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新しいUR-120は、中央のカルーセルに取り付けられた3つの衛星システムが、それぞれの遊星歯車機構を回転させながらデジタルで時間を表示するという、まさにウルベルク的なものだが、その仕組みはブランドにとってまったく新しいものとなっている。創業者のマーティン・フライ(Martin Frei)氏とフェリックス・バウムガルトナー(Felix Baumgartner)氏は、UR-120でオリジナルのサテライトディスプレイを支えるすべての機械的プロセス全体を作り直し、その結果、ウルベルクの時計のなかでもこれまでで最も興味深く、そして最もクールなひとつなったと思う。
UR-120の計時は、時計の右端に配置された傾斜した垂直のミニッツトラック上を各アームが通過することで行われる(上の画像では、時刻は約11時37分を指している)。1時間が経過すると、時刻を表示していた針は時計の正面の残りの部分を中心に回転し続けるが、デジタルアワーはふたつの部分に分かれてそれぞれ別々に回転し、徐々に元に戻ってまったく新しい数字を形成する。(ウルベルクのウェブサイトでは、作動中の機構の動画を見ることができるので、ぜひご覧いただきたい)。
新しい時間表示機構を開発する際、ウルベルクは、なんと驚くべきことにSFの世界からインスピレーションを得た。ウルベルクが、最も人気のあるSF作品からインスピレーションを得ていることはよく知られており、UR-120もその影響をさりげなく受けている。発売と同時に“スポック”というニックネームが付けられたこの二股に分かれた時計メカニズムには、『スタートレック』に登場する有名なバルカン式敬礼と視覚的な共通点があり、この敬礼と時計を並べてみると、そのおもしろさがわかるだろう。
ご想像のとおり、UR-120には、かなり斬新な作動機構が採用されている。この時計では全部で3つの革命が、極めて継続的に起きているのだ。まず、各カルーセルのアームは、センター軸を中心として回転する。そして、個々のディスプレイにおいては、アームのふたつのパーツが分裂し始めると、分裂した長方形のスタッドが自転し、やがて次に来る“時”の数字の形になる。分裂した状態のアワー表示が頂点に達すると、ハープ型のスプリング(ウルベルクの自社製)によって、分裂したスタッドは強制的に閉じられる仕組みだ。最後に、ウルベルクによると、各サテライトは、直立して視認性を保つために逆回転する必要もあるという。
この唯一無二の一連のシークエンスを制御する新しいムーブメントは、ウルベルクの過去の開発品をベースに作られた自動巻きキャリバーのUR-20.01で、2万8800振動/時で動作し、48時間のパワーリザーブを備え、同社独自の極めて効率的なワインディングシステム“Windfänger(これはUR-100シリーズにも搭載されている)”を特徴としている。
私は3月のウォッチズ&ワンダーズで、開設されたばかりのウルベルク本社を訪れた際、幸運にもUR-120のプロトタイプを密かに見ることができた。さらに先月のジュネーブ・ウォッチ・デイズでも、実際の製品サンプル(この記事のために撮影した時計)を目にすることができた。
私は、UR-120のような腕時計を評価する最良の方法は、それを純粋な機械的スペクタクルとして捉えることだと考えている。大規模な予算を組むSF映画と同じように、UR-120のユニークな計時ディスプレイの動力学的機構は、できるだけ大きなスクリーンを通して観察するのがいちばんである。このため、UR-120のサイズがかなり大き目なのは、驚くべきことではないのだ。
その特徴的なレクタンギュラーケースは、ケース径44mm×47mm、高さ15.8mmというサイズだが、前世代のウルベルクのモデルと比べれば、かなり着けるのに適した仕上がりになっている。フレイとバウムガルトナーはUR-120のケースを開発する際、ユーザーエクスペリエンスには特に気を配った。このブランドの熱心なファンであれば、ケースの全体的な輪郭が、同社の過去のモデルよりも遥かに滑らかになっていることにすぐ気がつくだろう。ウルベルクは、スティールとチタンを組み合わせた2ピースケースと、独特の連結型ラグを採用することで、このデザインを実現したのだ。
ウルベルクの時計をつけ慣れている人であれば、UR-120のサイズやケースデザインはとても身近に感じられると思う。だが、伝統的な時計のデザインに慣れ親しんでいる人にとっては、最初の数回は、つけ心地のよさを実感するのに苦労するかもしれない。それでも、ウルベルクの“スポック”のような腕時計は、機能性や操作性、装着性といったことではなく、見慣れたものに対して、まったく新しい、予想外の視点からアプローチすることで、畏敬の念を抱かせることが重要なのだ。
その点から言えば、UR-120は、今年発売されたどの時計よりも成功していると思う。完璧に、この世のものとは思えないほどの時計なのだ。
ウルベルクのUR-120“スポック”は限定生産で、価格は税別10万スイスフラン(約1500万円)。ケース径44mm×47mm、ケース厚15.8mm。サンドブラスト仕上げのスティールおよびチタン製ケース。無反射コーティングを施したカーブドサファイアクリスタル風防。30m防水。エンボス加工カーフレザーストラップ。自動巻きムーブメント UR-20.01。遊星歯車にアナログミニッツとデジタルアワーサテライトを搭載。スイスレバー脱進機。振動数2万8800振動/時。パワーリザーブ48時間。