけでなく、俳優たちの安全にも責任を負っていた。撮影後、マックイーンはこのモナコをアルトニアンにプレゼントしたが、謙虚なメカニックは断ろうとした。するとマックイーンは、「君の名前が既に刻印されているから断れないよ」と言ったという。
アルトニアンによると、マックイーンとセットで共に過ごした時間は、永続的な友情につながったという。そしてアメリカに戻ってからも、マックイーンの家に客として招かれた。アルトニアンはその時計をしばらく身に着けていたが、やがてこの時計は特別であり、貸金庫に入れておいた方が良いと気づいた。金庫に何年も保管されたことで、この信じられないほど重要な時計のケースは非常にきれいな状態で、全体的にも素晴らしいコンディションを保てたのだ。
前回、『栄光のル・マン』のモナコ6本のうちの1本が出品されたのは2012年のことだ。ハリウッドの記念オークションで79万9500ドルで落札された。この時計の場合、フィリップスは「要望に応じて」予想落札価格を公表するとしたが、スティーブン・プルビレントが依頼をもちかけたところ、アルトニアン氏の意向で公表しないと言われた。これらの要因が重なったことで、既に注目度の高かった売却に謎と期待感が加わった。これは時計を有名にした映画で使われたモナコで、撮影終了時にスティーブ・マックイーンが個人的に彼の友人であるメカニックに贈ったものだ。6本のオークションのラストを飾るのは、この時計以外ないだろう。
今日まで、公に販売されたホイヤーの記録は100万ドル以下にとどまっていた。最後に記録が更新されてから8年後の今、その水準は大幅に引き上げられた。この10年でヴィンテージ時計への関心がどれほど高まったか、また、多くのコレクターにとって時計の来歴がどれほど重要になったかを考えると、私にとってそれほどの驚きとは言えない。しかしそれでも、これは莫大な金額だ。
まだロット20ということは、フィリップス レーシングパルス オークションには、まだたくさんのアクションが残っているということだ。 引き続きそれを注意深く見ていきたい。 ポール・ニューマンのもう一つのデイトナはどうなるのか? スタローンのパネライは? 全てを把握するには、ここでオークションカタログをチェックしていただきたい。