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Photos by Anthony Traina
2019年、セイコーは新しいセイコー 5スポーツのラインナップの基礎を築き、多くの新しいリファレンスを投入した。同僚のジェームズ・ステイシーは、セイコー 5とSKXの歴史を織り交ぜながら、これらすべての徹底的なレビューをしている。そのA Week On The Wrist記事での結論は以下のとおりだ。
“正真正銘のダイバーズウォッチではないが、新生セイコー 5は、SKX007のヘリテージを受け継ぎ、価値ある日常使いのスポーツウォッチとして、時計愛好家の泡沫に足を踏み入れて間もない人たちに最適だと思う。それに対し、僕は臆せず飛び込め! と言いたい”
気に入るかもしれないし気に入らないかもしれないが、これがセイコー 5だ。あれから4年、100以上のリファレンスを経て今こそそれを受け入れるときだ。今年、初代セイコー 5の発売55周年を記念して、そのオリジナルモデルをトリビュートした限定モデルを発表した。これに加えてヘリテージリファレンスからインスピレーションを受けた、限定ではない3本の時計もリリースされた。
限定版のSBSA223(海外版ではSRPK17)は最高だし、もしかしたらここ数年で最高のセイコー 5かもしれないと思っている。まずはここから始めよう。
この新しいリファレンスはケース、ブレスレット、ベゼル、ダイヤルに至るまで、1968年に発売された初代セイコー 5に敬意を表したものだ。またセイコー 5のオリジナルロゴまでもが再現されている。SBSA223の直径は39mm(ラグからラグまでは43mm)、厚さ12.5mmで、これはサイズが現代のセイコー 5ケースよりも小さいことを意味する。ケースはオリジナルに忠実で、ベゼルには放射状のブラシ仕上げを、ラグにはスキャロップ加工(扇形切欠き)を施し、またラグ穴を設けている。ブレスレットもオリジナルへのオマージュで、現代のセイコーが採用している3連ブレスレットよりも厚みが薄くなっている。クラスプもスタンダードなセイコー 5とは異なりワンプッシュ三つ折れ方式だ。これによりブレスレットは柔軟かつ快適なつけ心地を実現し、SBSA223の伝統的なインスピレーションをさらに際立たせた楽しいものとなっている。
文字盤のヴィンテージにインスパイアされたディテールもよくできており、12時位置にあるセイコー 5のロゴは、紛らわしい現代のセイコー 5のエンブレムよりもずっといい。マットブラック文字盤の外側には、シルバーグレイン仕上げのアウタートラックを配しており、赤い秒針と青い“SPORTS”テキストはどちらもソフトな色合いで、60年代後半のオマージュであるレトロフューチャリスティックな雰囲気を醸し出す。ベゼルは直接圧入式の両方向回転式で、太めのシルバーグレイン仕上げの数字とマーカーをセットしている。
ひとつ問題を挙げるとすれば、4時位置にある小さな凹型リューズが、時刻、曜日、日付を設定する際に引き出しにくく、操作しにくいことだ。このディテールは初代に忠実でありながらも、オリジナルがリューズで巻き上げられないムーブメントを搭載していたばかりに、現代的な利便性を犠牲にした結果なのだ。
SBSA223を手首に装着すると、がっしりとしていながらも快適なつけ心地を提供してくれるなど、セイコーのあるべき姿をしているようだ。現代のセイコー 5スポーツよりも小さく、ラグからラグまでがコンパクトなC型ケースは、手首の上で存在感を放つが、圧迫感はない。防水性能は100mで、セイコーのエントリーモデルとしては標準的なレベルだ。真のダイバーズウォッチではない機能よりもデザイン性を重視したオマージュに対してというより、スタンダードなセイコー 5スポーツへの批判はあると理解している。つけてみて、久しぶりにセイコー 5に熱中した。現代のセイコー 5スポーツは、旧SKXとセイコーの中間的な存在であったのに対し、この時計は自分が何者であるかを熟知している。
セイコーはこの限定モデルを1万5555本生産(うち国内流通は1300本)し、2023年7月8日に発売する予定だ。数に限りはあるが、欲しいと望む人は手に入るだろう。一部の販売店ではすでに予約注文を開始しており、7月下旬には消費者に届けられる見込みだという(編集注記:すでに販売を終了している専門店は多数。セイコー公式ECサイトも完売済みだ)。
セイコー 5スポーツ
限定モデルのセイコー 5 SBSA223とともに、セイコーは定番のセイコー 5スポーツケースに、3本のヘリテージモデルも導入した。ここ数年のあいだに最新のセイコー 5スポーツを試着したことのある人なら、これらはおなじみのものだろう。ケースサイズは42.5mm(ラグからラグまでは47mm)、厚さ13.4mmで、慣れ親しんだ逆回転防止ダイビングベゼルを備えている。パッケージは私の好みからすると少し厚みがあり、限定版のフィット感のほうが好みだった。
シルバーダイヤルのSBSA217(海外版ではSRPK09)、オレンジダイヤルのSBSA219(海外版ではSRPK11)、そしてブラック“レガッタ”ダイヤルのSBSA221(海外版ではSRPK13)からなる3つの新作は、いずれも1969年に発表されたセイコー5の初代コレクションからインスピレーションを得ている。オリジナルを楽しく解釈したもので、ブランドがオールドセイコー 5を明確に引用しているのを見るのは喜ばしいことだ。とはいえこれらは限定版とは異なり、2019年に発表されて以来、おそらく100本以上のリファレンスが存在するセイコー 5スポーツのプラットフォームのダイヤルとベゼルを変更したに過ぎない。確かに、私はほかのどのモデルよりもヴィンテージ風のマッシュアップが好きだが、ここでわかりきっている、土台から作り直したなどと言うつもりはない。セイコーはできるだけコストを抑えて、クールで新しいものをいくつか投げただけなのだ。
SBSA217のシルバー文字盤はサンバースト仕上げで、鮮やかなオレンジの針と、6時位置には青い字で“Automatic”のテキストを配している。ダイビングベゼルはセイコーのヴィンテージ“ラリーダイバー”に少し似ているが、これはカウントダウンベゼルの機能をを取り入れた楽しいものだ。シルバーの文字盤に対して視認性を高めるべく、同色の針に黒いストライプを加えている。これはほかのリファレンスにはない実用的なディテールである。新トリオのなかでこれが最もクリーンで、最も控えめなモデルだ。
SBSA219には、明るいオレンジ色の文字盤の上にコントラストとなる黒いブロックを組み合わせている。この意匠はヴィンテージの“ダブルハリケーン”へのオマージュとして表現している。数週間前のIntroducingセクションで述べたように、オレンジ色のセイコーダイバーは、いつでもどんなサイズでも、どんな年でも活躍し、この3本のなかで私がいちばん好きなのはまさにこの理由による。これはオリジナルのダブルハリケーン、Ref.5126-6030へのオマージュである。オレンジは鮮やかで光沢があり、また挑戦的で、ハロウィンや(フットボールチームの)シンシナティ・ベンガルズの試合にも最適だ。大胆なオレンジ色の文字盤以外の部分は自身の居場所を知り、ただ背景に溶け込もうとするだけ。またオレンジとブラックが交互に配されたハイライトはシルバーの数字を配したブラックベゼルへと続いている。
このセイコー 5 トリオで採用されたケースとブレスレットは、2019年にアップデートされたセイコー 5スポーツコレクションを発表して以来、セイコーが使用しているものと同様だ。つまり、トップにサテン仕上げを施しているほか、洗練されたポリッシュ仕上げのミドルケースと、4時位置にはリューズガードを備えているということだ。SKXシリーズのスピリチュアルな系譜として、ケースは丸みを帯びてはいないが十分にそれに近い。3連ブレスレットもおなじみで、この価格帯にしてはよくできている。取り外し可能なリンクにはピンが使用されているが、クラスプには4つのマイクロアジャストがあるため、ボックスから取り出してブレスレットのサイズを合わせてしまえば、ある程度の余裕ができるはずだ。
最後に、SBSA221はヴィンテージのセイコー5 “レガッタ”をオマージュしている。オリジナルと同じくインナーベゼルとアウターベゼルの両方を備えたモデルだ。インナーは12時間ベゼルで、最初の4時間は鮮やかなブルー、残りはグリーンであり、アウターベゼルは伝統的なダイビングベゼルである。しかし最初の20分間は赤く塗られており、理論的にはレガッタレースのスタート時間を計るのに適しているようだ。私はボートを所有していないし、レガッタでレースをしたこともないが、状況は人それぞれであることは認識している。オリジナルのセイコー“レガッタ”は大きなスクエアケースを特徴としていたが、この新作はほかのモデルと同様、セイコー 5スポーツケースを採用している。
5分間の休憩
限定モデルではない、新しいトリオのヘリテージを意識したダイヤルもとてもクールだが、セイコーが限定モデルのSBSA223で、ヴィンテージインスピレーションを全面に押し出しているのを見るのも楽しい。セイコーがあらゆる種類のダイヤル、ケース、そして最終的に機能(ポーグの55周年は来年だと伝えておこう)を、かなり手頃な価格で製造していた時代まで遡る。限定モデルは4万9500円、非限定モデルのメーカー希望小売価格は4万4000円(ともに税込)だ。
セイコーはセイコー 5の理念に忠実に(限定版を)1万5555本生産するが、それほど限定されているわけではない。このモデルが店頭に並んだら、セイコーがこのケースをほかのリファレンスに転用して、スタンダードなコレクションに加えてくれることを期待したい。
現代のセイコー 5スポーツコレクションは、ジェームズが言うように、特に“時計愛好家の泡沫に足を踏み入れて間もない人たち”に最適なコレクションである。ただこの限定版のセイコー 5は、セイコー 5の本来の目的に忠実でありながらも、さらに優れたものなのだ。これは本当の意味で“スポーツ”ウォッチであり、あなたや私のように、少しだけスポーティな人々のための、クールなデイリーウォッチであることを望む以上の野心はない。この時計はファンの多いダイバーのデザインコードを取り入れた、エントリーレベルの時計ではない。そして新しいSBSA223を毎日でも喜んでつけたいと思う。
セイコー 5スポーツのSBSA223は39mm(ラグからラグまでは43mm)、厚さ12.5mm。限定モデルでないSBSA217、SBSA219、SBSA221は42.5mm(ラグからラグまでは47mm)、厚さ13.4mm。すべてのモデルにセイコー自動巻きCal.4R36を搭載し、振動数は2万8800振動/時(4Hz)、パワーリザーブは約41時間。SBSA223は1万5555本の限定生産で、希望小売価格は4万9500円(発売中)、限定生産ではないトリオモデルの希望小売価格は4万4000円(2023年9月発売予定、すべて税込)で展開。