ADVERTISEMENT
ミンというブランドは、素材と製造技術のインキュベーターが時計会社の姿を借りていると表現しても、あながち言い過ぎではないだろう。白く光る夜光塗料、史上最軽量の機械式時計、そして世界初の3Dプリント製チタン製ブレスレットとストラップのハイブリッド。いずれも驚くべき製品に結びついた技術だが、ある意味では、時計そのものが革新的な技術を披露するための媒体になっているとも言える。もちろん、それはミンの時計が素晴らしくないという意味ではない。だがときに、“解決すべき問題を探している解決策”のように感じられることもあるのだ。それでも私はそういうところも含めて、このブランドが大好きだ。そして、そうした革新性はダイヤル製作にも及んでいる。ミンは最近、29.06 “ピープショー”とJ.N.シャピロとのコラボモデルである37.06 “ライトニング”で、ダイヤル製作においてきわめて興味深い試みを行っている。
先日、ミンの新作をいくつか実際に手に取る機会があった。同ブランドは、2024年のGPHGで37.09 “ブルーフィン”がチューダーなどを抑えてスポーツウォッチ賞を受賞し、大きな成功を収めた。その後、37.09 Uniを発表したが、これは最近のリリースのなかで最も実用的なモデルと言えるだろう。56.00 “スターフィールド”はかなり斬新だが、私の好みではないため、今年はダイヤルに重点を置いたふたつの新作(そして後日、単独の記事で紹介する軽量ウォッチのLW01)を取り上げることにした。
まずミン x J.N.シャピロ 37.06 “ライトニング”から始めるのがふさわしいと思った。というのも、ちょうど同じ日にJ.N.シャピロの最新作を撮影していたからだ。実物はと言うと、この時計は本当に見事だった。ダイヤルにはグレード2チタンのブランクを用い、それをロサンゼルスにあるJ.N.シャピロのチームが手作業でギヨシェ彫りを施す。伝統的なローズエンジン旋盤を使って、“ライトニング・ギヨシェ”と呼ばれるパターンを刻み込むのだ。その後、ダイヤルはクアラルンプールへ送られ、ミン・ティエン氏自身がブタンバーナーを使って加熱処理を施す。部分ごとに異なる熱の入り方によって色合いが変化し、さらに手作業による仕上げだからこそ、ひとつとして同じもののないダイヤルが生まれる。
以前Hodinkeeで同僚だったローガン・ベイカー(Logan Baker)氏は現在ミンで働いており、ミン・ティエン氏がブタンバーナーでどのように熱処理を施すかによって変化するさまざまなダイヤルの写真を見せてくれた。ブルーやパープルといった暗い色から鮮やかなオレンジまで、実にさまざまな色合いが現れる。このダイヤルはさまざまな理由から、完成品としてうまく仕上がるのは3枚に1枚ほどだという。またこうしたダイヤルにチタンが適しているのは耐熱性が高く、熱によって変形しにくいという理由もあるようだ。
ダイヤルが主役であることは言うまでもないとはいえ、ほかの部分にも目を向けよう。ケースは316Lステンレススティール製で、サイズは直径38mm×厚さ10.9mm、ラグ・トゥ・ラグ44.5mmで、ブランドの特徴であるフレア状のラグとややドーム型のサファイアクリスタルを備えている。インデックスはクリスタルに刻まれ、夜光塗料のHyCeramが充填されているため、魅力的なダイヤルを損なわない。内部には、おそらく市場で最も魅力的なセリタ製の手巻きムーブメントをミン向けにカスタマイズしたCal.SW210.M1を搭載。これはブリッジが改良され、アンスラサイト仕上げが施され、42時間のパワーリザーブを備えている。これらすべてが100mの防水性能によって保護されている。
29.06 “ピープショー”は、独創的なダイヤルデザインに一風変わったアプローチを採用している。ダイヤル自体はギヨシェ彫りで、57.04 “アイリス”と同様に虹彩のようなカラーシフトコーティングが施されており、主にブルー系の色合いを放つ。風防は“ライトニング”と同様の仕上げだ。とはいえ、この時計の真髄は針にある。だがこれは実際には針ではない。カメラで偏光フィルターを使ったことがある人なら、その仕組みが理解できるだろうが、物理的な針の代わりに、直線偏光サファイアが2枚使われているのだ。
2枚の偏光板が適切な位置に揃うと(互いに重なり合う、または反対側に位置すると)、光が透過し、ギヨシェ模様が見えるようになる。そこから2枚の偏光板がより鋭い角度、つまり90度に近づくにつれて、ダイヤルは黒くなる。実時間では15分が経過するのに15分かかるため、その変化はきわめて控えめだ。例えば秒針にこの効果を適用すれば、より大きなインパクトがあったかもしれない。それでも、きわめてクリエイティブな仕掛けであることに変わりはない。今回のケースはグレード5チタン製で、サイズは直径40mm×厚さ11.8mmだ。
内部には、ミン向けにカスタマイズされたシュワルツ・エティエンヌ製のASE 200.M1を搭載している。これがもう一方のモデルよりも価格が高く設定されている理由のひとつだ(価格についてはのちほど触れる)。パワーリザーブは86時間で、タングステン製マイクロローターを備え、さらにムーブメントにはスケルトナイズ加工が施されている。可変慣性テンプを備えた、明らかに上位グレードのムーブメントで、見た目も実に美しい。ただ、なぜミンが一方のモデルにこのようなハイグレードなムーブメントを採用し、他方には採用しなかったのかは少し疑問に感じる。というのも“ライトニング”の手作業による仕上げを見ると、むしろこちらのほうが高価格帯の時計にふさわしいようにも思えるからだ。
それでは、価格について話そう。“ライトニング”はその鮮やかな輝きを放ちながら、6250スイスフラン(日本円で約120万円)で販売されているものの、現在ウェイティングリストに登録されている。これについて少し考えてみたい。セリタ製ムーブメントとしては高額だが、決してありふれたものではない。ダイヤルを何度も往復させる輸送や、ひとつひとつ手作業で施す加工にかかる時間と手間を考えれば、価格が大きく押し上げられるのも納得できる。だが私が唯一気になるのは、ダイヤルと同じ素材に合わせて、ケースもチタン製にできたのではないかということだ。それ以外は、実際の着け心地もかなり良く、ジャン・ルソー製のブルー・バレニア・カーフスキンにアルカンターラのライニングを施したストラップも実にいいアクセントになっている。
29.06 “ピープショー”は、マキシマリスト的なムーブメントと魅惑的なダイヤルが独特の緊張感を醸し出しつつ、最も実用的で装着しやすいフォーマットを実現している。軽量素材を使用しているにもかかわらず、実際にはやや厚みを感じるが、これはおそらく少しボリュームのあるラバーストラップによるものだろう。ムーブメントや偏光ダイヤルにブランドがどれだけのコストをかけているのかは定かではないが、2万2000スイスフラン(日本円で約440万円)という価格はそれに比べるとかなり高額だと感じる。しかしこの時計はすでに完売しており、50本限定のモデルには多くの購入希望者がいたようだ。
ミンがこうしたコンセプトを今後どのように発展させていくのか、興味深いところだ。もちろん、この効果を用いたモデルがこれで最後になるとは限らない。だが、それこそがミンというブランドの面白いところでもある。ときには何かを一度だけ実現してみること自体に意味があるようなのだ。
ミン×J.N.シャピロ 37.06 ライトニングと29.06 “ピープショー”の詳細については、ブランドのウェブサイトをご覧ください。
話題の記事
Hands-On ミンによる2つのワイルドなダイヤル、“ピープショー”とJ.N.シャピロとのコラボモデル “ライトニング”
Photo Report Hodinkee Happy Hourでのウォッチスポッティング(2026年7月)
Inside The Manufacture 創業1年でマニュファクチュールを目指す、中国の新進気鋭ブランドFam al Hutの工房へ