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近年、メンズウォッチやレディースウォッチという呼び方はあまり意味がないことが、ここやほかの場所でも多く語られている。人間、好きな時に好きなものを身につけるものだ。特に機械式時計のような必需品ではないものに関しては。しかし、その違いが発揮されるのは複雑な時計づくりにおいてなのだ。レディースウォッチと銘打った時計には、いわゆるメンズウォッチでは見られないような、非常に凝った機構が使われていることがある。それはまるで、このカテゴリーが時計ブランドやデザイナーに、いわゆるメンズウォッチにはない意外性や創意工夫を生み出す自由を与えているような気がするのだ。ヴァン クリーフ&アーペルはその好例で、レディ アーペル ウール フローラルはジェームズ・ステイシーがWatches & Wonders 2022で最も興味深い時計に選んだ作品だ。また、ジャガー・ルクルトの新しいダズリング・ランデヴー・スターも、複雑さにはやや劣るものの、楽しさでは引けを取らない。
ダズリング・ランデヴー・スターは、36mm×9.8mmと控えめなサイズだが、決して小さい腕時計ではない。ベゼルとラグ上部にダイヤモンドをセッティングし、ダイヤルにはディープブルーのアベンチュリンを使用する。ダイヤルには見事な深みがあり、素材としてアベンチュリンほど美しいダイヤルを作るものはないと思う。ダズリング・ランデヴー・スターでもすばらしく効果的に使われている。最下層には流れ星を切り取った円形のディスクがあり、その上にはさらに小さなディスクがあり、コンプリケーションが作動するまで流れ星を隠しているのだ。
さて、その流れ星は、いつ見られるかわからないのが特徴だ。流れ星は、ペルセウス座流星群のように定期的に流星群を観測しているときに、より頻繁に大空を駆け巡る(流星群は、空の一点から発生したように見えるため、ペルセウス座から放射状に広がっているように見える)。しかし流星を見るには暗い夜に仰向けになり、無限の宇宙を見上げ、運を天に任せるしかないのだ。
では、ランダムな事象を表示する時計を作るにはどうしたらよいのだろうか。これは想像以上に難しい。時計にランダムなことなど誰も期待しないからだ。時計は秩序の象徴であり、ある意味、秩序ある宇宙の象徴であり、その化身でもある。流れ星を予測不能に飛ばすには、リピーターやグラン・ソヌリなど、ローターによって巻き上げられる第二の主ゼンマイで複雑機構が作動するようにする必要がある。トリガーとなるゼンマイの張力に達するまでの時間は所有者の動きによって変化するため、流れ星がいつトリガーされるかを正確に予測することはできないのだ。
ひとつの事象はランダムに起こるが、確率分布を知れば、さまざまな結果の起こりうる頻度を把握することができる。ギャンブルは確率分布に基づいて店が有利になるように設定されているため、最終的には常に店側が勝つことになる。理論的には、ダズリング・ランデヴー・スターは完全に決定論的であり、ある風の状態があれば必ず同じテンションで機構が作動する。しかし、所有者は自分の活動がどの程度ローターを動かすのか予測できないため、どこからどう見てもランダムな出来事なのである。
必要であれば、リューズを回して機構を作動させることもできるが、本当の喜びは期待しながら待ち、驚きを楽しむことにある。オプションがあるのはいいことだが、リューズを回すということは、誕生日に何をもらえるか確かめるためにパパとママのクローゼットに忍び込むようなものだ。
ジャガー・ルクルト ダズリング・ランデヴー・スター:風防と裏蓋にサファイアクリスタルを採用したピンクゴールドケース、36mm×9.8mm。ムーブメントはJLC Cal.734、70時間パワーリザーブ、時・分表示、“シューティングスター”コンプリケーション。アベンチュリンとダイヤモンドのマルチレベルダイヤル。価格は1091万2000円(税込)。
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ダズリング・ランデヴー・スターの詳細については、ジャガー・ルクルトの公式サイトをご覧ください。