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クイック解説
セイコー アルピニストは腕時計を着用する多くの人たち(およびコレクター)にとって、チェックリストの要件をすべて満たす時計だ。入手しやすく信頼でき、丈夫で魅力的、なおかつ値段も手頃で、多くの人が求めるものが十分に揃っている。これが、2006年に3つのモデルが初めてリリースされて以来、このアルピニストが圧倒的な人気を誇ってきた理由である。この3モデルで特に注目を浴びたのが、グリーン文字盤と金色のインデックスを備えたSARB017だ。
しかし、このモデルは既に製造終了となっており、アマゾンや他のネットショップの在庫が底をつき次第、完売となる。
ただ、それも過去のこと。今月、アルピニストの新作モデルが3つ、プロスペックスのラインナップを補完するかのごとく登場する。
セイコーは、アルピニストの先代モデルを成功に導いたすべての点を取り入れ、わずかな改良を加えた。アルピニストの前モデルは6R15自動巻きムーブメントを搭載していたが、新モデルでは6R35を採用。これにより70時間という驚異的なパワーリザーブを実現した。変更を施したサファイアクリスタルガラスには、日付を拡大表示するサイクロップレンズを取り付け、ガラス内面に反射防止コーティング加工が施される。さらに、裏蓋はシースルーバックに変更がなされている。
先代モデルと比べ、外観に大きな変化は見られないが、新モデルの文字盤にはプロスペックスのブランドロゴである「X」があしらわれている。わずかな変更だが、これはセイコーがこの時計へ並々ならぬ熱意を注いでいることを表している。また、セイコーが近年取り組んでいるブランド統合化の一環であるともいえる。
嬉しいことに、価格はさほど上がっていない。上記のような、非常に素晴らしい改善が加えられたにもかかわらず、前モデルの価格よりも2万円しかプラスされていないのだ。
ファースト・インプレッション
誰もこの時計がリリースに至るとは予想もしていなかった。セイコーの社員でさえもである。セイコー アルピニストは「コスパに優れた」謙虚で控えめなスポーティウォッチという立ち位置から、時計業界に旋風を巻き起こす存在になったと思う。セイコーは、1961年から1964年にかけて日本人登山者たちのために作られたローレル アルピニストという名前のコレクションを元に、再びこのモデル名を命名した3つの時計を2006年にリリースした。先に述べたとおり、この3本のうちの1つであるSARB017は、グリーン文字盤に金色のインデックスとカテドラル針(コブラ針)が特徴で、日本国内で小規模ながらも忠実かつ熱狂的なファンを生んだのだ。
しかし、事態はこれにとどまらなかった。この「和製エクスプローラー」とも呼ばれる時計は、時計マニアたちが交流するデジタルオンラインフォーラムを主な情報交換の場として、世界中のウォッチコミュニティの心を鷲づかみにした。その当時、時計を趣味とする人たちは今よりもずっと少なかったが、アルピニストは手頃な価格の時計に関するほぼすべてのスレッドで話題となっていた。フォーマルなシーンとカジュアルなシーンのどちらにも合う時計を求める人たちにおすすめの時計として、よく名前を目にしたものだ。
アマゾンでは、SARB017は注文が絶えず、リリース後間もなく、アルピニストは確固たる地位を確立した。セイコーのスモー、モンスター、007といった人気のダイバーズウォッチが2000年代中頃に存在した最中、アルピニストは揺るぎない評判を勝ち取るまでになったのだ。
そして2019年、アルピニストの誕生60周年を記念して、新モデルであるSPB089が米国限定で1959本発売された。(アルピニストが初めて発売されたのは1959年とするレポートと、1961年とするレポートがあるが、セイコーでは1959年としてる)この時計は、HODINKEEショップとセイコーのブティックストアの2つのルートを通じて入手可能で、グリーンと金色のモチーフの代わりに、ブルー文字盤および銀色のインデックスと針を採用した点を除き、この時計は人気の高いSARB017と同一の外観を採用した。我々とのコラボレーションによって生まれた時計ではなく、ただ単にセイコーの限定エディションとしてHODINKEEショップが販売したものだ。
発売がスタートするやいなや、この時計はあっという間に売り切れとなった。セイコーとHODINKEEのどちらのショップもほぼすぐに完売。しかし、驚くのはまだ早く、限定エディションを含めHODINKEEがこれまで販売した腕時計の中で、SPB089程ウェイティングリストを膨大に伸ばした商品はなかった。このリストに掲載された人数は、アメリカの中規模な街の人口に匹敵する程である。
この600ドル(約6万6000円)のセイコーは、HODINKEEショップで販売された他のどの時計よりもより多くの人たちのハートを射止めたといえる。「セイコー アルピニスト」というフレーズがRedditのr/watchesや他の人気のウォッチフォーラムに登場した回数を示したレポートがあれば、見てみたい。現在、インスタグラムには#seikoalpinistというタグの付いた投稿がおよそ1万8600件あり、参考までに#rolexexplorer1というタグの付いた投稿は5000件で、これをやや上回る程度のポストがあるのだ。(アルピニストは、その共通したデザイン性と似通ったバックグラウンドから、しばしば「和製エクスプローラー」と呼ばれる)
セイコーが作る時計は、基本的に大衆向けのものだ。我々時計ファンは、お気に入りのアイテムをピックアップし、気の利いたニックネームやバックストーリーを考案して時計に個性を授ける。私が思うに、アルピニストの人気ぶりはセイコーにとってきっと驚きだっただろう。そして、価格的にも手頃で全体的によく仕上がったベストウォッチのうちの1つという定評を元に、セイコーはアルピニストに更なる改良を加えて再リリースしたのだ。セイコーが、ファンの声に耳を傾けていることを示す証に他ならない。
基本情報
ブランド:セイコー(Seiko)
モデル名:プロスペックス アルピニスト(Prospex Alpinist)
型番:SBDC087、SBDC089、SBDC091
直径:39.5mm
ケース素材:ステンレススティール
文字盤色:ブラック、クリーム、グリーン
インデックス:アラビア数字(アプライド)、夜光ドット
夜光:ルミブライト(LumiBrite)
防水性能:200m
ストラップ/ブレスレット:ブレスレット(SBDC087)、レザーストラップ(SBDC089およびSBDC091)
ムーブメント情報
キャリバー:6R35
機構:時、分、秒、日付表示
パワーリザーブ:70時間
巻き上げ方式:自動巻き
振動数:3Hz(2万1600振動/時)
石数:24
価格・発売時期
価格: SBDC087: 7万7000円、SBDC089とSBDC091: 7万5000円(いずれも税抜価格)
販売時期:2020年1月
詳細についてはセイコー公式サイトへ。