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信じられないかもしれないが、夏が終わった。たとえカレンダーが異議を唱えようとも8月が終わると季節は終わりを告げる。しかし学校の再開や秋に向けてワードローブを衣替えするなど、悲観的な状況ばかりではない。毎年、テニス選手やファンはニューヨーク市クイーンズ区に集まり、全米オープンを通じて、あの夏の暖かい空気の最後の息吹を味わっている。今年、ラケット社(このスポーツをめぐる議論を一変させるような、大きな仕事をした団体)はデザイナー(そして友人)のカールトン・デウッディ(Carlton DeWoody)氏とチューリッヒを拠点とするモーリス・ド・モーリアック(Maurice de Mauriac)とともに、テニスウォッチの新バージョンを投じた。
昨年の夏、全仏オープンに合わせて発売された限定モデルのラリーマスター(時計業界上の内部的な命名に則り)を覚えているだろうか。ローラン・ギャロス(全仏オープン)のコートを彷彿とさせる質感を備えたピンクダイヤルを持ちながら、パステルカラーでまとめられていた時計だ。文字盤そのものはヨットウォッチを見習ったもので、テニスコートの要素をあからさまに、そしてどこか控えめに表現したデザインがうまくいっていた。
そのデザイン、アイデアはすべて、インテリアデザインの仕事でも知られる時計愛好家のデウッディ氏の協力によるものだ。彼と私はこの業界で何度か顔を合わせたことがある。我々はともにテレビや映画の分野で仕事をしており、時計に関するあらゆることをコンサルティングしていた。彼はWatching Movies記事で取り上げたオーウェン・ウィルソン(Owen Wilson)主演の映画『シークレット・ヘッドクォーターズ(原題:Secret Headquarters)』にも関わっており、同作品にモーリス・ド・モーリアックの時計も登場している。
ラリーマスターが帰ってくると聞いたとき、興奮と緊張の両方があったことを正直に認めよう。というのも最初の時計デザインは愛好家主導の製品のあるべき姿を体現したもので、本当に気に入っていたのだ。ラケット社はそのブランディングと季刊誌制作の両方を通じて、テニスに対するキュレーターとしてのアプローチを行い素晴らしい成果を上げてきた。スポーツと時計学には論理的なつながりがあり、最初のラリーマスターを作るにはデウッディ氏のような橋渡しが必要だった。それはまるで1960年頃のコートから引き出されたかのような、古くもあり新しくもあるウェス・アンダーソン(Wes Anderson)監督のようなヴィンテージ美学を感じさせた。
だからそのスピリットが失われてしまうほどデザインが大きく変わるのではないかと、半分緊張していたのだ。まあ、デウッディ氏は“壊れていないなら、直さなくていい”という選択をしたようだし、その決断を下した彼、ラケット社、そしてモーリス・ド・モーリアックのチームには頭が下がる気持ちだ。
今年我々が手にしたのは事実上同じ時計だが、地元ニューヨークで来月開催される全米オープンテニストーナメントに向けて積極的に動いているようだ。つまり何を意味するのか? それは(全米オープンテニス 2023の会場である)フラッシング・メドウズのコートと同じように、ほぼ全面が青で統一されているということだ。
全体的には対照的な(そしてパステル調の)ダークブルー、グレー、ピンク、グリーンに塗られたスモールセコンドのインダイヤルを介して、ヨットにインスパイアされたレイアウトが残っている。これらは20秒単位で区切られているのだが、ルール変更前のテニスではこれがサーブの制限時間だったのだ。文字盤は粘土調の淡いペールブルーで、アプライドマーカーにはフェイクエイジング加工を少し施している。日付窓は3時位置のままで、カレンダーの数字は有名な“デシマル”フォントで書かれている。
このような時計のデザインには、ある程度の愛情とこだわりが込められている。その感情は、6時位置にあるSwiss Made With Loveのテキストによりしっかりと綴られているようだ。また端から端まで水平方向に伸びた、セクシーなテニスネットのモチーフも健在である。
純粋にスペックの観点から見ると、厚さ12mm、39mm径のステンレス製ケース、ラグからラグまでの長さは47mmで、手首に装着したときにコンパクトにまとまる。ミッドセンチュリースタイルのテニスロゴを描いたシースルーバックのなかには、ランデロン社製の自動巻きスイスムーブメント、24を搭載した。
この種の時計には何かいいものがついているに違いない。実際、この時計が収められるボックスには、特注のピンクのテニスボールと、ブルーもしくはピンクのクイックリリースシステムのツーピースストレッチNATOストラップが入っている。こちらの新作時計は限定生産され、全米オープン(8月28日から9月10日まで開催)の期間中、予約を受け付けている。なおラリーマスターIIの価格は1950ドル(日本円で約28万6000円)となっている。
ラケット×モーリス・ド・モーリアック ラリーマスターII。ケース径39mm×厚さ12mm×ラグからラグまでは47mm。ステンレススティール製ケース。クレイテクスチャーのブルーダイヤル。サイクロップ付き反射防止サファイアクリスタル風防。20秒単位に区切られたスモールセコンド。ネオンイエロー夜光のロリポップスモールセコンド針。カスタムデイトホイールとダイヤルテキストは、時計にインスパイアされたデシマルフォントを採用。ロゴをプリントしたサファイア製シースルーバック。リューズにエンボスロゴ。25石、振動数2万8800振動/時(4Hz)のランデロン社スイス製自動巻きムーブメント、Cal.24。全米オープン期間中(8月28日~9月10日)の限定生産。価格は1950ドル(日本円で約28万6000円)。
ラケット×モーリス・ド・モーリアック ラリーマスターIIの詳細については、ラケット社のオンラインサイトをご覧ください。