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本稿は2015年1月に執筆された本国版の翻訳です。
お気づきでなければお知らせしておく。今週(記事執筆当時)はHODINKEEにとって“クォーツウィーク”であった。初めに私たちの専属時計職人アーロンがジラール・ペルゴのCal.350について執筆し、ジャックがグランドセイコーのクォーツモデル、SBGX061についての記事を書いている。しかし今日の市場で注目されているほかの収集価値のある“クォーツ”時計、例えばBeta21ムーブメントを搭載したモデルについて掘り下げてみるのはどうだろうか。
クォーツの歴史は複雑で長いものであるため、ここでは簡潔に述べる。クォーツは1928年にベル研究所で発明された。当時のクォーツ時計は非常に大型であったため、主に実験室において基準時刻の計測用として使用されていた。クォーツの研究開発は数十年にわたり続けられ、1960年代初頭にはマリンクロノメーターに搭載可能な程度に小型化が進んだ。このころ主要なスイスの時計ブランドがこの新技術に注目し、オメガ、ピアジェ、パテック フィリップなど約20のメゾンが1962年にヌーシャテルにCentre Electronique Horloger (CEH)を設立。CEHの目的は次世代の時計製造に向け、効率的で信頼性が高く、かつ高精度なクォーツムーブメントの研究開発および製造に専念することであった。
6年間の研究の末、最初の試作機であるBeta1が1966年に完成。このムーブメントには8192Hzのクォーツ振動子が内蔵回路に組み込まれていた。その後1967年にはBeta2が製造され、“Concours Chronométrique International de l'Observatoire de Neuchâtel(ヌーシャテル天文台クロノメーターコンクール)”において最高賞を受賞し、テスト期間中の精度は1日あたりの誤差がわずか0.0003秒という新記録を樹立した(当時の腕時計クロノメーターにおける一般的な精度は1日に3~10秒の誤差であった)。
Beta21は1969年に完成し、スイスの20の時計メーカーによって6000個のムーブメントを製造することが決定された。同年後半にはバーゼルフェアで数百個のBeta21搭載時計が発表され、同フェアにおいて新たな記録を打ち立てた。Beta21ムーブメントの精度は月差5秒と非常に高く、当時の自動巻きや手巻き時計をはるかに上回っていた。また、Beta21搭載時計のデザインは当時の特徴を色濃く反映しており、厚く、角ばった、いわば“ゴツい”デザインが一般的であった(これは初期のクォーツムーブメントが比較的大型であったため、ある程度必要に迫られた結果でもある)。
残念ながら(あるいは見方によっては幸運にも)、Beta21の人気はすぐに衰退した。ムーブメントは大きく、消費電力も非常に高かったためだ。さらにCEHで生産されたムーブメントを使用していたメーカー各社が、それぞれ独自のクォーツムーブメントを製造し始めた。これらの新しいムーブメントはより小型で薄型となり、例えばピアジェのCal.P7などがその筆頭となっていた。
現在の時計市場において、Beta21ムーブメントは一部で地下的なカルト的支持を得ており、搭載したモデルはコレクション性の高い時計となっている。残念ながら同ムーブメントは永久的なものではなく、クォーツムーブメントは基本的なタイミングユニットが故障した場合、通常修理ができない。しかしそのデザイン全体とBeta21が象徴する意義――時計史における革新と実験の時代――を鑑賞する価値はある(現代のApple Watchにも似たものがある)。Beta21搭載時計を購入する際の主な問題は、ムーブメントが後継のBeta22に交換されていることが多い点である。これは時計の価値と真正性に大きく影響するため、購入者は十分注意するべきである。真の時計愛好家であれば、いいものを愛するためには悪い部分にも敬意を払わなければならないということを知っている。では以下に、最も象徴的でコレクタブルなBeta21搭載腕時計をいくつか紹介していこう。
オメガ エレクトロクォーツ
これはおそらく最も認知度が高く、かつ最も一般的なBeta21搭載腕時計である。この時計はBeta21ムーブメントを使用した“スイス初のクォーツウォッチ”としての称号を持つ。オメガは1970年から1977年のあいだに、1万本のエレクトロクォーツを製造した。これらの時計の価格は使用されている金属や状態により、3000ドルから1万ドル(当時のレートで36万〜120万円)の範囲で提供されている。
IWC ダ・ヴィンチ
1969年に発表されたダ・ヴィンチもまた、非常に興味深い六角形のケースを持つクォーツウォッチである。IWCはBeta21ムーブメントを収めるための適切なケースの開発に、多くの時間と労力を費やした。このダ・ヴィンチは非常に人気があり、瞬く間に完売した。現在でも入手可能ではあるが、元のBeta21ムーブメントがBeta22に交換されていることが多い点に留意すべきである。これらの時計はオンラインで3000ドル(当時のレートで約36万円)未満で購入可能である。
ピアジェ Ref.14101
ここにふたつの例を掲載する。ひとつは1970年製の“タイガーアイ”ダイヤルを持つモデル、もうひとつは約10ctのダイヤモンドで装飾された1971年製のモデルである。ここでもサイズの大きなBeta21ムーブメントを収めるために設計された大型ケースが確認できる。ピアジェは当時クォーツムーブメントの使用に積極的であり、この特定のモデルは1970年に発表され、ブランドが独自の薄型クォーツムーブメントである7Pを設計し始める1976年まで製造されていた。このCal.7Pにより、より小型のケースへの搭載が可能となった。
ダイヤモンド付きのこのモデルは、過去数年でオークションにおいて2回ほど出品されている。状態や付属品に応じて、毎回およそ2万5000ドルから3万ドル(当時のレートで約300万〜360万円)で落札されている。
ロレックス オイスタークォーツ Ref.5100
ロレックス初のクォーツモデルとして登場したRef.5100は、1000本限定で製造され、そのすべてが出荷前に完売した。各時計にはシリアルナンバーが刻印されている。またロレックス初のサファイアクリスタルを採用したモデルであり、秒針はガンギ車によって動かされるなど、競合製品に対して優位性を持っていた。さらにこのモデルではデイトのクイックセット機能も初めて導入された。1972年にロレックスはCEHを離れ、自社製クォーツムーブメントの開発に着手。のちに“オイスタークォーツ”として知られるシリーズを発表することとなった。
Ref.5100が最後にオークションに出品されたのはニューヨークのクリスティーズであり、事前のエスティメートは2万〜3万ドル(当時のレートで約240万〜360万円)、落札額は2万ドルであった。時計は箱と保証書が完備されていた。
パテック フィリップ Ref.3587
この時計は非常に珍しいモデルであり、わずか数百本の限定生産であった。最初のRef.3578は、Beta21発表直後の1969年に製造された。1973年にはBeta22ムーブメントを搭載したRef.3597が登場。写真に示されているRef.3587は主にホワイトゴールドとイエローゴールドで製造され、ピンクゴールドのモデルは極めて少数である。Ref.3587には3種類のバリエーションがあり、ひとつはラグ付きケースで、ほかのふたつはラグなしでブレスレットが一体化されたデザインであった。このムーブメントを搭載したほとんどの時計同様、全体のデザインは43mm径のクッション型ケースと非常に大きい。ブレスレットはすべてパテック フィリップのためにドイツへ特注されたもので、3種類のスタイルがあった。編み込みリンクのもの、穴あきリンクのもの(写真)、そして大きなオイスタースタイルのリンクのものだ。
この時計は現在、クリスティーズのウォッチショップで2万2000ドル(当時のレートで264万円)で販売されている(記事執筆当時)。
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