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編集部注:この記事では、現在HODINKEEショップで販売中の時計をご紹介している。
GMTウォッチは、子供の頃のお気に入りのぬいぐるみのようなものだ。どこへ行くにしても、家の中で常に一緒にいる。色褪せたベゼルや、ボコボコになったケース、腕に巻いたときにだらりとぶら下がってしまうようなブレスレットをもった古いロレックス GMTマスターに出くわすこともあるだろう。なぜかって? 彼らは機能と目的をもった時計だからだ。最も重要なのは、それらを身に着けていた人々によってとても愛されていたということだ。GMTウォッチには、真のノスタルジアがある。それは所有者と共に多くのことを経験してきた時計だからだ。
2015年にKickstarterでスタートしたフランスを拠点とするバルチックは、ノスタルジックな世界観で時計を作るブランドである。単一のヴィンテージウォッチからではなく、いくつもの古き良きものたちからインスピレーションを得て、複数の時計コレクションを築き上げてきた。このブランドの最新作である“バルティック アクアスカフェ GMT”は、そのコレクションにふさわしいモデルだ。往年のノスタルジアを誘うGMTウォッチの外観を持ちながら、あらゆる意味で明らかに現代的な時計でもあるのだ。
元のアクアスカーフは、直径39mmとスリムなケースを特徴とする同社初のダイバーズウォッチだった。それは、質感のあるマットな文字盤と金色のアクセントが特徴的なヴィンテージのルック&フィールを活かしていたが、アクアスカーフGMTは、ヴィンテージデザインの特徴をより明確に表現しているように感じる。
マットな質感だった文字盤はグロッシーなものへと変更され、凹んだデザインのインデックスは盛り上がったようなデザインへと変更されている。これまでのアクアスカーフの意匠はどこか無骨なルックスのデザイン要素が強かったが、このGMTウォッチはインターナショナルな雰囲気が伝わってくる。といってもマジカル・ミステリー・ツアー(ビートルズの2枚目のアルバム)的な感じだが。
アクアスカーフ GMTには3種類のバリエーションがあり、それぞれ異なるバイカラーの両方向回転式ベゼルを採用。3つの使いやすいベゼルは全て同じネイビーブルーのトップハーフを共有しており、シーグリーン、バーントオレンジ、グレーの3色の異なるボトムハーフをもっている。バルチックはこの時計のベゼルインサートをサファイア製にしている。その結果、ヴィンテージのベークライトベゼル(ロレックスの初期のヴィンテージモデルでよく使用されていたプラスティック素材)を彷彿とさせるものとなっている。サファイアのインサートは、まるでハンター・S・トンプソンの眼鏡を通して見る数字かのように、数字に歪みを与える効果がある。
さらにこれは、バルチックで初めて日付表示機能を搭載した時計でもある。これは、以前のモデルからインデックスの凹型のスタイリングを省いた理由かもしれない(2つのインデックスをどちらも凹型にすると少し奇妙に見えたかもしれない)。日付表示窓は、ダイヤルの対称性を壊さないよう6時位置に配され、黒いディスク仕様になっている。
ダイヤルの残りの部分は、以前のアクアスカーフモデルからほとんど変更されていない。アラビア数字の12が12時位置にあり(当たり前ですが)、さらに下には、GMT針(オレンジ、緑、または青)に対応する色で“Aquascaphe”の文字を確認できる。以前のモデルでは、文字盤の下の部分に時計が対応できる水深が表示していたが、このモデルではその代わりにGMTが印字れている。
アクアスカーフGMTは、ベゼルに新しい書体を採用しており、ヴィンテージのスタイリングをダイレクトに表現。アクアスカーフのダイバーズモデルとは異なり、“フラットフォー”(4の数字の上の部分がフラットになっているもの。ヴィンテージウォッチに見られるタイプの書体)ではない。その代わりにあるのが、1970年代初頭のロレックスの日付ディスクによく見られるタイプのフォント "オープンシックス "だ。
さて、時計が“真のGMT”かどうかについては、ある種の考え方がある。多くの人が考える“真のGMT”とは、時針とは別に連動した動きを可能にするGMT針をもった時計のことだ。GMT針は大抵ホームタイムを反映する。アクアスカーフにはその機能はないが、それを理由に減点を与えるのは衒学的だろう。
この時計は、GMT針自体を独立して操作することができる。一度設定してしまえば、GMT針を24時間単位で文字盤の周りを移動する第2時間針のように扱い、通常通りに時刻を表示することができる。
アクアスカーフGMTには、42時間のパワーリザーブ、日付表示機能、GMT機能を備えたスイス製自動巻きムーブメント、ソプロッドC125が搭載されている。クローズドケースバックにはワールドタイムのレイアウトとしか言いようのないエングレーヴィングが施され、ケースバックの外側には国名が、中央には世界地図が配置されている。
ヴィンテージのフォルムを忠実に再現したこのモデルは、ケースにラグ穴を設けており、ストラップの交換は容易だ。さらに、ブレスレット(2種類の構成のうちの1つ)は、簡単に取り外せるトリガーシステムを採用。わずか数秒でブレスレットを取り外すことを可能としている。ただし、トロピックタイプのストラップは昔ながらの方法で取り外し(装着)する必要がある。
ケースは基本的に全てサテン仕上げだ。ケースの構造を見ると、クリスタルベゼルとケースバックの両方が両端から出っ張っているため、擬似的にサンドイッチのような効果が得られる。ケースの厚さは12mmとスリムなサイズであるため、手首に装着してもほとんど気になることはない。リューズには「B」の文字が刻まれ、サンドブラスト加工が施されている。これは、20万円以下の時計ではあまり見られない微細なディテールだ。
39mmとスイートスポットを抑えているアクアスカーフ GMTは、ビーズオブライスブレスレットでも、通気性の良いテーパードのかかったトロピックスタイルのストラップのどちらでも快適な装着感を得ることができる。
この時計は、文字盤とベゼルの両方に蓄光素材が施されており、明るい場所でも暗い場所でも同じように高い視認性を確保。ベゼル上の数字、針、文字盤上の全てのインデックスには、グリーンのスーパールミノバが施されている。
旅行が遠い記憶のように感じられるこの時代にトラベルウォッチに手を伸ばすのは奇妙に思えるかもしれないが、バルチック アクアスカーフGMTは、切実に必要とされる暖かさとノスタルジーさをもたらしてくれる。時間を見るためだけでなく、あなたにとって重要な人々や場所を手元で思い出すためにふと視線を落とす。それがGMTだ。バルチック アクアスカーフは、ほとんど“真のGMT”と同様にそれを行うことができる。もしかしたらより良いやり方かもしれない。
バルチック アクアスカーフ GMT。316ステンレススティールケース。100mの防水性能。GMT機能とパワーリザーブ42時間を備えたソプロッドC125ムーブメント。ドーム型のサファイア風防と刻印のあるケースバック。初回ロットは1500本でシリアルナンバーあり。価格はブレスレットが14万5000円(税抜)トロピックスタイルのストラップの日本での展開は未定。詳細はバルチックの公式サイトへ。
写真: カーシャ・ミルトン