trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Hands-On 仏ブランド・ラプスのアルシュコレクションを実機レビュー

創業10年のフランスブランドが、新たな領域へと進出する。

ADVERTISEMENT

この10年間、パリはセリカやバルチックを筆頭に、マイクロブランドの時計製造における世界有数の都市として台頭してきたが、まだあまり知られていないブランドがその一角に加わろうとしている。それがラプス(Laps)だ。2015年にアントナン・メルシエ(Antonin Mercier)氏によって設立されたラプスは、木材、タバコの葉、エキゾチックレザー、アーカイブプリントといった型破りな素材を用い、型破りな素材を用い、限定生産されるグラフィカルなダイヤルを手作業で組み上げることで名を馳せてきた。最新作では、同ブランドを有名にした大胆でデザイン性の高いクォーツ時計から一転、より控えめな、繊細でバランスの取れたスタイルの自動巻き時計へと舵を切っている。

The Laps Arche Collection

 パリといえば、何世紀にもわたって続く老舗ファッションハウスが有名だが、私はメンズウェアの世界にも身を置いてきたこともあり、とりわけここ数年は、そうした老舗と並ぶように、Husbands、Rubirosa、De Bonne Factureといった独立系の小規模なショップやブランドが次々と登場している。そして時計の世界でも、同じような構図が生まれているのではないかと思う。確固たる地位を築いたブランドを補完するように、バルチックやセリカといった新興ブランドが存在感を高めてきた。そして新たなアルシュコレクションによって、ラプスもまた、この流れに加わる可能性を秘めていると思う。

 私にとって、フォルムと機能は常に最優先事項であり、どちらかに偏りすぎた時計には時折戸惑いを覚える。もちろん、私の好みも振り子のように時折揺れ動くが、最終的には中間地点に落ち着く。そしてラプスの最新作アルシュはまさにその中間地点に位置づけられるのだ。しかも価格は1000ドル(日本円で約15万7000円)以下。となれば、実物を見ないわけにはいかなかった。

The Laps Arche Collection

 アルシュは、ラプスの創業10周年を記念して発表されたモデルであり、ブランド初の自動巻き時計でもある。この新作は、ステュディオ(Studio)と名付けられた新たなシリーズの第1弾で、2015年の創業以来ブランドの中核を担ってきたクォーツモデル中心のプリマ(Prima)コレクションとは一線を画す存在となる。ラプスはこれまで、控えめなデザインからアヴァンギャルドなものまで、幅広いケースやダイヤルデザインによって独自の評価を築いてきた。これは、近年復活を遂げたデニソンにも通じるアプローチであり、同ブランドは過去のケースデザインを掘り起こし、小ぶりなサイズ、幾何学的なフォルム、シャープなラインといった、今まさに再評価されている時代のデザイン言語に着目した。デニソンが1960〜70年代のクッションケースのドレスウォッチを軸にブランドを再始動させたように、アルシュにも同じ発想が息づいている。

The Laps Arche Collection

 アルシュは同ブランドにとって大きな転換点であり、幅広く多彩なカタログから、より絞り込まれた洗練されたラインナップへと移行することを意味する。プリマコレクションをうまく補完し、ラプスが築いてきたグラフィカルで個性的なダイヤルというイメージを超えて、ラプスの可能性を広げるものだと思う。このコレクションはセリエ 01とセリエ 02のふたつのバリエーションがあり、それぞれ2色ずつ展開。どちらも韓国のデザインスタジオ、WGNBが手掛けた建築物のテクスチャー豊かなファサードから着想を得ており、光の当たり方によって表情が変化する。セリエ 01はグリーンとアイボリーのマット仕上げでその質感を表現し、セリエ 02はブラックとブルーのエナメルを採用しているが、光沢のある仕上げによって、セリエ 01とは対照的な奥行きのある表情を生み出している。

The Laps Arche Collection

 4種類のダイヤルはいずれも細かなデザインの違いがあるが、ケースは共通している。そしてこのケースこそが、この時計の名前の由来となっている。316Lステンレススティール製のケースは37.5mm×9.8mmで、その両側にはこの時計の特徴であるアーチ型のラグが配されている。このラグは美しく仕上げられており、ケースと一体でプレス成形されているのではなく、個別に機械加工され、ミドルケースに取り付けられている。こうすることで、ラグの精密な角度と、滑らかな表面仕上げを実現している。もともとケース径は小ぶりなので、この湾曲したラグは時計を実際以上に小さく見せる役割を担う必要はない。だからこそ、この形状は主に美観を重視したものであり、その造形は時計全体のデザインとも見事に調和していると感じた。さりげないディテールではあるが、時計をさらに手首に沿わせる効果も生んでいる。

The Laps Arche Collection

 ベゼルにも注目したい。私の目には、ドーム型や段付きではなく、フラットな形状に見える。この発想は、WGNBがダイヤルデザインで採り入れた考え方とも共通している。つまり装飾や立体的な造形に頼るのではなく、仕上げと形状そのものが語りかけるような、フラットな平面を採用しているのだ。ベゼル自体も、フラットな面には縦方向のサテン仕上げを、面取り部分にはポリッシュ仕上げを施すことで、美しいコントラストを生みだしている。そのおかげでダイヤルを縁取る輪郭はすっきりとしており、余計な装飾や反射が視線を奪うこともない。これは控えめなデザイン上の判断だが、何かをやり損ねたというより、むしろ自信の表れに映る。その結果、時計の表側全体が、部品を積み重ねたものではなく、ひとつの意図をもって設計された面として感じられる。

The Laps Arche Collection

 ダイヤルと針のデザインからは、アールデコを思わせる雰囲気が漂う。もちろん、このデザインに日付表示を組み合わせることに違和感を覚える人もいるだろうし、その意見にも一理ある。だがブランド側もその点は十分に考慮したはずだし、4時位置に配置したことで、一般的な3時位置よりもずっと自然にまとまっているように感じられる。とはいえ、私自身は全く気にならない。特にダイヤモンド型の日付表示窓とダイヤルの色に合わせた背景の色は、むしろ自然になじんでいるように感じる。

 針もまた、その美しさを一層際立たせている。時刻に応じて2本の針が描き出す幾何学的な形状が、実に魅力的だ。さらにインデックスも幾何学的な形状で、ダイヤルから孤立することなく調和している。特にセリエ 02では、秒針にも同様のこだわりが見られる。秒針にもダイヤルの意匠に呼応する面取りが施されており、秒針が動くたびに光が反射し、小さな動きながらも美しい輝きを放っている。これは予想外の小さなディテールだったが、実に素晴らしいと感じている。ムーブメントには約42時間のパワーリザーブを備えるミヨタ9015を搭載。ねじ込み式のシースルーバックと5気圧防水を備え、組み立てはすべてパリで行われている。

The Laps Arche Collection
The Laps Arche Collection
The Laps Arche Collection

 この価格帯における直接的な競合モデルは、いくつか存在する。なかでも価格面で最もわかりやすい比較対象は、599ドル(日本円で約9万4000円)で、ミヨタ9015を搭載し、日付表示を備えているロリエのアストラだろう。同じくパリを拠点とするバルチックのHMSも、アールデコ調のセクターダイヤルを採用し、370ドル(日本円で約5万8000円)前後から希少なダイヤルモデルでは1600ドル(日本円で約25万2000円)までと、同様の価格帯で競合している。ラプスにとって、最も直接的な“地元のライバル”と言える存在だ。それでも、アルシュはこの価格帯で独自のポジションをしっかり築いているように思う。次にパリを訪れる機会があれば、私もぜひブティックに立ち寄ってみたい。

ADVERTISEMENT