私はEAA(Experimental Aircraft Association:実験的航空機協会)から1時間もかからないところで育った。子供のころにEAAの博物館を訪れたことはあったが、EAAエアーベンチャー・オシュコシュ(EAA AirVenture Oshkosh)を見に行ったことは1度もなかった。しかし私もほかの少年と同じように飛行機に魅了されていたのだ。
ウィスコンシン州グリーンベイの地元空港で父と一緒に座り、近くの州兵空軍部隊によるタッチアンドゴーの練習風景を眺めたことを懐かしく思い出す。私たちはランボー・フィールド(グリーンベイの屋外競技場)から1.5ブロック行ったところに住んでいたので、パッカーズの試合前にF-16からB-2爆撃機まで、まるでフットボールを投げてぶつかるような低空飛行を見ることができた。EAAを訪れることは、そうした思い出をひとくくりにし、さらに1000倍にも膨らませたようなものなのだ。
世界中から人が集まり、週間平均1万機以上の飛行機が行き交い、2021年の観客動員数は60万人を超える。航空クラブのなかには仲間同士で集まれるように駐車場を確保しているところもある。また飛行機で来てその横にテントを張る人もいる。そのほかにも多くの航空愛好家にレクリエーションパイロット、さらにはコマーシャル(商業)パイロットが商用機で来たり、車で来て地元のホテルに泊まったりして、普段は誰もいない巨大な飛行場やキャンプ場を埋め尽くす。その週の早めに手配をすれば、年代物のフォード トライモーターやB-17爆撃機などで飛行することだって可能だ。毎週航空パフォーマンスが行われ、夜には花火と航空技術を組み合わせた素晴らしいショーが2回行われる。
水曜日の午後に到着した私の頭上をF-22が軽やかに飛び交い、飛行機でできるとはいまだに思えない操縦を披露していた。その日の夕方から木曜日にかけては敷地内を歩き回り、自作ホビー機からクルマ好きなら誰もが持っている高速車への憧れすら子供の遊びにえてしまう巨大な“ウォーバーズ(第2次世界大戦で使用された軍用機)”コーナーまで目にした。大きなV型12気筒エンジンとその操縦性がお好みならP-51 マスタングを検討してみたらどうだろう?
航空分野が好きならパイロットウォッチを持っているべきじゃないか? 私は1日半にわたって見本市会場を歩き回るあいだに、たくさんのパイロットウォッチを眼にするだろうと思っていた。実際、航空電子機器からプライベートジェット機まで、あらゆるものを販売する企業が集まるなか、いくつかの時計ブランドも出展していた。そこで私は目を凝らし、太陽の下(炎天下)でありとあらゆる時計を見たが、パイロットウォッチは思ったより少なかった。友人がパテックのノーチラス Ref.5712Rを腕につけているのを見つけたが、持ち主は私がそれを確認する前に姿を消してしまった。
というわけで、まずは古きよきIWCのビッグ・パイロット・ウォッチをご覧いただきながら、世界最大の航空ショーでの1日を紹介しよう。