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Photos by Anthony Traina
一般的に、文字盤にブレゲ数字のエングレービングがあれば、私の目を引くことだろう。ロンジンはマスターコレクション 190周年記念モデルで好評を博したあと、2023年にマスターコレクション スモールセコンドを発表した。スモールセコンドは38.5mm径、10.2mm厚(20mmのラグ幅)と、アニバーサリーコレクションよりも小さく厚みがある。文字盤カラーはサーモン、アンスラサイト、シルバーの3色で、それぞれ異なる質感が個性を生み出している。最近、サーモンとアンスラサイトを実際に手に取ることができた。
これはバリュープロポジションに分類される時計だ。では、さっそく本題に入ろう。マスターコレクション スモールセコンドは37万8400円(税込)である。これがものすごい時計だと言っているのではなく、ロンジンはこの値段で素晴らしい時計をつくっているということだ。同じようにヴィンテージにインスパイアされた、ロンジン ヘリテージ クラシック セクター ダイヤルと見事に対をなしている。
デザインは、ロンジンの過去のドレスウォッチを参考にしているが、特定のリファレンスの復刻ではない。エングレービングのブレゲ数字(おそらく、このようなヴィンテージロンジンへの回帰だろう)、リーフ針、スモールセコンドのインダイヤルは、すべての要素を兼ね備えている。アンスラサイトのモダンな見た目ときめ細やかなテクスチャーも好みだが、やはりサーモンのほうに目が引く。文字盤はバーティカルサテン仕上げで、針とエングレーブインデックスがオフブラックのコントラストで配されている。
38.5mmのケースは全体がポリッシュされている。この手の時計にしてはやや厚みがあるが、それでも装着に問題はない。この厚みは傾斜が設けられた見返しで最も顕著に感じられるほか、ドーム型ベゼルも必要以上に厚みがある。ラグからラグまで45mmというプロポーションは、私の6.25インチ(約15.8cm)の手首にぴったり合う。
マスターコレクション スモールセコンドのダイヤルは非常によくできている。エングレービングのブレゲ数字はシャープな印象で、この価格帯で同じような美しさを提供しているブランドはほかにないと思う。簡潔に言うなら、この価格帯のドレスウォッチでこれほど見栄えのする文字盤を思い浮かべるのは難しということだ。
スモールセコンドのサブダイヤルはスネイル仕上げになっており、サテン仕上げされたサーモン文字盤とのコントラストが美しい。サーモンはここ数年、注目のカラーダイヤルだが、この特別な演出には配慮と思慮深さが感じられる。スモールセコンドのインダイヤル上部にある“AUTOMATIC”の文字は小さく、それほど気にならない。私が思うに設計上最大の問題は、インダイヤルにより“7”が切られてしまっていることだ。普段、一部が切りおとされたインデックスは気にならないのだが、“5”が同じ扱いを受けないのは、7に対して少し不公平な気がしてくるのだ。少なくとも、少し非対称な感じが残る。
数字とリーフ針はブラックで、サーモンダイヤルとのコントラストが美しい。
3色の文字盤の質感の違いは、ロンジンのディテールへのこだわりを表している。アンスラサイトの文字盤は、光によってはフロスティングのように見える粒状の仕上げで、文字盤に異なる質感を与える。この文字盤はよりモダンな雰囲気を醸し出しているが、ローズゴールドの数字とメッキ針がドレッシーな域へと導いている。シルバーモデルは見られなかったが、このなかでは最も伝統的なものであり、表面はよりきめ細かく仕上げられている。
マスターコレクション スモールセコンドは、ロンジンの自動巻きCal.L893を搭載(実質的にはアップグレードされたETA2892である)している。2万5200振動/時で時を刻み、シリコン製ヒゲゼンマイによりETAムーブメントをアップグレードした。また、ETAで標準的な約42時間よりも長く約72時間パワーリザーブになっているのも注目すべき点だ。
スモールセコンドは190周年記念モデルよりも1mm近く厚くなっているが、これはムーブメントによるところが大きい。センターセコンドからスモールセコンドに移行するには、歯車を若干入れ直す必要があるのだ。文字盤はスモールセコンドとのバランスが取れているように感じられるが、これは着用感とのわずかなトレードオフである。
L893はサファイア製シースルーバックをとおして見ることができ、予想どおりインダストリアルな印象だ。この価格帯のマニアがよく口にするのは、ソリッドバックのほうがよかったのではないかということだ。一方で、私たち賢明なマニアがあまりにも当たり前のように思っている機械的な感動を見たいという、より広い商業的需要があるはずだということも認めている。どちらのオプションも求めるのは難しいだろうか? ロンジン製キャリバーを見ても私の感性を害することはないが(まともになって、ロンジン!)、サファイア製シースルーバックはケースの厚さを犠牲にしていることが多く、できれば避けたい代償である。
マスターコレクション スモールセコンドはいずれもパッド入りのアリゲーターストラップを装着し、デプロワイヤントバックルも付いている。とはいえ、私はブランドがドレッシーな時計をもっとカジュアルなストラップで提供することを当たり前にしたいと考えている。私なら、もっとカジュアルなカーフスキンやスエードのストラップを付けて、もっとドレスダウンさせるだろう。しかしこれは些細なことだ。マスターコレクション スモールセコンドは、ロンジンによって美しく仕上げられ、まさに私が大好きな伝統的なインスピレーションが現代のウォッチメイキングに注ぎ込まれているのだ。
スポーティな時計が欲しい人も、あるいはドレッシーな時計が欲しい人も基本的には2000ドルから4000ドル(日本円で約30万~60万円)の範囲でカバーできる。間違いなくロンジン マスターコレクション スモールセコンドには競合相手がいる。ノモスは約1500ドル(日本円で約22万5000円)からキラーウォッチを製造している。こんなことを言うのが信じられないかもしれないが、私が最近レビューしたレイモンド・ウェイル ミレジムも正当な選択肢である。あとはオリスのビッグクラウン ポインターデイトなら、少し違った雰囲気も楽しめるかも?
しかし伝統的なインスピレーションを得たスイスブランドから、新しいドレッシーな時計を(その遺産との真の結びつきとともに)手に入れたいのであれば、ロンジン マスターコレクション スモールセコンドに勝るものはそうそうない。
ロンジン マスターコレクション(スモールセコンド)。ステンレススティールケース、38.5mm径×10.2mm厚、ラグからラグまで45mm、ラグ幅20mm。文字盤カラーはサーモン(Ref.L2.843.4.93.2)、アンスラサイト(Ref.L2.843.4.63.2)、シルバー(Ref.L2.843.4.73.2)の3種類。自動巻きCal.L893.5、約72時間パワーリザーブ、シリコン製ヒゲゼンマイ。サファイア製シースルーバック、30m防水。希望小売価格は37万8400円(税込)。詳しくはロンジン公式ウェブサイトをご覧ください。
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