先週末、ベン(・クライマー)と僕はコロラド州アスペンまで飛行機を乗り継いで、全米初開催となるF.A.Tアイスレースに参加した。富裕層や有名人の遊び場にもなっている、アメリカの象徴的なスキータウンアスペンの北の山間に位置するこのイベントは、丸2日間にわたって開催された。古きよき時代のクルマ同士の友情を求めて、スペシャルなクルマたちが高山の雪上トラックで何周もラップを刻んだ。
会場にあったクルマは70年以上前に製造されたものだが、アイスレースの起源は1950年代、オーストリアのツェル・アム・ゼーにあったクルマ好きのグループが、地元の凍った湖でカーレースを始めたことにさかのぼる。数年前にツェルで開催された同イベントの、当時の様子をクールなコール・ペニントンが記事にしている。今回のアスペンも似たようなアイデアだが、もっとパワフルなものにしている。
このイベントのリーダーはほかでもないフェルディ・ポルシェ(Ferdi Porsche)氏である。Talking Watchesへの出演やBen Clymer Presentsでの素晴らしい対談、そしてこの脳を溶かすようなイベントを実現させた男性として、覚えている人は多いだろう。彼とF.A.T.インターナショナルチーム(以前はGPアイスレースという名前だった)は、ツェルでアイスレースを再燃させた。というのも彼の家族が、50年代に開催された最初のアイスレースに参加した人々の中にいたからである。550スパイダーを氷上で操り、しばしばクルマの後ろにいるスキーヤーを牽引して氷上を駆け回る。
50年代、ツェル・アム・ゼーで開催されたフェルディナント・ポルシェ教授記念レースの様子。
興味のある人のために説明すると、F.A.T.は以前ヨーロッパの物流会社で、クルマのスポンサーシップ(ル・マン優勝車2台を含む)を多く手がけていた。最近ブランドはフェルディ氏によって再スタートし、ポートフォリオの一部にはアイスレースのようなイベントも含まれている。
F.A.T.のカラーリングで、1991年のル・マンに参戦したヨースト・ポルシェ962C(ファクトリーカー012)。
僕は木曜日の搬入から金曜日と土曜日のメインイベントまでの3日間、イベントに参加して写真を撮る機会を得た。生粋のクルママニアであり、自動車愛好家の生粋のファンである僕にとって、アイスレース アスペンは最高のスリルであり、これまで参加したどの自動車イベントとも違うものであった。モービル 1との提携により運営されるこのイベントはカジュアルな雰囲気で混雑しておらず、クルマと、それを雪の上に運んできた人々の両方に、普通ではありえないレベルまで近づくことが出来た。
モービル 1がタイトルスポンサーである一方、ポルシェ、ポルシェデザイン、ハガティ、EMCJET(イーエムシージェット)、VW(フォルクスワーゲン)、ピレリ、ルーフ、リヴィアン、ヘネシーなどのブランドもイベントに参加した。パイクスピークで優勝したレースカーから、V10(エンジン)にスワップしたドリフトカー、ル・マンのプロトタイプポルシェ、(レーサーのレハ・キーンによる)キーン・プロジェクト、ポルシェ550、バギー、トラック、さらには(最高出力1400馬力の)フーニペガサスまで、パドックには目を見張るほどのクルマで埋め尽くされ、コース上では毎日タイムアタックとデモ走行が行なわれた。
F.A.T.アイスレース アスペンのリードスポンサー、モービル 1が主催するカーコレクション。
多くのマシンが積み込みと試乗を行う木曜日、僕は早朝に会場へと到着した。これ以上の説明は省くが、F.A.T.アイスレース アスペンのハイライトを紹介しよう。
僕は037が大好きだ。
エーテル・アパレルのロゴをのせたオイルステイン・ラボ “ハーフ11”というイカれたクルマが、雪上用タイヤの装着を進めていた。
ヴィンテージのロレックス デイトナ 6239を着用するブレット・ワシュケレウィッチュ(Brett Waszkelewicz)氏。
フェルディ・ポルシェ氏は、わずか20台しか生産されていない964カレラ 4ライトウェイトで雪道を走る。
カメラを乗せたカイエンの出番。追加されたライトがお気に入りだ。
1日中、さらに多くのクルマが走り続けている。
ニスモパーツUSAの“サファリZ”は、ほかならぬフォーミュラ・ドリフトのチャンピオン、クリス・フォシュベリ(Chris Forsberg)氏がハンドルを握っている。
2台の特別なアウディ。1989年製のIMSA GTO(左)と、1985年のパイクスピークでミシェル・ムートン(Michèle Mouton)氏が優勝した際に乗っていたスポーツクワトロS1(右)。
ポルシェデザイン クロノグラフ1は、ブランドがスポンサーとなっているイベントにふさわしい選択である(もちろんフェルディ氏とポルシェデザインの歴史は言うまでもない) 。
1998年のル・マンを優勝したポルシェ911 GT1とドライバーが雪上で再会
週末に起きた数あるハイライトのひとつは、ポルシェ911 GT耐久レースカーと、1998年のル・マンでこのマシンを操り優勝したステファン・オルテリ(Stéphane Ortelli)氏という特別な組み合わせの存在だった。言うまでもなく、GT1は滑りやすい雪の上を走るために設計されたマシンではないが、ステファン氏はアイスレースのために特別なショーを行うという素晴らしい仕事をしてくれた。
クルマ業界のプレゼンターとして知られるヘンリー・キャッチポール(Henry Catchpole)氏が、真っ赤なC8コルベットのE-Rayに乗って雪上を走り、ハガティのためのビデオを撮影していた。
コルベットでもう1周する直前のヘンリーの素敵なスカーファ・ダイバー1のあまりピントの合っていないショット。NATOもいい。
ヘンリー氏が愛用するスカーファ ダイバー1。コルベットでもう1周する直前に撮ったためピントが合っていない。NATOもいい感じ。
この1966年式トヨタ・スタウトを改造した、いかついドリフト・トラックは、フォーミュラ・ドリフトのドライバーであるライアン・ターク(Ryan Tuerck)氏が持ち込んだ2台のうちの1台。動力に600馬力以上を誇るトヨタの4気筒モーターを搭載している。
フーニガン自身の“フーニペガサス”も、BBIオートのチームサポートを受けて登場した。1971年式の917.20 “ピンクピッグ”へのパイクスピークオマージュとしてデザインされたこのケン・ブロック(Ken Block)氏のクルマは、モービル 1を含むほかの多くのサポートを受け、BBiによって作られた。
雪を食ったような笑み。
キーン・プロジェクト911の全車両は、雪のなかでもこれ以上ないほど似合っていた。クルマの団体はレハ・キーン(Leh Keen)氏によってイベントまで導かれた。
レハ・キーン氏は、キーン・プロジェクトの典型的なスタイルで雪に挑む。
アイスレースの初日、旅行に便利なミドー オーシャンスター GMT LE for Hodinkeeをつけて向かう、僕の手首の写真。
パイクスピークで優勝をしたミシェル・ムートン氏のアウディ スポーツクワトロS1。高速周回を終えて休憩している。
正直なところ、僕はよろこんでどちらにも乗ってみたい。
モービル 1のマット・プルエット(Matt Pruett)氏は、きれいなパネライ ルミノールを着用。
ポルシェのファクトリーレーシングドライバーであり、空冷イベント(Luftgekühlt)の創設者でもあるパトリック・ロングが運転する、等身大のホットウィール ポルシェ モービル 1 914 サファリ。
モービル 1 914 サファリの素晴らしいディテール。レザーロールツールキットがお気に入りだ。
ありがたいことに、僕がアイスレースで見た唯一のクラッシュだった。
モービル1のために、1913年製グラフレックスの大判カメラで撮影する、才能あふれる写真家ジョシュア・ポール(Joshua Paul)氏。
100年以上前のカメラをリロードしている。
ポルシェデザインのゲルハルト・ノバク(Gerhard Novak)氏が、2本の異なるクロノグラフ1を着用。アイスレースで最大限の効果を発揮するダブルリスティングだ。
雪上を周回するルーフ911のトリオ。
ルーフ CTR “イエローバード”。
パウ(犬)パトロールだ。
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク 15500。
キーン・プロジェクト911のハンドルを握るフェルディ・ポルシェ氏。
万が一、誰かが立ち往生したときのために。
フィリップ・サロフィム(Phillip Sarofim)氏の993型911ターボ。ペイントマッチのホイール、特にバイオレットブルーがいい。
フェルディ氏はこのイベントを素晴らしいSDビデオで撮影していた。
“ランボーランボ”の名を持つランボルギーニ LM002。
週末に見せたライアン・ターク氏のもう1台のクルマは、ジャッドのV10を搭載した最新のトヨタ スープラだった。
週末の後半に運転することになったメイヤーズ・マンクス。純粋に楽しくて魅力的だった。
クルマジャーナリストのバセム・ワセフ(Basem Wasef)氏は、亡き義父が愛用していたジラール・ペルゴを着用している。
アイスレースでは、GT1の邪魔にならないようにターボを抜かなければいけない場合もある。
ベンと僕は雪に当たる前に上の993ターボのコックピットに乗り込んだ。
ベンととてもベンらしいクルマ。
バイオレットポルシェ911 993ターボのステアリングを握るベンの腕には、自身の名前を冠したG-SHOCKが。
スタントマンで写真家のライリー・ハーパー(Riley Harper)氏の手首につけられたタグ・ホイヤー カレラ。
メイヤーズ・マンクスに乗るライリー・ハーパー氏。
フェラーリ550マラネロ。おそらくトワイライトスキーセッションに遅れている。
見事なメルセデス・ベンツ 300 LSガルウィング。
チェック柄のシート。
雪の上を飛ぶガルウィングに勝るものはない。
ブレモン スーパーマリン S302を着用する、ロード・スカラーズのカム・イングラム(Cam Ingram)氏。
ブラックダイヤルを持つロレックス エクスプローラーII 16570を身につけた、クルマジャーナリストのアンドリュー・マネス(Andrew Maness)氏。
写真家でありポルシェのパーソナリティでもあるジェフ・ズワルト(Jeff Zwart)氏。数周走ったあと、フェルディ・ポルシェ氏と談笑していた。
メイヤーズ・マンクスのステアリングを握る僕。鍵を貸してくれたフィリップ氏と、写真を撮ってくれたハゴップ(Hagop)氏に感謝する。楽しかった。
クールなヴィンテージロレックス デイトジャストを身につける友人のジョン(John)氏。
The Cultivated Collectorのマシュー・アイヴァンホー(Matthew Ivanhoe)氏は、ヴィンテージのミニパトカーで雪山を駆け抜けた。本物のパトカーだ。
ミニパトカーを操るマシュー・アイヴァンホー氏は、初日のヴィンテージ・クラスでベストタイムを記録した。
アイヴァンホー氏が週末に着用していた時計のひとつは、パテック フィリップ 5524G カラトラバ パイロット トラベルタイムだった。翌日、彼が何を腕に巻いていたかは、下にスクロールしてチェックだ。
フォード・エスコートのラリーカーを操り、満面の笑みを浮かべるフィリップ・サロフィム氏。
スキー用のフェラーリ 550マラネロを別の角度から。
僕はポルシェデザイン クロノグラフ 1GP アイスレースLEを着用している。ベンから預かって、まだ返していないんだ。
ヴィンテージポルシェの最高峰
また、ヴィンテージポルシェ 550スパイダーと1960年式ポルシェ RS-60も参加していた。2台のスパイダーのうち1台は、現存する唯一の未レストアとして知られている。高山環境で550や718を撮影した経験があるとはいえ、このような歴史的なマシンを目の当たりにし、動いているのを見るのはスリルがある。この記事のトップ写真には、1960年のタルガ・フローリオで優勝したRS-60のハンドルを握るジェフ・ズワルト氏を採用した。
未レストアのポルシェ550。
工場から出荷されたときからそのままに、70年という歳月を経ている。
この2人がリビアンR1Tを追って雪道を走る姿は、そうそう見られるものではない。
土曜日のある時点では、2台の550とRS-60を写真に収めるためにラップが停止されることもあった。集まった観衆は、山々に縁取られたトリオショットを撮ろうと携帯やカメラを掲げた。
マシュー・アイヴァンホー氏によるイベントのための2本目の時計は、びっくりするようなローズゴールド製A.ランゲ&ゾーネ ダトグラフをブレスレットにつけていた!
ポルシェデザイン クロノグラフ1 “ユーティリティ” LEを着用するフェルディ氏。
パドックでたむろしているのは、写真家でありHODINKEE Radio出身のコーリー・リチャーズ(Cory Richards)氏。
コーリー氏のヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ “エベレスト” クロノグラフ。
セイコー プロスペックス スピードタイマー SSC911を装着するグラハム・スミス(Graham Smith)氏。
キーン・プロジェクト911 ターボが、観衆の脇をすり抜けていく。
ドローンパイロットによる最大限の撮影。