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Business News 米国へのスイス時計輸出、4月に約150%急増。関税ショックに端を発した異例の駆け込み需要

総輸出は18%増加したが、米国向けの記録的出荷がなければ6%の減少となっていただろう。

スイスの時計輸出は4月に急増した。これは、米国によるスイス製品への大幅な関税引き上げという予期せぬ脅威を受け、時計メーカーと米国の小売業者が在庫の出荷と受け取りを急いだことによる。先月の米国向け輸出は149%の増加となり、過去最大を記録した。これはドナルド・トランプ米大統領がリベレーションデイ(米国解放の日)に、スイスからの輸入品に31%の関税を課すと宣言したことがきっかけである。月次輸出レポートのデータを集計するスイス時計協会(FHS)は、今回の出荷急増は“例外的な”出来事であり、小売業者による卸売用時計の世界的な発注は依然として低調であると警告している。

 4月の全体輸出は前年同月比で18%増加し、25億スイスフラン(日本円で約4350億円)に達したが、「これは主に、米国関税の引き上げを受けた早期出荷による結果である」とFHSは声明で述べている。米国向けの記録的な出荷を除けば、輸出全体は6.4%の減少となる計算であり、中国および香港向けの輸出が引き続き減少傾向にあることがその要因である。「この急激な輸出増は、構造的な需要の高まりというよりは不確実な商業状況に対する一時的な対応の結果である」とFHSは指摘している。

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4月におけるスイス時計輸出の主要市場。source: Federation of the Swiss Watch Industry

 2025年の年初来において、スイス時計の輸出は2024年比で4%増加している。これは、4月に記録された米国向けのスイス時計輸出が全体の3分の1を占めたことによる。ただし、この一時的な急増は、年内の輸出動向に疑問を投げかけており、業界は米国の貿易政策の今後の見通しを待っている。中国および香港向けの輸出は引き続き低迷し、それぞれ約31%、23%の減少となった。一方で、日本向けの輸出は1.9%の堅調な伸びを見せ、イギリスへの輸出は1.6%の増加となり、スイス時計の輸出先として市場シェアで第3位に浮上した。

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スイス時計の月別輸出推移。source: Federation of the Swiss Watch Industry

 米国は2021年にスイス時計の最大輸出先として中国を抜いた。中国における不動産危機および経済の減速は、消費者心理に慎重さをもたらし、小売業者からの時計の卸売注文の減少につながっている。リシュモンは、カルティエ、パネライ、IWCなどのブランドを擁しており、最近では中国の小売業者から一部の時計を買い戻したことを年次財務報告において明らかにしている。

 トランプ大統領は、スイスに対して課された31%のいわゆる“報復関税”を引き下げ、現在大半の貿易相手国に適用されている一律10%の関税率に移行させた(ただし中国は除外)。この措置は7月9日(水)まで有効とされている。スイスおよびドイツを含む欧州連合(EU)といった他の米国の貿易相手国は、ノモスやA.ランゲ&ゾーネなどのブランドを擁する地域を含め、3ヵ月の期限を前に米国との二国間貿易協定の締結を目指している。

 スイスは「貿易協定交渉を進める優遇国のなかで、列の先頭に躍り出た」と、米国財務長官のスコット・ベッセント(Scott Bessent)氏は5月12日にジュネーブで記者団に語った。ただし、現時点ではいかなる合意も成立していない。

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米通商代表ジェイミソン・グリア氏(左)と米財務長官スコット・ベッセント氏(右)。5月12日、ジュネーブにて。

 業界の要人、なかでもオーデマ ピゲおよびオメガのCEOによれば、今回の関税措置は一部の米国消費者に不確実性をもたらし、高額商品の購入(時計も含む)をためらう要因となっているという。これを受け、ロレックス、チューダー、ブランパンを含む主要なスイス時計メーカー各社は、関税措置に加え、スイスフラン高や金価格の高騰に対応する形で米国市場における価格を引き上げている。

 リシュモン、LVMH、エルメスなど、主力時計ブランドを擁する主要上場企業はいずれも、2025年第1四半期における時計販売の減少を報告している。

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価格帯別、4月のスイス時計輸出。source: Federation of the Swiss Watch Industry

 チューリッヒに本拠を置くヴォントベルのマネージング・ディレクターでスイス株式調査責任者を務めるジャン-フィリップ・ベルチ(Jean-Philippe Bertschy)氏は、輸出データを受けた顧客向けレポートのなかで次のように述べている。「ラグジュアリー疲れの顕在化、高級品購入による“満足感”の低下、そして消費者心理の悪化はいずれも、今後の見通しをより悲観的なものにする要因です。これらは、関税による混乱が起こる前から存在していた課題でしょう」。ベルチ氏はさらに、「ゆえに我々は今後も、強いブランド力と象徴的なコレクションを持ち、地理的に分散され、高級志向の顧客基盤が堅固なブランドを支持し続ける」と付け加えている。

 時計業界に特化したスイスの4月輸出データおよび米国向けの記録的な急増は、ほかの産業が後退するなかで、全体的なスイス貿易データとは対照的な結果となった。ベルンのスイス連邦関税庁によれば、4月の米国向け総輸出は前月比で36%減少し、米国からスイスへの輸入も15%減少している。