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Hands-On パルミジャーニ・フルリエ 30周年記念 カリヨン トゥールビヨンを実機レビュー

ブランドの30周年を祝す本作。パルミジャーニを象徴するミニマルな美学の奥には、多彩な機能を備えたキャリバーが秘められている。

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パルミジャーニ・フルリエは長年、クワイエット・ラグジュアリー——あるいはパルミジャーニのCEOであるグイド・テレーニ氏が提唱するような“プライベート・ラグジュアリー”——という概念を体現してきたブランドであり、率直に言えば、時としてそれが度を越して見えることすらある。多くのモデルは、卓越した時計製造技術と徹底して簡潔なデザイン言語を組み合わせており、今春発表されたトンダ クロノグラフ ミステリューズでは、機械式クロノグラフという複雑機構そのものの一部として、その機械的な華やかさを文字通り隠すという独創的な手法が採用されている。このクロノグラフ ミステリューズについては近く改めて詳述する予定だが、今年発表されたもうひとつの時計もまた、間違いなくパルミジャーニらしい仕上がりを感じさせるモデルである。それが、ホワイトゴールド仕様の30周年記念モデル、カリヨン トゥールビヨンだ。

Parmigiani Carillon Tourbillon Wristshot

 パルミジャーニ・フルリエは今年のブランド創立30周年を祝し、Watches & Wondersにおいて手作業による鎚起仕上げのゴールドダイヤルを備えた3つの限定モデルのトリックを発表した。プラチナ製のトリック プティ・セコンド、ローズゴールド製のトリック カンティエーム・ペルペチュエル、そしてプラチナ製のトリック クロノグラフ ラトラパンテのすべてに、この新しいダイヤル装飾が施されている。そして同展示会から数カ月後、パルミジャーニはこの途方もない大作を投下したのである。まずは、あまり楽しくない話から先に片付けてしまおう。30周年記念のカリヨン トゥールビヨンは世界限定5本のみの生産で、価格は49万スイスフラン(日本円で約9600万円)となっている。多くのコレクターにとって、さまざまな意味で到底手の届かない時計かもしれない。だが、それでもこの時計を実物で見ることが純粋な喜びであることに変わりはない。

 一見すると、カリヨン トゥールビヨンの全体的なシルエットは、パルミジャーニらしい王道のデザインに収まっているように見える。しかしムーブメントの複雑さに対し、ほかのトリックモデルに見られるような幅広のローレット(コインエッジ)ベゼルが省かれているため、実際にはさらに要素を削ぎ落としたミニマルなデザインに仕上がっている。風防ガラスは41.6mm径ケースの縁まで広がり、ダイヤルの広がりを強調しているが、これには正当な理由がある。この広いスペースがあるからこそ、中央のブルーダイヤルを取り囲む4本のゴングの波打つラインを見せることができる。10時位置に覗くふたつのハンマーと相まって、これらのゴングは、一見すると簡素なダイヤルの下に隠された壮大なムーブメントの存在を示唆している。これはまた、この時計のインスピレーションの源泉に対するオマージュにもつながっている。2000年にパルミジャーニの工房で修復された、19世紀初頭のペラン・フレール(Perrin Frères)銘の懐中時計にはサーペント型のゴングが搭載されており、それが現代のカリヨン トゥールビヨンにおいては、より抽象的なフォルムへと再解釈されて落とし込まれているのである。

parmigiani carillon tourbillon Macro
Parmigiani Carillon Tourbillon Slide
Parmigiani Carillon Tourbillon Crown Shot

 Watches & Wondersで発表された3モデルと同様に、残された余白には手作業で槌目仕上げを施したゴールドダイヤルが広がっている。つまり、限定5本のダイヤルはそれぞれが唯一無二の仕上がりになるということだ。そして、それが淡い“モーニングブルー”の色合いと組み合わさることで、湖の穏やかなさざ波を思わせる、非常に心地よいトーンを醸し出している。ダイヤル上にはプリントが一切なく(長々としたテキストがないことに、多くの人が胸をなで下ろすだろう)、パルミジャーニ・フルリエのロゴがひとつ、文字盤の上にふわりと浮かんでいるかのように配置されているのみである。

 ホワイトゴールドケースのサイドに目を向けると、縦方向のゴドロン装飾が施されていることで、ここでもまた標準的なトリックのケースデザインから離れつつ視覚的な華やかさをプラスしている。ケース右側では、その際立った縦のラインがロゴ入りのリューズ周辺に心地よい質感をもたらしており、一方の左側では、ミニッツリピーターを作動させるための大型のスライドレバーを美しく縁取っている。本作はパルミジャーニのトリックコレクションに属しているものの、そのケースデザインは、2024年に発表されたラルモリアル レペティシオン・ミステリューズの意匠を色濃く受け継いでいる。正面から見れば“単なる”2針時計に思えるかもしれないが、それにしては12.6mmという厚みはかなり存在感がある。しかし横から眺めてみれば、その高さの大部分がグラスボックス型の風防に占められていることがわかるだろう。そして何より、一度時計を裏返してそこに秘められた圧倒的なムーブメントを見てしまえば、数mmの厚みを取り立てて批判する気にはなれなくなるはずだ。

Parmigiani Carillon Tourbillon Macro
Parmigiani Carillon Tourbillon Snail and Barrel
Parmigiani Carillon Tourbillon Caseback

 カリヨン・ミニッツリピーターとワンミニッツトゥールビヨンを搭載し、2万1600振動/時(3Hz)で駆動し、10日間という驚異的なパワーリザーブを備える新しい手巻きキャリバーPF950は、まさに圧巻の一言である。端正な顔立ちの多いパルミジャーニ製キャリバーとは対照的に、Cal.PF950の重層的な構造には有機的なエネルギーが満ちている。上部には積み重ねられた大きな香箱が姿を見せ、下部ではトゥールビヨンが回転を続け、そしてリピーターが作動すると、そのラック機構が流れるような動きで両者を結びつけているように見えるのだ。さらに、Cal.PF950のブリッジには手作業による“メゾ・ビブラート”装飾が彫り込まれている。これはチャイミングウォッチというテーマにふさわしく、時に視覚的に少し圧倒されそうになるきらいはあるものの、ケースバック側にさらなる個性を添えている。

 トゥールビヨンブリッジの左側には、ダイヤルに合わせたライトブルーの目盛りが配された、小さなパワーリザーブインジケーターが鎮座している。少なくとも10日間というこのパワーリザーブは、リピーターを何度作動させようとも、極めて安定して維持されるはずだ。なぜなら、リピーター自体は時計の計時部分を駆動するメインの香箱から動力を得ているわけではないからである。それどころか、積み重ねられたふたつの香箱のうち、ひとつはリピーター専用となっており、ケースサイドのリピーター用スライドレバーを操作することで、その香箱が巻き上げられる仕組みだ。私がリピーターを何度か作動させることができたとき、その音色は驚くほど心地よいものだと感じた。とりわけ、4本のゴングによって奏でられるクオーター(15分単位)の4音チャイムが、その心地よさを際立たせていた。このカリヨン トゥールビヨンを手にする5人の幸運なオーナーたちが、この点において失望することは決してないだろう。

Parmigiani Carillon Tourbillon Power Reserve Macro

 しかし、このキャリバーにすっかり心を奪われ——いや、圧倒されてしまったあとで、時計を再び表に返し手首に乗せてみると、ダイヤルにおけるパルミジャーニのシンプルさの真価に改めて気づかされる。突如として、カリヨンリピーターとトゥールビヨンの緻密な構造を示すものはほとんど姿を消し、穏やかな海のようなダイヤルと、内なる世界を暗示する波打つゴング、そしてふたつのハンマーだけが残されるのだ。私は普段、パルミジャーニのダイヤルは少々クリーンにまとまりすぎていると感じることもある。しかし本作に限っては、ゴングのわずかに非対称な配置と槌目仕上げのダイヤルテクスチャーが、広い余白を見事に埋め合わせている。また、ケース径は42mmに迫るものの、短いラグのおかげで装着感のバランスが保たれており、“大振りだが着けやすい時計”の領域にしっかりと留まっている。

Parmigiani Carillon Tourbillon Pocket Shot

 カリヨン トゥールビヨンのプロトタイプに触れたこのわずかな時間を除けば、この時計が今後、実際に誰かの腕に巻かれているのを目撃する機会はおそらくほとんどないだろう。そしてその事実を、私はすでに受け入れている。プロトタイプはさておき、この時計が愛好家の集まりにひょっこり姿を現すとは考えにくい。もちろん、いつかそんな日が来ることを密かに願ってはいるが。本作は、パルミジャーニ・フルリエがすでに多くの賛辞を浴びているこの1年において、同ブランドが誇る複雑時計製造を存分に示す、素晴らしいショーケースである。そしてその賛辞は、彼らにとって極めて正当なものなのだ。