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2017年に独立ブランド化して以来グランドセイコーは、年々勢いを増しているように感じます。特にブランド誕生60周年を迎えた2020年、そしてセイコーが創業140周年を迎えた2021年は豊作で、GPHG2021でのメンズウォッチ賞の受賞など話題は尽きません。そんなグランドセイコーの数多くの新作のなかで、僕が注目していたリファレンスのひとつが、今回ご紹介する手巻きスプリングドライブキャリバーを搭載したエレガンス コレクション SBGY007。
これまで手巻きスプリングドライブは、マイクロアーティスト工房が手掛けた超ハイエンド機など貴金属モデルが中心で、スティールモデルもタカシマヤ ウオッチメゾン 大阪限定のSBGY005といった一部の限定品でのみ展開されていました。SBGY007は、スティール製で初の通常生産モデルであり、待ちわびていたという方も多いのではないでしょうか。僕もそのひとりです。
エレガンス コレクション SBGY007は、コレクション名が示すとおり、ドレスウォッチの風格を備えています。ステンレススティール製ケースは、直径38.5mm、厚さ10.2mmとスリムで、シャツの袖口にもぴったりと収まるサイズです。同コレクションで見られる少し丸みを帯びたケースデザインが採用されており、ラグが短く切られたことで全長は43.4mmとコンパクトなため多くの人が快適につけることができます。実際、15.5cmと細めの僕の手首にも心地よくフィットしました。
本機はスティールモデルですが、ケースに施されたザラツ研磨による歪みのない鏡面仕上げとサテン仕上げの組み合せによってドレスウォッチとしての美しさが実現されています。防水性能は日常生活用防水。薄いケースでドレッシーなモデルですが、つけ心地がよく日常使いしたくなるため、もう少し高い防水性能があると安心できると思いました。
グランドセイコーからリリースされる新作のほとんどが、日本の自然や季節の移ろいからインスピレーションを得たものとなっていますが、本機も例外ではありません。SBGY007のインスピレーションの源となっているのは、スプリングドライブモデルが生産される「信州 時の匠工房」からほど近くに位置する諏訪湖で見られる御神渡り(おみわたり)という自然現象です。
御神渡りとは、厳しい冬の寒さで諏訪湖の湖面が全面結氷した際に、気温の上下によって膨張と収縮が繰り返された氷に亀裂が入ることで、氷が筋状に山脈のように盛り上がる現象のこと。その名のとおり古来より神様の通る道とされ、諏訪湖のほとりにある神社では1443年から現在まで毎年記録が残されています。残念ながら2018年からは気候変動のため観測されていませんが、季節としてはまさにいま、1月から2月頃に出現するものです。SBGY007では、その神秘的な御神渡りが文字盤上に表現されています。
文字盤の繊細な波のような模様は、職人たちによって手作業で作られた金型を用いて型打ちされたもの。非常に淡く透明感のあるアイスブルーのカラーリングが合わさることで結氷した湖面のような質感が生み出されています(基本的な製造工程は、SBGA211"雪白"などと同様)。光の当たり方によって、文字盤の色彩や質感が鮮明に表れたり、逆に隠れたりするのが特徴です。
また、文字盤上には自動巻きのスプリングドライブモデルに見られる日付表示窓とオフセットのパワーリザーブインジケーターがないため、全体がシンメトリーでとてもクリーンな印象です。美しい文字盤を最大限楽しめるため、個人的にこの仕様は大歓迎。さらに丁寧に仕上げられた針とインデックスがグランドセイコーらしい光と影のコントラストを生み、視認性も良好です。
ケースを裏返すとSBGY007のスリムなプロポーションとクリーンなダイヤルを実現する手巻きスプリングドライブCal.9R31が表れます。本キャリバーは、スプリングドライブが20周年を迎えた2019年に登場しました。
ムーブメントのGSロゴの真上には、文字盤側から移されたパワーリザーブインジケーターがあり、その左隣には動力源であるゼンマイを格納する香箱が配されています。Cal.9R31は、ひとつの香箱に薄く長い2本の動力ゼンマイを並列に重ねるデュアル・スプリング・バレルを採用しているため、72時間のパワーリザーブを実現。ドレスウォッチとして仕事などのオンのシーンで使い、オフの週末では別の時計を使うといった場合でも月曜の朝まで動き続けてくれます。
巻き上げたときに気づいたのですが、リューズがやや大きめに作られているため、とても巻き上げやすいです。また、パワーリザーブインジケーターを見ながら巻き上げるため裏返して操作しているとムーブメントの受けに施された強めのサテン仕上げやエッジのある鏡面仕上げの緻密な面取りが目を楽しませてくれました。ロングパワーリザーブのためそこまで頻繁に巻き上げる必要はありませんが、こうした要素も所有し使っていくうえでは嬉しいポイントですよね。
ドレスウォッチ要素が強調されたSBGY007には、ブルーのステッチが入ったブラックのクロコダイルストラップが付属します。純正ストラップも適度な遊び心があってよいのですが、スーツをきたりタイドアップしたりする機会が少ない僕は、こうしたドレスウォッチであってもストラップを交換してドレスダウンして身につけているようにしています。そこで本機も付け替えてみることにしてみました。ラグ幅はグランドセイコーおなじみの19mmです。白いステッチの入ったブラックのカーフストラップをつけてみるとまったく異なる印象になりました。夏場にはメッシュブレスレットに変えてみるのもよさそう。淡いブルーのダイヤルなので似合うストラップは多くありそうなので、より自分らしく楽しめるコーディネートをお試しください。
セイコー独自の文字盤を滑るよう進む秒針を備えたスプリングドライブは、時計業界でも唯一無二の存在です。本機のムーブメントは、クレドールの叡智IIを担当したマイクロアーティスト工房の時計師も設計に関わっています。つまり、グランドセイコーのなかでも上位に位置しているのです。僕は時計とのインタラクションをより多く楽しむことができる手巻きが好みですが、本機はそうした同社の技術を日々楽しむことができるモデルであるというわけです。
ドレスウォッチでありながら自分なりのストラップコーディネートやつけ方で、カジュアルでも似合うポテンシャルを秘めたSBGY007は、グランドセイコーファンだけでなく多くの時計愛好家たちに手にとってもらいたいモデルですね。
グランドセイコー エレガンス コレクション SBGY007 "御神渡り"。ケース、ステンレススティール、日常生活用防水、直径38.5mm × 厚さ10.2mm、ラグ幅19mm、トランスパレントバック。ブルーの型打ちダイヤル。ムーブメント、手巻きスプリングドライブCal.9R31、72時間パワーリザーブ。ブルーのステッチが入ったブラックのクロコダイルストラップ。価格: 93万5000円(税込)。
さらにスペックの詳細を知りたい方は、グランドセイコー SBGY007の紹介記事へ、その他の詳細は、グランドセイコー公式サイトへ。