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左リューズのモナコを愛用する僕は、タグ・ホイヤーのなかでもよりクラシックな時計が好きだ。そのタグ・ホイヤーが、最近明らかに変化を打ち出していて、フラッグシップコレクションのカレラのリフレッシュがなされ、複数のコレクションからカラバリ豊かなダイヤルが登場している。ひと言で言えば、最近妙に垢抜けてきているタグ・ホイヤーなのだが、クラシック偏重の僕としては少し寂しさも感じているところだ。今回は、そのあたりの思いを直接フレデリック・アルノー氏にぶつけることができた。お話から感じた、タグ・ホイヤーに起こっている変化や革新は、今後スイスでしっかり見てくるとして、まずは若きCEOの決意を感じ取って欲しい。
関口 優(以下、関口)
去年から今年にかけて、アクアレーサーやオータヴィアなど カレラ以外の柱も現代的にアップデートされました。色表現やホイヤーの歴史の新たな一面などが丁寧に解釈された印象ですが、現在最も力を入れているのはどのセクションになりますか?
フレデリック・アルノー氏(以下、アルノー氏)
カラーバリエーションの充実に力を入れているのは事実ですが、まだまだやりきれていません。もっと用意をしていますよ。よい意味で今後もたくさんやっていく領域になりますし、目的があって注力しています。単純にカラフルさという意味ではなく、例えば今年アクアレーサーで発表したオレンジ文字盤のモデルは、ヘリテージにルーツを持ちながらそのカラーが視認性にも貢献することを意図した時計です。そして、今では多くのメーカーがラインナップしていますが、新作のアクアレーサー プロフェッショナル200 ソーラーグラフやモナコ スペシャルエディションのようなフルブラックモデルもタグ・ホイヤーのヘリテージに根ざしたもの。ご存知のように1970年代からラインナップしていたわけです。つまり、単なるカラーバリエーションではなく、そこには豊かな歴史やストーリーがあるわけです。カラー文字盤は時計にとってアクセント。ただ意味もなくダイヤルや時計全体にベタッと載せたようなものではなく、色を吟味して時計のキャラクターに合った雰囲気をまとわせるものであるべきだと考えています。
関口
確かにこの2年ほどで、グリーンやターコイズ、サーモンなどのビビッドなカラーリングがたくさん生まれています。こうしたトレンドにタグ・ホイヤーも乗っているということでしょうか?
アルノー氏
確かにそういったトレンドはありますね。この業界は時計に限られた色しか使ってきていませんから、ある意味で表現が乏しかったかもしれません。若い世代を引きつける魅力が少なかったとも言えるでしょう。グリーンや明るい色を用いることはとてもポジティブな意見を持っています。若い世代へのアピールになるでしょう。今後はタグ・ホイヤーもしっかり注力していきます。
関口
今年の新作では、特にアクアレーサーで多彩な色表現が印象的でしたが、これを可能にした技術的な特徴はありますか? 業界的には、無反射コーティングの技術が発達したことで文字盤の発色を正確に視認できるようになったため、ダイヤルの質感や色に力を入れ始めたメーカーが多いようです。
アルノー氏
おっしゃるとおり、サファイアクリスタル風防への無反射コーティング技術は飛躍的に発展しました。タグ・ホイヤーにおいてもそれは同様です。また、我々は非常に近しい関係にあるダイヤルカンパニーであるアーティカの優れた技術により、発色のよい文字盤を安定的に用いることに成功しています。アクアレーサーのオレンジに関しては、日々サンプルを見て微調整を繰り返しました。私たちのパートナーは時計産業のなかでも特に秀でたマニュファクチャリング・プロセスを持っていて、特に発色に関しては目をみはるものがあると思います。
関口
グループ他社も発表したような「ターコイズ」のように、トレンドカラーを取り入れたサプライジングな計画はありますか?
アルノー氏
9月にはフォーミュラ1コレクションから明るいトーンのダイヤルを備えたモデルが登場しますし、2023年にも心踊るようなカラーダイヤルの企画をたくさん用意していますよ。これは定期的に取り組むべきものと位置づけているので、楽しみにしていてください。
関口
キャロル・カザピさんも入社され、Only Watchではすでにその成果が発表されています。ユーザーはタグ・ホイヤーの“新ムーブメント開発”に熱視線を注いでいると思われます。その大本命はコンプリケーションなのか、より薄型のベースムーブメントなのか、今後のリリースのヒントをいただけないでしょうか?
アルノー氏
彼女にはクォーツから機械式時計、コンプリケーションまで、すべてを統括してストラテジーを構築する役割を担ってもらっています。現在は新ムーブメントの開発というよりも、Cal.ホイヤー02などより上位のキャリバーのブラッシュアップに注力しており、その成果でこのムーブメントを搭載したモデルの保証期間を5年に伸ばし、10年間はメンテンスサービス不要というところまで到達することができました。また、ケニッシとのコラボながらキャロルの戦略によって実現したCal.TH30-00は、アクアレーサーに新たな一面をプラスしました。
関口
確かに、カレラ プラズマにも採用されているカーボンヒゲゼンマイは、当初の登場から息を潜めていた印象ですが、ここへ来てさらに注力されていますね。
アルノー氏
我々のラ・ショー・ド・フォン本社にあるインスティチュートでは、今カーボンヒゲゼンマイの普及に取り組んでいるところです。まずはトゥールビヨンのようなハイエンドモデルから搭載し、その信頼性を高めていきたいと考えています。より工業化を進めているところなので、多くの時計に搭載される未来が来るかもしれません。
関口
Cal.ホイヤー02は優れたムーブメントですが、一方そのサイズによってケースが厚くなります。小型な時計が好まれる現代において、特に日本ではより小さなムーブメントや時計も望まれていますが、このあたりの商品計画はどのように考えられていますか?
アルノー氏
我々のホイヤー02ムーブメントを搭載した時計は、クロノグラフとしては平均的な厚みであると考えています(注:ホイヤー02を搭載したカレラやモナコで約14mm厚。2010年ごろのカレラと比べると1.5mm以上薄くなっている)。それよりも、タグ・ホイヤーが課題として考えているのは時計自体の丈夫さや品質です。それと両立できるのであれば、より薄く小型にするという選択もあると思います。
関口
そういう意味では、トレンドとしての小型化を進めるということはなく、あくまでタグ・ホイヤーとしてちょうどよいサイズの時計を作っていくということですね?
アルノー氏
はい、おっしゃるとおりです。我々は「最薄」に挑戦するブランドではありませんし、安心感があって適切なサイズの時計を目指していきます。もちろん、大きすぎるのもよくないですし、薄型化という課題はもちろんあると思いますので、それは慎重に検討を重ねて手掛けていくでしょう。ただ、薄さということがタグ・ホイヤーを求めるお客様が望んでいることではないとは考えています。
そしてそれは現在ブランドとして打ち出している時計の5年間保証や、10年間のメンテナンスフリー化とも相反することになってしまいます。より薄く、小型化して時計がもろくなってしまうよりも、タグ・ホイヤーとしては性能とデザインとを照らし合わせて考えつつ、クオリティの向上を第一に時計づくりをしていきます。
その他、詳細はタグ・ホイヤー公式サイトへ。
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