「“ポルシェを愛する人々”にとって、これは素晴らしいイベントだ」
ホテルの駐車場に置かれたポルシェ。(左から)カエゲ風にバックデートさせたタルガとシンガーによるリイマジンモデル。
ジェリー・サインフェルド(Jerry Seinfeld)が(そう、あのジェリー・サインフェルドだ)話の途中で立ち止まり、フォルクスワーゲン製のトランスポーター(ドライバーのアート・バンカーがセブリングに向かう際に使用していたものを模して作られた)に乗せられて通り過ぎる彼の550aを眺めながら指差したとき、私はそのすぐ近くにいた。ポルシェコレクターが集う世界最大のイベント、レンシュポルト・リユニオン7ならではのエキサイティングな瞬間だ。
ジェリー・サインフェルドのブライトリング エアロスペース。
このイベントは由緒あるラグナ・セカ レースウェイで開催され、そこでは歴史上最も希少で重要なポルシェに囲まれるという経験ができる。展示車が並べられてレースが行われ、クルマがクラッシュし、新車がお披露目されていた。パーキングエリアではクルマがカテゴリー別に駐車されているので、ボクスター派や914派はその駐車場を見つけさえすれば天国だっただろう。だが、私はパドックのなかで、彼がかつて所有していたカレラGTのプロトタイプ、その助手席に座っていたサインフェルドに偶然出くわした。そのとき、彼はグラント・ラーソン(Grant Larson、このマシンのデザイナーだ)と席を並べていた。素晴らしいクルマに囲まれている状況下で、誰かがぽつりと「この週末はポルシェにとって素晴らしいものだったと思いますか?」と彼に尋ねた。
ジェリー・サインフェルドの550aは、アート・バンカー(Art Bunker)がレース参戦時に国中を駆け回っていたような特注のシングルキャブ1959年製VWバストレーラーに積載されていた。「このクルマは死ぬほどレースに出てきたんだ」と、サインフェルドは言った。「長いレースキャリアを経てもなおボディは傷ひとつなく、完璧な状態だ。僕たちはマシンのレストアを行い、ペイントを施して、すべてを元通りにしたんだ」。
9万1000人の観衆が集った5年ぶりの開催となる今年のレンシュポルトでサインフェルドとばったり出会えたのには、世界の小ささを感じた。クルマ愛好家であるサインフェルドが言った言葉は、本心だろう。「もちろんポルシェにとって素晴らしい催しだけど、同時にポルシェを愛する人々にとっても素晴らしいイベントだよ」。
私は昔からポルシェやクルマ全般に興味があった。ウィスコンシン州の小さな町で育ったこともあり(冬の道路はひどい塩害に見舞われる)、ときどきボクスターを見かけたものだ。しかし、そこは別にポルシェの国というわけではない。だが先週末のラグナ・セカはまさしくポルシェのメッカだった。単にデザインが素晴らしいとか、歴史があるからというだけでなく、このイベントは私のクルマへの愛に火をつけた(私の身長では乗れないにもかかわらず、カレラ6が大好きだ)。ポルシェはこうしたことを実現可能な唯一のブランドだからこそ、さまざまな立場の人々を結びつけることができるのだ。確かに高価なクルマだが、ブランドの歴史を通して誰もが幸せになれるものを作ってきた。
ただ古いポルシェが欲しいだけで、そして多少の資金を貯めることができるならば、914のようなものを手に入れることができる。私のようにクラシックなものを夢見つつ、わずかに手が届くところにいるのなら、空冷式の911タルガが理想だろう。もしも自動車史とレースの頂点を極めたく、そして無限の資金を持っているのなら、906、910、908、917でジェントルマンクラスのレーサーになることができる。まだまだ、数え上げればきりがない。レンシュポルトではそれらすべてを見ることができるし、あなたと同じようにクルマへの情熱を持つ人々と一緒の時間を過ごすこともできる。
また、時計の観察にも絶好のロケーションだ。大勢の人がいるため、クルマのきれいな写真よりも時計の写真の方がはるかに撮りやすい。実はそれが、私がこれほどまでにクルマのディテールに注目した理由でもある。レンシュポルト7ではクルマをテーマとした時計やレースにふさわしい時計が多く展示されていたが、クルマと同様に変わり種も多かった。タグ・ホイヤーは、有名な写真家であると同時に映画監督であり、ドライバーでもあるジェフ・ズワート(Jeff Zwart)が監修した歴史的に貴重なポルシェの数々を展示した巨大なブースも構えていた。そして、同ブースでは時計を購入することもできた。今回のPhotop Reportに関しては、できるだけいろいろなものを少しずつ(いや、かなりの量を)お届けできるように頑張った。だが、ポルシェ好きにとっては、週末の暇つぶしに最適だろうと思う。ぜひ楽しんで欲しい。
現存する911のプロトタイプのなかで2番目に古いシャシー#7から時代を遡ろう。
756 カレラGLT アバルト。
時計のほうのカレラだ。
モダンなデイトナもあったが......。
それ以上に現代的なデイトナもあり…...。
タグ・ホイヤーのモダンな“カレラ”も数多く見られた。
“セレブレーション”ダイヤルのように意表をついた現行ロレックスもあった。
ジェフ・ズワートは、ポルシェトラクターのレースに出場したドウェイン・ウェイド(Dwyane Wade)を捕まえて話をしていた。
ロレックスといえば、ウェイドはデイデイトを着用していた。
そうそう、近代的なクルマもあった。
ポルシェは新型911 GT3 RS “レンシュポルト”モデルを発表した。
しかしながら、私はほとんどの時間をクラシックカーに費やしていた。
誰かHODINKEEにパティーヌ好きがいると聞いた。
ジェリー・サインフェルドのポルシェ550a。
ドリュー・コブリッツ(Drew Coblitz)もクラシックなものが好きらしい。このポール・ニューマン デイトナを見る限り、少なくともそう思える。
とてもクラシックで使い込まれた別のクロノグラフウォッチである、非常に素晴らしいスピードマスター。
タグ・ホイヤーのフォーミュラ1を持っていた、ライリー・ハーパー(Riley Harper)を捕まえた。
ダイバーズが注目される一方で、これらのクロノグラフは過小評価されがちだ。
クラシックといえば、レンシュポルトの会場にはポルシェデザイン クロノグラフ1のバリエーションが数多く展示されていた。例えば、デイト窓の上にオルフィナの名を配したこちらのモデルなど。
HODINKEEの読者である着用者は、ブレスレットの摩耗を誇りに思っていた。
そしてこちらも、ポルシェデザインの“PD”ダイヤル。
新作である“ポルシェ75周年”エディションのクロノグラフ1。
ピクサーのジェイ・ウォード(Jay Ward)の司会で、我らのチーフブランドオフィサーであるエネリ・アコスタ(Eneuri Acosta)がフェルディ・ポルシェ(Ferdi Porsche)とともにステージに上がり、クルマと時計についてトークを繰り広げた。その結果、多くのポルシェデザインの時計が注目を浴びることになった。
このポルシェデザイン クロノグラフ1“911ダカール”エディションのケースには、チタンカーバイドが使用されている。
エネリ・アコスタは、自身のInstagramに投稿するフォトレポートに取り掛かっていた。
父であるヴォルフガング・ポルシェ博士(Dr. Wolfgang Porsche)とともに、ポルシェ初の356/1 グミュント・シャシー 356-001に乗るフェルディの姿も目撃されている。
クルマと時計の結びつきから逃れることはできない。ホイヤーだって……、ジャック? ジャック・ホイヤー?
タグ・ホイヤーのブースでは、カレラを含むレアカーの素晴らしいコレクションが展示され、レースとの歴史的なつながりを感じさせた。
ポルシェの顧客によって再現された、1953年のラ・カレラ・パナメリカーナで使用されたポルシェ550クーペ。
タグ・ホイヤーとポルシェは今年のラ・カレラ・パナメリカーナの参戦に向けて、ソンダーバーシュプログラムメイドの新型ポルシェ718 GT4 RSを製作した。
しかし、ここには大きな駐車場しかなかったと誤解しないでほしい。レースも盛んに行われていた。
少し雨が降ったため、滑りやすくなったコースでの転倒やスピンアウトが何度かあった。
HODINKEE × タグ・ホイヤー のカレラ ダート。
レースには修理もつきものだ。そしてどうやら、花柄のシャツも。
レンシュポルト・リユニオン7で見られた意外な時計(そしてクルマ)の数々
もしクロノグラフや(素晴らしいとはいえ)直球のクルマにうんざりしているなら、ちょっとした口直しを用意している。自動車という観点から見た“非伝統的”な時計がたくさんあったので、それらを一堂に集めたいと思ったのだ。
カリフォルニアに住むこのHODINKEEの読者と45分ほど歩き回った。このようなイベントでみんなに出会えるのは、本当にうれしいことだ!
私はこのセリカを撮影するか、レンシュポルトで見た唯一のリシャール・ミルを撮影するか、どちらかを選ばなくてはいけなかった。後悔はしていない。
いつもの素晴らしい日々に戻ろう
ヒストリックなレースカーや有名ドライバーをご存じなら、誰もが知っているような名前がたくさん見られたはずだ。
この人物がセイコーの“ポーグ”をつけていたのは、その昔、生沢徹がセイコーユーザーだったからだ。
生沢といえばだが、こちらはランソン・ウェブスター(Ranson Webster)。世界有数のポルシェコレクションを持つ。
そのなかには、ル・マン 24時間、デイトナ、セブリング、ニュルブルクリンクで勝利を積み重ねてきた生沢徹のGozzy ポルシェ935 K3も含まれている。
ウェブスターはブライトリングを身につけ、葉巻を吸い......。
…...その後、レースのためにクルマを持ち出した。
レンシュポルトでセイコーの改造モデルを見たのだが......。
……そしてロレックスでも改造モデルを見かけた。
そして、改造車もたくさん見かけた。
この伝説的なクルマを特定できればボーナスポイントを進呈しよう。
セイコー × ローイングブレイザーズのチェッカーフラッグモデル。
エメ レオン ドレコラボの911SC。
カジュアルなメテオライトダイヤルのデイトナ。
ミラーハイライフの次に好きなカラーリングかもしれない。
“MHP”の名で知られるマーク・ハミルトン・ピータース(Mark Hamilton Peters)のファッションは、今大会随一だった。レーシングスーツにツイード、完璧だ。
MHPは本物のジェントルマンクラスのレーサーで、フェラーリのドライバーでもある。レーシングストラップにスピードマスターを取り付けていた。
少々ダメージがある。
次回の開催まで、安全運転で。