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※本記事は2021年9月に執筆された本国版の翻訳です 。
いまロニー・チェンが勢いに乗っている。すでに多忙を極めているスタンダップコメディアンであり、映画『クレイジー・リッチ!(原題:Crazy Rich Asians)』のキャストであり、デイリー・ショーの特派員でもある彼は、2021年9月月初めにプレミア上映され、興行収入ランキングのトップに立ったマーベル映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説(原題:Shang-Chi and the Legend of the Ten Rings)』に出演。ロニーは現在、Disney+で『天才少女ドギー・カメアロハ(原題:Doogie Kamealoha, M.D.)』にも出演している。
チェンは1分に1度大笑いをしながらも、コレクションの中心はロレックス、オメガ、セイコーなど、時計選びは真剣そのものだ。亡き父から譲り受けた時計もあれば、HODINKEEの動画を見てファンになった時計もある。
チェンのコレクションは、評価の高い時計メーカーのアイコニックなモデルに焦点を当てているが、彼の選択は、最も予測可能なものからひと味もふた味もかけ離れているようだ。彼は初期のセイコー Ref.6139系自動巻きクロノグラフを2本持っているが、“ポーグ”ではなく、“ブルース・リー”を着用している。彼はオメガのスピードマスターを持っているが、ムーンウォッチではなく、ファースト・オメガ・イン・スペースを選んでいる。そして、旅のおともとして選んだGMTマスターは、“ペプシ”ではなく“ルートビア”だった。
チェンの旅は、大学在学中にインターネット通販で購入した地味なセイコー5から始まり、最近購入したというGMTマスターに至るまで、たくさんの素晴らしいエピソードを交えながら進んでいく。さぁ、ロニー・チェンとのTalking Watchesにようこそ。
オメガ スピードマスター “ファースト・オメガ・イン・スペース”
チェンがオメガ スピードマスター “ファースト・オメガ・イン・スペース”を購入したのは、渡米してまもない頃だった。彼のコレクション全体に一貫しているように、よりシンプルなムーンウォッチではなく、このスピードマスターのバリエーションを選ぶという彼の決断は、王道を避けるという行動パターンの表れでもある。ファースト・オメガ・イン・スペースは、マーキュリー計画のシグマ7計画でウォーリー・シラー宇宙飛行士が着用していたRef.2998をベースにした復刻モデルだ。ムーンウォッチの直径42mmに対して、それ以前のバリエーションは39.7mmと小ぶりであり、その違いがシラーが着用した時計へのチェンのモダンなオマージュに反映されている。
セイコー5
セイコー5は、古きよき時代の、低価格で高い価値を提供する時計であり、多くの人々にとって機械式時計の世界への入門モデルとなっている。チェンは、大学在学中に購入したセイコー5をテーブルに並べてくれた。セイコー5について、特にたびたび議論の的となるその名前の由来について、私たちは少し楽しく語り合った。ネット上では、セイコーのダイヤショックやダイヤフレックス機構まで説明したサイトもあるが、念のため触れておくと、セイコーの公式情報によると、それは自動巻き、3時位置の曜日・日付表示機構、防水性能、4時位置の埋め込み式リューズ、耐久性のあるケースとブレスレット(またはストラップ)の5つの属性を表したものとある。多くの若い時計ファンがそうであるように、チェンも自動巻きムーブメントに引かれてセイコー5を購入した。
セイコー Ref.6139-6010 スピードタイマー ブラックダイヤルカラー
彼が次にセイコーの世界に飛び込んだのは、もう少し深いところだった。HODINKEEの友人であり、Talking Watchesの卒業生でもあるダニエル・デイ・キム氏と話したあと、チェンはDC Vintage Watchesのニック・フェレル氏とつながり、伝説的なセイコー Ref.6139 ブラックダイヤルのバリエーションを入手する手助けをしてもらったと言う。1969年にデビューした3種類の自動巻きクロノグラフのうちのひとつであるRef.6139は、日本のウォッチメイキングの古典であり、宇宙飛行士ウィリアム・ポーグがスカイラブ4号に乗って宇宙で着用した時計として最もよく知られている。しかしポーグではなくブラックダイヤルのバリエーションを選んだのは、中国系アメリカ人の俳優で武術の達人であったブルース・リーへの憧れからだった。このスピードタイマーのバリエーションは、日本国内向けに作られたもので、漢字の曜日表示が特徴である。
セイコー Ref.6139-6010 “トゥルー ブルース・リー”
DC Vintage Watchesのニック・フェレル氏は、リーが着用していた時計についてさらに調査を進め、リーが着用していたのはこのモデルである可能性が高いと結論づけた。そのため、フェレルとコレクターはこの時計を“トゥルー ブルース・リー”と呼ぶようになる。チェンによれば、ブルース・リーの時計について知られていることの多くは、ブルース・リーの公式Instagramアカウントに掲載された写真が一次情報となっているそうだ。
父から受け継いだロレックス デイトジャスト
質素な出自ながら、チェンの父は30代までは香港で働くビジネスマンとして成功していた。若き日のチェンは、幼少期と父親からもらったこの時計をよく覚えている。当時は36mmという控えめなサイズが巨大に思えた。後年、父親が農場を経営するようになると、この時計を身につけなくなった。今年初めに放映された『アンティーク・ロードショー』(米国版「開運!なんでも鑑定団」)では、鑑定士がこの時計のシリアルナンバーから1984年の製造と特定した。私にとっては、コンビのデイトジャストはもっとも80年代らしい存在である。
父から譲り受けたオメガ シーマスター
このオメガ シーマスターは、彼の父親が90年代に中国で働いていた際、購入した時計を袋に詰め合わせたまま入れていたそうだ。そのなかで、唯一修理したのがこの時計だ。時・分・秒・日付のシンプルなドレスサイズの時計で、ダイヤルのデザインから見て1970年代初頭の製造と思われる。実際、今年初めにチェンがアンティーク・ロードショーのセレブ版に同じ時計を持ち込んだとき、鑑定士がムーブメントの番号から年代を割り出していた。
ロレックス サブマリーナー “ハルク”
パンデミックの真っ只中、ハワイでHODINKEEの動画を夢中になって見ていたチェンは、サブマリーナーをコレクションに加える必要があると思い立った。おりしも彼はマーベル映画の『シャン・チー/テン・リングスの伝説』で役を獲得しており、ハルクはマーベルコミックの世界に限りなく近い存在に思えたからだ。グリーンダイヤルにグリーンベゼルのサブは、アイコニックな時計に少し変わったテイストを取り入れるというチェンらしい好みの表れである。
ロレックス GMTマスター “ルートビア”
このファニーな男が最近選んだGMTマスター Ref.16753 “ルートビア”は、パンアメリカン航空とのパートナーシップにより、民間航空での採用で有名になったロレックスのアイコニックモデルである。テレビ番組の企画でハワイに半年ほど滞在していたとき、チェンのアパートはホノルルのパンナムビルに面していた。このとき、彼は時計に夢中になっていたので、ごく自然に“パンナム=GMTマスター、ニューヨークとハワイの時刻を把握しなければならない”と考えていたと言う。そしてそこはロニー・チェンらしく、ペプシよりも少しひねったバージョンを求めた。「もうこれで本当にアガるつもりなんだ…。もうマジでHODINKEEの動画を観るのもやめるよ」
Videography: David Aujero & Alejandro Miyashiro
Video Editing: Will Holloway
Photos: David Aujero
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