「“ポルシェを愛する人々”にとって、これは素晴らしいイベントだ」
ジェリー・サインフェルド(Jerry Seinfeld)が(そう、あのジェリー・サインフェルドだ)話の途中で立ち止まり、フォルクスワーゲン製のトランスポーター(ドライバーのアート・バンカーがセブリングに向かう際に使用していたものを模して作られた)に乗せられて通り過ぎる彼の550aを眺めながら指差したとき、私はそのすぐ近くにいた。ポルシェコレクターが集う世界最大のイベント、レンシュポルト・リユニオン7ならではのエキサイティングな瞬間だ。
このイベントは由緒あるラグナ・セカ レースウェイで開催され、そこでは歴史上最も希少で重要なポルシェに囲まれるという経験ができる。展示車が並べられてレースが行われ、クルマがクラッシュし、新車がお披露目されていた。パーキングエリアではクルマがカテゴリー別に駐車されているので、ボクスター派や914派はその駐車場を見つけさえすれば天国だっただろう。だが、私はパドックのなかで、彼がかつて所有していたカレラGTのプロトタイプ、その助手席に座っていたサインフェルドに偶然出くわした。そのとき、彼はグラント・ラーソン(Grant Larson、このマシンのデザイナーだ)と席を並べていた。素晴らしいクルマに囲まれている状況下で、誰かがぽつりと「この週末はポルシェにとって素晴らしいものだったと思いますか?」と彼に尋ねた。
9万1000人の観衆が集った5年ぶりの開催となる今年のレンシュポルトでサインフェルドとばったり出会えたのには、世界の小ささを感じた。クルマ愛好家であるサインフェルドが言った言葉は、本心だろう。「もちろんポルシェにとって素晴らしい催しだけど、同時にポルシェを愛する人々にとっても素晴らしいイベントだよ」。
私は昔からポルシェやクルマ全般に興味があった。ウィスコンシン州の小さな町で育ったこともあり(冬の道路はひどい塩害に見舞われる)、ときどきボクスターを見かけたものだ。しかし、そこは別にポルシェの国というわけではない。だが先週末のラグナ・セカはまさしくポルシェのメッカだった。単にデザインが素晴らしいとか、歴史があるからというだけでなく、このイベントは私のクルマへの愛に火をつけた(私の身長では乗れないにもかかわらず、カレラ6が大好きだ)。ポルシェはこうしたことを実現可能な唯一のブランドだからこそ、さまざまな立場の人々を結びつけることができるのだ。確かに高価なクルマだが、ブランドの歴史を通して誰もが幸せになれるものを作ってきた。
ただ古いポルシェが欲しいだけで、そして多少の資金を貯めることができるならば、914のようなものを手に入れることができる。私のようにクラシックなものを夢見つつ、わずかに手が届くところにいるのなら、空冷式の911タルガが理想だろう。もしも自動車史とレースの頂点を極めたく、そして無限の資金を持っているのなら、906、910、908、917でジェントルマンクラスのレーサーになることができる。まだまだ、数え上げればきりがない。レンシュポルトではそれらすべてを見ることができるし、あなたと同じようにクルマへの情熱を持つ人々と一緒の時間を過ごすこともできる。
また、時計の観察にも絶好のロケーションだ。大勢の人がいるため、クルマのきれいな写真よりも時計の写真の方がはるかに撮りやすい。実はそれが、私がこれほどまでにクルマのディテールに注目した理由でもある。レンシュポルト7ではクルマをテーマとした時計やレースにふさわしい時計が多く展示されていたが、クルマと同様に変わり種も多かった。タグ・ホイヤーは、有名な写真家であると同時に映画監督であり、ドライバーでもあるジェフ・ズワート(Jeff Zwart)が監修した歴史的に貴重なポルシェの数々を展示した巨大なブースも構えていた。そして、同ブースでは時計を購入することもできた。今回のPhotop Reportに関しては、できるだけいろいろなものを少しずつ(いや、かなりの量を)お届けできるように頑張った。だが、ポルシェ好きにとっては、週末の暇つぶしに最適だろうと思う。ぜひ楽しんで欲しい。
レンシュポルト・リユニオン7で見られた意外な時計(そしてクルマ)の数々
もしクロノグラフや(素晴らしいとはいえ)直球のクルマにうんざりしているなら、ちょっとした口直しを用意している。自動車という観点から見た“非伝統的”な時計がたくさんあったので、それらを一堂に集めたいと思ったのだ。
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